トランペット

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トランペット
各言語での名称
trumpet
Trompete
trompette
tromba
小號
トランペット
トランペット
分類

金管楽器

音域
B♭記譜
Range trumpet.png
演奏者

後述

トランペット: trumpet, : tromba: トロンバ、: Trompete: トロンペーテ)は、金管楽器の一種。略称は「Tp」「Trp」「ラッパ」「ペット」など。

管の全長に対して円筒部分の割合が大きく、多くは長円状に巻かれ、その中ほどに3つ(稀に4つ)のピストンまたはロータリー式のバルブを備える[1]

この楽器の調性には様々なものが存在するが、最も一般的なのは変ロ調(B♭管)とハ調(C管)である。ハ調を除き、移調楽器である。ピストンバルブまたはロータリーバルブを操作しつつ、息で音を変化させて演奏する。

現代のトランペットの種類[編集]

管長による分類[編集]

ピッコロ・トランペット。下にあるのは移調用のマウスパイプ
通常のトランペットとポケットトランペット(どちらもB♭管)

現代のトランペットはこれまでにほとんどの調子の楽器が製作されてきたが、A管やC管、D管等はオーケストラでよく用いられ、吹奏楽ではB♭管が標準となっている。これを標準(管長約147 cm)と考えている人は、それよりも短い楽器のことをショートトランペットと呼ぶことがある。なお、いわゆるショートトランペットのE♭管がソプラノトランペットと誤解されることがあるが、それは誤りで単にE♭管トランペットというのが正しい。ソプラノ・トランペットとは、単に低いA管からその上のG管までの今日の普通サイズのトランペットのことにすぎない。その普通のA管(いわゆるソプラノ・トランペットのA管)よりも1オクターヴ上のA管以上は、管長が半分となり高音域用の吹奏を目的としていることから、ピッコロトランペットと区別され呼称している。高音吹奏の物理的限界点としてC管(約65 cm)までが一般的に存在する。

短い方からのC管、B♭管、A管については、ピッコロトランペットと呼ばれる。大抵は、一台のトランペットにオプションパーツの組み合わせで調子が変えられるようになっている。なお、管長が半分なので基音は通常の楽器よりも高いのであるが、高次倍音は出しにくくなる。従って演奏できる音域が狭くなるために第4バルブを備えて補うモデルもある。

長いものは、アルトトランペット(管長2 m前後)やバストランペット(管長3 m)と呼ばれる。

標準のB♭管の長さのものを二重巻きにして、サイズを小さくしたものをポケットトランペットと呼ぶ。コンパクトで携帯に便利だが、吹奏に多少の抵抗感がある。

標準のB♭管は音程がもっとも安定しているので、初心者(特に楽器自体初めての人)はB♭管から始めることが推奨されている。ただしB♭管であっても、指使いだけで正確な音程が保証されるものではない。

ショートトランペットは姿をB♭管に似せると、サイズが小さくなるので、第一バルブからベルまでをB♭管に合わせた形をロングモデルとも呼ぶ。

機構による分類[編集]

現代のトランペットはそのバルブの構造によって、ピストン・トランペット、ロータリー・トランペット等に分類できる。21世紀に入ってからは、ヤマハ製などの電子式のものもある。

ピストン・トランペット[編集]

ピストンバルブを使って管長を変化させる。現在、日本、アメリカ、フランスなどで最も一般的に使用される。一般に「トランペット」と言ってイメージされるのが、このピストン・トランペット(B♭管)である。音が目立つのでよくソロに用いられる。ロータリーバルブに比べて故障しにくい。ジャズにはこれが用いられる。

ロータリー・トランペット[編集]

C管のロータリー・トランペット

ロータリーバルブにより管長を変化させる。ドイツオーストリアオランダ北欧などでよく用いられる。ドイツやオーストリアの音楽に向いているとされ、日本やアメリカのオーケストラでも演奏曲目によって用いられることがある。一般にピストン・トランペットと比べ、重厚で厚みのある音色を持つ。

スライド・トランペット[編集]

ソプラノ・トロンボーンと形状が似ている。19世紀のイギリスで主に用いられた。機構はトロンボーンと同一で音域が一般のトランペットと同じ。多くは用いられないが、ポルタメントグリッサンドを効果的に使いたい場合に用いられる。比較的構造が簡単で安くできるのでドイツなどで作られている。ジャーマン・ブラスではこの型で更に「ピッコロ」や、さらに鉛筆ぐらいの「ピッコリッシモ」も作らせ、余興に演奏し好評を博している。なお、ルネサンス時代の教会楽器として単純な機構のスライド・トランペットが存在するが、19世紀の型のものに発展したわけではない。

