フルート

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フルート
各言語での名称
flute
Flöte
(特に横笛をさす場合にはQuerflöte)
flûte
(特に横笛をさす場合にはflûte traversière)
flauto
(特に横笛をさす場合にはflauto traverso)
长笛(簡体字) 長笛(繁体字)
分類

木管楽器、フルート属

音域
Range flute.png
コンサート・フルートの音域
関連楽器
演奏者
関連項目

フルート英語: flute)は木管楽器の一種で、リードを使わないエアリード(無簧)式の横笛である[1][2]

概要[編集]

今日一般にフルートというと、銀色または金色の金属製の筒に複雑なキー装置を備えた横笛、つまりコンサート・フルートを指すが、古くは広く一般を指していた。特にJ.S.バッハなどバロック音楽の時代にあっては、単にフルートというと、現在一般にリコーダーと呼ばれる縦笛を指し、現在のフルートの直接の前身楽器である横笛は、「トラヴェルソ(横向きの)」という修飾語を付けて「フラウト・トラヴェルソ」と呼ばれていた。かつてはもっぱら木で作られていたが、後に出現した金属製が現在では主流となっている。しかし、フルートは唇の振動を用いないエアリード式の楽器なので、金属でできていても木管楽器に分類される[1]

現代のフルート(モダン・フルート)は、同属楽器と区別する場合、グランド・フルートまたはコンサート・フルートとも呼ばれ、通常C管である。19世紀半ばに、ドイツ人フルート奏者で楽器製作者でもあったテオバルト・ベームにより音響学の理論に基づいて大幅に改良され、正確な半音階と大きな音量、精密な貴金属の管体、優美な外観を持つに至った[3]。このドイツ生まれのフルートは、最初にフランスでその優秀性が認められ[4]、ついには旧式のフルートを世界から駆逐してしまった。今日単にフルートと言った場合は、例外なく「ベーム式フルート」のことである。

フルート(オフセットカバードキーC足部管付き、Eメカニズム付き)

フルートはキーを右側にして構え、下顎と左手の人さし指の付け根、右手の親指で支える(三点支持)。両肩を結ぶ線と平行に持つのではなく、右手を左手より下方、前方に伸ばす。奏者は正面ではなくやや左を向き、右に首をかしげて唇を歌口に当てる。

発音にリードを用いないため、ほかの管楽器よりもタンギングの柔軟性は高い。運動性能も管楽器の中では最も高く、かなり急速な楽句を奏することも可能である。音量は小さい方であるが、高音域は倍音が少なく明瞭で澄んだ音なので、オーケストラの中にあっても埋もれることなく聞こえてくる。フルートの音色の鳴き声を想起させ、楽曲内で鳥の模倣として用いられることも多い。有名でわかりやすい例として、サン=サーンスの組曲『動物の謝肉祭』の「大きな鳥籠」、プロコフィエフの交響的物語『ピーターと狼』などが挙げられる。

フルートは主にクラシック音楽の分野で用いられるが、ジャズロックなど、他の音楽ジャンルで使用されることもある。しかし、ジャズ専門のフルート奏者は少なく、サクソフォーンなどのプレイヤーが持ち替えるか、クラシックとジャズの両方で活動するというケースが多い。

歴史[編集]

古代〜ルネサンス時代[編集]

フルートを吹くニンフ、11-12世紀 インド、カジュラホー考古学博物館蔵

フルートを広義にとらえて「リードを用いず、管に息を吹き付けて発音する楽器」とするならば、最も古いものとしては、およそ4万年前のネアンデルタール人のものと推定されるアナグマ類の足の骨で作られた「」がスロヴェニアの洞窟で発見されている。また、ほぼ同じ頃現生人類によって作られたと推定される、ハゲワシの骨でできた、5つの指穴のあるフルートが、ドイツのホーレ・フェルス洞窟遺跡で発見されている[5]。それほど古いものでなくとも数千年前の骨で作られた笛は各地から出土しており、博物館などに収められている。これらの笛は当時のほかの楽器同様、主に宗教的な儀式に用いられていたと考えられている。しかし、世界各地で用いられていた原始的な笛は、葦などで作られた縦笛か、オカリナのような形状の石笛(いわぶえ)や土笛がほとんどであった。ギリシャ神話の牧神パンが吹いたとされるパンパイプ(パンフルート)も縦笛である。

一方、現在我々が使用しているフルートにつながる横向きに構える方式の笛が、いつどこで最初に用いられたのかははっきりしていないが、一説には、紀元前9世紀あるいはそれ以前の中央アジアに発祥したといわれており、これがシルクロードを通ってインド中国に伝わり、さらに日本やヨーロッパにも伝えられていったと考えられている[4]。奈良・正倉院[6]の宝物の中に横笛があるので、奈良時代までに日本にも伝わっていたことは明らかである。

コンソート(1520年頃、作者不詳)

西洋でも13世紀になると、フランスに「フラウスト・トラヴェルセーヌ(フランス語: flauste traversaine;「横向きの笛」の意)」といった名称が散見されるようになる[7]が、ルネサンス期に入ってもなお、ヨーロッパでは横笛はあまり一般的な楽器ではなく、軍楽隊や旅芸人などが演奏するだけのものであった。しかし、16世紀に入る頃から、市民の間で行われるコンソートと呼ばれる合奏の中で、横笛も次第に使われるようになった。左図はオーストリアのローラウ城ハラッハ伯爵家所蔵の絵画で、フルートとリュート歌唱によるブロークン・コンソートの様子が描かれている。この絵のフルートはテナーであるが、他にもソプラノバスといった種類があり、当時のものがわずかな数ながらイタリアヴェローナなどに残っている。

ルネサンス・フルート(テナー、復元楽器)

木製の管で内面は円筒形、外面は歌口側がやや太い円錐形、トーンホールが6つ、キーはなく、分割できないものが多い。軽快によく鳴るが、音域によって音量や音色がかなり変化する[4]。現在では、このようなフルートを「ルネサンス・フルート」と呼んでおり、古楽器として今も復元楽器が製作されている。

バロック時代[編集]

18世紀半ばごろまでのバロック時代、単に「フルート」といえば縦笛(リコーダー)を指しており、現在のフルートの原型となった横笛は「フラウト・トラヴェルソイタリア語: flauto traverso;同じく「横向きの笛」の意)」と呼ばれて区別されていた[8]。省略して、単に「トラヴェルソ」ともいい、「バロック・フルート」と呼ばれることもある。

バロック・フルート(4分割型、復元楽器)

典型的なバロック・フルートの多くは木製で、3分割または 4分割のものが多い。管の中は頭部管から足部管に向かって次第に細くなる円錐形になっている。トーンホールは 7つあり、上流側の 6つは指で直接ふさぐ。最下流の 1つは指が届かないので、右手小指で押すと穴が開くシーソー形のキーが付いており、この形態から「1キーフルート」とも呼ばれている[9]アムステルダムの木管楽器製作家リチャード・ハッカ(1645年 - 1705年)の作った3分割フルートが、現存する最古のバロック・フルートであるといわれているが、いつ頃誰によって最初に考え出されたのか、確かなことはわかっていない[4]

最低音はD4、最高音はE6までというものが一般的であるが、B6までの運指が知られており[9]、A6あたりまでは出しやすい楽器もある。いわゆるD管であるにもかかわらず、楽譜は実音で記譜されたため移調楽器ではない。長調について考えると、D-dur(ニ長調)、G-dur(ト長調)、A-dur(イ長調)は比較的大きな音量で演奏できるが、それ以外の調ではクロスフィンガリングによって出す弱々しく不安定な半音が多くなるため、演奏は容易ではない。

ルネサンス・フルートに比べて音量は小さく、全体にややこもった暗い感じの音ではあるが、低音域から高音域まで音色の統一感が向上しており、繊細で豊かな表現が可能であることから、今日なお復元楽器が多数製作されている。

古典派〜ロマン派初期[編集]

18世紀半ばから19世紀前半にあたる古典派の時代になると、より多くの調に対応できるよう、不安定な半音や高音域の出しにくさなどを改善するために、新たなトーンホールを設けて、これを開閉するキーメカニズムを付け加えたり、管内径を細めるなどの改変が行われた。これらの楽器もフラウト・トラヴェルソに含まれるが、バロック時代の「バロック・フルート」と区別して、「クラシカル・フルート」「ロマンチック・フルート」と呼ぶこともある。

