カルメン (オペラ)

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カルメン(ハンガリーの切手)

カルメン』(Carmen)は、ジョルジュ・ビゼーが作曲したフランス語によるオペラである。

概説[編集]

ジョルジュ・ビゼー

オペラ『カルメン』は、プロスペル・メリメの小説『カルメン』を基にしたもので、アンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィがリブレットを作った。音楽(歌)の間を台詞でつないでいくオペラ・コミック様式で書かれている。全4幕。1875年パリオペラ=コミック座で初演されたが不評であった。ビゼーは初演から間もなく死去するが、その後エルネスト・ギローにより台詞をレチタティーヴォに改作されて上演され、人気を博すようになった。フランス歌劇の代表作として世界的に人気がある。近年ではオペラ・コミック様式に復元した原典版である「アルコア版」による上演も行われる。現行の主要な版は原典版のほか、オペラコミック版、グランド・オペラ版、メトロポリタン歌劇場版がある。ギロー版はフランス語ネイティブ以外のキャストでも台詞に訛りが付くのを避けられることもあり現在でも使用されている。更に、オスカー・ハマースタイン2世の手により舞台を第二次世界大戦中のアメリカ南部に、登場人物を全て黒人に変え、使用楽器や曲順にも変更を加えてミュージカルカルメン・ジョーンズ』として改作されたハマースタイン版なども存在する。

日本でも浅草オペラの演目として上演されていたが、戦後は藤原歌劇団によって数多く上演され、二期会でも川崎静子が大きな当たり役とし、今なお日本国内で最もポピュラーなオペラ作品として親しまれている。世界的にも一、二を争う人気のオペラであり、特に親しみやすいメロディが豊富なことが特徴で、これほどひんぱんにオーケストラ用の組曲がコンサートや録音で演奏されるオペラは他にはない(強いて言えば組曲ではないが接続曲ワルツの人気が高い「ばらの騎士」か、独自抜粋がしばしば行われるヴァーグナー作品ぐらいであろう)。

登場人物[編集]

以降は版によって増減される

楽器編成[編集]

フルート2(2本ともピッコロ持ち替え)、オーボエ2(2番はコーラングレ持ち替え)、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、コルネット2、トロンボーン3、ティンパニトライアングルタンブリン大太鼓シンバル小太鼓ハープ弦五部(14型)

  • なお、オーケストラ内のコルネット、トロンボーンは舞台上のバンダとしても使用される(第2幕・第4幕)。

演奏時間[編集]

約2時間40分(カット無しで各55分、45分、40分、20分)

あらすじ[編集]

セビリャの旧タバコ工場、現在は大学になっている。

第1幕[編集]

セビリアの煙草工場でジプシーの女工カルメンは喧嘩騒ぎを起こし牢に送られることになった。しかし護送を命じられた伍長ドン・ホセは、カルメンに誘惑されて彼女を逃がす。パスティアの酒場で落ち合おうといい残してカルメンは去る。

第2幕[編集]

カルメンの色香に迷ったドン・ホセは、婚約者ミカエラを振り切ってカルメンと会うが、上司との諍いのため密輸をするジプシーの群れに身を投じる。しかし、そのときすでにカルメンの心は闘牛士エスカミーリョに移っていた。

第3幕[編集]

冒頭で、ジプシーの女たちがカードで占いをする。カルメンが占いをすると、不吉な占いが出て結末を暗示する。 密輸の見張りをするドン・ホセを婚約者ミカエラが説得しに来る。闘牛士エスカミーリョもやってきて、ドン・ホセと決闘になる。騒ぎが収まった後、思い直すように勧めるミカエラを無視するドン・ホセに、ミカエラは切ない気持ちを一人独白する。カルメンの心を繋ぎとめようとするドン・ホセだが、カルメンの心は完全に離れていた。ミカエラから母の危篤を聞き、ドン・ホセはカルメンに心を残しつつ、盗賊団を去る。

第4幕[編集]

闘牛場の前にエスカミーリョとその恋人になっているカルメンが現れる。エスカミーリョが闘牛場に入った後、1人でいるカルメンの前にドン・ホセが現れ、復縁を迫る。復縁しなければ殺すと脅すドン・ホセに対して、カルメンはそれならば殺すがいいと言い放ち、逆上したドン・ホセがカルメンを刺し殺す。

主要曲[編集]

  • 第1幕への前奏曲
  • ハバネラ「恋は野の鳥」
  • セギディーリャ
  • 第2幕への間奏曲「アルカラの竜騎兵
  • ジプシーの歌
  • 闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」
  • 花の歌
  • 第3幕への間奏曲
  • カルタの歌
  • ミカエラのアリア
  • 第4幕への間奏曲「アラゴネーズ」