シグナル・インストルメント[編集]

機能はビューグルに近いが、ベル(朝顔)は2個から4個付いていて、それを1つから2つのピストンバルブで操作する。マウスピースはトランペットのものを使うのでここに挙げる。ドイツの楽器店でよく見かけられるが、使用例はスライド・トランペットのようにほとんど聞かれない。

歴史的なトランペット[編集]

ナチュラル・トランペット[編集]

ナチュラル・トランペットとは、バルブの機構が1815年頃に発明され、管の長さを変えるピストンやロータリーが取り付けられる以前のトランペットで、元々は一本の円筒形の直管にベル(朝顔)が付いた楽器であった。歴史的には紀元前7世紀のアッシリアやヘブライ語聖書(所謂旧約聖書)、ギリシア、古代ローマまで遡ることができるほどの歴史ある楽器で、今日でもヨーロッパ以外の地域で同族の楽器が使用されている。

楽器の形状について。ヨーロッパにおいては中世に至るまでは直管であったが、ルネサンス時代の間に管を曲げる技術が加わり、持ち運びの容易なS字型のトランペットが現れた。また、スライド・トランペットも開発され教会内で使用された。両端を180度折り曲げ環状にした一般的なナチュラル・トランペットの形状はセバスチアン・フィルディングの『音楽論』(1511年)の挿絵にその初期の姿を確認することができる。その他の形状としては、渦巻き状にしたものやハンドストップ・トランペットのようにベルに手が届くように反り返らせたものなどがある。大バッハ作品の初演を数多く行ったライプツィヒの都市楽士ゴットフリート・ライヒェは前者の楽器を使用していた。なお、渦巻き状のトランペットは様々な人が「クラリーノ」という名称の楽器と勘違いしているが、「クラリーノ」というのは単にトランペットの高音域のことで、それが楽器のことを指して述べる場合は「クラリーノ音域用のトランペット」という意味として解釈すべきである。『音楽論』の挿絵には「Clareta(クラレタ)」と「Felttrunmer(戦場トランペット)」と記載された2つのトランペットが紹介されているが、渦巻きではない一般的な形状の楽器だからである。戦場トランペットの方はクラレタよりもいくぶん太めでがっしりしている。従って、クラレタが高音用、戦場トランペットが低音用、信号用ということなのであり、楽器の形状を現す言葉ではないということである。なお、現代の楽器メーカーが1959年に渦巻き型のナチュラル・トランペットの商品名を「クラリーノ」として製造販売したことは誤解を助長したであろう。この形状の楽器はミヒャエル・プレトリウスの『音楽大全』(1619年)の挿絵では「狩猟トランペット」と紹介されている。もっともトランペットを指す言葉として「クラリーノ」という語を用いることが多々あるが、18世紀以前においては使用音域やパート(トップパート)などを表すものとして便宜的に述べているだけなのである。

楽器法について。ナチュラル・トランペットは単なる一本の管であるため、基本的には倍音しか出せない。従って、音階全てを吹奏できず、古来より今日に至るまで軍事的な信号楽器であった。しかし、指揮官の傍らで信号吹奏による命令伝達の重責を担う戦場トランペット奏者は次第に騎士に準じる身分を有するようになり、能力の高い者は宮廷の権威を高めることになった。そのため高音(クラリーノ)奏者は、倍音の間隔が狭く狙った音を当てるのが困難であるものの、音楽の旋律線の吹奏がある程度可能となる高次倍音(高音域=クラリーノ)の吹奏により習熟することになり、トランペットはパートが分かれながらも使用可能音域を拡大していった。各パートに分かれての野外トランペット楽団(トランペット・コー)の合奏や、ナチュラル・トランペット協奏曲がバロック時代に比較的盛んになったのはこのような理由による。そして、バロック時代はごく一部の高い能力の奏者が戦場トランペット奏者の地位よりも高い音楽的トランペット奏者職を得た。宮廷内でトランペット・ソナタやトランペット協奏曲を吹奏する任を与えられ厚遇されるようになったのはこのような第一級の限られた奏者であった。しかし、バロック時代の終焉までに政治的な理由で音楽的トランペット奏者職への登用はなくなり、協奏曲が吹けるようなクラリーノ奏者はバロック時代の奏者が引退もしくは死去したであろう1780年頃までに自然消滅の形で一般的には廃絶した。その後の古典派のオーケストラにおいてはクラリーノパートの下の音域を担当していたプリンティパルパートの奏者が「残留」することになり、ティンパニと連動して低めの音域を担当した。この楽器法は17世紀の野外トランペット楽団にその用例が見られることから、古典派時代の奏者の演奏能力が「衰退」したという従来の見方も正されることになった。これらの見解は日本音楽学会の機関誌で唯一知ることができる。

