アグレッサー部隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アメリカ空軍第64アグレッサー飛行隊、及び第65アグレッサー飛行隊所属のF-15F-16

アグレッサー部隊(アグレッサーぶたい:英語Aggressor squadron)とは軍の演習・訓練において敵部隊をシミュレートする役割を持った専門部隊のことである。アメリカ海軍においてはアドバーザリー(Adversary)部隊と呼称される。教官役でもあり、自軍のセオリーとは異なった戦術を理解・把握する必要があるため、優秀な人員が割り当てられ、エリート部隊となっている。また、アメリカ軍などにおいては、敵役をシミュレートするのみならず、鹵獲もしくは購入した仮想敵国の兵器を用いている場合がある。

目次

[編集] 各国のアグレッサー部隊

[編集] 日本

  • 航空自衛隊

詳細は「飛行教導隊」を参照

航空自衛隊では同様の部隊として飛行教導隊を編制しており、当初はT-2を使用していたが、同機の空中分解事故が発生した事により、現在は他部隊と異なる迷彩塗装のF-15J/DJを利用して訓練に参加している。

なお、1990年代の末、防衛庁総合商社を通じてロシア側から打診があり、スホーイSu-27を飛行教導隊にアグレッサー機として配備する計画があった。 その後もロシアは日本にSu-27の売り込みを続け、技術ライセンスを含む購入計画もあった。しかしながら、諸事情によりキャンセルとなった、とする内容を記載するサイトもあるが、実際に予算に盛り込んだり日本での代理店やライセンス生産を請け負う企業が名乗りを上げるなど「購入計画」と言えるほどに具体化したことは一切ない。 スホーイ設計局のミハイル・A・ボゴジアンは平成12年8月の日経産業新聞のインタビューで「もし希望があれば所定の手続きにのっとって交渉できる。フランカーの開発、実用化の過程で膨大な国家資金を投じた。購入機数が数機程度では、商談に発展しないだろう。交渉を前進させるには一定の機数(十二機)確保が前提条件となる」と答えた。このことから(このインタビューの数年前にあったであろう)交渉は「所定の手続き」に至るだけの進展はなかったこと、自衛隊側が購入を意図したとしても数機以下の、かつてのヴァンパイア練習機のようなサンプル購入であり、ロシア側の望む(あるいはアグレッサー飛行隊の所用機数を満たす)数量ではなかったことが推察できる。

  • 旧日本軍

他国と同様に不時着や占領地で入手した敵国の航空機を再生し、戦技教育に利用していた。中国戦線で捕獲したP-51を駆って、各地で模擬空中戦を行い対P-51の訓練を行った黒江保彦は有名である。ただしアメリカ機はハイオクガソリンの給油が必要であり、燃料の確保に苦労したと言われる。

[編集] アメリカ

アメリカ空軍F-5Eアグレッサー戦闘機
アメリカ空軍ではF-5は退役したが、アメリカ海軍などでは現在もアグレッサー機として使用されている
  • アメリカ空軍

アメリカ空軍においては、ネリス基地の第57航空団隷下の第57アグレッサー戦術群に第64及び第65アグレッサー飛行隊が編成されている。両飛行隊は冷戦終結に伴い一度は活動を停止、代わって第414戦闘訓練飛行隊が編成されたが、その後第64アグレッサー飛行隊は2003年に第414戦闘訓練飛行隊のF-16を移管されて活動を再開し、また第65アグレッサー飛行隊も2005年に余剰となったF-15を受領して再編された。第414戦闘訓練飛行隊は現在ではレッドフラッグ演習の運営を担当している。

  • アメリカ海軍

アメリカ海軍航空隊では、ベトナム戦争における航空戦の苦戦から、1969年のNFWS(海軍戦闘機兵器学校)"トップガン"開校を皮切りにVF-126、VF-43、VA-127等のアドバーザリー部隊を編制し、A-4MiG-17に、空軍から借用したT-38MiG-21に見立てての仮想敵任務に従事させていた。このうちNFWSはNSWC(海軍打撃作戦センター)に吸収される形でNSAWC(海軍打撃・航空作戦センター)として再編され、同センター内のN7部門”トップガン”として現在も活動している。また時代の変化に伴い対抗勢力の高性能化(Su-27MiG-29等)が見られた事からF-16 A/B/NF/A-18 A/B、F-14の配備も行われ、F-16AやF/A-18は現在に至るも使用されて居るが、VFC-111、VFC-12、VFC-13等では現在もF-5を使用している。

  • アメリカ海兵隊

アメリカ海兵隊では、VMFT-401”スナイパーズ”がアドバーザリー飛行隊として編成され、ユマ海兵隊航空基地にて活動している。現在はF-5Eを装備しているが、かつてはイスラエル製のクフィル戦闘機をF-21として運用していた事でも知られる。

  • アメリカ陸軍

アメリカ陸軍にも敵部隊の戦術をシミュレートする部隊がある。大半は米国製装備による代用であるが、少数であるもののMi-24Mi-17An-2などを保有している。

  • 備考

なお一部で存在しているとされていた第三国を経由して入手したと思われるソビエト製戦闘機を運用した部隊も、1977年から1988年にかけて活動していたことが、関連文書の機密指定が解除されたことにより明らかになった。このような対抗勢力の航空機を入手し研究した航空機では、第二次世界大戦中の零戦等が存在する。また、最近ではモルドバ空軍で余剰となったMiG-29を大量購入した事が知られている[1]

[編集] ドイツ

  • ドイツ空軍

ドイツ連邦共和国では、東西ドイツ統一後MiG-29を24機を編入する形で保有するに至った。西側が表立って保有する数少ない東側戦闘機であったため、この機体が配備されていた第73戦闘航空団は、(専従ではないが)アグレッサー部隊として各国との共同訓練に頻繁に参加させていた[2]。後にポーランド空軍に一機あたり1ユーロという破格値で売却(実質的に譲渡)されている。

また、ナチス政権当時は西部戦線で撃墜したアメリカやイギリスの軍用機をレストアし、対抗戦術の開発を始めとする研究材料として扱った。

[編集] ソ連

  • ソ連空軍

ソビエト社会主義共和国連邦でも、空軍ベトナム戦争中東戦争での航空戦を教訓にアグレッサー部隊が編成されていた。1974年トルクメン軍管区にMiG-21bisを装備する2個飛行隊が編成された。両飛行隊には、ソ連各地から1級「狙撃手」の称号を有するパイロットが集められ、他部隊のパイロットの戦技の検閲に従事した。機体はその時期に最新のものが順次配備され、1975年秋には第2飛行隊にMiG-23Mが、1984年にはMiG-23MLDが、1987年には第1飛行隊にMiG-29が導入された。1991年秋には第2飛行隊の機種をSu-27に換装することが計画されたが、ソ連崩壊、経済難、トルクメニスタンの独立等によって実現しなかった。現在のロシア空軍において同種の部隊が存在しているかどうかは不明である。

[編集] 脚注

  1. ^ ただし、同機を使用するイラン空軍への機体・部品流出を防止する政治的側面が強かった。
  2. ^ アメリカ及びイスラエルは研究用に第三国経由で入手しているが、表立った運用を行っていない。

[編集] 関連項目


軍事 この「アグレッサー部隊」は、軍事に関連した書きかけ項目です。この項目を加筆・訂正等して下さる協力者を求めています
ポータル:軍事/PJ軍事/PJ軍事史
他の言語