この頃一般的に使われていたのは6キーあるいは8キーのものであるが、最高では17ものキーがついた楽器があったといわれ、音は明るさや軽やかさを増した。管体はバロック時代と変わらず円錐形で木製のものが多く、最高音はA6あたりであるが、中にはC7付近まで出る楽器もある。

しかし、これらは当時の楽器製作者たちが、それぞれの考えに基づいて改良していったため、操作法が統一されておらず、運指も複雑となって、必ずしも十分な効果が得られたわけではなかった。こうしたフルート乱開発の時代に終止符を打ったのがテオバルト・ベームである。

ベーム式フルートの登場[編集]

1820年ごろから活躍していたイギリス人フルート奏者 C. ニコルソン(Charles Nicholson 1795年 - 1837年)は、その手の大きさと卓越した技術によって通常よりも大きなトーンホールの楽器を演奏していた。ドイツ人フルート奏者で製作者でもあったテオバルト・ベームは、1831年ロンドンでニコルソンの演奏を聴いてその音量の大きさに驚き、自身の楽器の本格的な改良に着手した[3]

1832年に発表されたモデルは以下のようなものである。

  • 半音を出すトーンホールも含めて径を大きくし、大きな音を出すことを可能にした。
  • 運指が変更されることになるのを厭わず、1本の指で複数のトーンホールを操作できるリングキーを採用した(ベーム式メカニズム)。これにより、クロスフィンガリングを用いることなく、全ての半音を出すことができるようになり、均質な響きが得られた。ただし、リングキー自体はベームの発明ではなく、1808年にフレデリック・ノランが開発したものである[4]
  • それまで一般的にはD管だった管体をC管にし、音域を拡大した。
  • Esキーとトリルキーを除く全てのキーを、通常は開いた状態にしておくオープンキーの原則を採用した(Gisオープン式)。これにより通気が改善されて、さらに音量を増す効果が得られた。

このモデルは、Gisオープンの機構を除いてフランスで受け入れられたが、管体はまだ木製で円錐形のままであり、指で直にふさぐトーンホールも残っていた。

ベームはその後も改良を続け、1847年に次のようなモデルを発表した。

  • 円錐形だった管体を円筒形にし、音響学に基づいてトーンホールの位置を決め直した。同時に、高音域のピッチ改善と発音しやすさのため、円筒だった頭部管を略円錐形にした。これにより、円筒管だったルネサンス・フルートのような明るい音が得られた。
  • 管体を木製から金属(銀)製に変更した。これにより、トーンホールをさらに大きくすることができ、割れないよう油を塗布する必要もなくなった。
  • 1832年のモデルで採用したリングキーは廃止し、トーンホールを全てキーで開閉する方式に統一した(いわゆるカバードキー)。これにより、運動性能が向上するとともに、女性など指が細い奏者でも大径のトーンホールを容易かつ確実にふさぐことができるようになった。

このモデルもGisオープン式ではあったが、現在のフルートとほとんど変わらず、極めて完成度の高いものであった。これ以降今日までに加えられた大きな改変は、イタリアのジュリオ・ブリチャルディ(Giulio Briccialdi 1818年 - 1881年)により、フラット(♭)系の調を演奏するのに便利な、いわゆるブリチャルディ・キーが付け加えられたことと、より運指が容易なGisクローズ式が主流となったこと程度である。

今日の一般的なベーム式フルート

今日の最も一般的な C足部管付きベーム式フルートにはトーンホールが 16個あり、キーは数え方によるが、指が直接触れるものだけを数えると 15個である。これらが右手親指を除く9本の指で操作できるようになっている。後述のように、ベーム式フルートでもなお鳴りにくい音はあるが、ほとんどの音は良い音程で確実に鳴る。

ベーム式フルートは、最初にフランスでその優秀性が認められ、次いでイギリスでも使われるようになったが、発祥の地であるドイツでは20世紀に入るまで受け入れられなかった。ドイツの人達はこの新しい楽器を「全音域にわたって単調過ぎるほど均質で、高音域では特に甲高い」とみなしたのである。さらに、この頃のドイツ音楽界に大きな影響力を持っていたワーグナーが、ベーム式フルートの音色を嫌ったことも、ドイツでの普及を妨げた大きな要因といわれている[4][8]

ロマン派中期以降[編集]

ベームが1847年に発表したフルートはカバードキーであったが、フランスの楽器製作者であるヴァンサン・イポリト・ゴッドフロワやルイ・ロットらの手によって、リングキーのいわゆるフレンチスタイルのフルートが生み出された。さらに、Gisオープン式からGisクローズ式に変更されるなど細部にわたる改良を経て、モダン・フルートはほぼ完成の域に達した。1860年パリ音楽院教授となったルイ・ドリュによって公式楽器に認定[4]されると、アンリー・アルテ、ポール・タファネル、フィリップ・ゴーベールマルセル・モイーズらフルート科教授によってその奏法の発展と確立がなされ、ドビュッシーフォーレをはじめとする作曲家たちが多くの楽曲を書いた。それまでは装飾的・限定的に使われていたビブラートも積極的に採り入れた演奏様式を確立してフランス楽派と呼ばれ、フランスは一躍フルート先進国となったのである。アルテの著した教則本は、今なお最も有名なモダン・フルートの入門書である。

メイヤー式フルート(10キー)

一方、ドイツやオーストリアでは、大径のトーンホールから出る倍音を多く含む音色を好ましく思わないながらも、ベーム式キーメカニズムの長所は認めざるを得ず、20世紀に入る頃には管体は木製だがメカニズムはベーム式という折衷型の楽器が用いられるようになった。しかし、トーンホールの径を大きくして音量を増すなどの改良が加えられた多キーのメイヤー式フルートも、フランスを除くヨーロッパやアメリカでは、1930年代まで使われていた[4]

近現代[編集]

ベーム式フルートも、改良の余地がないほど完璧なものではないので、その後もフルートの改良はさまざまな形で試みられ、中には商品化に至ったものもある[8]が、ベームの基本設計を凌駕するほどのものは今日に至るも現れていない。ベーム式フルートはその地位を確固たるものとし、フレンチスタイルの登場以降は構造面に特段の変化はないが、奏法の面で大きな発展が見られる。

第二次世界大戦後、レコードの普及や放送技術の発展とともに、ランパルがソリストとして活躍し、フルートの魅力を世界中に示すこととなった。またモイーズが、教育者としてカリスマ的といえるほどの影響力を長い間保ち続けたこともあって、世界中でフランス風の演奏スタイルが大きく広まっている。前述の通り、ドビュッシーはフルートにおけるレパートリー拡張の第一人者であるが、中でも独奏曲『シランクス』はフルート独奏のための曲として歴史上重要な位置を占めている。これ以降において、初めてフルートの演奏法の拡張を試みた音楽は、エドガー・ヴァレーズの『密度21.5』である。キー・パーカッションといって、キーを強く叩きながら吹くことによるアタックの音の変化を求めた特殊奏法を開発し、また超高音域を執拗に求め、演奏における音域の拡張に成功した。ちなみに現在ではビブラートを常にかけるのが一般的であるが、クラシック音楽においては今なおビブラートを乱用しない演奏スタイルも好まれる。

その他戦前における特殊奏法としては、ジャック・イベールフルート協奏曲のカデンツァ、リヒャルト・シュトラウスドミートリイ・ショスタコーヴィチ交響曲第8番などでは、巻き舌によるフラッターツンゲ奏法が試みられた。同じくイベールの協奏曲ではハーモニクス奏法も要求されている。

戦後の現代音楽では、まずフルート奏者のブルーノ・バルトロッチが重音奏法を体系化した教本を出版し、またピエール=イヴ・アルトーやロベルト・ファブリッツィアーニなどその他多くのフルート奏者、またサルヴァトーレ・シャリーノらの作曲家によって息音を含む奏法、ホイッスルトーン、タングラム、リップ・ピッツィカートなど新しい奏法も次々と開発された。これらの噪音的な奏法は現代音楽の多くのレパートリーで採用されることになった。当初は物珍しさからこれらを無反省に取り入れただけのレパートリーも乱発されたが、これら「現代音楽的語法」は今やあまりに一般的なものとなったために、作曲における方法論や構造が堅強な作品でない限りは次第に淘汰されつつある。しかしその中でルチアーノ・ベリオの『セクエンツァI』などの優れた曲は現在も「古典」として多くの奏者によってコンサートや教育現場で取り上げられ、聴衆にも親しまれている。

