ターボプロップエンジン

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ターボプロップエンジンの動作の模式図(スケマチック)
代表的なターボプロップエンジンである、P&W製 PT6
ターボプロップ機のサーブ340B
Flowtp.gif
模型

ターボプロップエンジンガスタービンエンジンの1形態で、そのエネルギーの大部分をプロペラを回転させる力として取り出すものである。ターボプロップエンジンは主に小型、あるいは低亜音速の航空機用動力として利用されるが、中には最大速度が500ノット (925 km/h) に達するような高速機においても適用例がある。

概要[編集]

ターボプロップエンジンは大きく分けて、空気取入口(エア・インテイク)・圧縮機・燃焼室・タービン・排気口で構成される。空気取入口から取り入れられ、圧縮機を通過することによって充分に圧縮された空気は、燃焼室で燃料を噴射させる事により燃焼し、発生した高温高圧のガスが膨張するエネルギーによって圧縮機およびプロペラと繋がっているタービンを高速で回転させる。タービン軸からの出力は圧縮機を駆動し、さらに減速機を介してプロペラへと伝えられて推進力へ変換される。タービンを通過したあとの燃焼ガスは排気口から排出される際にさらに膨張し、エンジン全体の推力のおおよそ10%~25%を構成する。

また、今日の多くのターボプロップエンジンは、圧縮機駆動用タービン軸とプロペラ駆動用タービン軸が別な2軸構成となっているため、圧縮機駆動用タービンの速度に影響されることなくプロペラを回転させることが可能となっている。それぞれのタービン軸が最適な回転数で回転できることにより、排気口のジェット噴射に残っているエネルギーはプロペラ推力を含めた総出力の10%以下にまで減少する。

このように、ターボプロップエンジンは、ターボファンエンジンギヤードターボファンエンジンと類似した機構を持っている。一方、ターボプロップエンジンは一般的なターボファンエンジンとは異なり、プロペラシャフトと出力タービンの間に減速機が挿入されている。減速機が間にあることにより、効率を維持するために高回転を必要とする出力タービン軸と、ブレード先端速度が音速を超えないよう回転数に制限があるプロペラシャフトのどちらもが良好な効率を保つことができる。なお、ヘリコプターのターボシャフトエンジンにおけるローター減速ギアと違い、ターボプロップエンジンにおける減速機はエンジンの一部である。

プロペラ[編集]

ターボプロップエンジンと組み合わせて使用されるプロペラは、初期のものはレシプロエンジン用のものと一見すると似ているが、大きな軸出力を吸収するためにブレード枚数は一般に4枚以上と多く、プロペラ翼面積 / プロペラ円板面積も大きい。さらにはAn-70Tu-95のように2重反転プロペラを採用するものもある。翼平面形は幅広で翼厚比(最大翼厚と翼弦長の比)が小さい上、後退角がついていることも多く、より高マッハ数に適した形状となっている。たとえば、有名な軍用ターボプロップ機として知られるC-130では、最初の量産型であるA型ではプロペラは3翅、その後B型からは4翅となったが、派生型の C-130J では出力増大に合わせ6翅ブレードになるとともに形状・材質が改良されている。

ターボプロップエンジンは最適飛行速度(724 km/h 以下)では非常に効率的なエンジンであるため、比較的小型のコミューター機や軍用の輸送機に多く採用される傾向がある。自家用機や航空機使用事業(遊覧飛行等)向けの小型機でも利用されることはあるものの、強力なSTOL(短距離離着陸)性が必要な場合を除き、高コストゆえに広く利用されてはいない。飛行速度が増すにつれてプロペラ効率の低下によりターボファンエンジンに対する優位性が縮小するため、高速度を求められる航空機での採用例は少ない。

圧縮機[編集]

現代的なターボジェット/ターボファンエンジンの多くは軸流式圧縮機を使用しているが、小型化への要求が大きいターボプロップエンジンでは、(少なくとも)1段の遠心式圧縮機を含む、軸流式 - 遠心式の複合型となっていることが多い。

歴史[編集]

