AH-1 コブラ

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AH-1 コブラ

陸上自衛隊所属のAH-1S

陸上自衛隊所属のAH-1S

AH-1 コブラAH-1 Cobra)はベル・ヘリコプター・テキストロン(ベル・エアクラフト)社が開発した、世界初の攻撃ヘリコプターである。

目次

[編集] 概要

UH-1をベースにベル・ヘリコプター・テキストロン社(当時)が開発した世界初の本格的な攻撃ヘリコプターで、その後登場する各国の攻撃ヘリコプターに大きな影響を与えた。当初はAH-56の開発の遅滞から、完成までのつなぎとして採用された経緯があり、AH-56がキャンセルされた為に主力攻撃ヘリとして運用され続ける事になった。

20mm機関砲やTOW対戦車ミサイル等を主武装とし、ベトナム戦争湾岸戦争等の多くの戦闘に投入された。

アメリカ陸軍では後継機種であるAH-64 アパッチに交代しているが、改良型がアメリカ海兵隊で運用されている他、日本陸上自衛隊を初めとする諸外国でも現役で使用されている。

[編集] 開発経緯

[編集] 攻撃ヘリの胎動

モデル207

アメリカ陸軍1960年代初頭より、本格的な攻撃ヘリコプターの開発を検討していた。しかし、アメリカ空軍が攻撃ヘリコプターの構想に強く反対したため、UH-1のような多用途ヘリコプターに兵装を施すガンシップ的なものを計画した。

しかし、ベトナム戦争においてヘリに機銃やロケット弾を装備させたガンシップを運用したところ、重量増加による巡航速度が著しく低下するなどの問題が発生した。また、生存性の低下も課題となった。エンジンの換装や装甲板の貼り付け、防弾ガラスの重ね合わせなどの応急処置がとられたが、元が輸送用ヘリコプターである為、決して良策とは言えなかった。

ベトナムの情勢が悪化する中で、ベル社は自社資金により独自に攻撃ヘリコプターの研究を進め、1962年に「D255イロコイ・ウォリア」と呼ばれるモックアップ(実寸大模型)を完成させた。D225はUH-1をベースにした攻撃ヘリコプターで、タンデム(縦型)式コックピット、機首下面のターレット、胴体中央部に取り付けたスタブ・ウィングなど、後に出現する攻撃ヘリの特徴を既に備えていた。このD225は実際に製作される事はなかったが、アメリカ陸軍関係者の注目を集めるには十分であった。

ベル社は続いて、OH-13を改造した「モデル207」と呼ばれる実験機を製作した。この機体もやはりタンデム式コックピットを有し、M60機関銃を二挺備えたチン・ターレットを備え、胴体にはロケット弾ポッドを装備していた。モデル207は1963年1月から約300時間の飛行テストを行い、タンデム式コックピットや兵装システムが攻撃ヘリとして最も適しているものだと確認された。

[編集] AAFSSとモデル209

モデル209

1964年、アメリカ陸軍は新型空中火力支援システム(AAFSS)計画を立案し、要求仕様を国内のメーカー各社に提示した。

この時ベル社は、UH-1をベースに「モデル209」を自社資金で開発した。モデル209はUH-1Cに、モデル207の実験で得られた成果を生かした攻撃ヘリコプターで、1965年3月にJ・P・ダプスタッド技師を中心に開発を開始したものだった。この機体はガンシップの戦訓から、低振動で良好な視界を確保するという条件を重視して開発されたが、エンジンやトランスミッション系、尾部コーンローターシステムなどはUH-1となんら変わらないものだった。しかし、胴体の座席はタンデム式に並べた複座となっていて、正面から見ると極端に縦に細い胴体が新規に設計されている。

また、胴体中央部に4基のパイロンを有するスタブ・ウィングが取り付けられ、これ自体が高速時にある程度の揚力を発生させることで、モデル209の機動性向上にも寄与していた。しかもスタブ・ウィングの下のパイロンには、ロケット・ポッドとミサイルを設置することができる。また機首には可動式ガトリング砲を標準装備することで、多方面への攻撃性を増している。この機体の開発は短期間で行われ、1965年9月7日に初号機が初飛行している。

国内のほとんどのメーカーが参加したこの計画は、翌年の1965年にロッキード社の「AH-56Aシャイアン」が選定機種として採用され、モデル209は不採用に終わった。

しかし、順調にテストが行われたとしても、部隊配備が1970年頃になると推定された[1]。そこでアメリカ陸軍はAH-56をAAFSSに採用した時点で、すでにベトナム戦争に投入させる暫定的な攻撃ヘリコプターの開発を模索した。

