ばね

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
コイル状の圧縮ばね
多種多様なばね

ばね(発条(旧字体では「撥條」)、弾機、: spring, : Feder)とは、金属などの弾性体の復元力を利用し、弾性エネルギーを蓄積する機械要素である。名称は、一説に「跳ね」が語源であるという。

ばねに力を加え、弾性エネルギーを蓄積することを蓄勢(ちくせい)という。

弾性体は弾性範囲内ではかかった力に応じて変形し、かかった力を取り去ればもとの形に戻る。これを応用して、力をかけて変形させ、あるいは変形させることで力を蓄えることができる。このような性質を利用しやすい形にしたのがバネである。たとえば金属の変形幅はそれほど大きくなく、これを細くすれば大きく曲がるものの、今度はたやすく降伏点を超えてしまう。そこで細くしたものを長く使い、これに横からの力をかけながら、しかもその変形方向が一直線上になるようにしたものがつるまきばね(コイルスプリング)である。円柱状の螺旋に巻いた金属は、引っ張れば各部分では横からの力で変形するが、その力は全体に均等にかかるので個々の部分ではさほど大きくなりにくい。また各部では横への変形でありながら、全体としては伸縮する方向への長さの変化となるから、機械の部分としても扱いやすい。バネはかりはその伸縮が加重に比例することを利用したものである。

歴史[編集]

単純なコイル状でないばねは、先史時代から使われており、例えばもばねの一種である。青銅器時代には、世界各地でピンセット毛抜きなどと同様のばねを応用した器具が使われ始めた。クテシビオス青銅スズ含有率を適度に高め、鍛造することでばね的性質を増す方法を開発した。

典型的なばねとして、つるまきばね[1](コイルスプリング[1])がある。

つるまきばねは、15世紀[2]錠前に使われ始めた[3]ぜんまいばねを動力源とする時計も15世紀に作られ始め[4][3][5]、16世紀には大きめの腕時計が作られ始めた。

1676年、イギリスの物理学者ロバート・フックが、ばねの動きの基本原理(ばねの伸びと荷重は正比例する)を発見し、後にフックの法則と呼ばれるようになった。

形状[編集]

コイル状の引張ばね
重ね板ばね(例:車体と車軸の間に位置する)
竹の子ばね(例:左右の金具の間)

材質[編集]

動作[編集]

  • 圧縮ばね(押しばね)
  • 引張りばね(引きばね)
  • 捻りばね

ゼロ長ばね[編集]

ゼロ長ばね、ゼロ長スプリング、零長スプリング (Zero-length spring) とは自然長がゼロであるばねを表す用語である。実際にはこのばねは"負の"長さを持ったばねをつなぎ、更に非弾性的な物質で長さを伸ばすことによって実現することができる。"負の"長さを持ったばねとは、ばねが伸びようとするときには互いに押し合うような2つのばねである。[6]このタイプのばねは上下動地震計に用いる目的のため、1932年にルシアン・ラコスト[7] (Lucien LaCoste によって開発された。ばねの先はマス (mass) につながっており、マスはヒンジ (hinge) つきのビーム (Beam) につながっている。ばねによってマスに働く力はの鉛直成分はビームの位置に関わらず、ほぼゼロであるように調整されている。これにより、この装置は非常に長周期の振り子となっている。地震計に長周期の振り子を用いると、地震による非常に速度の遅い波を感知することができる。ラコストのゼロ長ばねは重力の変化に対しても非常に敏感であるため、重力計にも用いられている(LaCoste重力計)。ドアクローザーにはゼロ長ばねに近いばねが用いられていることが多く、このためドアが少しだけ開いているときにも閉じる力が生じ、ドアをしっかりと閉める働きをする。

その他[編集]

  • ばねの振動の変位が小さい場合(調和近似が成り立つ範囲内)は、調和振動子とみなせる。
  • 英語の "spring" は、季節も意味するが、これは湧き出るもの→春の芽生え→ばねの意味に転化したものである[8]。英語の辞書には、"spring"の項目にこの3つの意味が収録されている場合が多い。

関連項目[編集]

参考文献と脚注[編集]

  1. ^ a b 意匠分類定義カード(M3) 特許庁
  2. ^ Springs How Products Are Made, 14 July 2007.
  3. ^ a b White, Lynn Jr. (1966). Medieval Technology and Social Change. New York: Oxford Univ. Press. ISBN 0195002660. , p.126-127
  4. ^ Usher, Abbot Payson (1988). A History of Mechanical Inventions. Courier Dover. ISBN 048625593X. http://books.google.com/books?id=xuDDqqa8FlwC&pg=PA305&sig=_SRpwfz0YBAjt2aGxXhmRkZ16GQ. , p.305
  5. ^ Dohrn-van Rossum, Gerhard (1997). History of the Hour: Clocks and Modern Temporal Orders. Univ. of Chicago Press. ISBN 0-226-15510-2. http://books.google.com/books?id=53K32RiEigMC&pg=PA121&sig=5huN81ukYRbSlxq4MsToTDIXYDY. , p.121
  6. ^ 原文:In practice this is done by combining a spring with "negative" length (in which the coils press together when the spring is relaxed) with an extra length of inelastic material.
  7. ^ フランス系の人であるため、ラコスト。
  8. ^ http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=spring&enc=UTF-8&stype=0&dtype=1 プログレッシブ英和中辞典のspringの項目より]

外部リンク[編集]