ゴジラvsキングギドラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『ゴジラvsキングギドラ』(ゴジラたいキングギドラ、または、ゴジラ ブイエス キングギドラ)は1991年に公開された日本映画で、ゴジラシリーズの第18作である。東宝創立60周年記念作品でもある。1991年12月14日公開。観客動員数は270万人。キャッチコピーは「世紀末、最大の戦いが始まった」、「お前だけには絶対負けない!」。
目次 |
[編集] 作品の特徴
昭和ゴジラシリーズの人気怪獣であるキングギドラと1972年公開のシリーズ第12作『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』以来19年ぶりの対決。もともとは宇宙から来た怪獣という設定だったキングギドラだが、この映画ではドラットという未来のペット3体が放射能によって合体、巨大化して生まれた怪獣として登場する。そのため、宇宙怪獣ではない。キングギドラは本作で初めて映画のタイトルに名前が載った(改題再上映版を除く)。ゴジラはこの作品中で、前作の体長80メートルから100メートルに巨大化した。
登場する怪獣はゴジラ、キングギドラ、メカキングギドラ。主要襲撃地点はラゴス島、福岡、札幌、広島、瀬戸大橋、東京(新宿)。特に新宿では、当時完成したばかりの東京都庁を舞台にバトルを展開(そして破壊)、大きな話題となった。
『メカゴジラの逆襲』以来16年ぶりにゴジラシリーズの音楽を伊福部昭が担当し、ゴジラのテーマ曲が前面に押し出された。例外的に、戦闘機がキングギドラを迎撃するシーンで、前作の『ゴジラvsビオランテ』同様にアルバム『OSTINATO』から「ラドン追撃せよ」が流用されたが、これは監督の意図が自衛隊主体のシーンだったのに対して伊福部がギドラをモチーフに作曲したため、新たに作曲し直す時間がなかったことによる措置。
物語は、タイムトラベルをして過去に行きゴジラ誕生の歴史を変えようとするなど、ゴジラシリーズの中でも意外性に満ちている。また、ゴジラが放射能を浴びて怪獣になる前の「ゴジラザウルス」という恐竜も登場、ゴジラ誕生の秘密が明らかになっている。
特にこの作品は東宝特撮で初めてタイムトラベルがストーリーの鍵となっている事が最大の特色であるが、タイムパラドックスに矛盾が多く、その点において批判もある。後々このタイムトラベルストーリーは、大ヒット映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの影響だと関係者は語っている。
そしてこの作品は、物語自体のスピード感(大森監督曰く『10分に1回の驚きを盛り込んだ』としている)によって多くの観客に矛盾を考えさせなかった。よくある「劇場を出てから気づいた」という具合である。それはスタッフの狙いであり、その点は狙い通りであったといえる。
なお、この作品ではゴジラが涙ぐむような表情をするシーンが登場する。ゴジラの涙は、シリーズを通しても今作と「ゴジラvsデストロイア」でゴジラジュニアが死亡した時しか存在しない。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] ストーリー
1992年、突如東京上空に巨大なUFOが飛来した。後日、富士山麓に着陸したUFOからメッセージが届き、中からウィルソン、グレンチコ、エミーと名乗る3人の人物が姿を現す。彼らの言い分によると、自分達は23世紀の地球連邦政府の者であり、21世紀に復活したゴジラによって、世界が壊滅的打撃を被る前にゴジラを抹殺する目的でやって来たのだという。
彼らはノンフィクションライターである寺沢健一郎が著書『ゴジラ誕生』の中で記した、「ラゴス島という島に生息していた恐竜が、1954年にビキニ環礁で行われた核実験によりゴジラへと変異した」という仮説に基づき、そこから恐竜を別の場所に移動させてゴジラを誕生させないようにするという計画を立てた。