[編集] 暫定攻撃ヘリの採用

ベトナム戦争に投入されたAH-1G

1965年、アメリカ陸軍は現用ヘリコプターで攻撃ヘリコプターに転換可能な機種を検討するための委員会を設置する。そして委員会は以下の5種を選出する。

そして「モデル209」「S-61A」「UH-2」の3機種まで絞られ、1965年末よりエドワーズ空軍基地で2ヵ月間の実機テストが行われた結果、「モデル209」が暫定攻撃ヘリコプターに選出されたのである。

モデル209にはAH-1G ヒューイコブラ[3]という制式名称が与えられ。1966年4月に試作機(プロトタイプ)2機に続き、量産機100機の発注がなされた。そして1967年9月には実戦に投入されている。

一方、本命であったAAFSS計画は、AH-56の技術面・コスト面の問題を解決する事が出来ず、構想の大幅な見直しなどが重なったことからキャンセルされてしまった。よってAH-1に主力攻撃ヘリの座を譲る事となり、今日に至る。また、このキャンセルによって暫定攻撃ヘリコプターという呼び名も使用されなくなる。

[編集] 特徴

[編集] 機体

AH-1F(2006年

最大の特徴は、幅99cmという非常にスリムな胴体と、搭乗員をタンデムに配置した事である。これによって前面面積はUH-1の約三割にまで減少され、速度の大幅な増大と低視認性がもたらされた。初の量産型であるAH-1Gのエンジンは「T53-L-13」が搭載され、巡航速度は時速278kmに達する。コックピットは、前席が射手兼副操縦席、1段高い後席が操縦席となっている。

基本はモデル209と大差ないが、AH-1Gとの相違点は速度向上を図って採用された引き込み式スキッドの装備にある。これは重量増加に対し、それほど効果がないと判断されたため、G型以降の量産機では固定式に変更された。

半関節型ローターのために、マイナスGによる機動制限がある。これは、強いマイナスGのかかる機動では、ローターヘッドが浮き上がりマストが破壊されるマストバンピングが発生するため。急激な頭下げ動作や、起伏の激しい山の稜線に沿って飛ぶ機動が、制限されるという側面もある。(設計と採用者側の問題)

[編集] 武装

機首下面のターレットには、7.62mm ミニガンと毎分400発の射撃が可能なグレネードランチャーの搭載が可能である[要出典]。なお、AH-1Sアップガン型以降の機体では、このターレットがユニバーサルターレットに換装されており、これにより機首下面には、切り替えにより毎分680~750発もの発射速度を誇る20mm M197三砲身ガトリング砲を搭載する様になった(30mm M230チェーンガンの搭載も可能)。

胴体中央部のスタブ・ウイングには4ヶ所のパイロンがあり、ミニガンポッド・ロケット弾ポッド・TOW対戦車ミサイル等の兵装を、最大で700kgまで装備することが可能である。

[編集] 改良

米海兵隊の「AH-1Z バイパー」

ベトナム戦争終結後には、AH-1GTOW対戦車ミサイル運用能力付与がなされた。TOW運用能力を付与された機体はAH-1Qと呼ばれ、機首部に光学望遠鏡方式の照準装置を装備しているのが特徴である。

米陸軍では、重量増加によるエンジンの出力不足が問題視されたため、ICAM(発展型コブラ俊敏性及び機動性)計画が立案され、エンジンを熱出力1,800shp(軸出力1485shp)のT53-L-703に換装、トランスミッション、機体各部の強化が施されたAH-1Sが登場する。

なお、AH-1Sはその後も段階的に改修が加えられており、いくつかのバリエーションがある。 AH-1Qから改修した機体と初めからAH-1Sとして生産された初期生産型、初期生産型をより能力向上させた型、さらに、これに近代化改修を施した型で、AH-1S改修型(MOD)=AH-1SAH-1S量産型(PROD)=AH-1PAH-1Sアップガン型(ECAS)=AH-1EAH-1S近代改修型(MC)=AH-1Fと分類される。

1986年3月から実戦配備されているアメリカ海兵隊向けの「AH-1W スーパーコブラ」などの派生型もある。最新型は「AH-1Z バイパー」で、米海兵隊は2004年から2013年までに180機を「AH-1W スーパーコブラ」から「AH-1Z バイパー」にOH時に改造更新することを計画している。

