ノストラダムスの大予言 (映画)

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ノストラダムスの大予言
Catastrophe 1999
監督 舛田利雄
脚本 八住利雄
原作 五島勉
製作 田中友幸
田中収
出演者 丹波哲郎
黒沢年男
司葉子
由美かおる
以下、後述
音楽 冨田勲
撮影 西垣六郎
鷲尾馨
配給 東宝
公開 日本の旗 1974年8月3日
上映時間 114分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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ノストラダムスの大予言』(ノストラダムスのだいよげん)は、1974年8月3日に公開された東宝製作の特撮映画。副題は『Catastrophie 1999』[注 1]。『ルパン三世 念力珍作戦』と同時上映された。1974年の邦画部門の興行収入第2位。文部省(当時)の推薦映画でもあった。

あらすじ[編集]

環境学者である西山玄学は、企業や企業の肩を持つ警察の圧力に屈することなく公害の実態調査をする一方、代々家に伝わる『諸世紀』の研究をしていた。そんな或る日、娘・まり子の恋人の中川が帰国。まり子と中川の前で、父の西山玄学は「今の時代、先がどうなるかわからない。結婚しても子供は作るな」と残酷な忠告をした。数日後、夢の島で何らかの有害物が原因で巨大化したナメクジが大発生する。日本各地では奇形児が増加する一方で、亜鉛鉱山周辺では特定の能力が異常に発達した子供が現れる。中川の実家がある漁村が赤潮で全滅した夜、中川とまり子は互いに惹かれ、ついに船の上で結ばれる。

西山は、人類の行き過ぎた開発が人類を滅亡させるとして、必要以上の生産を止めるよう提言するが、人々の興味は生活の向上や生産の増加に向いており、逆に「ヒューマニズムの崩壊」と批判される始末。国際会議も、発展途上国の人口増加が環境破壊に拍車をかけていると主張する先進国と、先進国の資源浪費が環境破壊の原因だと反論する発展途上国が対立して紛糾する。そんな中、太平洋上の海面が凍りつき、エジプトで雪が降るなどの異常気象が発生。さらに、成層圏に滞留した放射能ニューギニアに降り注いだとの知らせが届き、国際合同調査隊が派遣されることになった。西山の研究所からも2人の部下が派遣される。しかし合同調査隊は行方不明になり、西山や中川らによる第2次合同調査隊が派遣された。そこで彼らが目の当たりにしたのは、放射能によって巨大化した動植物や、食人鬼となり襲いかかる原住民、そして洞窟の奥で生きる屍と化した第1次調査隊隊員の姿であった。彼らに拳銃を向ける外国人隊員を制止する玄学だが、「こうするほかに何ができますか?」と反論された玄学も、自ら自分の部下を射殺するしかなかった。

その頃、SST事故によるオゾン層の破壊で日本列島に超紫外線が降り注ぎ、山火事やコンビナートの炎上が続発。さらに、異常気象は世界各地に拡大し、各国の穀倉地帯は軒並み全滅。暴騰する食料価格や大災害で人心は荒廃し、食料目当ての暴動や若者の退廃が進行。ついにそれによる二次災害までが発生し、東京の空はオゾン層の歪みで巨大な鏡と化した。大災害が頻発する中、西山の妻・伸枝は病に倒れ、玄学の腕に抱かれながら息を引き取る。その一方で、まり子の体には新しい命が宿っていた。

度重なる天変地異に、西山は国会で様々な人類滅亡のパターンを警告し地球の危機を力説、破滅への展望を展開していく。その凄惨な内容に衝撃を受けた内閣総理大臣は、政治家として大きな決断を迫られた。

解説[編集]

前年の『日本沈没』の大ヒットを受けて東宝が製作したパニック映画の第二弾。1973年11月に発売されて大ベストセラーとなっていた五島勉の著書『ノストラダムスの大予言』を原作としているが、フィクション脚本による娯楽性の高い作品となっている。映画のプロットを練る際の科学考証の過程で、アドバイザーの1人であった農林省食品総合室長(当時)の西丸震哉の影響を色濃く受けた。西丸は五島との対談形式の著書『実説大予言』(祥伝社)を映画の公開直前に出版しているが、ここに表れた西丸の極度に悲観的な環境観・食糧観は、映画の基本的なモチーフと一致している[1]

当時のパニック映画と同様に、派手な爆発シーンや地震のシーンが新たに撮影されている。特に赤潮のシーンでは、東宝特撮伝統の寒天で海を表現する技法が用いられており[注 2]、核弾頭発射シーンでは石膏製のサイロ扉に重りを封入することで重量感を増すといった工夫がなされている。超紫外線が降り注ぎ山林が一気に枯死していくシーンでは、杉の芽を植えた山のセットに希硫酸を降りかけることで表現されたが、スタッフの予想よりも茶色くなるのに時間がかかり、中野昭慶は「改めて自然の強靭さを知らされた」と語っている[2]。一方で、本作のクライマックスの核戦争や大地震のシーンは新撮もされているが、映像の一部は前年の『日本沈没』や『世界大戦争』からの流用である。

製作者側の「環境問題への真剣な警告という側面を強く打ち出す」というテーマも、その描写の方法などからSF映画としての評価は芳しいものとはいえず、特撮作品としても特撮シーンは少ない。