なお、楽器製作に関しては、フランスは既にその地位をアメリカと日本に明け渡しており、世界市場でのシェアは近年までこの2国がほとんどを占めていた。現在では入門者・学生向けを中心に台湾、中国での製造が増えている。

発音原理と音域[編集]

フルートの発音原理に関しては、大きくわけてふたつの説が存在する[2][10][11]。ひとつ目の説は、唇から出る空気の束(エアビーム)を楽器の吹き込み口の縁に当てることでカルマン渦が発生し、これがエッジトーン(強風のときに電線が鳴るのと同じ現象)を生じて振動源になるというもの。ふたつ目の説は、エアビームの吹き込みによって管の内圧が上昇し、これによってエアビームが押し返されると内圧が低下し、再びエアビームが引き込まれるという反復現象が発生して、これが振動源になるとするものである。このようにして発生した振動に対し、管の内部にある空気の柱(気柱)が共振共鳴)して音が出る。トーンホールを開閉すると、気柱の有効長が変わるので共振周波数が変化し、音高を変えることができる。

コンサート・フルートの基本的な音域はC4(中央ハ)から3オクターヴ上のC7までであるが、H足部管を用いれば最低音がB3となる。チューニングする(他の楽器とピッチを合わせる)際には、オーケストラではA5を、吹奏楽ではB♭5を用いる。低音域は基音であるが、中音域と高音域は倍音を用いて発生させる。なお、音域に関する呼称は厳密なものではなく、例えばC6を中音域とするか高音域とするかは時と場合に依るし、用語の使用者によっても異なることがある。

最低音からB4までの音域は、低音域あるいは第1オクターヴなどと呼ばれる。音量は小さく、特に最低音に近いいくつかの音は明瞭な発音が難しいが、幅広く柔らかい音色を特徴とする。

C5からB5までの音域は、中音域あるいは第2オクターヴなどと呼ばれる。C#5の音はトーンホールが小さいため響きがあまりよくなく、E5からF#5は音が割れやすいなど難しいところもあるが、表情豊かな音色を持ち、音量の制御も比較的容易である。

C6からC7の音域は、高音域あるいは第3オクターヴなどと呼ばれる。後述のようにキーメカニズムの関係でE6やF#6などの音が出しにくい上、用いる倍音モードが音によって変わるため音色を揃えるのが難しく、運指も不規則で覚えにくいが、明るく輝かしい音色で、音量も比較的大きい。

標準的な運指を用いた場合の倍音モードの概略は下記の通りである。例えばC7はC4の第8倍音であるが、息の圧力で第8倍音を出すことは難しいので、実際はCとGisとF以下のトーンホールを開けてやる(Esは閉じた方が良い[12])ことにより、C5の第4倍音かつG#4の第5倍音かつF4の第6倍音として発生させている。第3倍音、第5倍音、第6倍音によって出す音は、多少なりと平均律からのずれが生ずることなどもあって、高音域の音程はあまり良くない。

C4 - C#5:基音(H足部管の場合はB3も含む)
D5 - C#6:第2倍音
D6      :第2倍音、第3倍音
D#6 - B6:第3倍音、第4倍音、第5倍音(音により異なる)
C7      :第4倍音、第5倍音、第6倍音

モダン・フルートは、すべての木管楽器の中で最も論理的に設計されている[10]が、様々な制約から妥協せざるを得ない部分もあるので、特に高音域には上記のように問題が多い。これらを完全に解消することは、設計上どのような工夫を以ってしても不可能であり、最後はアンブシュアの微妙な調節など、奏者の技術に委ねられている[13]

C7より上の音域は、第4オクターヴと呼ばれ、F7までの運指が比較的広く知られているが、高い音ほど発音が難しい。この音域が開発されたのは20世紀に入ってからであり、現代音楽で使用されることがあるが、楽器によって発音の難易度やピッチのばらつきが大きく、運指法も一定していない。発音に非常に速い呼気を要するため音量は必然的に大きくなる。音色は鋭く、空気音の混じったものになりがちである。現在ではG#7の運指までは半音刻みで全て発見されており、さらにB♭7(リングキーのみ)、C8の運指も発見されてはいるが、実際にそのような音を出せる人は稀である。A7、B7の運指はまだ見つかっていない。

なお、フルートでは半音階のみならず、特殊な運指によって微分音を奏することも可能である。さまざまな運指が存在するが、一般的にはカバードキーよりもリングキーの方が容易である。主に現代曲に用いられ、作曲家が運指を指示することもある(例:B・ファーニホウ『ユニティカプセル』、K・アホ『ソロIII』、K・サーリアホ『ラコニズムドゥレル』など)。微分音程システム「キングマシステム」については後述する。

構造[編集]

フルートは全体を三分割して保存・携帯する。歌口(吹き込み口)がある部分を頭部管、一番長い部分を胴部管、一番短い部分を足部管と呼ぶ。頭部管を挿入する長さを変化させることにより全体の音高が変わるため、他の楽器とピッチを合わせる(チューニングする)ことができる。

頭部管[編集]

一般的なモデルの場合、歌口の部分で内径17mm、胴部管と接続する部分で内径19mmの円錐形である。歌口に近い方の端がヘッドスクリューと呼ぶ部品によって塞がれている。管内の歌口に近い位置に反響板(反射板)があり、ヘッドスクリューと連結されている。コンサート・フルートでは反響板の位置は歌口の中央から17mmが適切であり、ここからずれているとピッチに支障がある。このため、フルート用掃除棒には通常、反射板の位置を確認するため一端から17mmの位置に目印が刻んであり、容易に確認・調整ができるようになっている。しかし、近年は頭部管のテーパー、サイズを変化させた楽器を製作するメーカーもあり、その場合の様々な調整はこの限りではない。JRラファンなど、頭部管のみを専門に制作するメーカーも現れている。

歌口は楕円形ないし小判形(角の丸い矩形)であるが、楽器メーカーによって異なっており、フルートの音色・音量・発音性などに大きく影響する。このことから、歌口形状の異なる複数の頭部管を製作しているメーカーもある。振動源として機能させるためにある程度の高さ(約4.5 - 7mm)が必要なので、木製など管そのものに厚さがある場合は管厚を利用し、また金属製の場合にはライザーと呼ばれる短管を介してリッププレートを取り付けて歌口穴を形成する。歌口部分がある程度の外径を持つことは、吹奏にあたって下顎に当てた際の安定性の確保にも役立っている。

ライザーは奏者のエアビームを受け止めるパーツであり、わずかな形状の違いも音色に影響するため、フルート製作においてもっとも熟練が求められると言われている。実際このパーツやリッププレートを本体パイプとは別の材質に変えることで楽器の特性の変化を狙ったものも作られている。

胴部管[編集]

内径19mmの円筒形で、標準的なコンサート・フルートの場合、頭部管に近い位置に比較的小さなトーンホールが3つと、より大きなトーンホールが10個、管体上面および側面にある。トーンホールが指で押さえられないほど大きく、またその数が指よりも多いため、一部が互いに連結されたキーシステムによってトーンホールを開閉する。キーの裏側にはタンポ(パッド)が組み込まれており、トーンホールを閉じた際の気密性を確保している。

C足部管とH足部管[編集]

足部管は胴部管と同じ内径の円筒形で、3つまたは4つのトーンホールを持つ。トーンホールが3つのものはC足部管であり、最低音はC4である。

トーンホールが4つのものがH足部管で、最低音はB3である。英語式にB(ビー)足部管(B foot joint)と呼ぶこともあるが、日本ではドイツ音名により H(ハー)足部管(H-Fuß)と呼ぶのが一般的である。H足部管は長いので、通気が多少なりと阻害され、音色がわずかに暗めになるとされている。これを補うため、通気の良いリングキーを併用する楽器が多い。また、高音域が安定するともいわれているが、逆にいえば変化をつけにくいともいえる。H足部管を用いると、標準的なC7の運指、およびいくつかの替え指とトリルの運指が変更になる。

最低音がB♭3のB(ベー)足部管もかつては存在したが、今日ほとんど見かけることはない。ラヴェルをはじめ幾つかの合奏曲などにB♭3(A#3)が出現するが、これはH足部管でも演奏できないため、奏者によっては、特注の金属管または厚紙などを丸めて作った管を足部管端に装着して演奏する。

なお、足部管は胴部管と一体に設計することもできないわけではなく、わずかではあるが、そのようなフルートも存在する。

タンポ(パッド)[編集]