なお、陸軍向け仕様のAH-1S系統だけは、太陽光の反射による発見を防ぐためキャノピーが角ばった平面型となっている。

[編集] 各国の運用状況

[編集] アメリカ合衆国

AH-1S

前述の通り、ベトナム戦争時に多数が導入され、実戦に投入された。一方でアメリカ陸軍は戦闘損失173機、運用損失109機の合計282機の損失を招いた。海兵隊でも7機と3機の計10機の損失が発生している。

陸軍は1973年にG型に次いでAH-1Qを採用し、同時に290機のG型をQ型に改修・改造させた。1977年にはAH-1Sの採用を決定し、新造機100機の発注に加え、当時保有していた198機のG型をS型に改修させた。これに続き、機関砲やロケット弾などの射撃能力向上を図ったステップ2型(AH-1E)を98機製造、更に1979年に新型火器管制装置を搭載するなど近代化改修を施したステップ3型(AH-1F)を新造機で98機、ステップ1、2型約860機をステップ3型規格に改修した。これによって1988年の時点でステップ3(AH-1F)レベルのAH-1Sを約950機保有するにいたった。

海兵隊では1969年に陸軍からAH-1Gを39機移管される形で受領した。同年4月末より順次、ベトナムへ投入されている。しかし、元々が陸軍仕様であったG型は海兵隊にとっては使いにくい面もあり、海兵隊仕様のAH-1の発注を行う。この海兵隊仕様AH-1はAH-1J「シーコブラ」として採用され、1971年初頭に最初の4機がベトナムに配備されて以降、1975年までに67機が購入された。

後継機であるAH-64の採用によって、現在ではアメリカ陸軍のAH-1は全機置き換えが進み、全機が退役している。一方でアメリカ海兵隊では改良型のAH-1W スーパーコブラを現在でも使用しており、イラク戦争にも投入している。

アメリカ軍以外でも民間仕様機「ベル209」を森林警備用として導入している。

[編集] イスラエル

イスラエル空軍のAH-1F

イスラエル空軍が運用しておりは、約40機のAH-1F「Tzefa」を導入した。レバノン紛争ではT-72を29両と装甲兵員輸送車4両、装甲車22両、その他30両の車両を破壊し、イスラエル側の損失は1機という一方的な戦果をあげている。

[編集] バーレーンの旗 バーレーン

バーレーン空軍が24機のAH-1Pを導入。

[編集] ヨルダン

AH-1Sを24機、AH-1Fを9機導入。

[編集] パキスタンの旗 パキスタン

パキスタン陸軍が1984年に20機のAH-1Sを発注し、内10機を導入した。これらの機体は後にAH-1Fに改良されている。2004年にはAH-1Fを発注している。

[編集] 中華民国

中華民国陸軍が63機のAH-1Wを導入。

[編集] イラン

イラン陸軍がAH-1Jを導入。

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[編集] 日本

小松航空祭にて(AH-1S)
側面

日本陸上自衛隊では1979年昭和54年)と1980年(昭和55年)に研究用として1機ずつ導入して検討、1982年(昭和57年)度から22機調達したのを皮切りに導入を開始した。7機目から富士重工業(エンジンは川崎重工業)によってライセンス生産され、2000年平成12年)12月14日までに89機が生産された。なお、陸上自衛隊で使用されている「AH-1S」は、最初に輸入された2機が能力向上型の「AH-1E」に、富士重工業でライセンス生産された機体は発達型LAATの「AH-1F」に相当するもの[4]である。73号機以降は"C-NITE"と呼ばれる夜間作戦能力向上形となり、72号機以前の機体も少数が改造されている。

数々の改修により燃料を最大に積載した状態では、9,300lbs(4,213Kg)となり、最大離陸重量10,000lbs(4、530kg)に近く最大武装状態では飛行ができない。また、弾薬を多く搭載すると燃料積載量を減らさねばならず、飛行時間が減少する二律背反現象がおきている。

エンジン不良によって数件の墜落事故が発生している。2000年(平成12年)に東富士演習場で発生した落着事故に関し、川崎は防衛庁によってPL法に基づき訴訟を提起された(2008年3月現在係争中)。これは単発機であるが故エンジン1基の故障が即座に危機的状況を生む為である。

2001年(平成13年)8月27日に、防衛庁は陸上自衛隊の次期戦闘ヘリとして、三菱重工業が提案した最新型双発・4ローターで性能・信頼性共に大幅に上昇、AH-1Wのダイナミックコンポーネントからの改造製作が基本である「AH-1Z」を下し、富士重工が提案したボーイングAH-64D アパッチ・ロングボウを選定した。これは陸自と米陸軍の密接な関係により採用されたもので、現行AH-1Wと共通性はあってもAH-1Sとは機体構造が違う、元来が米海兵隊むけのAH-1Zは分が悪かった。

