交響曲第8番 (シューベルト)

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フランツ・シューベルト交響曲第8番ハ長調は、1825年作曲された4楽章から成る交響曲である。

目次

[編集] 解説

[編集] 概要

シューベルトの交響曲第8番は、古くより番号が様々に呼ばれ、はじめは「未完のものを除いて7番目」なので第7番と呼ばれていた。次いで、未完のもの2曲(ロ短調のもの、いわゆる「未完成」とホ長調のもの)を含めて第9番と呼ばれたこともある。最近では、未完の交響曲のうち「ロ短調交響曲」だけを数に入れ、国際シューベルト協会のように第8番とすることが多くなってきている。しかし混乱を招かないように、第8(9)番と紹介する例も多い。

本交響曲は通称「ザ・グレート」(The GreatDie große C-Dur)と呼ばれているが、この呼び名はシューベルトの交響曲にハ長調の作品は第6番と第8番の2曲あり、第6番の方が小規模であるため「小ハ長調」と呼ばれ、第8番が「ハ長調」と呼ばれることに由来する。

この「ザ・グレート」はイギリスの楽譜出版社によって付けられたものだが、本来は前述の通り「第6番に比較して大きい」といった程度の意味合いしか持たず、「偉大な」という意味は持たない。しかしながらそのスケールや楽想、規模は(本来意図したものではないにせよ、偉大と言うニュアンスでも)「ザ・グレート」の名に相応しく、現在ではこの曲の通称として定着している。

指示通りに演奏してもゆうに60分以上かかる大曲であり、シューマンは曲をジャン・パウルの小説にたとえ、「すばらしい長さ (天国的な長さ)」[1]と賞賛している。ベートーヴェンの大規模交響曲と力強さとを受け継ぎ、彼独自のロマン性を加えて完成された作品となっており、後のブルックナーマーラー20世紀ショスタコーヴィチなどの交響曲につながっている。

[編集] シューマンによる再確認

完成直後の1826年、シューベルトは同曲の楽譜をウィーン楽友協会へ献辞を添えて提出したが、わずかな謝礼こそ得たものの、演奏困難との理由で演奏されることはなかった。1828年にも同協会に提出したが、同様に演奏されることはなかった。

この作品は、シューベルトの死後、1839年にシューマンが自筆譜を確認して世に知られるようになった。前年にシューベルトの墓を訪れていたシューマンは、同年1月1日にウィーンのシューベルト宅を訪れるまでは、シューベルトはあくまで歌曲の作曲家という認識しか持っていなかった。彼の部屋を管理していた兄フェルディナントはシューベルトの死後そのままに仕事机を保管していた。シューマンは、その机の上にあった長大な交響曲を見て、シューベルトを歌曲の作曲家と見ていた自らの認識を覆すその作品に驚愕した。シューマンはぜひこれを演奏したい、楽譜をライプツィヒの盟友メンデルスゾーンに送りたいとシューベルトの兄に懇願し、ようやく許可を取り付けてメンデルスゾーンのもとに楽譜が届けられたという。

[編集] 『グムンデン・ガスタイン交響曲』

この交響曲はかつては直筆譜の日付から1828年の作曲と考えられてきた。しかし用紙のすかし模様が25年ごろに用いられていたものと一致すること、28が25の読み間違いの可能性があることなどの理由から現在では1825年から26年にかけての作曲であると考えられている。そのためこの作品は友人の回想にのみ登場する、いわゆる『グムンデン・ガスタイン交響曲』(D 849) の浄書にあたるものとされている。

[編集] データ

[編集] 構成

[編集] 第1楽章

Andante. Allegro ma non troppo

ハ長調、2/2拍子、序奏付きソナタ形式。ホルンの伴奏を伴うユニゾンでおおらかに始まる。この開始部分はシューマンの交響曲第1番「春」やメンデルスゾーンの交響曲第2番のモデルとなっている。この序奏部分が楽章全体を構成する主要なモチーフを提示している点に大きな特徴がある。第1主題は音の大きく動く付点のリズムと3連符に特徴がある。第2主題が5度上の属調であるト長調ではなく、3度上のホ短調で書かれているのも大きな特徴。変イ短調に始まるトロンボーンの旋律が第3主題とされることもあるが、動機としては序奏の旋律の断片である。リズミカルなモチーフを主体として主題が構成されている点には、尊敬してやまなかったベートーヴェンの特に交響曲第7番と多くの共通点を持つ一方で、大胆な転調や和声進行にはシューベルトらしさが満ちあふれている。第662小節から最終685小節にかけて、序奏の主題が、音価を二倍に引き伸ばされた形で(結果として序奏と同じテンポに聞こえる)2度力強く再現され、楽章を終える。なお、この手法をシューベルトは交響曲第1番第1楽章ですでに用いている。

