C-130 (航空機)

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C-130 ハーキュリーズ

アメリカ空軍のC-130E

アメリカ空軍のC-130E

ロッキード C-130 ハーキュリーズ(Lockheed C-130 Hercules)は、ロッキード社が製造している輸送機。ハーキュリーズとは、ギリシア神話に登場する英雄、ヘラクレスの英語読みである。

戦術輸送機のベストセラーであり、アメリカ軍はもとより西側諸国を中心に69ヶ国で使用され、登場から半世紀以上経った現在も生産が続いている。2014年現在の最新型はC-130J スーパーハーキュリーズ(Super Hercules, ハーキュリーズ IIと表記されることもある)である。

概要[編集]

空母フォレスタル艦上で試験中のKC-130F

高い短距離離着陸性能を持ち、さらに補助ロケットにより、より短い滑走距離での離陸も可能である。その輸送力と運行性能の高さから「世界最高の輸送機」との呼び声も高い。また、汎用性も高いため、特殊派生型も数多く存在する。

未整地での運用を念頭に置いて設計され、砂漠での離着陸や車輪にソリをつけて南極への物資輸送など極めて幅広く用いられている。また、1963年には航空母艦フォレスタル」で発着艦実験を行った事さえある。大型すぎて実際に使用するのは困難とされ実験以上の段階には進まなかったものの、驚いたことにカタパルトアレスティング・ワイヤー等を用いることなく(艦上機ではないので発着艦に利用する機材へ全く対応しておらず、使用する事は不可能である)、着艦ならびに発艦ともに成功しており、空母に乗ることが前提になっている艦上機でさえその多くが不可能なことをやってのけたことは特筆に値する。

その基本設計は当初から完璧で、登場から半世紀以上経った現代に至るまでほとんど手を加えられていない、稀有な航空機である。

開発経緯[編集]

第二次世界大戦中に使用された輸送機は、ほとんどが何かしらの欠点を抱えていた。元々旅客機爆撃機を転用したものであり、貨物の取り扱いを重視した設計になっていなかったためである。例えばC-46C-47は尾輪式で胴体が地面に対して斜めになるため貨物積載が決して容易ではなく、前輪式のC-54は胴体こそ地面に対して水平になったが地上高が高くやはり貨物積載に問題を抱えていた。これを解決するべく、地上高を低くしランプを設けて貨物積載を容易にした輸送機はあったものの、C-76RB-1などは少数しか製造されず、C-82は航続力と貨物積載量が不足していた。しかしこれらは荒地での離着陸にも適する性能を有していた。

こうしてアメリカ空軍が1951年4月21日に出した新型輸送機の仕様書の要求は、以下の通りだった。

  1. 中型輸送機であること。
  2. 荒地に着陸可能であること。
  3. 極めて頑丈な機体構造を有する事。
  4. 主用途は貨物輸送だが人員輸送能力も有する事。
  5. 積載可能重量は約30,000lb(13,608kg)。
  6. 航続距離は1,500マイル(2,414km)。

この要求に対してボーイングダグラスフェアチャイルド、ロッキードの4社が設計案を提出し、僅か3ヶ月でロッキード社の案が選定された。この設計は目標仕様を遥かに超える優秀なもので、579km/hという巡航速度は当時を代表する旅客機よりも僅かに遅い程度で、18,143kgの最大ペイロードはDC-6Aをも上回っていた。貨物室は地上高がトラックの荷台の高さに合わせて作られているため、トラックから容易に貨物を積み込むことができる。さらに重要な点は貨物室のランプが気密閉鎖できることで、これにより機内を与圧して高高度巡航することが可能になった。しかしロッキード社はこの設計に完全な自信を持てておらず、万が一失敗した時のことを想定し生産施設を本社施設から遠い政府所有のジョージア州マリエッタ工場に移していたほどだった。なお、外形設計上の手本となったのはライスター・カウフマン社が開発したXCG-10強襲輸送グライダー外部リンク)で、簡素な設計ながら荒地の仮設滑走路にも容易に着陸できる機体だったが、政治的な理由で不採用となり、後にC-123へと発展するチェース CG-14に採用を奪われている。

ロッキード社のバーバンク工場で組み立てられた試作機2機は1954年8月にロールアウトした。初飛行したのは2号機で、同月23日に行っている。最初の量産型であるC-130Aの初号機は1955年4月7日に初飛行し、1956年12月9日にはアメリカ空軍が最初の機体を受領した。また、間もなく世界中からも注目されることになり、オーストラリアが最初の輸入国となって以来、世界50ヶ国以上で採用されることとなった。

C-130から間を置かずしてロッキード社は、同じアリソンT56ターボプロップエンジンを搭載したL-188旅客輸送機進空させる。ジェット推進かプロペラ推進かの選択で過渡期にあった当時の旅客輸送機において、C-130の開発経験はロッキード社にL-188へのターボプロップ採用を促す大きな要因の一つであったと考えられる。しかし旅客輸送機の将来を技術的にも商業的にも見誤ったことや、設計の不備に起因する墜落事故などでL-188の販売は低迷し、結果としてロッキード社の民間旅客輸送機部門はL-188の次に開発したL-1011の商業的な失敗を最後に撤退している。

