動物の謝肉祭

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
組曲『動物の謝肉祭』
直筆原稿のタイトルページ
ジャンル 組曲
作曲者 カミーユ・サン=サーンス
作曲年 1886年
音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
Saint-Saëns - The Carnival of Animals - ザグレブ音楽院室内管弦楽団による演奏。Art Of Sound And Vision公式YouTube。

動物の謝肉祭』(どうぶつのしゃにくさい、Le carnaval des animaux)は、フランス作曲家カミーユ・サン=サーンスの作曲した組曲である。『動物学的大幻想曲』(Grande fantaisie zoologique)の副題を持つ。

解説[編集]

1880年のサン=サーンス

全部で14曲からなり、元来は室内楽編成用として作曲されたものである。1886年にチェリスト、シャルル・ルブーク英語版の催すプライヴェートな夜会のために作曲された。初演はマルディグラの日である同年3月9日オーストリアのクルディム(Chrudim)にて、サン=サーンス、ルイ・ディエメのピアノ、ルブークのチェロ、ポール・タファネルのフルートなどにより非公開で行われた。その後、同年内に2度非公開で演奏されたが、他の作曲家の楽曲をパロディにして風刺的に用いていること、プライヴェートな演奏目的で作曲されたいきさつなどの理由により、以降サン=サーンスは自身が死去するまで本作の出版・演奏を禁じた。ただし純然としたオリジナルである「白鳥」だけは生前に出版していた。

現在では、プロコフィエフの『ピーターと狼』やブリテンの『青少年のための管弦楽入門』と並ぶ、子供向け管弦楽曲の代表的作品としても人気がある。時に自由な物語を添え、語り付きで演奏することがある。

楽器編成[編集]

オーケストラで演奏する場合と、オリジナルの室内楽として演奏する場合がある。前者では弦楽器は各パートに複数置かれる(ただし「白鳥」のみオーケストラ版の場合でもチェロはソロである)。

各曲[編集]

第1曲「序奏と獅子王の行進曲」(Introduction et marche royale du lion
Andante maestoso - Allegro non troppo - piu allegro 4/4拍子 ハ長調 - イ短調ドリア旋法
ピアノの耳をつんざくようなトレモロに始まる。ついで、勇壮な「行進」が弦楽器ユニゾンで奏される。全71小節。
ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

第2曲「雌鶏と雄鶏」(Poules et coqs
Allegro moderato 4/4拍子 ハ長調
ピアノと弦楽器が鶏の鳴き声を模倣しあう。全35小節。
クラリネット、ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ

第3曲「騾馬」(Hémiones
presto furioso 4/4拍子 ハ短調
アジアロバであろうと言われる。ピアノの上り下りする強奏の音階。全28小節。

ピアノ2
第4曲「亀」(Tortues
Andante maestoso 4/4拍子 変ロ長調
弦楽器がのそのそとユニゾンでオッフェンバックの『天国と地獄』の旋律をわざとゆっくり奏する。全22小節。
ピアノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

第5曲「象」(L'éléphant
Allegretto pomposo 3/8拍子 変ホ長調
コントラバスがもそもそと軽やかにワルツを奏する。ベルリオーズの『ファウストの劫罰』から「妖精のワルツ」、メンデルスゾーンの『夏の夜の夢』から「スケルツォ」が重低音で組み入れられている。全52小節。
コントラバス、ピアノ

第6曲「カンガルー」(Kangourous
Moderato 4/4拍子、3/4拍子 ハ短調
装飾の付いた和音が上下して、飛び回るカンガルーを描写する。全20小節。
ピアノ2

第7曲「水族館」(Aquarium
自筆譜の「水族館」Camille Saint-Saëns The Carnival of the Animals Aquarium opening.mid 視聴[ヘルプ/ファイル]
Andantino 4/4拍子 イ短調
グラスハーモニカの入った幻想的なメロディーに、分散和音のピアノ伴奏が添えられている。全39小節。
フルート、グラスハーモニカ、ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ

第8曲「耳の長い登場人物」(Personnages à longues oreilles
Tempo ad lib 3/4拍子 イ短調
おそらくは驢馬、アジアロバでない驢馬。のどかな驢馬の鳴き声をヴァイオリンが模倣する。サン=サーンスの音楽に嫌味な評価を下していた音楽評論家への皮肉と言われている。全26小節。
ヴァイオリン2

第9曲「森の奥のカッコウ」(Le coucou au fond des bois
Andante 3/4拍子 嬰ハ短調
クラリネットがカッコウの鳴き声を模倣する。全43小節。ピアノ協奏曲第2番の第3楽章の一部から和声進行がそのまま引用される。
クラリネット、ピアノ2

第10曲「大きな鳥籠」(Volière
Moderato grazioso 3/4拍子 ヘ長調
弦楽器のトレモロによる伴奏の上を、フルートが軽やかに飛び回る。全31小節。
フルート、ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

第11曲「ピアニスト」(Pianistes
Allegro moderato 4/4拍子 ハ長調 - 変ニ長調 - ニ長調 - 変ホ長調 - ハ長調
わざとへたくそに、ピアノの練習曲(それも音階を単純に繰り返すだけの指使い訓練に近いもの)を弾く。終りごろ近くから弦も加わる。最後は明確な区切りもなく、そのまま次の曲へ入る。全30小節。
ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

第12曲「化石」(Fossiles
自筆譜の「化石」、翼竜の化石が描かれている。
Allegro ridicolo 2/2拍子 ト短調
自作『死の舞踏』の「骸骨の踊り」の旋律、ロッシーニの『セビリアの理髪師』から「ロジーナのアリア」(Una voce poco fa)、その他「大事なタバコ」(J'ai du bon tabac)、「きらきら星」(Ah vous dirais-je maman)、「月の光に」(Au clair de la lune)、「シリアへ旅立ちながら」(En partant pour la Syrie)などのフランス民謡が組み合わされる。全74小節。
ピアノ2、クラリネット、シロフォン、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

第13曲「白鳥」(Le cygne
ミハイル・フォーキン
Andantino grazioso 6/4拍子 ト長調
全14曲中最も有名な曲で、チェロ独奏曲として有名な曲。生前の公開演奏と楽譜出版が許された唯一の曲でもある。全28小節。バレエ瀕死の白鳥』は、ミハイル・フォーキンがこの曲に振付を施した作品である。
チェロ、ピアノ2
本来はピアノ2台を含む編成であるが、単独出版は第2ピアノが割愛されたチェロとピアノ1台の形で発表されており、この編成で演奏されることも多い。

第14曲「終曲」(Final
Molto allegro 4/4拍子 ハ長調
カーテンコール。軽快な主題[3]に乗せて、それまでの各曲の旋律が登場する。全91小節。
ピッコロ、クラリネット、グラスハーモニカ、シロフォン、ピアノ2、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

アレンジ・演奏[編集]

関連作品[編集]

1922年のオリジナル楽譜の表紙、サン=サーンスが死去するまで本作の出版・演奏を禁じたため、これが全曲収録された最初の楽譜である。

脚注[編集]

  1. ^ 『最新名曲解説全集5 管弦楽曲II』(音楽之友社、1980)p. 125。
  2. ^ Jost, Peter(1998). "Preface", Camille Saint-Saëns: Le Carnaval des Animaux(Breitkopf & Härtel, 1998)
  3. ^ 角倉一朗は、「オッフェンバックの歌劇『天国と地獄』の有名なフィナーレの旋律を借用している」としている[1](その場合、大幅に変奏されているので事実上ほぼオリジナルの旋律になっている[要出典])が、初版譜の序文やブライトコプフ・ウント・ヘルテル刊の新校訂譜の序文で引用曲が列挙されている中には含まれていない[2]
  4. ^ 日産ミュージアム シルビア 主なCM曲
  5. ^ シルビア CM情報
  6. ^ 〜10月11日(土)始発から 〜 高幡不動駅・多摩動物公園駅の列車接近メロディーが動物にちなんだ4曲に変わります 列車接近時にランダムに流れます!” (PDF). 京王電鉄 (2018年9月21日). 2019年1月4日閲覧。

外部リンク[編集]