本作の続編として、『ノストラダムスの大予言II 恐怖の大魔王(仮題)』の企画が進められた[3]。原作者の五島勉を主人公に、五島の講演中に1999年7月にタイムスリップした講演会の参加者達が、「恐怖の大魔王」降臨を目の当たりにする様を描くもので、プロデューサーの田中友幸による企画書やポスターの原案が現存するが、後述する事情なども関連してか、制作には至っていない。

撮影事故[編集]

劇中の「オゾン層破壊による超紫外線の影響で山火事が発生する」という特撮場面を、世田谷区の東宝撮影所第7スタジオにて撮影中、ライトを強く照射し過ぎ、高温の為ミニチュアセットが発火し、火災が発生[注 3]成城消防署などから36台もの消防車が駆けつけたが、火の回りが早く、第7スタジオは全焼してしまった。けが人などは出なかった。これ以降撮影所は第4スタジオを廃し、番号を一つずつシフトして使用された。

焼失後の第7スタジオを用いて本編の撮影が行われ、焼け跡に雨が降るシーンに利用された。

本編修正およびビデオソフト未発売についての経緯[編集]

劇中、成層圏放射能が一気に降下したためにニューギニアの原住民が被曝食人鬼化して探検隊に襲いかかるシーンや、近代文明が核戦争で滅亡した後に放射能で異形の姿となった新人類のデザイン(井口昭彦による)が、実際の原爆症による奇形をデフォルメしたものではないかとして反倫理的・差別的であると取り沙汰され、1974年11月には大阪の被爆者団体「大阪府原爆被害者団体協議会」と反核団体「原水爆禁止全面軍縮大阪府協議会」(現・大阪平和人権センター)が東宝関西支社に抗議して上映の中止を求めた。それを受け、同年12月にそれらの描写の一部(約1分45秒)をカットした修正版フィルムと差し替える措置がとられたが、公開自体は続けられ、当時の邦画興行収入の2位を記録した。

その後、1980年11月3日に修正版(しかし食人シーンはそのまま)がテレビ朝日系の「ホリデースペシャル」で19時から20時51分の時間帯にテレビ放送され、1986年春には2ヶ所のカットを行ったビデオLDの発売予告が東宝からなされたものの、社内の要請により中止となる(ちなみに86年3月1日にビデオが12800円、LDが、4月21日には9500円で発売予定していた)。1996年サウンドトラックCDバップから発売されたが、本編に関わるソフトは、1995年にアメリカでパラマウント・ホームビデオから発売された英語吹き替え版のビデオとLD(こちらは食人シーンはカットされたが、新人類のシーンはごく一部のカットのみで収録)以外は発売されないままだった。

1996年7月13日に日本テレビ系列で放送された『ガメラ2 レギオン襲来』の宣伝番組『ガメラ2スペシャル 日本超大作SFX映画博覧会』にて過去の特撮映画の紹介が行われ、本作も巨大ナメクジを退治しているシーンと核戦争後の地球のシーンが放送されている(本作の映像がテレビで流れたのはこのときが最後であると思われる)。

1998年8月に『獣人雪男』と同じく劇中の音声を録音したドラマCDが東宝の協力を得たとするメーカー(グリフォン)より発売され、翌年には「株式会社セプト」というメーカーから再発売された。なお、1998年の発売後には完全ノーカット版の海賊版ビデオが出回っており、グリフォンとの関係が指摘されているが、グリフォンの代表者の詳細な素性が不明なこともあってはっきりしたことは分からない(この辺りの事情に関しては安藤健二『封印作品の謎』に詳しい)。また、このドラマCD発売・海賊版ビデオ流出以前には、本作を出版物で扱うことは特に問題が無かったようだが、これ以後には出版物での扱いもできなくなり、増刷時に本作の紹介がカットされた書籍もある。

なお、1980年代に発売された東宝特撮映画の予告編集ビデオ「特撮グラフティー4」に収録されている予告編が国内での唯一の正規メディア化商品となっている。

一方、海外では"Last Days of Planet Earth" または "Catastrophie 1999" というタイトルで公開され、ビデオソフトやLD、DVDなどが発売されており、比較的容易に入手可能である。また流用されたシーンも多く、『惑星大戦争』、『ゴジラ』などに本作のシーンが流用されている[注 4]

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

※以下ノンクレジット出演者

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ これは海外公開時のタイトルにもなった。
  2. ^ 通常なら青く着色するところを食紅で着色している。
  3. ^ 『東宝特撮映画大全集』(ヴィレッジブックス)での川北紘一の回想では、森林火災のシーン撮影のためミニチュアに着火したところ発泡スチロールに燃え移り、一度はスタッフの手で鎮火させたように見えたが翌日再炎上したと述べている。
  4. ^ 首都高速・原発・コンビナートの炎上シーンや核弾頭発射シーン。

参考文献[編集]

  1. ^ 安藤健二『封印作品の謎』太田出版 ISBN 4872338871 pp.108-156
  2. ^ 東宝株式会社出版事業室 編『東宝特撮映画全史』東宝 1983年 ISBN 9784924609006
  3. ^ 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス2012年、176 - 179頁。ISBN 9784864910132 

外部リンク[編集]