なお、AH-64Dはボーイングが2007年(平成19年)にブロックIIの生産終了を発表した為、部品供給を前提とした富士のライセンス生産が不可能となり、10機で調達を打ち切った。後継機は再検討されるが、退役の迫るAH-1Sの運用がどうなるのかは未定である。

AH-64D アパッチ・ロングボウ」および「AH-X#現在までの候補」を参照

配備駐屯地

[編集] 韓国

8機のAH-1Jと60機のAH-1Sを導入。J型は全機退役している。

[編集] タイ

タイ王国空軍が1990年より4機のAH-1Fの導入を開始し、2004年現在3機を保有・運用している。

[編集] トルコ

トルコ陸軍が中古のAH-1P/Sを32機導入した。後にこれらはAH-1Fレベルにアップグレードが施された。

[編集] スペイン

8機のAH-1Gを運用していたが、現在は全機が退役している。

[編集] 形式

AH-1J(1985年
AH-1Q
AH-1G
初期生産型。1966年よりアメリカ陸軍が調達を開始し、ベトナム戦争に多数が投入された。
AH-1J
アメリカ海兵隊向けAH-1G。エンジンを双発とし、エンジン出力の増加を図った。「シーコブラ(Sea Cobra)」の愛称で呼ばれる。
AH-1T
AH-1Jの改良型で、搭載燃料の増加と胴体の延長が行われた。
AH-1W
AH-1Tの発展型。詳細はAH-1W スーパーコブラを参照。
AH-1Z
AH-1Wの改修機でメインローターを4枚とし、電子機類の性能向上に伴う戦闘力の向上が図られる。
AH-1Q
AH-1Gの改良型でTOW対戦車ミサイルの運用能力を有し、機関砲をターレット状に変更している。
AH-1S
AH-1Qの改良型。AH-1Qで指摘された機体重量の増加による運動性能の低下を補うため、エンジンの換装が行われた。また、風防形状の変更や搭載機器の改良等、各部に改良が施された。新規生産のほか、AH-1G/Qの一部の機体にもS型への改修が施された。
AH-1P(AH-1S量産型)
AH-1Sの量産型。
AH-1E(AH-1Sアップガン型)
射撃能力の向上を図り、機関砲と照準器をターレットに装着した形式。
AH-1F(AH-1S近代改修型)
近代化改修が施されたAH-1S。

[編集] 採用国

採用国

[編集] 性能・主要諸元

[編集] AH-1G

AH-1Gの三面図
  • 乗員:前席:射撃手、後席:操縦士(計2名)
  • 主回転翼直径:13.4m
  • 胴体長:13.4m
  • 全高:4.1m
  • 自重:2,754kg
  • 最大離陸重量:4,309kg
  • 発動機:ライカミングT53-L-13(1,100shp)×1
  • 超過禁止速度:219mph、(352km/h)
  • 実用上昇限度:3,475m
  • 武装

[編集] AH-1S

AH-1Fの三面図
  • 乗員: 前席:射撃手、後席:操縦士(計2名)
  • 主回転翼直径:13.41m
  • 胴体幅:3.28m
  • 全長/胴体長:17.44/13.59m
  • 全高:4.19m
  • 自重/最大重量:3,076/4,536kg
  • 発動機:ライカミングT53-K-703(1,485shp)×1
  • 超過禁止速度:315km/h
  • 巡航速度:228km/h
  • 実用上昇限度:3,960m
  • 航続距離:456km
  • 武装

[編集] 登場作品

詳細は「AH-1に関連する作品の一覧」を参照

[編集] 脚注

  1. ^ AH-56は1967年5月にロールアウトし、同年9月に初飛行する事になる。
  2. ^ バードル社(後にボーイング社に吸収)の旧名
  3. ^ 従来、アメリカ陸軍のヘリコプターにはインディアンの種族名がニックネームとして採用されるのが通例であったが、AH-1は暫定攻撃ヘリという性格から、それとは無縁の「コブラ」という命名がなされた。
  4. ^ 但し、レーザーエアボーントラッカとチャフフレアディスペンサーは省かれた。

[編集] 参考文献

  • ミリタリー・イラストレイテッド22「戦うヘリコプター」ワールドフォトプレス編:ISBN 4334707963 光文社

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