フレッチャー級駆逐艦

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フレッチャー級駆逐艦
USS Fletcher DD-445
DD-445 フレッチャー(1942年撮影)
艦級概観
艦種 駆逐艦
艦名 海軍功労者 一番艦はフランク・F・フレッチャー提督に因む
前級 グリーブス級駆逐艦
次級 アレン・M・サムナー級駆逐艦
主要諸元
排水量 基準:2,050t
満載:2,500t
全長 114.8m (376.5 ft)
全幅 12m (39.5 ft)
吃水 3.8m (12.5 ft)
機関 B&W水管ボイラー
(43.3kgf/cm², 454℃)
4缶
GEC蒸気タービン
(各30,000shp)
2基
推進器 2軸
速力 36.5ノット
航続距離 6,500 海里 (15ノット巡航時)
乗員 329人

フレッチャー級駆逐艦(フレッチャーきゅうくちくかん Fletcher-class destroyer)は、アメリカ海軍駆逐艦の艦級。最も多く発注された駆逐艦の艦級であり、1942年から1944年にかけて175隻が建造された。

本級は、従来のアメリカ海軍駆逐艦より大幅に大型化しており、航洋性・武装ともに強化されたことから、大きな成功を収め、駆逐艦の標準とも言える艦級となった。また、続いて建造されたアレン・M・サムナー級ギアリング級のベースともなった。

設計[編集]

本級の設計にあたっては、基本的な要求は従来と変わっておらず、1939年に設計を開始した時には基準排水量1,600t前後、速力36ノットの計画であった。しかし船体強度を増すため、船型を従来の長船首楼型から平甲板型に変更し、また同時期の大型艦比で5ノットの優速を目標に主機関を増強したことから、条約の制約がなかったこともあって大型化し、アメリカ駆逐艦としては初めて基準排水量が2,000tを超える、空前の大型駆逐艦となった[1]

溶接範囲の拡大に伴って、船体構造は縦肋骨方式の部分が拡大された。弾片防御を重視したこともあり、船体の材料としては特殊処理鋼(STS)が多く採用された。また、戦時急造期であったこともあり、艤装などあらゆる面に標準化が推進されている。本級の設計は、以後、チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦に至るまでのアメリカ駆逐艦の基本線となった[2]

上記の通り、速力増強の要請に伴い、主機出力は従来艦の50,000馬力から60,000馬力に増強されている。機関配置としては、ベンソン級以来の分離配置が踏襲され、ボイラーを2基ずつ収容した缶室と、蒸気タービン減速機復水器等を収容した機械室がセットになり、前部缶室・前部機械室・後部缶室・後部機械室の順に直列のシフト配置とされている。主ボイラーはバブコック・アンド・ウィルコックス(B&W)社製の重油専焼式水管ボイラーを4缶搭載しており、蒸気性状は圧力43.3 kgf/cm² (616 psi)、温度454℃。主機はゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GEC)社製のオール・ギヤード蒸気タービンであるが、DD-649,662〜665ではフォスター・ホイーラー社製とされている。減速機としては初めて2段減速歯車装置が採用されており、タービンは高速回転とされた[3]

フレッチャー級一般配置図
CMC: 管制室 PH: Pilot house
S: CIC: 戦闘指揮所
5: 5インチ38口径単装砲 (1番 - 5番) IC&P: Interior Communications & Plot
HR: 弾薬取扱室 DC: 爆雷 (図に掲載なし)
EQ: 兵員用居室 BR: ボイラー
M: 弾薬庫 40: ボフォース40mm連装砲
OQ: 士官用居室 G: 厨房
W: 医務室 L: 洗濯室
CM: 食堂 T: 魚雷発射管
FO: 燃料 MSP: Medical Stores and Electrical
ER: エンジンルーム

装備[編集]

主砲としては、初代ファラガット級以来のMk.12 38口径5インチ緩射砲5門装備が踏襲された。砲射撃指揮システム(GFCS)としても、同様にMk.37 砲射撃指揮装置が艦橋上に搭載されている。当初は射撃指揮レーダーをもたなかったが、のちにUHF帯のMk.12、さらにXバンドのMk.25が装備された[1]

