オーボエ

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オーボエ オーボエ
別称:オーボー、オーボワ
各言語での名称
oboe
Oboe
hautbois
oboe
雙簧管
分類

木管楽器ダブルリード属

音域
実音記譜
Range oboe.png
関連楽器
演奏者

後述

オーボエは、木管楽器の一つで、上下に組み合わされた2枚のリードによって音を出すダブルリード式の楽器(複簧管楽器)である。オーボーともいう。フランス語のhaut bois(高い木)が語源とされる。ただし、この「高い」は「高音域」ではなく「高音量」(大音量)を意味する。なお、ロシア語でガボーイ(гобой)、中国語(北京語)では双簧管と呼ぶ。

古代ギリシアの伝説においては、マルシュアスが吹いた縦笛アウロスが2枚リードの楽器であったと考えられている(笛がギリシャ社会に与えた影響についてはアウロス参照)。

ギネス・ワールド・レコーズには、1977年のThe American Music Conferenceの発表を引用して、世界で一番難しい木管楽器、誰にも上手に演奏できない不快な木管楽器(the ill woodwind)として掲載された[1]

歴史[編集]

オーボエの直接の起源としては、軍隊など戸外で使用していたショームが木管楽器製作者のオットテール一族によって室内音楽用に改良され、17世紀頃オーボエとして誕生したと言われている[誰によって?]。オランダの管楽器製作家ハッカの工房からバロック・オーボエとその前身のショームとの中間的な楽器が発見されており、オーボエの誕生にハッカが関与したのではないかという説もある。

かつて弦楽器だけだったオーケストラに初めて入った管楽器であり、高音部を担当している。バロック期を通してオーボエのボア(管の内径)は細くなるように改良され、音域は上へ拡張していく。古典派初期にはまだキーは2個であった。

バロック・オーボエの音域、構造など[編集]

バロック・オーボエ、ステンズビー

音域は中央ハから2オクターブ上のまで約2オクターブあるが、モデルやリードによってより高音を出せる。バロック・オーボエの主な構造上の特徴は以下の通りである。

  • リードの差し込み口が逆円錐形をしている。
  • 下管からベルへの内径が段差を経て広がっている。
  • 内径はモダン式よりも太い。
  • キーは2から3個(変ホ音のために2個のキーが本体の左右に付いているものもある)。
  • 指穴が管体に対して直角でなく角度をもって開けられている。
  • 指穴にダブルホールが用いられている。
  • ベルのリムが内径に飛び出している。

ベルに柔らかい紙や布、羊毛等を詰め、音量をミュートして演奏する方法がある。

バロック・オーボエのリード[編集]

当時、リードは楽器を製作する工房に注文されていたケースもある。現代のバロック・オーボエ奏者はモダン・オーボエやイングリッシュホルンのリード用チューブをつなげたり、真鍮板から切り出して自作したりしている。モデルによって合うリードのサイズがかなり異なり、チューブの長さもスクレープのタイプもそれぞれである。古楽器特有のクロス・フィンガリングのため、比較的広い幅のリードを用いる。楽器への差し込みは糸を巻いて調整する。

モダン・オーボエの音域、構造など[編集]

ウィーン式オーボエ(ウィンナ・オーボエ)

音域は中央のすぐ下の変ロから3オクターブ弱上のイまで約3オクターブあるが、奏者達の研究によっては最高音を変ロとされているオーボエもある。奏者の実力と奏法を工夫すれば、それより上のロ、ハ、変ニ、ニまで出すこともできるが、演奏は極めて困難である。さらに上最高音の数音が発音できるか否かは奏者の力量、リードの質による。また音の組み合わせに制限はあるが、ハーモニックス、二重音、三重音、多重音の発音が可能である。グリッサンドフラッタリング、弱音奏法(これもハーモニクスと呼ばれる)、循環呼吸法による切れ目ない演奏、音色を変化させるフィンガリングなど、現代奏法にも広く適応する。音色を変化させるフィンガリング(timbre fingering)では1つの音程について20種類程のフィンガリングが存在することもある。著名な現代曲ではいくつかの音についてこのフィンガリングが使われている。

オーケストラや奏者によるお国柄の濃い楽器であり、地方毎に独特のシステムのオーボエが用いられていた歴史がある。 現代ではコンセルヴァトワール式と呼ばれるキーシステムのものが一般的である。コンセルヴァトワール式にはオクターブキーの機構によってセミオートマチックとフルオートマチックがある。この違いは音色にも現れ、ドイツ系の奏者はフルオートマチックを使用していることが多い。セミオートマチックは第1オクターブキーと第2オクターブキーの切り替えの時点で第1オクターブキーが自動的に閉じる機構になっている。フルオートマチックはこれに加えて第2オクターブキーが自動的に開き、奏者による操作を必要としない。

各キーにもオープン式とカバー式のものがあり、これも音色に影響する。現在はカバードキーが多い。オーボエの場合カバードキーといってもキーの中央に穴が開いている。フルートではリングキーと呼ばれる部類に入るのであろうが、オーボエではこれをカバードキーと呼んでいる。オープン式の場合は、現代のクラリネットのようにリングのみのキーを装備している。

その他、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で使われているウィーン式(ウィンナ・オーボエ、現在は日本のヤマハが製作)、イギリスを中心に使われているサムプレート式がある。サムプレート式は元々コンセルヴァトワール式の1世代前のキーシステムであるが、現在ではハワース社製のようにコンセルヴァトワール式にキーを追加したものもある。現在ではほとんど使われないが、ドイツロシアで用いられたジャーマン式もあった。

管体は、クラリネットなどと同様にグラナディラが用いられることが多く、その他にはローズウッドキングウッド材などのものも知られている。プロ・アマ問わず、コンサートホール等での通常の演奏形態ではこうした木製の楽器を用いる奏者が大半であるが、樹脂製の楽器も存在する。木製の楽器においても、管体の一部に樹脂素材を用いているものもある。

楽器は、上管・下管・ベルといった部分から成り、上管の最上部にはリードの差し込み口がある。オーボエ属のコーラングレや、同じくダブルリード楽器であるファゴットのようにボーカルを介してリードと楽器を接続する形態ではなく、楽器に直接リードを差し込むのが特徴的である。

モダン・オーボエのリード[編集]

オーボエのリード

発音体であるリードは消耗品である。リードは楽器店で購入するか、奏者自ら製作する。

リードにも国柄、使用している楽器のメーカー、またそのモデルによるスタイルの違いが見られる。アメリカではロングスクレープと呼ばれる、リード木部全体(といっても5分の4から3分の2程度)が削られているものが主流である。ヨーロッパではショートスクレープと呼ばれる、リード木部全体の半分以下の部分が削られているものが主流である。しかし一方、アメリカ以外でもイギリスには古くから、やや異なった形でのロング・スクレープの伝統があり、独特な楽器で知られるウィーンのスクレープも長めである。

ドイツの奏者の中にもスクレープの長さは短いながらも、その中での凹凸の付け方がアメリカのロングを縮小したようなスタイルを好む者もあり、他方でスタイルはアメリカンながらスクレープは全体の2分の1程度のものも見られる。

リードの設計によって全音域での音程バランス、第1、第2オクターブの音程バランス、ピッチ、高音の発音の容易さ、音色の変化の幅、アーティキュレーションの容易さ、その変化の幅、アンブシュールへの負担など演奏について多くの影響が及ぼされる。

リード制作に必要な道具・材料[編集]

リード材
加工の度合いにより、丸材、かまぼこ型、舟型と呼称が変わる。リード制作入門者は舟型から入ることが多い。
チューブ
先端が楕円型、元が円錐形の金属管(45mm - 48mm)にコルクを巻いたもの。コルクを巻くのは、楽器本体に差し込むためである。最近は、金属管にゴムを巻いた製品も登場した。
リードナイフ
切れ味がよく、自分の手になじみ、使いやすければ他のものでも代用できる。右利き用、左利き用とある。荒削り用として切り出しナイフを使うと仕上げのためにナイフを研ぎ直さずに済む。
カッティング・ブロック
リード制作の過程で使用。表がやや球面状で、直径約4cm程度、高さ1cm - 2cm程度の黒檀製のもの。リードの先端をナイフで切り落とす際のまな板のようなもの。
プラーク
先端をカットした後、リードの先端から差し込む。リードを削っていく際、リードが割れないようにするためのもの。下敷きの意味合いがある。舟形と呼ばれる上から見た形が紡錘型のものと、底辺の短い二等辺三角形の形をしているものがある。
リード材をチューブに巻き付ける際に使用。材質は絹製、ナイロン製等。手芸用に販売されているポリエステル製でも良い。絹製は振動を押さえることが少なく、モダンテクニックを駆使する際に都合が良い。ナイロン、ポリエステル製はやや振動を抑えるので、その分リードを削る必要がある。色は各種あるが、好みに応じて使う。巻き方は少々こつがいる。
シェーパー
リード材を、かまぼこ型から舟型に加工する際に使用。削り幅の違いによって音に影響が出てくるため、数種類が販売されている。好み、楽器との相性によって選択する。
ガウジングマシン
リード材を丸材からかまぼこ型にする際に使用。丸材を3等分の扇形にカットし、リード材の内側を適正な厚さまで削り落とす。アマチュアでここから作業する人はごく少数である。リード材を固定するベッドの直径はオーボエ用としては10mmと11mmの2種類が多い。フレンチ、アメリカンタイプのリードを製作する場合は11mm、ジャーマンタイプを製作する場合は10mmが適している。
メイキングマシン
糸で巻いたリード材を、手ではなく機械で削るためのもの。あくまで補助的な機械であり、最後の仕上げは手作業となる。数十万円するので、プロでも必ず持っているというわけではない。
針金
完成したリードに巻き付けて、リードの開き具合を調整する。主にショートスクレープタイプのリードに使用。どうしても響きを抑える効果を持ちやすいため、使用は好みによる(必須ではない)。一般的に0.3mmの真鍮製が使われている。
フィッシュスキン
完成したリードに巻き付けて、息漏れを防ぐためのもの。本来息漏れはない方が望ましいが、材料の削り具合や制作者の力量により、制作過程でどうしても息漏れが発生してしまうことがある。従って、これも使用は任意である。リードに生じたトラブルの応急処置としても使われることがある。また、水道管工事に使われる防水テープを使う場合もある。フィッシュスキンよりリードの振動を抑える傾向がある。
耐水ペーパー
リード材の内側を磨いたり、シェーパーで型取ったケーンの仕上げに、リードのティップを整えたりと使用範囲は多い。

その他の道具[編集]

水入れ
演奏中のリードは乾燥してしまうと発音などに影響を与えるため、リードは湿らせておかなくてはならない。そのための水を入れておくためのもの。写真のフィルムケースや、風邪薬の空き瓶などを利用することが多い。演奏後は、カビ防止のため、乾燥させておく[2]

種類[編集]

オーボエ属の楽器としては、オーボエの他に

などがある。最近ではドイツクロナッハのヴォルフ社(ファゴット製造)がミュンヘンのベネディクト·エッペルスハイム管楽器と共同開発したルポフォンと言う新型のバスオーボエが生まれた。また、ファゴット属のファゴットコントラファゴットもダブルリード式の楽器であり、同じ発音原理を持つ。オーボエ用のリードとファゴット用のリードでは大きさが違うだけで、音響学的にみて非常に近い楽器である。

オーケストラで使われることは滅多にないが、チャルメラ篳篥も、複簧管楽器(ダブルリード式の楽器)である。 (なお、オーケストラ曲の中で特殊楽器として篳篥を効果的に使っているのが、山田耕筰の交響曲「明治頌歌」であり、明治天皇崩御の悲しみを象徴的に表現している。)

主なメーカー[編集]

主要な歴史的銘柄[編集]

日本でのオーボエ導入と普及[編集]

ペリー黒船に乗っていた軍楽隊のオーボエが、日本との最初の接点と言われている[3]。ダブルリード習得の困難さから、1869年(明治2年)の薩摩藩軍楽伝修生からは除外され、19世紀のうちは導入が大幅に遅れていた。

1882年(明治15年)に、陸軍軍楽隊の楽長で靖国神社の式典曲「国の鎮め」の作曲者として名高い古矢弘政(1854年 - 1923年)が、軍楽指導法の研究のためにパリに留学した際にオーボエを学んだのが最初と言われている[4]が、その後も日本での普及は遅れており、1890年代後半から徐々に軍楽隊に導入されて行った。

東京音楽学校で最初にオーボエで卒業演奏を行ったのは、1906年(明治38年)の島田英雄(幕臣から静岡学問所に学び日本聖公会の主祭となった島田弟丸の長男)で、後に山田耕筰東京フィルハーモニー会にも加わっている。しかし一般への普及はさらに遅れ、活動写真浅草オペラのオーケストラにはオーボエが加わることが殆どなかった。

やがて近衞秀麿新交響楽団のオーボエ奏者、阿部萬次郎(1898年 - 1954年、三越少年音楽隊出身)や、その後継者である青山治一(1901年 - 1981年)などの名手が現れるが、一般の水準は高いとは言えず、「チャルメラ的」なイメージが付きまとっていた。状況を一気に革新し、芸術的な楽器として確立したのが鈴木清三(1922年 - 2008年)の功績であり、更に戦後に多数来日した欧米の奏者からの刺激、貿易・渡航自由化による留学生の激増などによって、日本のオーボエ界は後進性を脱し、海外でポジションを得る演奏家も珍しくなくなった[5]