楽器の長さは同じ調性のナチュラルとトランペットと現代のトランペットを比較すれば、現代のものはナチュラル・トランペットの約半分の管長であり、長さだけをいえば、バス・トランペットやテナー・トロンボーンとおよそ同じである(ピッコロトランペットは約1/4)。長さを半分にすることで倍音の基音を1オクターブ上げ、そして、バルヴによる管長調節で倍音間の音階の穴を埋めて低次倍音による旋律的吹奏を可能とした。これによって吹奏は容易かつ現代的要求に適うようになったが、管長が短くなった分、高次倍音が含まれた輝かしい音色は損なわれている。なお、ナチュラル・トランペットの音色はテナー・トロンボーンの最高音域を想像すれば、当たらずといえども遠からずである。ナチュラル・トランペットのために書かれた楽譜を今日のトランペットで吹くと、高音域では輪郭が際だちすぎたキツイ音色となり、中低音域ではまとまりのない拡散気味の音色になってしまう(フェリックス・メンデルスゾーンの『結婚行進曲』冒頭のファンファーレなど)。

ナチュラルトランペットのレプリカ楽器について。現代の再現楽器にはトーンホール(ごく小さな音孔)が3つ程度開けられたものが多く、穴から指を離すことで狙った倍音以外の倍音をある程度消去でき、それによって音の的中率を上げる工夫となっている。

歴史[編集]

原初(中世まで)[編集]

陶製のトランペット。300年ごろのもの。ペルーリマのLarco博物館蔵

トランペットの発達はトランペットだけに留まったものではなく、他の金管楽器と関連して発達してきた。金管楽器の祖先は新石器時代のメガフォン型ラッパにさかのぼり、エジプト王朝時代には金属製の軍用ラッパがすでにあった。この時期までの楽器はホルンともトランペットとも分類できず、むしろ単にラッパの祖先と説明した方が適切である。ただ、旧約聖書時代イスラエルにあったとされるヒャショゼラー (hasocera) やヨーベル (jubel) という20 cmぐらいの長さの直管ラッパと、後のアッシリア時代に描かれている直管のラッパなどは、比較的トランペットの始祖としての性格が強い。

トランペットが歴史上に記録されているものには、今から3,000年も前のエジプトの考古学的出土品の中に残されているものもある。当時の材質としては、金、銀、青銅のほか、土器、貝、象牙、木、樹皮、竹、瓢箪など、型も種々あり、長さの異なるものもあった。当時これらは主に宗教、政治上の儀式、軍隊や競技などにファンファーレや信号として使われていた。初期のトランペットの出せる音は、倍音のみに限られていた。古代の終わりから中世にかけて、楽器の構造・材質などの点では、ほとんど進歩がなく、10世紀から11世紀ぐらいに作られた楽器でも、楽器に彫刻するという程度であった。

ホルン(角笛)から分かれてはっきりトランペットの祖先といえる楽器は、ギリシアローマ時代になって初めて出現する。ギリシアではサルピンクス (salpinx)、ローマではテューバ (tuba) あるいはリトゥス (lituus) と呼ばれた。この楽器は管長がすでに1 mを超え、管は角と金属を継ぎ合せて作られ、マウスピースはカップ型であった。さらに青銅器時代に北欧にはルーレル (lurer) と呼ばれる2本1組として使われるラッパもあった。この楽器の管は円錐形で、むしろコルネットの祖先に見えるが、管がS字型に曲がっていることが形の上でトランペットあるいはトロンボーンの先駆とも言える。

中世・ルネサンス時代[編集]