なお、初版においては拍子が4/4拍子に改竄されていた。現在では、本来の自筆譜通り(2/2)に戻されている。

[編集] 第2楽章

Andante con moto

イ短調、2/4拍子、展開部を欠くソナタ形式。ABABAの形式となっている緩徐楽章。主としてオーボエが主旋律を担当するAは、スタッカートが特徴のリズミカルな動機を主体とし、かつ3つの異なる旋律から構成され、ピアノとフォルテシモの頻繁な交代を特徴としている。Bはヘ長調で書かれ交響曲第7番 (シューベルト)第一楽章と同じ調性関係)、Aとは対照的に息の長いレガートを主体とした下降旋律を特徴とする。シューベルトの面目躍如たる美しい旋律。対旋律の美しさも特筆に価する。第148小節から12小節に渡るホルンと弦との対話はシューマンが絶賛した。再現部では、Bは主調の同主長調であるイ長調で再現する。第330小節からのコーダではAが短縮された形で再現する。

[編集] 第3楽章

Scherzo. Allegro vivace

ハ長調、複合三部形式、3/4拍子の大掛かりなスケルツォ。後のブルックナーの後期作品を思わせるような息せき切るような主部の旋律と、シューベルトらしい旋律に溢れた雄大な中間部トリオイ長調)の対照が効果的である。

[編集] 第4楽章

Finale. Allegro vivace

ハ長調、2/4拍子、自由なソナタ形式。1,155小節にも及ぶ長大なフィナーレ。第1楽章同様付点のリズムと3連符、そしてこの楽章ならではのオスティナートと強弱のコントラスト、激しい転調に特徴があり非常に急速で息を付かせない。ところどころ同じ和音が数小節にわたって続くところを如何に聞かせるかが、演奏者の腕の見せ所である。

開幕の付点音符を素材とするハ長調の第1主題は非常に躍動的で、確保された後ト長調で抒情的な第2主題が木管によって朗々と歌われる。劇的な展開の後に変ホ長調でこの曲の真の展開部。クラリネットが奏する第1・2主題と全く異なる旋律はベートーヴェンの交響曲第9番の「歓喜の主題」が改変されて引用されており、ベートーヴェンに対するオマージュと考えられる。歓喜の歌も含めた展開、やや変型された再現部の後、コーダでは2つの主題と歓喜の歌が組み合わさって堂々たる終結を迎える。

[編集] 演奏上の問題

第1楽章においては、序奏がコーダで再現されるところで、両者のテンポ設定をどうするかが問題となる。自筆譜の拍子及びメトロノームに忠実に基づいてテンポ設定をすると、コーダが速すぎて楽章全体のクライマックスを破壊しかねない。

そして上で述べたとおり終楽章の同じ和音の連続をどう処理するかが問題となる。

また、シューベルトの多くの作品で見られることだが、自筆譜に書かれた記号(>だが、アクセントにしては異様に長く、デクレッシェンドにしては短い)はアクセントなのかデクレッシェンドなのか判然としない書き方も見られる。「どちらでもない」演奏が一般的だが、時に極端な解釈も見られる。特にフィナーレの最後の小節に関しては、それまでの楽曲の流れを重視して強奏で終わることが通例となっている。

[編集] 脚注

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  1. ^ himmlische Länge. Robert Schumanns Artikel zu Schuberts C-Dur Symphonie 参照。日本では「天国的な長さ」として紹介されていることが多いが、「天国 Himmel」の形容詞形 himmlisch は「素晴らしい」という賞賛の表現でもある(現代英語の heavenly にも同種の意味がある)。また、当時、婚約者であったクララに宛てた私信にもこの表現が使われている。両者の前後の文脈を見ても、字義通りに天国に喩えたと読むのは唐突で不自然であり、議論の余地がある。

[編集] 参考文献

[編集] 外部リンク

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