ちよだ (潜水艦救難母艦)

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JS Chiyoda (AS-405) in the South China Sea, -6 Oct. 2000 a.jpg
南シナ海で救難訓練中の「ちよだ」
艦歴
建造者 三井造船 玉野事業所
運用者 Flag of Japan.svg海上自衛隊
計画 昭和56年度計画
発注 1981年
起工 1983年1月19日
進水 1983年12月27日
竣工
就役 1985年3月27日
退役
除籍
除籍後
その後
母港 {{{母港}}}
主要諸元
艦種 潜水艦救難母艦
艦級
排水量 基準 3,650トン
常備 4,450トン
満載 5,400トン
全長 112.5m
全幅 17.6m
深さ
高さ {{{高さ}}}
吃水 4.6m
機関 三井8L42Mディーゼルエンジン×2基
スクリュープロペラ×2軸
機関出力 11,500PS
速力 最大速 17ノット
燃料
航続距離
潜航限界深度
乗員 120名
搭載量
兵装
艦載艇 {{{艦載艇}}}
艦載機 {{{航空機}}}
艦載機 着艦スペースのみ
搭載総数 {{{総搭載機数}}}
飛行甲板
C4I
レーダー OPS-16 対水上捜索用
ソナー 捜索用ソナー
探索装置・
その他装置
電子戦
対抗手段
愛称
モットー
その他 * 川崎重工業深海救難艇(DSRV)
* 深海潜水装置(DDS)
* 自動艦位保持装置(DPS)

ちよだローマ字JS Chiyoda, AS-405)は、海上自衛隊の潜水艦救難母艦。艦名は江戸城の別名千代田城に由来し、この名を受け継いだ日本の艦艇としては4代目。

潜水艦救難艦潜水母艦の機能を兼ね備えた新艦種たる潜水艦救難母艦の端緒となる艦であり、従来の潜水艦救難艦よりも優れた救難能力を備えている。計画番号はJ115。

設計[編集]

船体[編集]

センター・ウエル上に置かれたDSRV

船型はモノハル型、2層の全通甲板を備えた遮波甲板型とされており、艦首には特徴的な高い船首楼が、艦尾には大きくオーバーハングしたトランサム・スターンが採用されている。主船体は3層構造であるが、後述の深海救難艇(DSRV)や人員輸送カプセル(PTC)の揚降のため、上甲板から船底までを貫通して直接海につながった開口部が設けられている。この開口部はセンター・ウエルと称されており、長さ約18メートル×幅約5.5メートルである。艦の航行時には船体水中抵抗の増大要因となるため、センター・ウエル内の吃水線付近には前後に開閉式の制波板が取り付けられている[1]

一方、センター・ウエルの前方上方にあたる前部上部構造物内には、第1甲板・01甲板の2層分を確保してDSRVの格納庫が設置されている。先行してDSRVを運用していたアメリカ海軍のピジョン級支援母艦では、必要に応じてDSRVを搭載して運用する方式であったことから恒常的な搭載設備は設けられておらず、これは当時世界的にも珍しい装備であった。この格納庫を設けるためもあって、艦橋構造物は4層構造の巨大な箱型構造物となっており、本艦の外見上の大きな特徴となっている。前部上部構造物では、03甲板は前方が艦橋とされており、両端にはウィングが設けられている。また同レベルには戦闘指揮所(CIC)やレーダー室も設けられている。01・02甲板は居住区画となっている。また、後部上部構造物は潜水艦乗員用の休養・宿泊施設となっている。その上方の01甲板は、艦幅いっぱいのヘリコプター甲板とされており、HSS-2ヘリコプターの発着が可能である。煙突背面に発着管制室および水平灯も装備されている[1]

機関[編集]

センター・ウエル後方、煙突の下には、第3甲板と船倉甲板の2層分の高さで機関室がもうけられている。主機関としては、三井造船の8L42M型直列8気筒4サイクル中速ディーゼルエンジンが2基搭載されて、それぞれ両舷の推進器に直結されてこれを駆動している[2]。また、人員輸送カプセル(PTC)の運用時をはじめとして、救難活動中には艦の位置を厳密に保たなければいけない状況が想定されることから、本艦では主推進器を可変ピッチ・プロペラとするとともに艦の前後に2基ずつのサイドスラスターを装備しているが、これは主機関とともに、自動艦位保持装置(Dynamic Positioning System, DPS)のサブシステムを構成している。DPSは三井造船が開発したもので、主推進器とサイドスラスターから成る推進動力部、これに対し指令する制御装置およびこれに定点保持制御のための情報を提供するセンサー部から構成されている。3次元ソナーや電波測位装置、ジャイロなどのセンサーによって、風や波・潮によって時々刻々と変化する艦位を検出すると、その情報をもとに、艦位を保持するためにはどのように操艦すればよいかを制御装置が自動で算出して調整することで、常に艦位を一定に保持することができる。なお、DPSの運用や遭難潜水艦の捜索等の必要上、本艦は水中放射雑音の低減に特に意を払っており、主機関・補機類については防振支持化するとともに、主機台にハルダンパーを貼り付け、機械室に防音材を取り付けている[1]