10世紀頃ヨーロッパ各地においては、ツィンク (Zink) が作られるようになっていた。この楽器は象牙または木でできている管に、穴を開けて倍音以外の音も出せるようにしたものである。このシステムはペルシアからヨーロッパに流れてきたといわれている。当時は2~4つの穴が開けられていたものであったが、15から18世紀の間に、フルートからヒントを得て、表に6つと裏に1つ、合計7つの穴が開けられ、音階の演奏が可能になった。ツィンクは19世紀まで用いられていた。

12世紀に入ると管を接続することが可能になる。トゥーバ、リトゥスはビザンチンを通ってアラビアの影響を受け、非常に長い楽器が作られるようになり、管型が円筒に近づいていった。中世初期のこの円筒形のトランペットは、クラーロ (claro) あるいはブイジーヌ (buisine) と呼ばれていた。

1240年には、イタリアのフェデリーコ2世トゥベクタ (tubecta) という楽器を作らせた記録があり、この言葉がトロンベッタ (trombetta) あるいはその後ダンテ・アリギエーリの詩に初めて現れるトランペット (trumpet) という語の起こりである。トゥベクタもローマ時代のトゥーバという語の縮小形である。この楽器がどのような形であったか不明であるが、現在のトランペットにかなり近づいたS字形の管を持つ楽器は、1400年に最古の資料がある。

30年後には現代と同じ巻管のものが現れる。この頃の楽器は、現在のものよりベルが小さく、管の肉が厚く、マウスピースも重いことから、他の木管楽器や弦楽器と音色や音量の点で同等に演奏できたことを示している。当時巻管のものはクラリオン (clarion)、直管のものはトロンバ (tromba) との古文献の記載があるが、前者は高音域用のトロンバ(トランペット)のことで、楽器の構造が異なるところはない。後に高音域をクラリーノと呼称されるようになるが、一般的な形状のナチュラル・トランペットでも高音域を担当する楽器の呼称として便宜的に同名が使用されることが多かった。古典派の作曲家は、音域の低い古典派時代のトランペット・パートについても「クラリーノ」と楽譜に指定する例が多数ある。これは高音域を担当する本来のクラリーノ奏者がいなくなった時代に、その下の音域担当であったプリンティパル奏者が事実上トップ奏者となっていたことがひとつの理由であるが、高いパートの方をそのように呼ぶ習慣が18世紀中は残存したのである。

長い楽器は、基音(第1倍音)が低くなるので、現代の短管ものでは不可能な上の方の倍音が出しやすく、バロック時代に至っては簡単なメロディーが演奏できるようになった。だが、まっすぐ長い楽器では、戦争や狩猟などに用いるには非常に不便なため、14・15世紀に入ると、様々な形に曲げられるようになった。それでも依然として音程的には何の進歩もなく、相変わらず倍音しか出すことができなかった。

後になって、デミルーン (Demilune)・トランペットと呼ばれるものが作られるようになった。これはハンドストップ・トランペットのことである。デミルーンとは半月型という意味であるが、ホルンのストップ奏法のようにして、半音の変化を得ることができるものである。これによって今までの倍音のみの楽器でも、より多くの音が出せるようになった。この楽器は19世紀の前半にボヘミア方面でいくつかの工房があったが、ドイツ圏においては普及した形跡はない。

近世[編集]

ヘラルト・ドウの描いたトランペット吹き。1660年から1665年ごろ

16世紀に入って、トロンバ・ダ・ティラルシ(Tromba da Tirarsi, 独:Zugtrompete)という楽器ができた。これはスライド・トランペットのことで、18世紀後半までドイツの教会内で使用された。音程は長3度までしか下げられなかった。なお、19世紀の英国でよく用いられたトロンボーン型のスライド・トランペットとは動く部分が異なる。