もっとも一般的に使われているタンポは、フェルトにフィッシュスキン[14]を巻いたものである。これは金属のフルートをテオバルト・ベームが開発した時代から変わっていない。トーンホールを容易に塞ぐことのできる点、響きを止めない点、湿気や水分にも極端な反応を起こさない点等から、その他の様々な素材よりも優れていると認識している楽器技術者が多い。その他のタンポとして使われる素材としてはゴムシリコーンコルク等が挙げられる。

フルートは、タンポとトーンホールの間に「髪の毛1本の隙間があっても音が鳴らない」と言われており、この調整の技術を習得するには長年の修行が必要となる。そもそもフルートのメカニズムは複雑なうえ、タンポのフェルトは自然物質であるため隙間を完璧にふさぐことは不可能に近い。そこでどこに妥協点を見出すか、という点において究極のバランス感覚が要求され、各技術者毎の特徴のある調整となる。優秀な調整師はフルートメーカーの数に比例し、日本国内の調整水準は世界トップクラスである。

タンポで有名なメーカーとしては「ストロビンガー・パッド」を開発したアメリカのストロビンガー社がある。

インラインとオフセット[編集]

胴部管上側面のキーがすべて一直線に並んでいるものを「インライン」、左手の薬指にあたるキーが外側(左腕に近い方)に少しずれているものを「オフセット」と呼ぶ。その中間となる「ハーフオフセット」の楽器もある。

ベームが製作した楽器はすべてオフセットであり、より楽に操作することが可能である。オフセットは薬指がGキーに届き易いよう配置したものだが、メカニズムを単純化できるため信頼性が高く、メンテナンスが容易となるメリットもある。しかし、笛のほぼ中心に座金とポストを半田付けするため、インラインに比べ多少の響きの損失があるとする説を唱える者もいる。

一方、インラインの楽器は正確にキーを押さえるために左手薬指をオフセットの場合より伸ばす必要があり、手の小さな奏者には向かない場合がある。伝統的な「フレンチスタイル」のフルートはインラインで製作されていたため、「ビンテージ」と呼ばれる高級な中古楽器を演奏する機会のあるプロの奏者はインラインの楽器を好む傾向がある。

楽器の購入の際にオフセットを選ぶかインラインを選ぶかは奏者の好みや手の大きさによるのであって、初心者向けか上級者向けかといった区別はなく、構造上大きな優劣の差があるわけでもない。

カバードキーとリングキー[編集]

カバードキー(クローズドキー、ジャーマンモデル、ジャーマンスタイルともいう)は、キーに取り付けられたタンポでトーンホール全体をふさぐ物である。指で直接押すキー以外の連結のキーと同じカップ、タンポで成り立っているため大量生産に向いており、初心者用の楽器の多くはカバードキーである。

対して、リングキー(オープンキー、オープンホールシステム、フレンチモデル、フレンチスタイルともいう)の楽器は、指が置かれる5つのキー(右手の人差指、中指、薬指、左手の中指、薬指)の中心に穴があいており、指でその穴をふさいで演奏する。特徴は軽く明るい音色である。穴をふさぐ程度を変化させることによって、ポルタメント、微分音などの技法が楽に演奏できるようになるほか、ピッチ調節などのための替え指もカバードキーより多く利用でき、重音のための特殊な運指の幅も大きく広がるが、穴を正確にふさがなければならないため、手が小さい奏者には演奏が難しいこともある。

なお、リングキーという呼び方は、ベームの1832年のモデルやクラリネットオーボエにあるような、細くてパッドが組み込まれていないキーのことを指し、フレンチモデルのフルートに使われているものは「パーフォレーテッド・キー (perforated-key)」と呼んで区別することもあるが、一般的にはこれもリングキーと呼ばれている。

Gisオープン式とGisクローズ式[編集]

Gisトーンホールを1つだけ持つものがGisオープン式、Gisトーンホールを2つ持つものがGisクローズ式である。今日ではGisクローズ式が主流であるが、Gisオープン式のフルートを愛用するプロ奏者もいる。

  • Gisオープン式では、左手薬指を押すとAトーンホールが閉じ、左手小指を押すとGisトーンホールが閉じる。
  • Gisクローズ式では、2つのGisトーンホールのうち、一方は常時開、他方は常時閉となっていて、左手薬指を押すとAトーンホールと常時開のGisトーンホールが連動して閉じる。左手小指を押すと常時閉のGisトーンホールが開く。

フルートの響きはトーンホールの数、および管体に座金を半田付けした面積に比例して悪くなるため、トーンホールを一つ分、座金・ポスト1セット分を節約できるGisオープン式の方が音色が優れている。後述のEメカニズムを設ける必要も無いので、コスト面でも有利である。小指を押すとG、放すとG#が出る(音程が上がる)ので、運指としても自然である。さらにGisクローズ式においては、常時閉のGisトーンホールが開いているとき、開口方向が他のトーンホールと異なるため、響きに若干の違和感を覚えることがある。つまり、どう見てもGisオープン式の方が、いわゆる「理にかなった」構造のように思える。ところが実際に演奏してみると、Gisオープン式ではほとんどの音で左手小指を薬指と同じに動かさねばならず、Gisクローズ式より小指が忙しくなって運指が難しい。この点がGisクローズ式が広く世界に普及した大きな理由である。

Gisオープン式は旧ソビエトをはじめとする共産圏で広く分布した歴史があり、グバイドゥーリナその他の作曲家の作品に登場する運指はGisオープン式を前提として表記されているものがあるため、現代の奏者が演奏する場合は注意が必要である。

Eメカニズム[編集]

今日主流となっているGisクローズ式のフルートでは、第3オクターヴのホ音(E6)が出しにくく、ピッチが高い場合が多い。E6はE4の第4倍音であると同時にA4の第3倍音なので、右手はEから下のトーンホールを開け、左手はAのトーンホールだけ開けてやればよいのだが、Gisクローズ式フルートではキーメカニズムの関係上、常時開のGisトーンホールも開いたままになってしまうからである。これを解消するために考案されたのがEメカニズム (Split E mechanism) で、キーシステムを追加することにより、E6の運指で常時開のGisトーンホールが閉じるようになっている。Eメカと略称されることも多い。

これによってE6の出しやすさとピッチは改善されるが、特定の替え指およびトリル運指が使えなくなる。また、わずかながらも楽器が重くなるため、音色に影響するともいわれる。ドイツ系の奏者、メーカーのフルートに装備されることが多く、逆にフランスではEメカの音は不自然とされ一般的ではない。日本でもほとんどのメーカーはオプション扱いとしている。

Gisキーカップを押さえるレバーを途中で分割・可動式にし、Eメカのオン・オフを切り替えられるようにしたクラッチ式Eメカニズム(Eメカニズム・ヒンジ)も存在する。

Eメカの装備されていない楽器にEメカを後付けすることは、キーポストの不足による耐久性や改造費用の問題等から難しいといわれている。しかし、ユーザーの「Eメカの後付け」発注を断固拒否するメーカーもあれば、後付け工事を行っている所もあり、見解は各技術者によって異なる。

楽器メーカーによっては、同様の効果を得るためにキーシステムの追加ではなく、常時開のGisトーンホールを小さく(もしくは半円形に)する方法を採用している場合があり、これらはニューEメカニズム (Lower G insert, G doughnut) などと呼ばれている。この方法では運指に不便することはないが、通気が多少なりとも損なわれるため、第1・第2オクターヴのイ音 (A4, A5) が若干こもった暗い音になる。気になる場合はGisキーを押して、常時閉のGisトーンホールを開けてやれば解消される。

Fisメカニズム[編集]

Gisオープン/クローズいずれのフルートでも、第3オクターヴの嬰へ音(F#6)が出しにくい。F#6はF#4の第4倍音で、かつB4の第3倍音であるから、右手はFisから下のトーンホールを開け、左手はHトーンホールのみ開けたいわけだが、キーメカニズムの都合上、Aisトーンホールも開けざるを得ないからである。これを解消するために考案された機構がFisメカニズムであるが、構造の複雑さや耐久性の低さ等の理由から、商品化しているメーカーは少ない。

Cisトリルキー[編集]

B-C#のトリルでは、左手親指と人差し指を同時に動かさねばならない。これを容易にするために考案されたのがCisトリルキーで、Aisレバーの上流に設置される。増設されるCisトリルトーンホールは主要なトーンホールと同じ大きさで、DトリルトーンホールとCトーンホールの間にあり、Bの運指でCisトリルキーを押すとC#が出るように設計されているので、右手人差し指だけでB-C#のトリルが可能になる。