一方のC-130は各国への売込みが進み、生産数は第二次世界大戦後の戦術輸送機において最多である。また、L-188が世に出てから数年足らずのうちにライバルの登場により陳腐化したのに対し、C-130はその立場を決定的に脅かすような競合機が今日に到るまで現れていない。

基本型[編集]

YC-130
C-130A
C-130B
C-130H-30
ハーキュリーズ C.3(C-130K)
C-130T ファットアルバート
YC-130
試作型。三翅プロペラを使用し、短いノーズを持つ。エンジンはアリソン YT56-A-1。
C-130A
初期型。当初はYC-130と同様ノーズが短かった。エンジンはアリソン T56-A-1A/A-9。翼下のエンジン外側に増槽を装備。
C-130B
1959年開発。補助翼を追加し、プロペラブレードを四翅化。翼下に増槽がなく、その分高速で飛行できる。
C-130D
C-130Aを元に、ソリとJATO(短距離離陸用の補助ロケットエンジン)を装備。
C-130E
1962年に配備開始。航続距離を増し、エンジンをアリソン T56-A-7Aに換装。構造や電子機器も改善された。外側・内側エンジンの間に増槽を装備し、この配置は以後のタイプの標準となった。
C-130F
アメリカ海兵隊向け。出し入れ可能な燃料タンクを貨物室に設置できる。
C-130G
アメリカ海軍向け。C-130Eを元に機体の構造を強化し、積載量を向上。
C-130H
翼の設計を改め、電子機器を一新した。エンジンをアリソン T56-A-15に換装。当初は輸出向けとして1964年頃から採用され始め、1975年からアメリカ空軍への配備が始まった。生産は1996年まで続けられた。
C-130H AMP
C-130Hのアビオニクス近代化型。
C-130H-30
C-130Hの胴体延長型。最大離陸重量に達する前に貨物室が満杯になってしまう問題を解決するために開発され、離着陸性能の低下と引き換えに積載能力が向上。
T.10
スペイン空軍でのC-130Hの呼称。
CC-130E/H
カナダ空軍でのC-130E/Hの呼称。
Tp84
スウェーデン空軍でのC-130E/Hの呼称。
C-130K(ハーキュリーズ C.1)
C-130Hのイギリス空軍向け。後に空中給油プローブを追加した機体はハーキュリーズ C.1Pとも呼ばれる。
ハーキュリーズ C.3
C-130H-30のイギリス空軍向け。後に全機に空中給油プローブが追加されハーキュリーズ C.3Pとも呼ばれる。
C-130J
1999年に配備開始。現在も生産を行っている最新モデルで、エンジンをロールス・ロイス/アリソン AE2100に換装し、ブレードが三日月形状の六翅プロペラに変更、アビオニクスもコックピットのグラスコックピット化などの近代化を行った。
C-130R
海上自衛隊が、東日本大震災対処などのために老朽化の進んだYS-11の後継として導入予定の中古機。アメリカ海兵隊向けのKC-130Rから空中給油機能を取り除いたもの[1]
C-130T
アメリカ海軍向け。内1機は現在アクロバットチームブルーエンジェルス」専用機「ファットアルバート」を務めており、前述したJATOを使用しての短距離離陸をデモンストレーションとして行う(現在はJATOの在庫がなくなったため行われていない)


派生型[編集]