など

抜粋・編曲作品[編集]

カルメンの石板画

第1幕への前奏曲が独立した管弦楽曲として演奏される機会が多いほか、それを含む前奏曲、間奏曲、アリアなどを抜粋編曲した組曲や独奏曲も演奏される。

ホフマン版組曲[編集]

一般的に『カルメン』組曲として知られているのは、フリッツ・ホフマンの選曲・編曲によるものである。第1組曲と第2組曲がある。

第1組曲

前奏曲と間奏曲を中心に構成される。

  • 前奏曲〜アラゴネーズ (第1幕への前奏曲の後半部分、第4幕への間奏曲)
  • 間奏曲 (第3幕への間奏曲)
  • セギディーリャ 
  • アルカラの竜騎兵 (第2幕への間奏曲)
  • 終曲(闘牛士) (第1幕への前奏曲の前半部分)
第2組曲

アリアや合唱入りの曲をオーケストラ用に編曲した6曲で構成される。

  • 密輸入者の行進
  • ハバネラ
  • 夜想曲 (ミカエラのアリア)
  • 闘牛士の歌
  • 衛兵の交代(子どもたちの合唱)
  • ジプシーの踊り

ビゼー自身によるものでないこともあって、指揮者によっては演奏順を変えたり、第1・第2組曲を1つの組曲として演奏したり、2つの組曲から適宜選曲してオリジナルの組曲を編むことも自由に行なわれている。入手し易いCDでホフマンの曲順通りに演奏しているものは、シャルル・デュトワ指揮・モントリオール交響楽団だけである。レナード・バーンスタイン指揮・ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏はホフマンの編曲した全曲を収録しながら、第1組曲にて一部の曲順を入れ替えている(第1組曲を締めくくるはずの「闘牛士」=第1幕前への奏曲の前半部分を、組曲の冒頭へ持ってきている。そのためバーンスタイン盤の第1組曲は「アルカラの竜騎兵」にて締めくくられる)。

シチェドリン版『カルメン組曲』[編集]

ソ連の作曲家シチェドリン1967年に編曲した、13曲で構成されるバレエ組曲。大弦楽オーケストラと、ラテンパーカッションなども含む大量の打楽器を使う異色の編曲である(楽器編成参照)。ビゼーの他の作品(『アルルの女』〜「ファランドール」など)が挿入されている他、「アルカラの竜騎兵」が3拍子に変更されている、「闘牛士の歌」の「サビ」がなかなか出てこない、などさまざまな仕掛けがなされている。

曲の始まり(序奏)は、弦楽器の pp の持続音の上に、チューブラーベルズ(チャイム)が「ハバネラ」の旋律の断片を暗示するというもので、「編曲」というよりは、ビゼーの『カルメン』の素材を借りたシチェドリンの創作に近い。この印象的な序奏は組曲の最後にも登場し、曲全体はチューブラーベルズの余韻と、弦楽器の ppp による変ニ長調の和音で終わる。

編曲の経緯[編集]

1967年に『カルメン』をモチーフにしたバレエが上演されることになり、主演のプリマドンナだったマイヤ・プリセツカヤは最初ショスタコーヴィチに、次いでハチャトゥリアンに編曲を依頼したが、両者とも「ビゼーの祟りが怖い」という理由で断り、仕方なくプリセツカヤの夫であったシチェドリンが編曲に取り掛かることになった。肝心のバレエの初演はブレジネフらの横槍もあって大失敗したが、後に国外で評価されるようになった。

構成[編集]

シチェドリン版と原曲とでは名前に差異がある。英語がシチェドリン版での曲名で、日本語が原曲の該当する部分である。

  • Introduction:ハバネラ
  • Dance:アラゴネーズ
  • First Intermezzo:カルメンの登場の待ち望む男たちの場(第1幕)
  • Changing of the Guard:アルカラの竜騎兵
  • Carmen's Entrance And Habanera:カルメンが登場した場面とハバネラ
  • Scene:第2幕の幕切れの一部(スニガが密輸業者に捕えられる場面)→タバコ工場から女性工員が出てくる場面→セキディーリャ
  • Second Intermezzo:第3幕への間奏曲
  • Bolero:ファランドール(「アルルの女」より)の一部
  • Torero:闘牛士の歌
  • Torero and Carmen:ジプシーの踊り(「美しきパースの娘」より)
  • Adagio:第1幕前奏曲後半と「花の歌」
  • Fortune-telling:カルタ占いの場
  • Finale:行進曲と合唱→ドン・ホセとカルメンの二重唱の手前の場面→第2幕フィナーレより→ドン・ホセとカルメンの二重唱→運命のテーマ→カルメンの最初のセリフの場面→Introduction