Cisトリルキーを用いると、B-C#のトリルだけでなく、第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルも容易になり、弱奏におけるG#6の発音も容易になる。また、通常のCisトーンホールは極端に小さいため、発音の困難、ピッチの不安定、音色の問題を伴うが、Cisトリルキーを用いると、これらの欠点を補うこともできる。

しかし、楽器が重くなる、外観を損なう、取り付け費用が高価であるなどのデメリットもあるため、Cisトリルキーを標準装備するメーカーはほとんどない。

G-Aトリルキー[編集]

第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルを容易にするためのキーである。かつてドイツにおいてよく使われたメカニズムであるが、現在では同じ機能をCisトリルキーで実現できる上、前述のように用途も広いためCisトリルキーに取って代わられつつある。

ソルダードトーンホールとドローントーンホール[編集]

金属製の楽器の場合、トーンホールが管体から立ち上がってキー(タンポ)と密着しているが、この立ち上がり部分をどのようにして製作するかによる分類である。「ソルダードトーンホール」は管体となるパイプに別の部品をはんだ付けすることによりトーンホールを作成するのに対して、「ドローントーンホール」はパイプそのものを引き上げ加工して、トーンホールを形成する。管厚やキーメカニズムなどが同じであれば、ソルダードトーンホールの方が重くなる。ソルダードトーンホールの方が吹き込む際に抵抗感が増すとされる。比較的安価な楽器の多くはドローントーンホールである。

材質[編集]

フルートは他の管楽器に比べ、使用する材質のバリエーションが幅広い。当然高価な貴金属製になるほど値段も高いが、音質に関する限り、管体の材質によって人間に聴き取れるほどの差異が生ずることはなく、ボール紙で作っても音は変わらないとされている[10]。なお、以下に述べるのは管体やキーなどの材質であり、キーメカニズムの芯金やネジ、バネなどには下記と異なる素材も使用される。フェルトコルクなども部分的に使われている。

洋銀(洋白)
フルートの材質として最も多く用いられているのは洋銀である。洋銀製といっても、実際は部品により洋白白銅が使い分けられており、劣化の抑制と外観の向上を目的として、銀メッキが施されているものが多い。比較的安価で加工しやすく奏した際の反応も良いが、人の汗や摩耗による劣化が早いため、一般的には何十年と愛用するには不向きであるとされている。
しかし、フルート界の巨匠モイーズが終生愛用していたフルートは洋銀製であり、一部のフランス黄金時代の名フルーティスト達の使用したフルートも洋銀製だったことから、現存するヴィンテージの洋銀フルートを愛用するものもいる。素材の品質が良く、十分な手入れがなされれば、洋銀製でも長期間の使用に耐えられる。
なお、洋白や白銅は合金成分としてニッケルを含むため、銀メッキされていても稀に金属アレルギーを引き起こすことがあるので、特にアレルギー体質の人は、唇に直に触れる頭部管だけでも銀製の楽器を選択するなどの配慮が望ましい。
ベーム式フルートの材質として、テオバルト・ベーム自身が最も適していると結論づけたのが銀である。「薄く軽い銀の引き抜き管が、内部の空気柱と共に振動する能力に優れており、木の管より楽に輝かしく大きな音で鳴る」と著書[3]の中で述べているが、科学的根拠が示されているわけではない。
銀はいわゆる貴金属の中では最も軽く、加工が容易で、経年による劣化が少なく、木材と違って割れることもない。ただし、一口に銀といっても実際は銀合金であって、素材の配合・純度は多種多様であり、使用する材質はメーカーによって多少異なっている。イオウなどと反応しやすい金属なので、長年使用すると表面に黒色の皮膜を生ずるが、性能への悪影響はなく、研磨すれば除去できる。
フルートには、5金(5K;5カラット)から24金(24K)まで幅広い純度の金が用いられており、ほぼ純金である24金以外は、銅を多く含むローズゴールドであることが多い。金以外の成分の含有率によって色や比重が変化し、吹奏感も変わるが、総じて反応が良く、倍音が多いといった利点があるとされ、「金(のフルート)は遠達性が良い」「遠鳴りする」などと表現されることもある。
しかし、上記の通り管体の材質によって音が変わることはなく[10]、純金に近いものほど高価になる上に、重くなるので演奏には体力が必要になる。利点としては、安定した金属なので長年使用しても美しい外観を損なう事がないということに尽きる。銀製のフルートにメッキとして使用されることも多い。
白金(プラチナ)
白金は密度が高いため非常に重く、これで作られたフルートは激しい吹き込みにも耐えられるとされ、金と並んで「フォルテ側の余裕が大きい」などといわれる。
しかし、これにも何ら科学的な根拠はなく、人間の吹き込む息やフルートの音圧程度なら、密度が低く軽いアルミニウム合金で十分耐えられるし、ボール紙で作った筒でも音は変わらない[10]。白金は頭部管と本体パイプにのみ用いられ、キー等の細かいパーツの成形は技術的に難しい。極めて高価な上、24金製以上に重いので、演奏には強靭な体力が要求される。銀製フルートに白金メッキを施したモデルもある。
ベーム式のキーメカニズムを持ち、管体のみ木製のフルートは現在も作られており、管体にはグラナディラ黒檀などが用いられている。音量や音程、運動性などは普通の総金属製モダン・フルートと変わらないが、倍音が少なく、トラヴェルソを想起させる柔らかい音質が特徴といわれる。
しかし、タンギングを含むトラヴェルソ特有の演奏テクニックが再現できるわけではなく、あくまでも「木管のモダン・フルート」である。良質の木材でも割れる可能性が完全には排除できないので、メンテナンスには木製トラヴェルソと同様の注意を要する。
その他
「入門用」などと称して売られている安価なフルートには、黄銅(真鍮)で作られているものもある。ニッケルメッキや銀メッキが施されていて、外観は銀色であるが、ニッケルや黄銅は金属アレルギーのリスクが高いので、注意した方がよい。
金と銀の合板(クラッド材)や、ステンレスタングステンチタン、アルミニウム合金等、様々な材質によるフルートが試作・商品化されているが、いずれも特段のメリットはなく、一般に普及するには至っていない。
プラスチック製のフルートも作られており、金属と違って多少の衝撃が加わっても管体が凹むことがなく、水に濡れても錆びないといった利点はあるが、歴史が浅いため性能・耐久性共に未知数である。

特殊奏法 (現代奏法)[編集]

フルートは近代音楽現代音楽において特に特殊奏法が数多く開発された楽器である。一つの奏法を取り上げても作曲者や奏者によりさまざまな呼称、やり方、記譜法がある。特殊奏法については未だ発展途上であり新しい奏法が今後も開発されていくことが予想される。

