交響曲第2番 (メンデルスゾーン)

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交響曲第2番 変ロ長調讃歌』(Sinfonie Nr. 2 in B-Dur op. 52 MWV A 18 "Lobgesang")作品52、MWV A 18は、フェリックス・メンデルスゾーン1840年に作曲した独唱合唱を伴う交響曲

作曲順では、交響曲全5曲中、4番目であるが、出版が2番目であるため第2番と表記される。ベートーヴェン交響曲第9番を彷彿とさせる独唱と合唱の付いたこの交響曲は、初演当初人気を博したが、それ以降は注目を集めることも少なくなった。しかし、1958年ライプツィヒに国際メンデルスゾーン協会設立後は再評価され、再び脚光を浴び知られるようになった。

作曲の経緯[編集]

1840年6月に印刷技術を発明したヨハネス・グーテンベルクの生誕400年を記念する祝典がライプツィヒで開催され、メンデルスゾーンはこの祝典のために2つの作品を作曲し、ひとつは男声合唱と吹奏楽のための『祝典歌』(Festgesang MWV D 4)[1]と本作である交響曲第2番である。

メンデルスゾーンは前年の1839年にイギリスの友人カール・クリンゲマンに宛てた出紙(1月1日付け)の中で、「変ロ長調の交響曲」の構想について述べており、この時点では単なる純器楽の交響曲で、現在のような大規模な作品とすることは当初考えていなかったという。しかし1839年末には作曲に着手し、1840年に記念祭を迎えた時点では、交響曲の3つの楽章はほぼ書き上げられていたという[2]。第2楽章のトリオ部分だけは、全体が「讃歌」として発展することになった際に対位法的に補筆された。

またメンデルスゾーンは「讃歌 - 聖書の言葉による交響カンタータ(Sinfonie-Kantate)」という題を自ら名付けており、「讃歌」は彼の考案で、「交響カンタータ」は友人のカール・クリンゲマンの発案である[2]。総譜には作曲者により作品のモットーともいえるルターの言葉が記入されている。

歌詞はマルティン・ルターがドイツ語訳にした旧約聖書によるが、メンデルスゾーン自身により順序を入れ替えるなどの改編を加えたという。

初演[編集]

初演は1840年6月25日に、メンデルスゾーン自身の指揮でライプツィヒ聖トーマス教会で行われた。この初演には友人のシューマンも出席していた。初演後は同地で3回演奏され、そのうちの2回はザクセン国王フリードリヒ・アウグスト2世の希望によるものであった。その後メンデルスゾーンは直ちに声楽部分の改訂を行い、11月に改訂版(または現行版)を完成。こちらの初演は1840年12月3日にゲヴァントハウスで行われた。翌1841年に出版され、アウグスト2世に献呈されている。

編成[編集]

声楽
管弦楽

演奏時間[編集]

約60分ないし70分(第1部:約27分、第2部:約42分)。初演版の約60分に対して改訂版は約70分と長くなっている。

構成[編集]

作品は全2部10曲から構成される。第1部は3楽章のシンフォニア、第2部はカンタータ楽章となっている。なお改訂版では第6曲・第8曲・第10曲が書き足されており、原典版とはテクストが異なる。

第1部[編集]

第1曲 シンフォニア(Sinfonia
  • 第1楽章 マエストーソ・コン・モート-アレグロ(Maestoso con moto - aregro
序奏部のマエストーソ・コン・モート(変ロ長調、4分の4拍子)は3本のトロンボーンによって厳かに奏され始める。この序奏は全曲の基本主題であり、祝典的な役目も果たす。また第10曲の終結部でもこの主題が登場する。主部のアレグロ(変ロ長調、4分の4拍子)はソナタ形式による。クラリネットのカデンツァののち、アタッカで次の楽章へ切れ目なく移行する。
  • 第2楽章 アレグレット・ウン・ポコ・アジタート(Allegretto un poco agitato
ト短調、8分の6拍子。自由な三部形式による。スケルツォに相当する楽章(ただし明記されていない)で、トリオはト長調
  • 第3楽章 アダージョ・レリジオーソ(adagio religioso
ニ長調、4分の2拍子。三部形式による。中間部はニ短調。第3楽章の動機は第2部でも活用される。

第2部[編集]