演奏時間[編集]

  • 約45分(スコアの表記による)

楽器編成[編集]

グールド版『カルメン』[編集]

モートン・グールドが全曲から20曲の名旋律を取り出し、自身による編曲を施した演奏時間50分弱の抜粋版を作っている。グールド版は組曲ではなく「オペラの短縮版」と位置づけられており、声楽部分はコルネットバリトン(バリトン・ホルン)各2に割り当てられている。

構成[編集]

  • 前奏曲
  • プロローグ
  • 街の子供たち
  • タバコ工場の女たち
  • ハバネラ
  • 手紙の場
  • セギディーリャ
  • アルカラの竜騎兵
  • ジプシーの踊り
  • 闘牛士の歌
  • タンブリンの歌
  • 花の歌
  • 第3幕への間奏曲
  • 密輸入業者の行進
  • カルタ占いの場
  • ミカエラのアリア
  • アラゴネーズ
  • 行進曲と合唱
  • 二重唱(ドン・ホセとカルメン)
  • フィナーレ

セレブリエール版『カルメン交響曲』[編集]

ホセ・セレブリエールが全曲から12の"場面"を選んで管弦楽のために再構成した。

構成[編集]

  • 前奏曲
  • 騎兵隊
  • ハバネラ
  • セギディーリャ
  • フガート
  • 間奏曲 1
  • 闘牛士
  • 間奏曲 2
  • アンダンテ・カンタービレ
  • 間奏曲 3
  • 結婚式
  • ジプシーの踊り

その他[編集]

『カルメン』の名旋律を使った『カルメン幻想曲』と呼ばれる作品がいくつかある。

また、ヨハン・シュトラウス2世の弟エドゥアルト・シュトラウスが名旋律をたばねたカドリールを作曲している。『カルメン』の上演が初めて成功したのは1879年ウィーンでの上演だとされており、その人気にあやかったものと言われている。

他に、ピアニストのヴラジーミル・ホロヴィッツが「カルメンの主題による変奏曲英語版」を作曲している。

メリメ原作『カルメン』からの改変について[編集]

当初、ビゼーは、メリメの原作に忠実な脚本を望んだが、主人公が盗賊であること、殺人によって劇が締めくくられること、などの内容が、オペラ・コミックを上演する劇場にふさわしくないと、劇場側から拒否され、やむなく原作の大幅な改変がなされた。結果としてこの改変が功を奏し、今日まで続く人気につながっているとみることもできる。

オペラと原作の主な相違点

  • 「ミカエラ」はオペラの脚本で追加された。
  • ダンカイロおよびその一味
    • オペラでは「密輸団」とされているが、原作では、強盗・殺人を躊躇なく行う犯罪集団という色合いが強い。
    • ホセが一味に加わった際は、ダンカイロは服役中である。その後ダンカイロが出所するが、このときホセは、カルメンがダンカイロの情婦であることを初めて知ることとなる。
  • ドン・ホセ
    • 原作では、ホセがバスク地方の出身である点が強調されている。差別的な扱いを受け苦労することも少なくない状況で、故郷の母を安心させるために兵士として身を立てようと勤勉に働く姿が描かれている。また、逮捕されたカルメンは、ホセをバスク出身者であることを見抜き、自分もバスク出身者であると偽り、同郷の自分を見捨てるのか、と言いより、ホセに脱走の手伝いをさせる。
    • 原作では、カルメンをめぐって上官と言い争いとなり、激昂して上官を刺殺、そのまま軍を脱走し、ダンカイロ一味に身を寄せることになる。
    • その後も、躊躇なく窃盗・殺人を繰り返し、付近では有名なお尋ね者となっている。
    • ダンカイロともカルメンをめぐってナイフによる決闘を行うこととなり、彼を刺殺している。
  • 闘牛士
    • ホセをよそにカルメンと恋仲になるのは同じだが、その後、闘牛の際の事故で牛の下敷きとなり、再起不能の重症を負う。そのことを知ったホセが、よりを戻すためにカルメンを尋ねるが、説得に失敗し刺殺に至る。また、名前も異なる。
  • カルメン
    • 演出や歌手の演技にも左右されるが、一般的には「誇り高き女性」とされるオペラのカルメンとは異なり、原作では、男を騙したり悪事に手を染めることを厭わない性悪なあばずれ、という印象が強い。しかしながら、束縛されることを徹底して嫌い、自由であることを求めるところは変わっておらず、ほとんど改変されずにオペラでも使用されているカルメンの印象的な台詞は数多い。
  • ラストシーン
    • オペラでは闘牛場の場外だが、原作では山中の洞窟である。