未来人のエミー、アンドロイドのM-11と共に寺沢、三枝未希、大学教授の真崎らも1945年のラゴス島へと赴き、戦時中の日本海軍ラゴス島守備隊(後に一大企業を立ち上げる新堂靖明が指揮)をアメリカ軍から救った1頭の恐竜(ゴジラザウルス)を目撃する。恐竜は未来人達の手によって、ベーリング海へと転送される。これでもうゴジラが誕生することはないと考えられた。
しかし、寺沢達が1992年に戻って来ると、ゴジラの消滅と同時に太平洋にキングギドラが出現したと聞かされる。その裏には未来人の陰謀があった。
この危機に日本は、かつてゴジラに助けられた新堂を中心として、ゴジラを復活させるべく原子力潜水艦をゴジラザウルスが転送されたベーリング海へと派遣した。しかし、既にゴジラザウルスは原子力事故によりゴジラとなっており、原潜の破壊によりゴジラは以前より更に強力な怪獣へと変化を遂げていたのだった……。
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
- エミー·カノー:中川安奈
- 寺沢健一郎:豊原功補
- 三枝未希:小高恵美
- TVディレクター:時任三郎
- 森村千晶:原田貴和子
- 土橋竜三:小林昭二
- 池畑益吉:上田耕一
- 真崎洋典:佐々木勝彦
- ウィルソン:チャック・ウィルソン
- 藤尾猛彦:西岡徳馬
- 林田首相:山村聰
- 新堂靖明:土屋嘉男
- ゴジラ:薩摩剣八郎
- キングギドラ:破李拳竜
[編集] 本作におけるタイムパラドックス
本作は歴史改変を扱っているが、矛盾点が多く、SFファンなどから批判される。トンデモ本で著名なSF作家の山本弘は、この作品を「タイムトラベルの約束事が理解できていない人間が書いた脚本」と言及している。
本作は前作『ゴジラvsビオランテ』の直接の続編であり、日本海で沈黙していたゴジラは、1984年に大黒島の地下から出現した、いわゆる三代目ゴジラである筈である。 劇中の歴史改変作業とは、ビキニ水爆実験の影響でゴジラ化する運命にあったラゴス島に生息するゴジラザウルスを水爆実験以前に別の場所へテレポーテーションさせる事で、ゴジラザウルスのゴジラ化を阻止すると言うものであった(結局は失敗に終わるのだが)。
劇中「日本海のゴジラが消滅した」と言及されることから、このゴジラザウルスは三代目ゴジラと同一の個体(であり更に、身長100mのいわゆる四代目ゴジラとも同一の個体)であると考えられる。 しかし三代目ゴジラであるならば、何故1984年に大黒島の地下から出現するのかが不可解である。ゴジラザウルスは前述の通りラゴス島に生息していた恐竜であり、ラゴス島で被爆・ゴジラ化する筈である。 だが三代目ゴジラは大黒島から出現する。と言うことは「ゴジラザウルスは1954年に南洋のラゴス島で被爆・怪獣化した後、何故か太平洋を横断し、大黒島の地下に潜って、マグマの中で1984年まで沈黙し続けた。」と言うあまりに不自然な解釈がなりたってしまう。 このゴジラザウルスが初代ゴジラであると考えれば、時系列的には符号するのだが、それでは1954年のゴジラ襲撃事件が歴史から抹消されるだけで、日本海で沈黙していた三代目ゴジラが消滅しない。
ただ以上の矛盾点は初代ゴジラと三代目ゴジラは別の個体であると考えた場合である。1984年版『ゴジラ』及び『ゴジラVSビオランテ』では初代ゴジラの生死が必ずしも明確には描写されていない事から、このゴジラは同一個体であると考える事も可能である(しかし矛盾が解消される訳でもない)。
他に、「三代目ゴジラは初代ゴジラの子供である」と仮定すれば、親である初代ゴジラの消滅に伴い、三代目も誕生しないことになり、上記の矛盾は解消される(あくまで推測に過ぎないが)。