  • 第2曲 合唱「息づくものはすべて、主をたたえよ!」Alles, was Odem hat, lobe den Herrn
アレグロ・モデラート・マエストーソ-アニマート、ニ短調。管弦楽による序奏(16小節まで)が置かれている。この序奏は第3楽章の中間部のリズムを活用している。17小節から合唱が歌い、モルト・ピウ・モデラート(139小節以降)からはソプラノ独唱と女声合唱が「わが心よ、わが内なるものよ、主をたたえよ」を歌う。詞は詩篇150:6、33:2(主を讃えよ、弦を奏で、歌え、というこの曲のコンセプトと重なる歌詞が登場する)、145:21、103:1-2による。
  • 第3曲 アリア「お前たちは主により救済されたと唱えよ」Saget es, die ihr erlöst seid
アレグロ・モデラート、ト短調。テノール独唱によるレチタティーヴォとアリア。詞は詩篇107、56:8/119:50による。
  • 第4曲 合唱「お前たちは主によりて」Saget es, die ihr erlöset seid
ア・テンポ・モデラート、ト短調。詞は詩篇107/56による。
  • 第5曲 ソプラノと合唱「私は主を待ち焦がれ」Ich harrete des Herrn
アンダンテ、変ホ長調。ソプラノ二重唱と合唱。第5曲はシューマンがとくに絶賛した部分であり、批評も残している。詞は詩篇40:2/5による。
  • 第6曲 アリア「死の絆は、われらを囲み」Stricke des Todes hatten uns umfangen
アレグロ・ウン・ポコ・アジタート、ハ短調。テノール独唱とソプラノのレチタティーヴォによる。詞は詩篇116:3、エフェソ5:14、イザヤ21:11-12による。
  • 第7曲 合唱「夜は過ぎ去ったのだ」Die Nacht ist vergangen
アレグロ・マエスト-ソ・エ・モルト・ヴィヴァーチェ、ニ長調。詞はローマ書13:12による。
  • 第8曲 合唱「今やみなは心と口と手をもって」Nun danket alle Gott
コラール.アンダンテ・コン・モート-ウン・ポコ・ピウ・アニマート、ト長調。ルター派の有名なコラールが用いられ、8声部の無伴奏で歌われる。ただしコラールの歌詞はマルティン・リンカルトドイツ語版が1636年に作ったものである[3]
  • 第9曲 アリア「こうしたわけで、私は自分の歌で」Drum sing ich mit meinem Liede
アンダンテ・ソステヌート・アッサイ、ト短調。ソプラノとテノールの二重唱による。詞は由来不明だが、詩篇の詩句をメンデルスゾーンが自由に編纂したとも考えられる(外部リンクに詳細な解説あり)。
  • 第10曲 終末合唱「お前たちの種族よ、主に栄光と権力を与えよ!」Ihr Völker! bringet her dem Herrn Ehre und Macht!
アレグロ・ノン・トロッポ、ト短調-変ロ長調。終末合唱はフーガの手法によって展開する。第1部の基本主題が登場し、「息づくものはすべて主をたたえよ」が歌われて全合奏によって輝かしく終える。詞は詩篇96、歴代誌上16、詩篇150:6による。

主要録音[編集]

指揮者 管弦楽団・合唱団 声楽 録音年 レーベル 備考
ヴォルフガング・サヴァリッシュ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団・合唱団 ヘレン・ドーナト(S)
ロートラウト・ハンスマン(S)
ワルデマール・クメント(T)
1967 フィリップス
(現デッカ)
クルト・マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ライプツィヒ放送合唱団
チェレスティーナ・カサピエトラ(S)
アデーレ・シュトルテ(S)
ペーター・シュライアー(T)
1972 BMG
ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
エディト・マティス(S)
リゼロッテ・レープマン(S)
ヴェルナー・ホルヴェーク(T)
1972-73 DG
クリストフ・フォン・ドホナーニ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ソナ・カザリアン(S)
エディタ・グルベローヴァ(S)
ウェルナー・クレン(T)
ヨーゼフ・ベック(org)
1976 デッカ
リッカルド・シャイー ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団・合唱団 マーガレット・プライス(S)
サリー・バージェス(S)
バーナード・バーテリング(T)
1979 フィリップス
(現デッカ)
クラウディオ・アバド ロンドン交響楽団
ロンドン交響合唱団
エリザベス・コンネル(S)
カリタ・マッティラ(S)
ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ(T)
1984 DG
ヴォルフガング・サヴァリッシュ ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
デュッセルドルフ楽友協会合唱団
クリスティーナ・ラキ(S)
白井光子(S)
ペーター・ザイフェルト(T)
1987 EMI
ヴラディーミル・アシュケナージ ベルリン・ドイツ交響楽団
ベルリン放送合唱団
ジュリアン・バンス(S)
シビリャ・ルーベンス(S)
ヴィンソン・コール(T)
1994 デッカ
リッカルド・シャイー ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ライプツィヒ歌劇場合唱団
ゲヴァントハウス合唱団
アン・シュワネウィルムス(S)
ペトラ=マリア・シュニッツァー(S)
ペーター・ザイフェルト(T)
2005 デッカ 初演時の原典版(1840年)

脚注・出典[編集]

  1. ^ 通称『グーテンベルク・カンタータ』と呼ばれる作品で、発表当時作曲者は気に入らなかったため出版しなかった。
  2. ^ a b 『最新名曲解説全集1 交響曲1』 p.378
  3. ^ 『最新名曲解説全集1 交響曲1』 p.381

参考資料[編集]

  • 『最新名曲解説全集1 交響曲1』 音楽之友社,1979
  • 『メンデルスゾーン:交響曲第2番(原典版)、他』解説書(リッカルド・シャイー指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)

外部リンク[編集]