エオリアン・トーン(英語:Aeorian tone)
ブレス・トーンとも。発音と同時に息が歌口や歯の間から漏れる噪音を発する奏法。通常の奏法からライザー部にあてる空気の柱を極端にぼかすことにより生じる。楽音は存在するが空気の流れる音の占める割合のほうが大きい。この割合が作曲者によって細かくパーセント記号で指示されている物もある。
エオリアン・トーンはより深く追求すると口内の形、唇、息の方向、あらゆる子音の変化などにより、人間同士の会話のごとく音の変化が無限に存在する。楽譜で指定出来る範囲というのも限界があるが、子音を語学発音記号であらわしている楽譜もある(F・ユレルのエオリア、B・ファーニホウのユニティカプセル等)。
キー・パーカッション(英語:key percussion)
キー・クリック、キー・クラップとも。キーを強めに叩くことにより、打楽器的効果を狙った奏法。エドガー・ヴァレーズの『密度21.5』で初めて用いられたが、この曲に登場する奏法は、厳密にはスタッカートの通常奏法とキー・パーカッションとの併用である。
口笛
歌口内に口笛を吹くことによって通常の口笛よりもフルートの管に共鳴させた音を作り出す。その際発生する音は運指の自然倍音列上の音である。口笛を吹きながらフルートの通常音を鳴らすことは不可能であるが、口笛の音+エオリアン・トーンであれば可能である。
ジェット・ホイッスル(英語:Jet whistle)
歌口を唇で完全に覆い、息を激しく吐き出すことにより発生した息音を使用する奏法。唇、フルートの角度を瞬時に変化させることで息音内に含まれる楽音を自然倍音列に従い上昇、下降させることができる。発生する音は運指によっても変化する。
重音奏法(英語:multiphonic)
特殊な運指によりふたつ以上の音を同時に出す奏法。運指により、調性的な和音に近いものから、割れたような荒々しい音も出すことができる。R・ディックのフライング・エチュードではこの重音奏法が全体にわたり使用されている。小泉浩、P・E・アルトー、A・ニコレの著書などに重音の運指が示されている。
循環呼吸(英語:circular breathing)
口腔内の空気を吐き出して演奏しながら、鼻から息を吸うことによって、息継ぎによる中断なしに発音し続ける奏法。フルートは他の管楽器に比べて空気の消費が多い楽器であり、循環呼吸をマスターすることにより音楽的な質をより高めることができるとされる。A・ニコレ、P・ガロワ、R・ディック、W・オッフェルマンズ等の著書に「循環呼吸」について解説されている。
スラップ・タンギング(ピッツィカート)(英語:slap tonging 伊語:pizzicato)
リップ・ピッツィカート、クアジ・ピッツィカートとも。弦楽器のピッツィカートに似た音響を発する奏法。通常のタンギングの圧力を高める方法の他、いくつかの方法がある。グランド・フルートではC4(H足部管つきでB3) - D#5までは通常の運指で、さらにオクターヴキーを開ける、その他の操作をすることによりD#6まで発音可能。
ダブルタンギング(double tonguing)
古くからある特殊奏法。タンギングにおいてTとKの子音を用い、速い舌突きの必要とされるパッセージをTKTKTKと奏する。全ての管楽器で可能なテクニックであるが、難易度はフルートがもっとも低く、ロマン派の技巧的な変奏曲や近代の作品を演奏するのに必要不可欠である。
トリプルタンギング(triple tonguing)は、ダブルタンギングから派生したもので、3つ単位の音符をTKTTKTと区分けする。
ダブルトリル
通常は2音間を行き来するトリルを2本の指で行うことにより往復の速度が倍になったもの。左手は楽器を保持する必要があるため右手で行われることが多い。運指によりアグレッシブな効果から不思議な音響まで再現することができる。リングキーかカバードキーかで再現できるダブルトリルの種類は異なる。フルート音楽においてのダブルトリルの使用例はサルヴァトーレ・シャリーノの「CANZONA DI RINGRAZIAMENTO」。二つのトリルキーを交互に連打することにより不思議な音響空間を生み出している。
タングラム(英語:tongue ram)
唇全体で歌口を覆い、舌をライザー部に当てることにより、打撃音を生み出す。空気を吸いながら行う事も可能。これによりフルートは閉管構造として共鳴するため、運指よりも長7度低い音が出る。グランド・フルートでは運指上でC4(H足部管つきでB3) - D#5まで可能、実音ではC#3 (C3) - F4までの音が出る。サルヴァトーレ・シャリーノが『魔法はどのように生み出されるか』でこの奏法を積極的に用い、太鼓の連打音のような音響を生み出すことに成功した。
ドッペルトレモロ
イサン・ユンのエチュードにおいて登場。通常のトレモロに息の圧力を加減してオクターブの上下を加えたもの。作品内ではポルタメントや発声奏法も併用されている。
ハーモニクス(英語:harmonics)
フラジオレット、倍音奏法とも。低音域の運指のまま高い倍音を出す奏法。曲によって力強い音を出したり、弦楽器やハープのハーモニクスのような虚ろな音響効果を要求したりとさまざまである。フランツ・ドップラーハンガリー田園幻想曲の第1楽章の終わりに用いている他、ハーモニクスの和音がストラヴィンスキー春の祭典にも登場する。倍音成分の度合いを変化させることで重音を出すことも可能。
バズィング(トランペット・アンブシュール)
歌口に対し唇を閉じた状態で押し付け金管楽器のバズィングと同じやり方で唇を振動させ音を鳴らす奏法。息の圧力や指を変えることで色々な音域が出せるが、フルートのマウスピースや管は金管楽器のようにバズィングをして発声を促すのには向いていないためスケールは安定しにくい。非常に高い圧力が必要なため、この奏法をした直後は唇に激しい疲労感を覚えるので、長時間のフルートでのバズィング奏法は注意が必要である。
舌を両唇に挟むことで金管楽器でいうペダルトーンに似た効果も出せる。この効果はシャリーノが多用している。
発声奏法(プレイ・ウィズボイス、グロウル)
通常演奏と同時に声を出すことにより差音がハウリングを伴い発生する。フルートの一音程の通常音と同時に奏した場合に、高い声と低い声では発生する差音に違いが生じるため男女でこの奏法の内容は大きく異なる。フルートの音と違う音程を同時に歌うことにより和音が、リズムをずらして歌うことにより二重奏が可能である。
グロウルはフルートの旋律と同じ動きで旋律を歌う奏法。ややグロテスクな音質になり、サックスギターにも負けない音圧に変化させることができるためジャズアドリブなどで好んで使われる。
ビートボクシング・フルート(英語:beatboxing flute)
フルートウィズボイスパーカッションとも。フルートの特殊奏法とは厳密には異なるが、2007年ごろyoutube上で、アメリカのフルーティスト、G・パティロによるヒューマンビートボックスボイスパーカッション)をしながらフルートを演奏する動画が話題となった。フルートを構えバスドラムスネアドラムハイハットのような音と同時にメロディアドリブを演奏するというものである。
ビスビリャンド・トリル(イタリア語:bisbiliando trillo)
カラートリルとも。運指から離れた下のほうのキーを開閉することにより、同音上で微妙に異なる音色によるトリルができる。運指によっては替え指が微分音下方になることもある。武満徹1980年代以降の作品で多用したのはビスビリャンドに似た四分の一音下を含むホロートーントリルであり、特に『海へ(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)』において効果的に聞くことができる。トリスタン・ミュライユはトリルではなく非常にゆっくりとした長い音符の交替による音色の変化を好んで用いる。カラートリルはジャズにおいてビスビリャンド・トリルをする際の呼び名である。
フラッターツンゲ(ドイツ語:Flatterzunge)
フラッター、フラッタータンギング(英語:flutter tonguing)、巻き舌とも。巻き舌やうがいをするように喉を震わせることにより、トレモロ的効果を生み出す奏法。舌だと荒めに、喉ではマイルドになる。オーケストラではR・シュトラウスが用いたのが最初とされている。
巻き舌によるフラッターは先天的な素養も左右するため、奏者により向き不向きがあるのに対し、喉によるフラッターは訓練次第で誰でもできるようになるとされているが、口蓋垂の大きさに個人差があるため出来ない者もいる、とする見方もある。
マウスピースを唇で覆いながらフラッターをすることにより管内に響く雑音を造り出すという奏法も存在する。
ホイッスル・トーン(英語:whistle tone)
ウィスパー・トーンとも。息を送る具合を調節することにより、高音域において倍音音列に基づく非常に虚ろな音を出す奏法。フルートの特殊奏法の中でもとりわけ音量の小さいものに分類され、大きなホールの後部座席まで十分に届くほどの音量はない。
運指の形態は作曲者の欲する音により異なる。音符のみ表記しその音符の運指で発声させる場合もあれば、実際に出したい音の基音の運指を表記し、倍音を出すようなイメージで発声させる場合もある。表記の定まった音を出すことは非常に難しいが、倍音音列上のグリッサンドはとても効果的に響くため、逆に基音のみ指定しアドリブとしてグリッサンドを指定することも多い。第3オクターブがもっとも容易な音域であるが、第1オクターブも鳴らすことが可能。この第1オクターブホイッスルは日本の現代音楽フルーティスト野口龍氏のために書かれた作品に頻出する。
歌口を唇で完全に塞ぎ口内の内径を変化させることによりホイッスルトーンと似た音を奏することもできる。
ホロートーン(バンブートーン)
特殊な運指を使用することによって通常の奏法では出せないくぐもった音を出す奏法。ホロートーンは武満徹のフルートソロに必ずといって良いほど登場する。木管の民族楽器のようなテイストの場合にバンブートーンと呼び、運指表はオランダの奏者W・オッフェルマンズの物がある。木管の民俗楽器に似せるため、あえてスケールや音程、音質が不安定になる運指をすることにより、より通常とは異なる魅力的な効果が期待できる。
むら息(ブレス・ノイズ、尺八奏法)
上記のエオリアン・トーンをより激しくし、アクセントを加えた奏法。曲によっては日本の尺八を想起させる。尺八奏法というとこのむら息と同時に激しいビブラートも組み合わせる。日本古来の伝統的な楽器・奏法の為、外国の奏者に正確にこれを伝えることに関しては困難が予想される。