また、この頃には戦場トランペット等の信号業務以外に、宮廷のトランペット楽団が各音域に分かれ、音楽的に合奏されるようになってきた。1511年の木版画には、フェルト・トランペット (felt-trumpet) とクラレータ (clareta) という2種の音域用のトランペットが現れる。前者は低次倍音で信号業務を行う戦場トランペットであり、後者がは高次倍音で野外トランペット楽団でトップパートを担当するための楽器と思われる。なお、トップパートが吹奏する高音域(高次倍音)は、トランペット奏者のギルド(同業者組合)における厳しい訓練期間を経て免許を取得した者だけが演奏を許されていたされていたものである。この音域は17世紀には「クラリーノ (Clarino)」と呼ばれるようになり、高音域用の楽器やそのパートを指す意味にも使われることがあるものの、その意味するところはあくまで「高音域」のことである。なお、高音域は音階における倍音の間隔が狭いため、協奏曲などの旋律を吹奏することができ、宮廷の権威の象徴として珍重された。ドレスデンでは20人程のトランペット奏者でミサやテ・デウムが演奏されていたこともある。なお、「クラリーノ」の音域は、自治権が認められた帝国自由都市等の都市楽士も吹奏可能であったものの、基本的には王侯貴族の前でしか吹奏が許されておらず、特権的なものであり、宮廷に仕えるトランペット奏者は給与面で他の楽器奏者よりも厚遇された。そのため、ことに17世紀以降、その奏者は高い技巧を獲得して室内での旋律的演奏を行うようになり、室内トランペット奏者、コンチェルト・トランペット奏者、音楽的トランペット奏者とも呼ばれるようになった。これと並行してオーケストラではクラリーノ担当奏者を含むトランペット・コー(野外トランペット楽団)の最小編成(ティンパニ含む)が祝典的な機会に編入されることが多くなり、18世紀後半には定席を得た。この中での高音域の使用は1780年頃まで見られる。なお、野外トランペット楽団における高音域の使用は旋律的ではなくなるものの19世紀までドイツで見られた。

1760年、ドイツのケールベルがクラッペン・トランペットを発明した。その楽器にはいくつかの鍵(キー)付きの穴があったが、その穴は大きく、管長の実態を変えるといういわばリコーダー的な理屈によるものである。前述のとおりクラリーノという楽器として誤解の原因を作ったかもしれない現代のレプリカ楽器である渦巻き型トランペットには小さな穴が3つ空けられているが、そのような小さな穴のある当時の実物や古文献が発見されたことはない。また、さらにごく小さな穴を3つ程度開けて音色をある程度保ったまま不要な倍音を消去し、狙う倍音の的中率を上げる方法が別に考案されたが、それも20世紀後半以降のことである。

近代[編集]

19世紀初頭、ドイツのブリューメルが、カステン・ヴェンティル (Kasten Ventil) を発明した。この楽器は2つのバルブから出来ていて、第1バルブは1音、第2バルブは半音下げることが出来た。1825年にシェスターが作ったカステン・ヴェンティルは、すでに3つのバルブが付いている。ヴェンティルとはドイツ語で弁のことである。

さらに1827年にはフランス人のラバイェによってピストンが発明された。また、ウィーンではウールマンによってウィンナー・ヴェンティルが発明された。1832年にウィーンで、ヨセフ・リードルがカステン・ヴェンティルを改良し、初めてロータリー式を発明した。一方ベルリンでは1857年にモーリッツがプンペン・ヴェンティルを発明し、これはベルリナー・プンペンと呼ばれた。そして1839年にパリにおいて、ペリネが現在のものとほとんど同じ3本ピストンのトランペットを発明した。一応形の上では完成された楽器といえたが、まだ問題点があったらしく、ベルリオーズリヒャルト・ワーグナーは、この楽器の発明後もあえてナチュラル・トランペットを使い、旋律的な部分はコルネットを使用している。19世紀のバルブを持つ長管のトランペット(F管が一般的)はバルブ付きとはいえ、管長は現代のトランペットよりも長く、現代のヘ調(F管)のアルト・トランペットと同じ長さでありながら音域はその1オクターブ上の領域であった。ナチュラル・トランペットにバルブ装置を付けたという発想の楽器で、引き続き高次倍音を用いていたために旋律を奏する際の音の的中率は低次倍音を使用しているコルネットに及ばなかったのである。今日のトランペットは低次倍音を使用しているコルネットにその範を求めて改良開発されたものである。

機構の進化[編集]

管長をまったく変えることのできなかったナチュラル・トランペットに最初の改良が行われたのは15世紀である。これはマウスピースのパイプ部分を長くして管長を多少コントロールする手法であった。これが後にクルーク・システム(継ぎ足し管)に発達し、19世紀にはスライド・トランペットへと進化した。このスライド・システムがトランペットに採用されている実例は、現在ベルリンの博物館に所蔵される1651年作の楽器が最古である。

