ピアノソナタ第18番 (シューベルト)

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フランツ・シューベルトピアノ・ソナタ第18番ト長調D894, Op.78(初版譜に幻想曲と記載されていたことから「幻想ソナタ」と呼ばれる)は、作曲者28歳の時の作品。このあとの同形式の作品は、晩年の3つのソナタ ― ハ短調イ長調変ロ長調」しかない。完成された作風期に入り、規模も充実し、内容も優雅で遜色ない大作である。

ト長調室内楽によく使われるなど柔和な印象を与えているが、同時代人のベートーヴェン作品の影響を色濃く感じさせる書法が多い。逆にベートーヴェン研究の上でも示唆するところが多いが、「冗長で演奏効果が乏しいから」と評価されてきたため、日本では作品に触れられる機会が少なかった。未だ評価が変動する余地があるといえ、広く実演が期待されている。

曲の構成[編集]

発想記号の通り「ごく節度を持ってそして謡うが如く」演奏される。8分の12拍子であり、「熱情ソナタ」第1楽章と同一のリズムである。ベートーヴェンでは5対1の付点リズムが主要動機になっていたが、本作では更に鋭い対比をつけて11対1のものになっている。
冒頭から主題が提示されるが、平穏な曲想に作曲者のクラフトマンシップが隠れている。第2主題はベートーヴェンの交響曲第7番にも現れる優雅なシチリアーノ。素朴な変奏の後に提示部が終わり、展開部に入る。展開部はト短調ニ短調など短調の昂揚があった後、第2主題が変ロ長調で左手声部に現れる。右手声部は同時に第1主題を奏でていて、各主題を統合した優れた作曲技術が認められる。
再現部は形式通り。コーダでも「熱情ソナタ」に似て最弱音で穏やかに締めくくっている。
ソナタ形式またはロンド形式。本来は緩徐楽章をおくべきところ、前楽章がアレグロではないので均衡をとっている。アンダンテは歩く程度の速度とされるが、ここでは「可もなく不可もなく」冗長にしない演奏で十分。[要出典]
重音が多く雄大な効果を出している。第一主題は多少変奏を伴って繰り返されるが、単純なものに抑えて全楽章の統一を図っている。
メヌエット。同一の重音を執拗に繰り返すので優雅なメヌエットに収まっていない。トリオではロ長調の愛すべき旋律。
ロンド形式。ロンド主題は穏やかな右手主題を左手の4対1の同音連打が支えるもの。この4対1の同音連打は前楽章のメヌエットでも重要であり、ソナタ全楽章を支配しているので後の循環形式に類似している。ハワード・ファーガソンによるが速く弾き飛ばすのを抑えてその旋律美を尊重すべきである。途中ハ長調の活発な部分が現れる。ロンド主題をはさんで変ホ長調ハ短調の優雅でかなしい部分。ロンド形式どおりでコーダシンコペーションが印象的。最後まで4対1の連打が顔を出している。