一方、高角機銃に関しては大規模な換装・増設が重ねられたことから、各艦ごとの差異が大きい。初期建造艦では、当初、3・4番砲間に75口径28mm機銃の4連装マウントが搭載されていた。しかし第二次世界大戦中の戦訓から防空強化の必要性が痛感されたことから、これを撤去するかわりに、ボフォース 40mm機銃エリコン 20mm機銃が増備された。多くの場合、2番砲の後方両舷、後部煙突脇両舷と28mm機銃の撤去跡に40mm連装機銃が設置されていたほか、上掲の一般配置図に示す通り、一部艦では5連装魚雷発射管のうち1基を撤去して、さらに40mm連装機銃が搭載された。また各所に20mm機銃多数が装備された。20mm機銃はしばしばジャイロスコープ内蔵のMk.14照準器を備えており、また40mm機銃はこれにFCSとしての機能を付加したMk.51 射撃指揮装置による射撃指揮を受けていた[4]

水雷装備に関しては、ベンソン級以来の5連装魚雷発射管2基装備が踏襲されたが、爆雷投射機は6基に増強された。後に対潜戦能力強化のため、多くの艦で艦橋前両舷01甲板レベルの40mm連装機銃がヘッジホッグ対潜迫撃砲の固定マウントに換装されたほか、1952年度計画で、本級のうち39隻に対し、すべての魚雷発射管を陸揚げして、かわって短魚雷落射機を搭載するなどの改装が行われている[1]

FRAM-II改装艦 (「ニコラス」)

また1948年度計画より、18隻が対潜護衛艦(DDE)に種別変更され、FRAM-I改修を受けた。これによってレーダーやソナー、FCSが更新されたほか、2・3・4番砲は撤去され、かわって旋回式のMk.15 ヘッジホッグ対潜迫撃砲とMk.33 3インチ連装速射砲が搭載された。さらに1960年代には、3隻(「ラドフォード」「ジェンキンス」「ニコラス」)が、さらにFRAM-II改修を受けて、Mk.108 324mm対潜ロケット砲Mk 32 短魚雷発射管QH-50 DASHを搭載している[5]

なお、6隻に対して航空機用カタパルトの装備が計画され、そのうち3隻(「プリングル」「スティーヴンス」「ハルフォード」)が実際に装備された。しかしこの計画は成功せず、以後の改装は中止され、これら3隻の装備も後に撤去された。また「ヘイゼルウッド」はQH-50 DASHの試験艦として、その格納庫発着甲板などの航空艤装を設置しているが、この実績は上記のFRAM-II改修の際に生かされることとなった[1]

兵装・電装要目
当初 WW2直後 (例) DDE改装艦 (例)
兵装 38口径5インチ単装砲×5基 38口径5インチ単装砲×3基
50口径3インチ連装砲×1基
28mm4連装機銃×1基 40mm連装機銃×5基 40mm連装機銃×4基
12.7mm単装機銃若干 20mm単装機銃×6基
533mm 5連装魚雷発射管×2基 短魚雷落射機×2基
爆雷投射機×6基 固定式ヘッジホッグ対潜迫撃砲×2基
爆雷投下軌条×2基 旋回式ヘッジホッグ対潜迫撃砲×1基
GFCS Mk.37×1基 Mk.56×1基
Mk.51×5基 Mk.63×5基
レーダー SC 対空捜索用 AN/SPS-6 対空捜索用
SG 対水上捜索用 AN/SPS-10 対水上捜索用
ソナー QC 探信儀 QHB 探信儀 AN/SQS-4 探信儀

配備[編集]

1941年1942年度計画で175隻が建造され、うち17隻が第二次世界大戦で戦没した。1950年朝鮮戦争が勃発すると、多くの艦が現役復帰した。

アメリカ国外での運用[編集]

本級のうち49隻が外国海軍に売却・供与・貸与された。その中にはイタリアドイツ日本と言った以前の敵国も含まれており、アメリカ海軍での経歴よりも長い経歴を積んだ。残りの艦は1970年代に解体された。最後まで現役に留まった艦はメキシコ海軍の「クィトラワク」(元「ジョン・ロジャース」)であり、2002年に退役した。[1]

保存艦[編集]

4隻が博物館船として保存された:

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d 「アメリカ駆逐艦史」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 13-135頁。
  2. ^ 「船体 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 150-155頁。
  3. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 156-163頁。
  4. ^ 高須廣一「兵装 (技術面から見たアメリカ駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、 164-171頁。
  5. ^ Paul R. Yarnall (2013年). “Destroyer Special Features - FRAM Fleet Rehabilitation And Modernization” (英語). 2013年9月28日閲覧。

外部リンク[編集]