史上初のターボプロップエンジンは、ハンガリー人の機械技師György Jendrassikによって設計されたJendrassik Cs-1で、ブダペストのガンツ社で1939年から1942年にかけて試作・試験が行われている。このエンジンは、1940年にLászló Vargaが設計した双発偵察爆撃機RMI-1 X/Hのために企画されたものだったが、RMI-1 X/Hの計画は途中でキャンセルされた。またJendrassikは75kW級の、より小型のエンジンも1937年に設計している。

英国初のターボプロップエンジンはロールス・ロイス RB.50 トレントで、これは初期の遠心圧縮式ターボジェットエンジンであるダーウェント Mk.II に、同軸遊星減速ギアボックスと、ロートル社製5翅プロペラを付与して、軸出力750ehp、余剰推力450kgを発揮した。

トレントは第二次世界大戦終結で余剰になったグロスター ミーティア F.3 改造機(民間登録番号 EE227、トレント・ミーティアと呼ばれた)に積まれて試験を重ね、1945年9月20日に世界で初めてターボプロップ単独での飛行に成功した。ロールス・ロイスはこの知見から、信頼性・経済性の極めて高い、世界初の実用ターボプロップエンジンであるダート1947年に実用化し、1000~2000馬力級の航空機用中出力レシプロエンジンの代替標準になった。ダートは50年以上にわたって製造され、21世紀の今なお多数が現用中である。

ソビエト連邦は4つの同軸反転プロペラを持ち、最大巡航速度が925km/h(これは多くの第一世代のターボジェット機よりも速く、ほとんどの作戦においてジェット機の巡航速度と比肩しうるものであった)に達する爆撃機Tu-95 (ベア)を進空させた。Tu-95は、ターボジェットに比べて低燃費なターボプロップを採用した事により航続性能に優れ、高い攻撃及び偵察能力、さらにはソ連の力の象徴として、20世紀後半を通じて最も成功した航空機のひとつとなった。

Tu-95の対抗機であるアメリカ合衆国のB-52は、計画段階で大出力ターボプロップを企図していたが断念し、ターボジェットを搭載した(後にターボファンエンジンに換装)。またアメリカでは1940年代後半から1950年代中盤にかけて、テイルシッター型のVTOL機や、同軸反転プロペラとターボプロップエンジンの組み合わせの研究も行われたが、いずれも実用には至らなかった。

ボーイング367-80が早期に成功したため、民間機市場ではターボプロップエンジン搭載機の時代を迎えることはなかったが、ロッキード(現ロッキード・マーティン)C-130L-188、及び同機を原型とした対潜哨戒機P-3らに長く用いられている。

アメリカにおける最初のターボプロップエンジンはGE T-31で、最も普及したターボプロップエンジンは半世紀以上の実績があるプラット・アンド・ホイットニーPT6である。

現在、ヨーロッパの国際資本連合は、大型軍用輸送機エアバス A400M向けに11,000馬力もの出力を誇るユーロプロップ・インターナショナル TP400を新規に共同開発中である。

出力の単位[編集]

ターボプロップエンジンの出力は軸出力と呼ばれ、SI単位であるkWのほかに、shp(shaft horse power, 軸馬力)や 排気推力も含むeshp(equivalent shaft horse power, 総計等価出力)などが用いられる。

高速ターボプロップエンジン[編集]

1950年代に開発されたTu-95は、現在に至るも世界最速のターボプロップ機である。1960年代頃から現在に至るまで、各国でこれを上回る高速ターボプロップエンジン(ATP:Advanced TurboProp engine)の研究・開発が行われている。手法としては、増大する空気抵抗に打ち勝つだけの出力をプロペラに与えるための多翔化や二重反転化やプロペラブレード端に後退角をつけることでマッハ0.8程度の高亜音速を狙うことが多い。なお、90年代の原油価格の低下やターボファンエンジンの性能向上などによって開発が遅れたこともあり、今なお種々の課題が解決されていない(Tu-95と同程度、あるいは若干低速の機体ですら、ターボファンを採用する例が多い)。代表的な開発中のATPにプロップファンエンジンアンダクテッドファンエンジン (UDF) がある。

ターボプロップエンジンを採用した主な航空機[編集]

外部リンク[編集]

関連項目[編集]