カウル
カウル
カウル (cowl) とは、航空機やオートバイなどにおいて、エンジンや車体に沿って流れる空気の整流を目的とする覆いのこと。フェアリングと同義で使われることもある。
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[編集] 航空機
レシプロエンジンを持つ航空機においては、エンジンを覆うカバーをエンジンカウル (engine cowl) あるいはカウリング (cowling)、または単にカウルと呼ぶ。フェアリングと言った場合は、エンジンだけでなく脚(きゃく)などの整形覆いも含まれる。
飛行機においては、複葉機の時代など、速度の小さかったころにはエンジンは剥き出しであったが、速度が増大し始めた第一次世界大戦後の1920 - 30年代ころから、空気抵抗(抗力)低減策の一環としてエンジンが覆われるようになった。同時に主翼は単葉となり、脚は引き込み式になり、操縦席は風防(ウィンド・シールド)で覆われたほか、機体全体が流線形で設計されるようになった。
空冷エンジンの冷却には、剥き出しの状態よりも、適切に設計されたカウリングの装着が良いことも多い。カウリングの存在を前提に設計されたエンジンでは、装着しないと冷却用の空気がフィンの間を正常に流れず、冷却が不十分となる。エンジンの冷却状態をある程度制御するために、カウルフラップ (cowl flaps) と呼ばれる機構を備える機種もある。これは冷却空気流路の出口に設けられる可動式の板で、冷却効果を増したい際には開いて冷却空気の流量を増やすことができる。
現代の大型ジェット機など、主翼の下にジェットエンジンを吊り下げる機体では「エンジンナセル」や「エンジンポッド」とも呼ばれる。
[編集] NACA カウル
詳細は「:en:NACA cowling」を参照
NACAカウルは国家航空宇宙諮問委員会(NACA)によって1927年に開発された航空機で使用された星型エンジンの覆いである。空気抵抗の低減に効果があり、開発、装備費用の何倍もの利点が燃費向上によってもたらされる。[2]
NACA カウルは流線型よりもエンジンの冷却を増やす効果がある。カウルが無ければ速度が増えるに従い空気抵抗が増えると共に推力を生み出す為のエンジンの廃熱も増える。カウルを装備する事で空気の流れを整え主翼の空気流を平滑にする。
ライト R-790を搭載したカーチス・ホーク実験複葉機はNACA カウルを装着した場合、137マイル毎時 (220 km/h)に達したが装着しない場合は118マイル毎時 (190 km/h)だった。[3]
NACA カウルはエンジンに直接流れ込む空気はシリンダーやシリンダーヘッド等、他の重要な高温の部品を冷却する。さらに空気が流れる事による渦流が大幅に減少する。これらの効果のいくつかによって空気抵抗は約60%まで減少する。試験結果が良好であった事により1932年以降の大半の星型エンジンを装備した航空機に装着された。[4]
[編集] オートバイ
空気抵抗を減らす目的で、車体や乗員を覆う風防部品を指す。主に合成樹脂で作られており、視界を確保する部分は透明な材料が用いられている。適切に設計されたカウルは高速走行時にダウンフォースを発生し、走行安定性を高める効果がある。
[編集] 歴史
競技用オートバイに装着される部品の代表格であり、かつての日本では、暴走族が隆盛期を迎えていた1980年代以前は、暴走を助長しかねないものとして装着が事実上規制されてきた。
一方、1970年代にハーレーダビッドソンやBMW社製の大型車への標準装備が進むと、徐々に日本メーカーの海外輸出仕様車にもオプションとして採用され始めた。
1980年代初頭にスズキ・カタナをはじめとした、デザイン的にもカウル同様の効果を持つ外装(メーター・バイザーという方便も使われた)をまとうモデルが発表されると、徐々に規制も緩和された。
[編集] 種類
- ビキニカウル
- ライト回りを中心とした比較的小型のカウルのこと。丸形のヘッドライトを備えて、やや大型でハンドルの上下まで伸びたカウルはロケットカウルと呼び分けることもある。
- ハーフカウル
- 車体の上側のみを覆うカウルのこと。
- フルカウル
- 車体下部まで覆う大型のカウルのこと。分割式の場合、上部をアッパーカウル、下部をアンダーカウルと呼ぶことがある。
- ダストビン
- 前輪を含めた車体前部の全体をカバーする大型のカウル。大戦前の競技用車両によく見られたが、前端部に受ける風圧により車体挙動が不安定になり危険であるとされ、レギュレーションで禁止された[5]。速度記録用などの特殊な分野では現在でも見ることができる。
- シートカウル
- 車体後部の、シートとフェンダーの間を覆うカウル。また車体後方への空気流を整える役割を持つ。
[編集] 自動車
自動車では、ボンネットのフードとフロントウインドシールドの間の外板部を指す。現在の自動車ではワイパーの基部やベンチレーターの吸気口がある部分である。フロントフェンダーが独立した形状を持っていた時代には側面に回り込んだ部分までを指していた。
[編集] 鉄道車両
アメリカ形のディーゼル機関車の部位で、エンジンと発電機部分の覆いのうち、全幅が台枠幅一杯まで広げられたものを「カウル」と呼ぶ。このスタイルのディーゼル機関車をカウル・ユニットと呼び、他方、覆いの全幅が狭く、周囲にランボードを持つものをフード・ユニット、単なる覆いでは無く、トラス構造の車体全体で応力を負担するものをカーボディ・ユニットまたはキャブ・ユニットと呼び、それぞれを区別している。
[編集] 脚注
- ^ White, Graham. Allied Aircraft Piston Engines of World War II. pp. