コントラバス

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コントラバス
別称:ダブルベース、ストリングベース、ベース
ウッドベース(和製英語)、弦バス(げんばす)
各言語での名称
Contrabass, Doublebass,
Stringbass
Kontrabass (Kontrabaß),
Bassgeige (Baßgeige)
Contrebasse
Contrabbasso
低音提琴, 低音大提琴
コントラバス
分類

弦楽器ヴァイオリン属

音域
各弦の調弦。
実音は1オクターブ低い
Contrabasso001.png
関連楽器
演奏者

後述

関連項目

コントラバス: Kontrabass / : Contrabass / : Contrabbasso)は音楽における音域の区分のひとつ。バスのオクターブ下に位置づけられる。また、この音域をもつ弦楽器のひとつ。本項では、弦楽器としてのコントラバスについて記述する。

4本または5本の弦を持つ大きな弦楽器である。略号は「Cb」。単にバスもしくはベース(Bass)(英語圏ではこの呼び方をする人が多い)、ダブルベース(英語起源)、ストリングベース(英語圏においてエレクトリックベースに対し)、ウッドベース和製英語)、アップライトベースアコースティックベースポピュラー音楽エレクトリックベースに対し)、ベース・フィドル(ケルト系の音楽でヴァイオリンの呼称であるフィドルに対して)とも言う。呼称が多いのは、コントラバスがさまざまな場面で使われることの表れである。

起源・歴史[編集]

類似する低音部の弦楽器であるチェロは、いわばヴァイオリンを大型化させた、れっきとしたヴァイオリン属であるのに対して、コントラバスはヴィオラ・ダ・ガンバの最低音域楽器であるヴィオローネという楽器が直接の先祖に当たる。これは16世紀に生まれ、18世紀頃まで用いられていた。

このように、もともとヴィオール属から進化した楽器であるが、バロック期後半頃からチェロの影響を受けて次第にヴァイオリン属との融合が進み、現在ではヴァイオリン属とヴィオール属の中間に位置する楽器とされている(ヴィオール属参照)。

コントラバスの、なで肩の形状、平らな裏板、4度調弦、弓の持ち方(ジャーマン式)といった特徴から、現代オーケストラの弦五部の中で唯一 起源の異なる楽器であるとされる。

構造[編集]

楽器[編集]

共鳴胴は瓢箪型で棹が付いている。中央のくびれは古い擦弦楽器において弓を使うのに邪魔にならないような形状にした名残で、ヴァイオリン属にもヴィオール属にも共通するものである。 ヴァイオリン同様表板と裏板は独立しており、表板は湾曲している。ただし、湾曲した裏板を持つラウンドバック、平面の裏板を持つフラットバックと呼ばれる二つの構造が存在する。フラットバック裏板内側面には、ラウンドバックには無い力木(ブレイス)が接着されている。ヴァイオリンやヴィオラチェロと違いなで肩であるが、これはヴィオール属のなごりであり、これによってハイポジションでの演奏が容易になっている。は弓で特定の弦をこするのに適すよう、弦の当たる位置が湾曲しているが、形の比率は他のヴァイオリン属に比べて背が高い。尾部にはエンドピンを備えており、これを床に刺して演奏する。

ヴァイオリンの構造と同じく、駒の高音弦側の脚が接触している位置で、表板の裏側に接して魂柱(こんちゅう)と呼ばれる柱が立っており、表板と裏板に接している。駒の低音弦側の脚が接触している位置で、表板の裏側に接してバス・バーと呼ばれる力木(ブレイス)が接着されている。弦の振動は魂柱を支点とし、てこの原理により振動が増幅され、主にバス・バーによって表板全体を振動させる。またその一部の振動は魂柱を通して裏板に伝わり、共鳴胴全体が振動するのである。棹から駒を経て楽器の尾部の緒留めまで弦が張られ、弦を押さえるための指板が張られている。

全長は約170 - 200cm程度、弦の実効長も約95 - 120cm程度と、それぞれ全体の約2割ものばらつきがあり、この割合は他の純粋なヴァイオリン属の楽器より遥かに大きい。また、共鳴胴の容積により、3/4、1/2などの小さいサイズの楽器が、体の小さい女性や子供たち用に生産されている。また国によっても基準の大きさが異なり、ヨーロッパにおける3/4サイズが、日本における4/4(フルサイズ)に該当する。

[編集]

ヴァイオリンの弓と同様、逆に湾曲し馬の尾の毛が張られる。毛留め(フロッグ)の箱の大きさと棹の長さによって、フレンチ・ボウとジャーマン・ボウの2種に大別される。毛には松脂を塗り、これで摩擦係数を高めて弦をこする。使われる松脂は他の弦楽器のものに比べて粘性の高いものを用いる奏者が多いが、音質や演奏性の好みで他の弦楽器のものを使う奏者もいる。 また、その他の弦楽器にはほとんど用いられない黒い毛が使われることもある。

コントラバスの音[編集]

コントラバスは、その太く低い音が特徴的である。

Contrabasso001.png
譜例: 調弦
実際の音は1オクターブ

(ソロチューニングでは短7度)低い。後述

現在一般的な調弦は、4弦の場合、高い方から中央ハ1オクターブと完全4度下のト(G、ソ)、以下完全4度ごとにニ(D、レ)、イ(A、ラ)、ホ(E、ミ)であり、それぞれ、第1弦=G線、第2弦=D線、第3弦=A線、第4弦=E線と呼ばれる。(ドイツ語読みで、それぞれ「G=ゲー」、「D=デー」、「A=アー」、「E=エー」という)5弦の場合はさらに低い弦として第5弦を備えており、レスピーギなどの場合はロ(H、シ)またはベートーヴェンの場合はハ(C、ド)に調弦する。楽器の構造が完成するのが比較的遅かったこともあり、19世紀初期までは3弦(高い方からG、D、Aの四度調弦やA、D、Gの五度調弦もあった)の楽器など、弦の数や調弦がさまざまな楽器が混在していたが、現在では上記の調弦による4弦または5弦の楽器にほぼ統一されている。 なお、独奏の場合には、これよりも長2度高く調弦することがある。コントラバスのパガニーニとも呼ばれているイタリアのバス奏者、ボッテジーニが考案したこの調弦法を「ソロチューニング」と呼び、輝かしく、よく通る独奏向きな音質に変わる。やや細く作られた弦(通称「ソロ弦」)を使用することも多い。

一般に調弦はD線もしくはA線から初め、フラジオレット(ハーモニクス)を用いて、隣同士の弦を合わせる。

4弦のコントラバスには一番低い弦の音をEから下にCまでの各音に切り替えられるようにする装置(C装置)を取り付けたものもある。その場合、チェロの最低音より1オクターブ低い音まで出すことができる。

記譜[編集]

チェロと同様、主としてヘ音記号を使って書かれるが、書かれた音より1オクターブ低い音が出る(1オクターブ高く書かれる)。これにより、チェロと同じ楽譜を使えば合奏時に低音に1オクターブの重なりを得ることができる。通常の4弦コントラバスの最低音はホ(E、ミ)であるが、これにC装置を取り付けたり5弦コントラバスを用いたりしてより低い音を出せるようにするのは、チェロの最低音の1オクターブ下の音を得るために他ならない。

独奏曲の楽譜には実音で表記されているものもある。また、ソロチューニングの時は同じ記譜で同じ演奏法となるように、短7度低い音の出る移調楽器として書かれる。高音部はテノール記号またはヴァイオリン記号を用いる。コントラバスの独奏曲の作品には、このソロチューニングで書かれているものが多い。

なお、フラジオレットに関しては過去よりさまざまな記譜法があるので注意を要する。

例:

  • 通常の音符の上に、フラジオレットであることを示す記号(「○」など)を書く。
    この場合、通常の音符と同じ移調がなされているものと見なすことがほとんど。
  • 菱形の音符で、実音として書く。
  • 同じく菱形の音符で、通常の音符と同じ移調をして書く。
  • そのフラジオレットを出すために押さえる弦と場所だけを指示しておく。
    例えば、D線上で開放弦の短3度上のF付近に、開放弦より2オクターブと完全5度上のAが出せる場所がある。このAを演奏させたい場合は、使う弦としてDを通常の音符で、触るべき場所(に最も近い音であるF)を菱形の音符で、同じ譜尾にまとめて和音のように書く。
    この記譜法の場合、調号によっても触る場所が変わってくることがままあるため特に注意が必要である。例えば、上述の箇所は調の都合であらかじめシャープがついていることも多く、その場合はFシャープ付近を触ることになる。実音は上述のAより短3度低いFシャープ。
    この記譜法はモーリス・ラヴェルなどの曲に散見される。

など。

演奏の仕方[編集]