上記の特殊奏法を組み合わせ、新たな音響を作り出すこともできる(例:フラッター+発声奏法、重音奏法+スラップ・タンギング)。

教則本[編集]

モダン・フルートの教則本は数多く出版されているが、最も有名なのはパリ音楽院のフルート科教授だったHenry Altès(アンリー・アルテ)によるものである。いくつかの翻訳書が出版されているが、「アルテス」と表記されているものもある。フルート版バイエルとでもいうべき優れた入門書。

  • 『ALTÈS FLUTE METHOD フルート教則本(第1巻〜第3巻)』 比田井洵編著、Japan Flute Club
  • 『アルテス・フルート奏法 第一巻』 植村泰一訳・解説、シンフォニア ISBN 978-4-88395-580-0
  • 『アルテス・フルート奏法 第二巻』 植村泰一訳・解説、シンフォニア ISBN 978-4-88395-499-5
  • 『H. アルテス フルート教本 I』  堀井恵監修、トリム出版 ISBN 4-925199-10-2
  • 『H. アルテス フルート教本 II-1』 堀井恵監修、トリム出版 ISBN 4-925199-11-0
  • 『H. アルテス フルート教本 II-2』 堀井恵監修、トリム出版 ISBN 4-925199-12-9
  • 『アルテス フルート教本 <初級>』 山下兼司 編著、ドレミ楽譜出版社 ISBN 978-4285106503

フルートメーカー[編集]

表記は「呼称ないし略称(五十音順) / もしあればブランド名称 / 製作会社名」。

  • アメリカ
    • アームストロング / Armstrong
    • アルメーダ / Almeida
    • アリスタ / Arista
    • ウイリアムス / Williams
    • エマーソン / Emerson
    • エマニュエル / Emanuel
    • オルフェウス / Orpheus Musical Instruments
    • ゲマインハート / Gemeinhardt
    • ゴードン / Gordon (頭部管のみ)
    • シェリダン / D.Sheridan (ドイツ、現在はアメリカ)
    • ジョン・ラン / JOHN LUNN FLUTES
    • ストロビンガー / Straubinger Flutes (キー・パッドのメーカーとしても有名)
    • A.セルマー / A.Selmer
    • ソナーレ / Sonare (アメリカ・台湾)
    • トム・グリーン / Tom green
    • トム・レイシー / Tom Lacy
    • ナガハラ / NAGAHARA Flutes
    • パウエル / VERNE Q.POWELL FLUTES
    • バーカート / Burkart-Phelan Inc.
    • ブランネン・ブラザース / Brannen Brothers - Flutemakers Inc.
    • ヘインズ / THE HAYNES FLUTE / Wm.S.HAYNES Co.
    • ランデール / Jonathon A.Landell / Landell Flute
    • ロパティン / Lopatin
  • イギリス
    • ステファン・ウェッセル / Stephen Wessel
    • ルーダル・カルテ / Rudall & Carte (過去「ルーダル&ローズ」「ルーダル・ローズ&カート」などという名称だった時期もある)
    • ロバート・ビギオ / Robert bigio
  • オーストリア
    • トマジ / W.Tomasi
  • オランダ
    • エヴァ・キングマ / Eva Kingma
    • エロイ / Eloy
  • フィンランド
    • マティット / Matit
  • フランス
    • パルメノン / Parmenon
    • ビュッフェ・クランポン / Buffet&Crampon
    • フォリジ / S.FAULISI
  • ドイツ
    • カワイ・メーニッヒ
    • A.R.ハンミッヒ / August Richard Hammig
    • H.ハンミッヒ / Helmuth Hammig
    • J.ハンミッヒ / Johannes Hammig
    • Ph.ハンミッヒ / Philipp Hammig
    • シェリダン / D.Sheridan (現在はアメリカ)
    • フォークト / Horst Voigt
    • ブラウン / Braun
    • マンケ / Mancke (頭部管のみ)
    • メナート / F.Mehnert
    • ラファン / J.R.Lafin (頭部管のみ)
    • ロバーツ / Roberts
  • 日本
  • 台湾
    • アルパイン / Alpine
    • オリエント / ORIENT
    • グロリア / Gloria
    • ゴウ・ブラザース / Guo Brothers (プラスチック製のフルートに力を入れている)
    • A.D.ジェフリー
    • ジュピター / Jupiter Flute
    • スプレンダー
    • ソナーレ / Sonare (アメリカ・台湾)
    • ディメディチ / Dimedici
    • マックストーン / Maxtone (台湾・中国)
    • マルカート / The Marcato Flute
  • 中国
    • ケルントナー / Kaerntner
    • サバレイ / SAVALEY
    • スタッフォード・ウィンド / Stafford Wind
    • セレクション / Selection
    • マックストーン / Maxtone (台湾・中国)
    • J.マイケル / J.Michael
  • 歴史的メーカー(ベーム式のメーカーを記載)
    • イギリス
      • トーマス・プラウゼ / Thomas Prowse
    • フランス
      • クエノン(ケノン) / Couesnon.S.A
      • クランポン / Crampon
      • ゴッドフロワ / Godfroy
      • ベルショー / Bercioux
      • ボンヴィル(ボンヌヴィル) / Bonneville
      • リーヴ / Rive
      • ルイ・ロット(ルイ・ロー) / Louis Lot
      • ルブレ
    • ドイツ
      • リッタースハウゼン / Rittershausen

同属楽器[編集]

フルート属には次表[要出典]のようなものがある。これらのうちコンサート・フルートとフラウト・トラヴェルソは実音楽器であるが、その他の派生楽器は、慣例的に記譜上の音域および運指がコンサート・フルートとおおむね合致するよう移調楽器として扱い、ト音記号を用いて記譜される。

和名 記音に対する実音 各国の呼称 特色・備考
ピッコロ 1オクターヴ上 Flauto piccolo (in Do)

(Ottavino)

足部管を欠いているため、最低音は古来のフルートどおりD5である。稀にDes管もある。
Piccoloflöte (in C)

(kleine Flöte in C)

Petite flûte (en Ut)

(ottavino)

Piccolo (in C)
ソプラノ・フルート 完全4度上 Flauto soprano in Fa 古楽器フラウト・トラヴェルソやリコーダー、和楽器篠笛に似た音で、特殊な効果を出す狙う場合に使用される。

実際には “Flauto sopranino in Fa” が好ましいと提唱されている。

kleine Flöte in F
Flûte soprano en Fa
Treble flute in F
3度管フルート 短3度上 Flauto in Mi♭ 実際には “Flauto sopranino in Mi♭” が好ましいと提唱されている。
Terzflöte (in Es)
Tierce flûte (en Mi♭)
Soprano flute in E♭
フラウト・トラヴェルソ 同度 Flauto traverso (in Do) 足部管を欠いているため、最低音は古来のフルートどおりD4である。
Traversflöte (in C)
Flûte traversière (en Ut)
Transverse flute (in C)
フルート

(コンサート・フルート)

(グランド・フルート)

同度 Flauto (in Do)

(Flauto grande)

H足部管を使用すると、最低音がC4からB3へと拡張される。

実際には “Flauto soprano in Do” が好ましいと提唱されている。

Flöte (in C)

(große Flöte in C)

Flûte (en Ut)

(Grande flûte en Ut)

Flute (in C)

(Concert flute in C)

フルート・ダモーレ

(テノール・フルート)

長2度・短3度下 Flauto tenore in Si♭ o La

(Flauto d'amore in Si♭ o La)

ごく稀にAs管もある。

実際には “Flauto mezzosoprano in Si♭ o La” が好ましいと提唱されている。

Liebesflöte in B oder A

(Tenorflöte in B oder A)

Flûte de l'amour en Si♭ ou La

(Flûte tenore en Si♭ ou La)

Flauto d'amore in B♭ or A

(Tenor flute in B♭ or A)

アルト・フルート 完全4度下 Flauto contralto in Sol フルートと同様の直管と、頭部管がU字型になった曲管とがある。

近代以降の管弦楽曲に度々使われ、ジャズでも使われる機会が比較的多い。フルートオーケストラでは、しばしば対旋律を受け持ち、管弦楽でのヴィオラのような役目を果たす。

Altflöte in G
Flûte alto en Sol
Alto flute in G
バス・フルート 1オクターヴ下 Flauto basso in Do 頭部管がU字状に曲げられている。戦後の現代音楽では比較的よく使われた。独奏曲や室内楽曲に多い。