また別の矛盾点としては、、ゴジラ誕生の事実を過去にさかのぼって無かった事にしたにもかかわらず、何故かみんなゴジラの存在や、それに伴う数々の出来事を覚えている点なども挙げられるが、こういう「歴史を変えたのに記憶が残っている」と言うものは歴史改変を扱った作品では比較的見られるものであり、この作品に限った事でもない。 また、この矛盾がないとこの物語自体が成り立たない――つまり消えた歴史を人々が忘れたら日本政府の服従も脅迫も出来ない――という事実もあり、この観点から言えば、この矛盾点は、ストーリーの整合性を取る為に必要な矛盾であるとも言える。 川北紘一特技監督が「細かい矛盾を勢いで進める映画だと思った」とコメントしているように、製作スタッフは分かってやっていたのである。富山プロデューサーも未来の人間が時を越えてバブル期の日本を侵略しに来るというプロットの面白さを優先したのである。
[編集] 余談
- DVDの大森一樹のコメントによれば、23世紀の日本の増長や一企業の原子力潜水艦の所有などは、当時バブル経済真っ只中の日本がどこまで肥大化するかわからないことに対する不安と警鐘の意味合いがあったという。
- 避難する住民のシーンに、一部過去の作品の映像が流用されている(『ゴジラvsビオランテ』での大阪のシーンの一部が福岡のシーンに組み込まれたり、1984年公開の『ゴジラ』での新宿のシーンの一部が札幌のシーンに組み込まれていた)。
- キングギドラが破壊した中京の石油コンビナートは元々、ゴジラが上陸して壊す予定の東京湾のコンビナートのセットだったらしく途中で変更したとみられる。
- 予算の都合でビルが爆散するシーンの一部は石膏板に引き伸ばしたビルの写真を貼ったものを爆破しているが、件のキングギドラの引力光線のカットは映画のヒット後に新たに作られたテレビの宣伝でもオンエアされるほど出来が良く、言われなければわからない程である。
- この映画に関しては、予想以上のヒットであったらしく、公開後にも新たな宣伝が行われ、前述のテレビのキングギドラの都市破壊シーンをメインにしたCMの他に新聞に掲載された、寺沢とエミーが銃を構える、怪獣映画には珍しい人間がメインのSF映画風の広告(モノクロ)も作られた。
- 三角形が特徴の新宿住友ビルディングのミニチュアが西新宿のセット内に存在していない。
- 巨大企業帝洋コンツェルンが極秘所有していた原子力潜水艦「むさし2号」は当初製作される予定だったが、こちらも予算の都合により、1984年公開の『ゴジラ』で使用されたソ連原子力潜水艦を若干修正し再利用された。
- 写真ポスターのゴジラとキングギドラの瞳は色が暗かったので書き加えられている。元々はゴジラの生物感を出す為に前作から引き続いて、白目が分かりにくくなっていたが、それがきっかけとなり次作以降のゴジラは虹彩が明るく、瞳が分かりやすい様に造形されるようになった。
- 本作が現在の航空自衛隊主力戦闘機F-15Jのゴジラ映画デビューとなる(前作『ゴジラvsビオランテ』にも登場はしたが、ヨウ化銀を撒いて人工雨を降らせるのみだった)。また前年に航空自衛隊が舞台の映画『BEST GUY』が公開されたため、中盤の要撃シーンの実写部分には同作のフィルムが一部流用された。
- 当初の設定では、水爆実験の影響によりゴジラとなる恐竜はゴジラザウルスでは無く、ティラノサウルスであった。
- 映画公開前にゴジラの撮影用着ぐるみが盗まれる事件が起きた(幸い撮影はその時点で完了していたので映画に影響は出なかった)。
- カンザス大学歴史学部准教授であるウィリアム・M・ツツイの著書『ゴジラとアメリカの半世紀』よると、本作のアメリカでの劇場公開時、ラゴス島の米軍描写について退役軍人団体からクレームがついたという。
|
|||||||||||||||||||||||