演出について[編集]

  • モブ(群集)シーンが多いことが特徴として挙げられる。
    • 1幕 タバコ工場の女工達&それに群がる男達
    • 2幕 酒場の客
    • 3幕 密輸団
    • 4幕 闘牛士の一団と観客達
  • 劇中にフラメンコ舞踏を挿入する演出が頻繁に行われる。2幕冒頭や4幕前の間奏曲にあわせて踊ることが多く、また、オリジナルにはないフラメンコ用の曲を挿入して見せ場とする場合もある。
  • 4幕の闘牛士一団の行進のシーンは劇中でもっとも盛り上がる場面の一つであり、メトロポリタン歌劇場などの大劇場では、豪華絢爛な衣装を身に着けた多数の闘牛士と、本物の馬をも多数動員した、大掛かりな演出が行われる。一方、予算の限られた小公演では、このシーンを低コストでどのように作り上げるのかが大きな課題となる。

エピソード[編集]

ガッリ=マリーが扮するカルメン
  • 「第3幕への間奏曲」は劇付随音楽「アルルの女」から転用された。
  • 「ミカエラのアリア」は未完の歌劇「グリゼリディス」のためのアリアから転用された。
  • 現行版のハバネラは初演のカルメンを演じたセレスティーヌ・ガッリ=マリー(Célestine Galli-Marié, 1840年 - 1905年)の要請で急遽書かれたものである。彼女が一番の見せ場にしてはあまりに淡白なビゼーの原曲に難色を示したためである。結局、ビゼーは13回もの書き直しを余儀なくされた。しかし慣れないビゼーは急場の仕事と相俟って、ガッリ=マリーが勧めるままにキューバの作曲家「セバスティアン・イラディエル(Sebastian Yradier, 1809年 - 1865年)の "El Arreglito" をキューバの曲と知らぬまま流用してしまった。
  • 「衛兵の交代」は1987年まで京都競馬場の出走ファンファーレとして使用され、地方競馬でも笠松重賞用のファンファーレとして使用されていた、現在でも名古屋競馬場で使用されている(1小節のみ)。
  • 「アルカラの竜騎兵」の旋律と日本の軍歌「抜刀隊」(フランス人シャルル・ルルー作曲)との類似が指摘されている。
  • 「カルメン」の初演は一般的には失敗であったと言われているが、その後の客入りと評判は良く、過去のビゼー作曲のオペラが10回に満たない上演回数で打ち切られることも少なくなかった中、「カルメン」の上演回数は、ビゼーが死去した時点で既に30回を超えていた。また、ビゼーの生前に、「カルメン」のウィーン公演、およびそのためのレチタティーヴォを廃したグランドオペラ版作曲が依頼されており、ビゼー自身がこの契約を交わしている(ビゼーが死去したため、グランドオペラ版の作曲は、友人のギローが行った)。ビゼーは、「カルメン」の初演失敗の後、失意のうちに没した、と言われることがあるが、そうではなく、少なくとも、「カルメン」がこれまでの自分の作品の中では一番のヒット作となるであろうという予兆は生前の間に感じていたのではないか、と考えることもできる。
  • 「カルメン」は、一般的には、全4幕で構成されるオペラとされるが、3幕4場のオペラ、とすることもある。この場合は、山中の密輸団のシーンが3幕1場、最後の闘牛場のシーンが3幕2場、となる。

関連項目・宝塚歌劇[編集]

ドン・ホセの一生[編集]

月組[1][2]公演。併演は『タイムマップ[1][2]』。

宝塚大劇場公演[編集]

形式名は「ミュージカル・プレイ[1]」。20場[1]

公演期間は1971年2月27日から3月24日[1]まで。新人公演は同年3月13日[1]

スタッフ[1]

主な出演・本公演[3]

主な出演・新人公演[1]

中日劇場公演[編集]

公演期間は1971年10月9日から10月18日[2]まで。

主なスタッフに白井鐡造[2]がいる。

激情-ホセとカルメン-[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d e f g h 60年史別冊 1974, p. 105.
  2. ^ a b c d 90年史 2004, p. 297.
  3. ^ 60年史別冊 1974, p. 104.

参考文献[編集]

外部リンク[編集]