ヴァイオリン同様弓を使って演奏する。コントラバスには現代のヴァイオリンやチェロの弓と似ている弓(フレンチ・ボウと呼ばれる)と、古楽器のヴィオール属で使われた弓の形を残している弓(ジャーマン・ボウと呼ばれる)の2種がある。 日本では最初にコントラバスを学んだ人がジャーマン式であった[要出典]ため、ほとんどの人がこれを使っている。しかし、最近は次第にフランス式も増えてきた。

Contrabasso German001.JPG
画像:ジャーマン・ボウ

弦を指ではじく奏法(ピッツィカート)も行われ、ポピュラー音楽ではこちらが一般的である。また、ジャズ、ロカビリー、カントリー、ブルーグラス、ジャグバンドミュージックではスラップ奏法クラシックにおけるバルトーク・ピッツィカートに近い)と呼ばれる特殊なピッツィカートも使われる。

楽譜上では、弓を用いての奏法は「arco」、指で弾く奏法は「pizz」と書かれている。

構え方[編集]

立って演奏する場合、立てた楽器の横に左半身を添わせて左足や腰の左側で楽器を支えることが多い。各弦の低音の演奏には、左手の指をポジション(後述)に置き、親指を中指にほぼ対向させて、棹を挟む。高音部では親指も弦を押さえるのに使うため弦の上に置き、左半身で楽器を抱え込むようにする。

交響曲など、長い曲を弾く時には椅子を使うことも多い。椅子は座っても立ったときと姿勢があまり変わらないような高いもの(専用として設計されているものが市販されている)を使い、立って演奏するときより楽器をいくぶん寝かせて構える奏者も多い。

弓の持ち方[編集]

弓は右手で持つ。

フレンチ・ボウ
チェロと同じである。ジョバンニ・ボッテジーニが考案した。
ジャーマン・ボウ
ヴィオール属特有の持ち方で、毛箱を下から包み込むようにして持つ。

運弓[編集]

弓の使い方を運弓という。

弓は右手で持ち、弦を弦の張ってある方向に対して垂直方向にこするのが基本である。楽器を構えたとき、弦はほぼ鉛直方向に張ってあるので弓は水平方向に、すなわち奏者から見て左右に動かすことになるが、他のヴァイオリン属楽器と同様、右に引くのを下げ弓(ダウン・ボウ:記号Downbow001.png)、左に押すのを上げ弓(アップ・ボウ:記号Upbow001.png)と呼ぶ。てこの原理により、弓の元(手に近い方)で弾く方が力をかけやすいため、ダウン・ボウの方が大きな音が出しやすく、強拍に向いている。また、アップ・ボウは弱拍やクレッシェンドに向いている。

弓を当てる位置は、基本的には指板の下端と駒の間である。指板寄りでは柔らかい音が、駒寄りでは固くて大きい音が出るので場合によって使い分ける。

運指[編集]

左手の指の使い方を運指という。

弦は弓で弾くだけでは調弦したときの音(開放弦)しか出ない。左手の指で弦を指板に押しつけることによって弦長を短くし、より高い音を出すことができる。

指は、人差し指を1、中指を2、薬指を3、小指を4という。親指は高音部にのみ使われる。記号はoの上部に垂直線が刺さった形である。

ヴァイオリンでは14の間隔は7 - 8半音に達するが、コントラバスでは2半音にしかならない。開放弦の半音上に1を置くと、2がその半音上、4がさらに半音上(1の2半音上)にあたる。このような手の位置をポジションという。

各弦の音とポジションの関係は次の通りである。0は開放弦である。

I弦 G G# A Bb B C C# D D# E F F# G G# A Bb B C C# D
II弦 D D# E F F# G G# A Bb B C C# D D# E F F# G G# A
III弦 A Bb B C C# D D# E F F# G G# A Bb B C C# D D# E
IV弦 E F F# G G# A Bb B C C# D D# E F F# G G# A Bb B

0 1 2 4















0
1 2 4














0

1 2 4













0


1 2 4












0



1 2 4











0




1 2 4










0





1 2 4









0






1 2 4








0







1 2 4







0








1 2 3






0









1 2 3





0










1 2 3




0










親指 1 2 3
(以下略)

主なコントラバス奏者[編集]

五十音順に並んでいる。

クラシック音楽[編集]

日本以外[編集]

日本[編集]

ジャズ、ポピュラー、その他の音楽[編集]

主なコントラバス楽曲[編集]

関連項目[編集]