実際には “Flauto tenore in Do” が好ましいと提唱されている。

Bassflöte in C
Flûte basse en Ut
Bass flute in C
F管 バス・フルート 1オクターヴ
+完全5度下
Flauto basso in Fa 実際には“Flauto baritono in Fa”や、“Flauto contra-alto in Fa”が好ましいと提唱されている(contra-altoとは、単純なアルト=contraltoのオクターヴ下を意味する)。
Bassflöte in F
Flûte basse en Fa
Contra-alto flute in F
C管 コントラバス・フルート

(C管 オクトバス・フルート)

2オクターヴ下 Flauto contrabasso (in Do) 数字の「4」のような形をしており、キーは縦の部分に、リッププレートは横の部分に付いており、大きさは人の身長ほどもある。

実際には “Flauto basso in Do” が好ましいと提唱されている。「オクトバス」は、「バス」の8度下を意味する。

Kontrabassflöte (in C)
Flûte contrabasse (en Ut)
Contrabass flute (in C)

(Octobass flutein C)

F管 サブ・コントラバス・フルート

(F管 ダブル・コントラアルト・フルート)

2オクターヴ
+完全5度下
Flauto subcontrabbasso in Fa 実際には “Flauto subbasso in Fa” や、アルトの2オクターヴ下のため “Flauto doppiocontra-alto in Fa” や “Flauto octocontra-alto in Fa” などが好ましいと提唱されている。
Subkontrabassflöte in F
Flûte subcontrabasse en Fa
Subcontrabass flute in F

(Double contra-alto flute in F)

C管 ダブル・コントラバス・フルート

(C管 オクトコントラバス・フルート)

3オクターヴ下 Flauto iperbasso (in Do) 1994年、日本のコタトフルート工房が製作したものが世界初である。コントラバス・フルートの縦の部分を、横から見てN字型にしたような形状になっている。主に室内楽やフルートオーケストラの中で合奏として使われる。

実際には“Flauto contrabasso in Do”が好ましいと提唱されている。

Oktokontrabassflöte (in C)
Flûte octocontrabasse (en Ut)
Hyperbass flute (in C)

(Hyper-bass flute in C)

フルート属の名称については、やや混乱が生じている。例えば、最低音域となる「オクトコントラバス・フルート」は、コントラバスのオクターヴ下の音域を担当するという名称となっているが、実際には弦楽器の「コントラバス」や「コントラバス・クラリネット」などと横並びの音域となっており、名称が1オクターヴ低くずれている。また、現行の「コントラバス・フルート」の音域は、弦楽器の「コントラバス」や「コントラバス・クラリネット」などの音域よりも1オクターヴ高くなっており、本来なら単純に「バス・フルート」と呼ばれるところとなる。これは、そもそも現行の「バス・フルート」がバス音域に該当していないためであり、そこから順番に名称がずれているのである。徐々に普及しつつある新しい低音部フルートの普及を前に、他楽器との整合性を保つため、同属楽器の整理が整然としているクラリネットやサクソフォーンに倣って、フルート属においても呼称の再検討が提唱され始めている(イタリア語版記事やBig Flutes[15]を参照)。

補遺[編集]

アルト・フルート使用曲
バス・フルート使用曲
アイリッシュ・フルート
アイルランド民族音楽(いわゆるケルト音楽)で用いられるフルート。といっても民族楽器といえるほど歴史あるものではなく、ベーム式フルートが普及する以前(古典派〜ロマン派初期)の19世紀ごろにクラシック音楽で用いられたフルートの生き残りである。近年ではアイルランド音楽以外にも用いられることがあり、フォーク・フルートとも呼ばれる。
木製でD管、6孔でキーなしかシンプルなキーのものが多く、あまり多くの半音を奏でるのは困難であるが、クラシカル・フルートのような多キーのものも作られている。円錐管が多く、頭部や連結部分に金属をあてがうものもある。太く深みのある、ややかすれた感じの音色で、現在のC管フルートより調性が高い割には、比較的低音域を吹くことが多い。
アイルランド語fliúit(フルート)もしくはfeadóg mhór(ファドーグ・ウォア:「大きなホイッスル」の意味)
キングマシステム
微分音を用いた音楽を演奏することに特化した特殊なシステム。オランダの楽器製作者であるE・キングマによって開発され、キーの上に更に小型のキーをとりつけた「キー・オン・キーシステム」の採用と、リングキーのリング部分の内径を見直すことにより、通常のフルートと演奏方法をまったく変えることなく正確な微分音程を容易に演奏することを可能としている。
ビービーフルート
フルートの管体に開けた横穴に薄い特殊フィルムを貼って共振させ独特の音を出す楽器(商品名:Be-mode コタト&フクシマ)。中国の民族楽器の横笛の構造にインスピレーションを得たもので、通常のフルートの音質よりも倍音を多く含んだ音色になる。
MIDIフルート
キーシステムにMIDI機構を取り付けた楽器。発音原理は通常のフルートと同じであり特に電子的な発音機構によるものではないが、MIDIの出力機構を備えており、奏者の演奏情報をリアルタイムに別のMIDI機器やコンピュータに伝えることができる。同一の指使いで複数のオクターヴの可能性のある音や演奏上の強弱(ヴェロシティ)の検知のためのセンサーも備わっている。ただし楽器は通常のものに比べて相当重い。ピエール・ブーレーズが『エクスプロザント・フィクス(爆発・固定)』で用いているほか、IRCAMなどを中心に援用が見られる。
幼児用フルート
頭部管をU字型に曲げる、足部管を除く、指が届き易いよう補助キーを設けるなどの方法で、体の小さな5歳程度の子供でも演奏できるようにした楽器。ヴァイオリンの分数楽器と同様に、早期音楽教育のために導入される場合があるが、呼吸器が未発達な段階では管楽器であるフルートは時期尚早として疑問視する声もある。
スライドフルート(スライドホイッスル)
フルートと名がついてはいるが、オーケストラの中では通常打楽器奏者が演奏を担当するという全く別の楽器。誰でも演奏することができるほど簡単な構造で、トロンボーンのようにピストンをスライドさせることにより音程を連続的に変えることができる。別名で海の妖精の淫靡な声を意味するシレーヌアクメと呼ばれる。

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b 下中直也(編)『音楽大事典』全6巻、平凡社、1981年
  2. ^ a b 安藤由典『新版 楽器の音響学』音楽之友社、1996年、ISBN 4-276-12311-9
  3. ^ a b c Theobald Boehm, The Flute and Flute-Playing, Dover Publications, ISBN 978-0-486-21259-3
  4. ^ a b c d e f g h 前田りり子『フルートの肖像(その歴史的変遷)』東京書籍、2006年、ISBN 4-487-80138-9
  5. ^ ナショナルジオグラフィック ニュース 「骨製フルート、人類最古の楽器と判明」 June 25, 2009年6月25日配信、2013年4月14日閲覧
  6. ^ 宮内庁. “正倉院”. 2013年6月25日閲覧。
  7. ^ クルト・ザックス(著)、柿木吾郎(訳)『楽器の歴史[下]』全音楽譜出版社、1966年
  8. ^ a b c 奥田恵二『フルートの歴史』音楽之友社、1978年
  9. ^ a b Janice Dockendorff Boland, Method for the One-Keyed Flute, University of California Press, ISBN 978-0-520-21447-7
  10. ^ a b c d e N.H.Fletcher、T.D.Rossing(著)、岸 憲史 他(訳)『楽器の物理学』 シュプリンガー・ジャパン、2002年、ISBN 978-4-431-70939-8;2012年に丸善出版より再刊 ISBN 978-4621063149
  11. ^ H.F.オルソン(著)、平岡正徳(訳)『音楽工学』 誠文堂新光社、1969年
  12. ^ アンリー・アルテス(編)、植村泰一訳・解説『アルテス・フルート奏法 第一巻』 シンフォニア、1978年、ISBN 978-4-88395-580-0、126頁
  13. ^ トレヴァー・ワイ(著)、笹井純(訳)『トレヴァー・ワイ フルート教本1 第1巻-音』 音楽之友社、2011年、ISBN 978-4-276-60614-2、22頁
  14. ^ 旧くは魚の浮き袋から作られていたのでこのように呼ばれるが、今日では豚の内臓などから作られている。
  15. ^ Big Flutes