オーボエが活躍する楽曲[編集]

NHK交響楽団茂木大輔は、「オーボエ奏者にとっての3大交響曲は、ベートーヴェンの「英雄」、ブラームスの第1番、チャイコフスキーの第4番である」という趣旨のことを著書で述べている。

オーボエの協奏曲[編集]

管弦楽曲、オペラ、バレエなど[編集]

室内楽曲[編集]

無伴奏の独奏曲[編集]

鍵盤楽器伴奏の独奏曲[編集]

著名なオーボエ奏者[編集]

五十音順クラシック音楽の演奏家一覧#オーボエ奏者も参照のこと。またen:List_of_oboistsには、詳細なリスト(日本人も含む)がある。

日本以外[編集]

日本[編集]

[編集]

  1. ^ Guinness Book of World Records 1982、141ページ
  2. ^ 以上の工具・部品の名前を英語で記す場合、アメリカ英語とイギリス英語で若干の相違が見られる場合がある。 この対照表はEvelyn Rothwell:The Oboist's Companion Volume 3 (Oxford University Press) ISBN 0-19-322337-6 に掲載されている。
  3. ^ 團伊玖磨『日本人と西洋音楽』NHK人間大学テキスト、1997
  4. ^ 日本近代音楽館編『明治の作曲家たち』2003
  5. ^ 成澤良一「探訪・日本オーボエ史」『パイパーズ』杉原書店、2006年5〜11月号

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Peter Veale The Techniques of Oboe Playing. Barenreiter、1994年、ISBN 3-7618-1210-8
  • Heinz Holliger(ハインツ・ホリガー) PRO MUSICA NOVA. Breitkopf & Hartel、1980年
  • David A. Ledet Oboe Reed Style. Indiana University Press、1981年、ISBN 0-253-37891-5
  • エヴリン・ロスウェル、西岡信雄訳『オーボエのテクニック』音楽之友社、1965年5月10日、ISBN 4-276-14552-X
  • Bruce Haynes The Eloquent oboe. Oxford University Press、2001年、ISBN 0-19-816646-X
  • 『新編 音楽中辞典』音楽之友社、2002年3月10日、ISBN 4-276-00017-3
  • Leon Goossens(レオン・グーセンス) and Edwin Roxburgh Oboe. (Yehudi Menuhin Music Guides) Oxford Univ.Press 1977 ISBN 0-356-08416-7
  • Marion Whittow Oboe A Reed Blown in the Wind. Puffit Publications ISBN 0-9518072-0-X
  • 茂木大輔『うまくなろう!オーボエ』音楽之友社、1998年 ISBN 4-276-14532-5
  • Philip Bate The Oboe. Ernest Benn Limited, London 1962年
  • Karl Steinsb(カール・シュタインスRohrbau für Oboen Bote & Bock. (Berlin) 1964 ISBN 3-7931-0929-1
  • Miron E. Russel Oboe Reed Making and Problems of the Oboe Player. Jack Spratt Woodwind Shop, Old Greenwich, Conn. USA 1940 (rev.1960 +1971)
  • Evelyn Rothwell The Oboist's Companion. Vol. 1-3 Oxford Univ. Press 1977 ISBN 0-19-322337-6
  • 宮本文昭 「オーボエとの『時間』」 時事通信社 2007年 ISBN 978-4-7887-0758-0
  • 鈴木清三 『最新 吹奏楽講座1 木管楽器』(オーボー、イングリッシュ・ホーン)音楽之友社、1969年
  • 成澤良一 『探訪・日本オーボエ史〜黒船から現代までの群像』「パイパーズ」(杉原書店)2006年5 - 12月号
  • 井口博之 『今日の名演奏家IV 繊細な心を歌う名手たち』バンドジャーナル増刊 Lesson&Play 木管編、音楽之友社、1979年11月
  • 似鳥健彦 『オーボエの歴史と構造』バンドジャーナル増刊 Lesson&Play 木管編、音楽之友社、1989年6月
  • Ryoichi Narusawa A History of Oboe Playing in Japan. THE DOUBLE REED Vol 27 No.4 (2004) International Double Reed Society (+巌岩・訳:双簧管演奏在日本的発展歴史 中国伝媒大学南広学院芸術伝播系)

外部リンク[編集]