パンパイプ

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Pan pipes
ペルヴィアン・パンフルー、あるいはサンボーニャ

パンパイプ(panpipes)、パンフルートはの茎等を用い、一つのパイプで一つの音高が出せるようにして音階状に束ねた管楽器

概要[編集]

多くの場合5つかそれ以上の閉管からなる古代の楽器。パンパイプは長い間民族楽器として親しまれてきており、最初のマウスオルガン、パイプオルガンハーモニカの原型とも考えられている。パンフルートのパイプは主として竹やダンチク(その他木やプラスチック、金属や象牙もある)で作られている。

パンフルートの管は一端が塞がれており、その側では同じ長さの開いたパイプから出される音よりも1オクターブ低い音が出る。伝統的な南アメリカスタイルでは、小石や乾燥させたとうもろこしの穀粒をパイプの底に入れることで音の調子を微調整する。曲がったルーマニアスタイルのパイプを作る現代の職人はワックス(主に蜜蝋)を用いて新しい楽器の調律をする。特殊な道具がワックスを塗ったり剥がしたりするために使われる。コルク栓やゴム栓もまた使われ、調律を素早くしやすい。

名称の由来[編集]

ギリシア神話パーンに由来してパンパイプと呼ばれている。パンパイプという名前はギリシャ神話の神パーンから連想されている。神パーンがパイプで演奏する音楽は不気味であると言われ、多くの人々がその不規則な曲調に怯えていたという。

その他の呼び名として、ギリシャ神話のパーンの話から取られたシュリンクスというのがある。シュリンクスという呼び名は、次のギリシャ神話の逸話から採られている。

シュリンクスはアルテミス(狩猟・純潔の女神)の侍女で、アルカディアに住む美しいニュンペー(精霊)であった。彼女は森に住むものたちに広く愛されていたが、彼女はアルテミスを崇敬し処女でいることを望んでいた。彼女と出会ったパーンはアプローチするが、彼女はそれを聴かず逃げ出す。しかしついに水辺でパーンに捉えられてしまい、シュリンクスは水中のニュンペーに助けを求め、葦になった。パーンは葦を切り取り楽器を作り、「パーンの笛」と呼んだ。

歴史[編集]

古代ギリシャ世界に存在したパンパイプは、その後パイプオルガンの先祖となったが、ヨーロッパの多くの国々では存在を忘れ去られていた時期がある。モーツァルトが作曲した歌劇魔笛に登場する笛はパンパイプのことだが、実際の演奏はフルートが受け持っている。モーツァルト自身は、おそらくパンフルートを見たことがなく、伝説上の楽器と考えていたと思われる。パンフルートは、ヨーロッパの片隅の小国ルーマニアの羊飼いたちのあいだで、民族音楽を演奏する楽器ナイの名で細々と伝わっていた。20世紀になってから、ルーマニアでこの楽器を見直す動きが起こり、パイプの本数が増やされたり、材料を中国産の女竹に変更するなどの改良が加えられていった。ルーマニア国立の音楽大学で正課として取り上げられるようになったことで、何人もの名人が生まれていった。戦後、ルーマニア出身のナイ奏者ゲオルゲ・ザンフィル(Gheorghe Zamfir)が西側で演奏活動を始めたことにより、ヨーロッパ全体に再び知られるようになった。ザンフィルの演奏に衝撃を受けた一人にスイスのヨリ・ムルクがいる。ザンフィルは彼に演奏法だけでなく、改良されたナイの製法も教授した。ムルクは多くの弟子を育て、現在、スイスは世界でもっともパンフルートを楽しむ人が多い国となっている。

ナイ(Nai)という呼び名は、ルーマニア語で「葦」のことを指す。

パンフルートはシルクロードを伝わって中国に入ってさまざまに変化しへと発展していったが、変化を受けずにそのまま日本に入ってきた長短18本の素竹で構成されたものが排簫(はいしょう)と呼ばれていた。正倉院宝物墨絵弾弓に描かれた散楽図には排簫を演奏する楽人が描かれている。しかし日本では、近年になって正倉院に残されていた残骸を参考に復元されるまで、雅楽の世界からいつしか完全に姿を消していた。

音響効果[編集]

パンフルートは調のない木製楽器である。音は反響する管の終端まで流れる気流による振動により作られる。管の長さは基本周波数を決める。音域は基本となる管の12音階上まであるが、減少付け木を使えば8音階に抑えることができる。

パンフルートの管の長さを計算する方法は TL=(S/F)/4 (理論的な長さ=TLは、音速=S を 望ましい周波数=F で割ったものを更に4で割ったものに等しい)。管の中で圧縮する特質のために、管は正しい低音よりも少し短い長さが求められる。余分な長さは職人にとって、コルクや栓を底に付けられるため役立つ。幾つかの楽器はワックスや小球を使ってそれぞれの管の基本周波数を調整する。パイプの中はコルクで栓がされており、蜜蝋を用いて調律するようになっているのが一般的である。音程が低い場合は、ビーズ状の蜜蝋をパイプの中に落としてから調律具を差し込んで、ビーズを押し潰して底を平らに均して、パイプの中側の長さを短くする。音程が高い場合は、調律具を回転させて蜜蝋を掻き出すことで、パイプの中側の長さを長くして調整する。長さの1/10の直径を持つ管は典型的な音色を生み出す。長さの1/7から1/14の間の内部の直径が好ましい。狭い管は甲高い音がして、一方広い管は"フルートらしい"音がなる。もしあなたが完璧主義者なら、ハブ径に0.82を掛け管の長さからこの値を引きなさい。これが周波数を遅くさせる内部の圧縮と、唇が部分的にカバーする調律の補正をする。ささいな調整も空気圧や温度に影響を受ける基本周波数を調整するために必要となる。

演奏[編集]

パンフルートは開いている端から尖った一方の端に向かって水平に息を吹きかけることで演奏する。それぞれの管は基本周波数と呼ばれる主音に調律されている。より高い音を出すときは息の圧力と唇の張りを高めるテクニックによって、12番目の管の近くの基本周波数に奇数をかけた周波数が作られる。ルーマニアのパンフルートは管が弓なりの配列になっており、奏者は頭を回転させるだけですべての音をだすことができる。これらの楽器は管を傾け、顎を動かすことでシャープやフラットも出すことが出来る。上達した奏者はどの音階でも出すことができる。ビブラートの方法は2つあり、手によるものと息によるもの。手によるビブラートは、奏者はバイオリンのビブラートと同じような方法で、パンフルートの片側を手首から手を穏やかに揺り動かして達成する。息によるビブラートはフルートや木管楽器の奏者と同じようなテクニックで達成する。

種類[編集]

曲がったタイプのフルートはルーマニアの音楽家Gheorghe Zamfirによって大衆化した。彼は1970年代広くツアー活動を行い、パンフルートを用いて多くのアルバムを収録した。同じ頃他の音楽家もレコーディングを始めた。今日ヨーロッパアジアアメリカには数千の音楽家がいる。曲がったものや伝統的な南アフリカのものはペルーの伝統的なグループに人気で、その他はフォルクローレで使われ、オークの木で作られている。

ラオスやタイ王国では円柱形の種類がWotと呼ばれ、イーサーン地方の民族音楽に使われている。奏者は楽器を顔を動かすよりも手で回して音階を変える。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]