BQM-34ファイヤービーを搭載したDC-130A
EC-130E(RR) リベット・ライダー
EC-130H コンパス・コール
EC-130Q
EC-130V
HC-130N コンバット・キング
F/A-18に空中給油を行うKC-130H
WC-130H ハリケーン・ハンター
L-100-30
AC-130
ガンシップ型。
DC-130A/E
無人標的機管制型。
EC-130E コマンド・ソロ(Command Solo)
電子戦機型。
EC-130E ABCCCIII
空中指揮統制センター型。
EC-130E(RR)リベット・ライダー(Rivet Rider)
テレビなどによる宣伝放送を行う心理戦・情報戦活動型。
EC-130H コンパス・コール(Compass Call)
通信妨害機型。
EC-130G/Q
潜水艦と通信中継を行うTACAMO機型。
EC-130V
E-2ホークアイの早期警戒レーダーを搭載したAEW型。麻薬密輸機取り締まり任務に使用。
この他にも、供与国のいくつかに独自改造して作られたEC-130が存在する。
GC-130
地上試験型。
HC-130B/E/H
戦闘捜索救難機型。
HC-130N コンバット・キング
空中給油機としての能力を付加した型。
MC-130P コンバット・シャドウ
救出作戦支援型。旧称HC-130P コンバット・キング
JC-130
暫定的な試験機型。
KC-130F
空中給油/輸送機型。
KC-130R
KC-130Fの燃料搭載量増大型。
KC-130T
KC-130Rのアビオニクス近代化型。
KC-130T-30
KC-130Tの胴体延長型。
KC-130B
インドネシアシンガポールのみで使用されている空中給油/輸送機型。
KC-130H
輸出向け空中給油/輸送機型。
TK.10
スペイン空軍でのKC-130Hの呼称。
ハーキュリーズ C.1K
イギリス空軍独自の空中給油機型。
LC-130
南極観測支援機型。
MC-130
特殊部隊支援機型。
NC-130
特殊試験機型。
PC-130
洋上哨戒機型。マレーシアとインドネシアに少数機が輸出される。シンガポールに提案中
RC-130
偵察機型。
SC-130
捜索救難機型。
TC-130
訓練/汎用輸送機型。
TC-130G
かつてブルーエンジェルス専用機「ファットアルバート」として、1機だけ運用されていた機体。
VC-130
VIP輸送機型。
WC-130 ハリケーン・ハンター
気象観測機型。
ハーキュリーズ W.2
イギリス空軍が1機だけ運用していた、ハーキュリーズ C.1の気象観測機型。
L-100(L-382)
C-130Eをベースにした民間型。
L-100-20
L-100の胴体延長型。
L-100-30
L-100の完全胴体延長型。

運用国[編集]

はC-130Jも運用


C-130を採用した国


日本[編集]

1984年昭和59年)から1998年平成10年)までに航空自衛隊は、C-130H型を16機購入し(完成品の輸入でライセンス生産ではない)、2013年3月末時点の保有数はC-130Hが15機、KC-130Hが1機である[2]。戦術輸送機として愛知県小牧基地第1輸送航空隊第401飛行隊で運用し、陸上自衛隊第1空挺団の降下訓練・作戦なども支援する。

防衛省・自衛隊の海外派遣でも運用されており、2004年3月3日から2008年12月まで実施された航空自衛隊のイラク派遣においては、地上からの視認性を低下させるために水色に塗装されたC-130Hがクウェート飛行場イラクの飛行場との間で輸送活動を行った。

2006年10月には航空自衛隊小牧基地に航空機動衛生隊が編制され、C-130H機内での医療行為を可能とする機動衛生ユニットが納入された。また、プローブ・アンド・ドローグ方式空中給油ポッドの増設と空中給油受油能力の付与が行われてKC-130Hとなった機体(シリアルナンバー:85-1080)が、2010年2月25日に第401飛行隊に配備された[3] [4]

海上自衛隊でも、老朽化が進むYS-11Mの代換としてアメリカ海軍からKC-130Rの中古機を6機購入する予定である[5]。機体の空中給油装置は取り外され、C-130Rとして運用される。

イラク派遣仕様のC-130H
C-130H支援の第1空挺団降下
C-130Hに搭載可能な機動衛生ユニット


仕様 (C-130H)[編集]

C-130の三面図
  • 乗員:6名
  • 全長:29.79m
  • 全幅:40.41m
  • 全高:11.66m
  • 主翼面積:162.1m²
  • 空虚重量:34.36t
  • 滑走距離:約400-1,300m
  • 最大離陸重量:79.36t
  • 燃料容量:36,416L(機内+主翼下増槽
  • 動力:アリソン・エンジン社製T56-A-15 ターボプロップ×4基
  • 出力:4,910ehp(3,423kW)4
  • 最大積載量:19.050t
  • 貨物室:1,219x302x274cm
  • 最大速度:335knots(約620km/h)
  • 巡航速度:550km/h
  • 航続距離:最大約4,000km
  • 実用上昇限度:8,000m
  • 武装:なし

登場作品[編集]

映画・テレビドラマ
連邦国陣営の輸送機として登場。核ミサイル基地に大陸間弾道ミサイルを空輸する。
アメリカ空軍の救難仕様機が墜落直前のVC-25から生存者の救難に従事。
第1話でストローブに撃墜される兵器製作会社の輸送機として登場。
主人公一行が逃走するのに使用。劇中ではフレアを利用したり大規模な空中戦闘が繰り広げられた。
ソビエト連邦の輸送機として登場。
ゲーム
プレイヤー、AIが操作し、人員を輸送可能。
西側諸国の輸送機として登場。
「TITAN」という名称で登場。軍隊とメリーウェザー・セキュリティ(劇中の民間軍事会社)が使用している。
漫画
主要登場人物である兵器業者マッコイじいさん(マッコイ商会)の輸送機として登場。また、TVアニメでは正規軍の輸送機としても登場。
アニメ
第6話の最終シーンで名前と機影が出ている。

参考文献[編集]

  • 分冊百科『週刊 ワールド・エアクラフト』 No.30/54/73/97/115/116/171 デアゴスティーニ社 1999 - 2003年

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]