一方、1760年にホルンに鍵(音孔)を付ける試みが行われたことから、1801年にはアントーン・ヴァイディンガーによってトランペットにも鍵が付けられたが、これは音色や音程への影響が酷く、不成功に終わった。1788年にイギリスでトランペットにバルブを1つ付けて管の調を半音変えることに成功した。これが後のバルブ・システムの先駆である。現在トランペットに使われる3本ピストンのバルブ・システムはブレイクレーの創案によるブーシー・オートマティックと呼ばれるシステムで、この他にも数種考案されたが、いずれも実用化されなかった。現在のバルブ・システムのトランペットにはっきりと応用されるようになったのは1820年頃からで、1850年には完全に普及したものとなった。

バルブ・システムのトランペットの初期は、E♭とB♭が主流を成していたが、この他にも低音楽器としてテナー・バリトン・バス・コントラバスといった楽器が作られていた。1850年頃にはF管のアルト・トランペットも作られた。しかし、これらの中で現在に残ったのはB♭管とC管のトランペットと、バリトン・トランペットからワーグナーの示唆で改良された、現在でいうバス・トランペットの3種である。

著名なトランペット奏者[編集]

クラシック[編集]

クラシック音楽の演奏家一覧#トランペット奏者も参照のこと。

日本以外[編集]

日本[編集]

ジャズ[編集]

ロックその他[編集]

主なメーカー[編集]

  • ヤマハ
  • ヴィンセント・バック:1961年よりセルマー社傘下。
  • レイノルド・シルキー米国
  • Calicchio(カリキオ):米国
  • KING(キング):米国。旧UMI (United Musical Instruments) グループ。
  • C.G.CONN(シージーコーン):2003年にセルマー社と合併。
  • Benge(ベンジ):米国。旧UMIグループ。
  • Holton(ホルトン):米国。1964年にルブラン社に経営権を委託、2011年現在はコーン・セルマーグループ傘下。
  • Jerome Callet(ジェローム・カレ):スーパーチョップス奏法が特徴の米国の同名トランペット奏者のメーカー。2011年現在では製造中止。
  • Stomvi(ストンビ):スペインの貴金属メーカーであるホニバ社のブランド。
  • BESSON(ベッソン):英国のメーカー。金管バンド用の楽器がメイン。
  • GETZEN(ゲッツェン):米国のメーカー。トロンボーンがメイン。
  • B&S(ビーアンドエス):ドイツのメーカー。
  • JUPITER(ジュピター):台湾のメーカー。
  • XO(エックスオー):株式会社グローバルが設計し、台湾のJUPITER社で生産したものを厳選、チューニングした楽器。
  • Marcato(マルカート):下倉楽器が台湾で製造している楽器ブランド。
  • BSC(ブラスサウンドクリエーション):ルクセンブルク在住の日本人が主宰するハンドメイドトランペットメーカー。
  • Monke(モンケ):ドイツ・ケルンのメーカー。主にロータリートランペットを製造。
  • Lechner(レヒナー):オーストリアのメーカー。主にロータリートランペットを製造。
  • Berndt C. Meyer(マイヤー):ドイツ・ドレスデンのロータリートランペットのメーカー。F.A.ヘッケルの復元モデルやダブルトランペットなどを製造。

教則本[編集]

ジャン=バティスト・アルバン(アーバン)による「アーバン金管教本」が古くから標準的な教則本として用いられてきた。アルバン自身はこの本をコルネットのために書いているが、トランペットやコルネットのみならずトロンボーンなど他の金管楽器の教則本としても使われている。多くのエチュード、小曲と、「12の幻想曲とアリア」と題した12曲の演奏会用独奏曲が含まれている。「12の幻想曲とアリア」の中には『ヴェニスの謝肉祭の主題による変奏曲』など、現代のプロ奏者の演奏会でも演奏される音楽性の高い曲も多い。

日本ではエチュード、小曲と独奏曲、独奏曲のピアノ伴奏譜の3巻に分けて全音楽譜出版社から出版されている。

  • アーバン金管教本1 ISBN 4-11-548211-7 J.B.アーバン著、E.F.ゴールドマン、W.M.スミス編
  • アーバン金管教本2 ISBN 4-11-548212-5 J.B.アーバン著、E.F.ゴールドマン、W.M.スミス編
  • アーバン金管教本3 ISBN 4-11-548213-3 J.B.アーバン著、E.F.ゴールドマン、W.M.スミス編

2009年、全音楽譜出版社より改訂版が発売された。

脚注[編集]

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  1. ^ ヤマハ 「トランペットのしくみ」

関連項目[編集]

外部リンク[編集]