能力[編集]

潜水艦救難艦機能[編集]

うずしお型潜水艦など新型艦の登場による潜水艦の性能向上、とくに潜航深度の増大に対しては、従来の潜水艦救難艦で採用されてきたレスキュー・チャンバーによる救難システムでは対応できなくなってきていた。このことから本艦では、深海救難艇(DSRV)を中核とした新しい救難システムを構築している[3]

上記の通り、前部上部構造物内にDSRV格納庫が設けられており、ここにDSRV 1隻を搭載する。その運用のため、大型のクレーン・プラットフォームとトロリーから構成されるDSRV揚降装置が装備されている。クレーン・プラットフォーム上には、DSRV吊索用のものが4本、PTC吊索用のものが1本の計5本のラムテンショナーが突出している。このラムテンショナーは、DSRV揚降時に海面動揺などのためにDSRVが艦との相対運動を行った場合、吊索に生じる張力変動を吸収することで、DSRVの動揺を軽減するためのものである。トロリーはクレーン・プラットフォーム下部のクレーン・ガーダー上に上架されており、また横方向に両側舷外にも移動可能である。これにより、センター・ウエルに進入している余裕がなく、舷側に緊急浮上したDSRVの回収も可能となっている。なおDSRV揚降装置はPTCの揚降にも用いられる[1]

本艦搭載のDSRVは排水量40トン、全長12.4メートルで、乗員2名と救助人員12名を収容できる。通常、DSRVは格納庫内第1甲板レベルにおいて、発着架台(Cradle dolly)上に搭載されている。発進時は、まず格納庫後方のセンター・ウエル上部に固定された昇降台の上に発着架台とDSRVを移動させ、昇降台と発着架台を結合させる。続いてクレーン・プラットフォームから吊り下げられた吊索を発着架台のロープガイドに取り付け、この吊索によって吊下することで、DSRVおよび発着架台をセンター・ウエルから水中に降下させる。揚収時はこれと逆になるため、まず昇降台と発着架台を水中に吊り降ろして、ここにDSRVが着座する。この際のDSRVの誘導がもっともむずかしいため、発着架台には点滅灯などの誘導機器が取り付けられている[1]

また、救難用のもうひとつの新装備として、深海潜水装置(DDS)も搭載されている。これは、遭難潜水艦へのDSRVメイティングの支援などのために飽和潜水で潜水士を進出させることを想定したものであるが、また同時に、遭難潜水艦が浸水して、乗員が高圧に曝露されていた場合、飽和潜水の技法を用いた減圧を行ったり、減圧症の治療を行うためでもある。本艦のDDSは、センター・ウエル両舷の第2甲板に1基ずつ設置された艦上減圧室(Deck Decompression Chamber, DDC)と、人員輸送カプセル(Personnel Transfer Capsule, PTC)1基によって構成されている。DDCは、水深300メートルまでの圧力環境を再現でき、定員6名で最大20日間の連続使用が可能である。またPTCは、大気圧潜水で300メートル、ロックアウト潜水で350メートルの深度まで作業可能とされている[4]

潜水母艦機能[編集]

潜水艦1隻分80名分の宿泊施設、ミサイル魚雷、糧食、燃料、真水の補給物資、潜水艦への給電と充電を可能とする[4]

艦歴[編集]

「ちよだ」は、中期業務見積もりに基づく昭和56年度計画潜水艦救難母艦1111号艦として、三井造船玉野事業所で建造され、1983年1月19日起工、1983年12月7日進水、1985年3月27日に就役の後に第2潜水隊群直轄艦とされた。

就役後、平成26年3月末時点で30年近くが経過していることから、平成26年度概算予算要求において、後継艦としてDSRVを搭載する26年度潜水艦救難艦ASR(5,600トン型)の取得が表明されている[5]

歴代艦長(1等海佐)
氏名 在任期間 前職 後職 備考
末松勝弥 2008.8.1 - 2010.6.30 潜水艦教育訓練隊副長 対馬防備隊司令
廣野成夫 2010.7.1 - 2012.12.19 対馬防備隊司令 佐世保警備隊司令
一色靖 2012.12.20 - 海上幕僚監部防衛部防衛課 就任時は2等海佐、2013年7月1日付で1等海佐

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e 「新造潜水艦救難母艦「ちよだ」のすべて」、『世界の艦船』第351号、海人社、1985年6月、 142-149頁。
  2. ^ 阿部安雄「2.機関 (自衛艦の技術的特徴)」、『世界の艦船』第630号、海人社、2004年8月、 238-245頁、 NAID 40006330308
  3. ^ 「海上自衛隊全艦艇史」、『世界の艦船』第630号、海人社、2004年8月、 153頁、 NAID 40006330308
  4. ^ a b 「海上自衛隊潜水艦史」、『世界の艦船』第665号、海人社、2006年10月、 1-140頁、 NAID 40007466930
  5. ^ 平成26年度概算要求の概要 - 防衛省

外部リンク[編集]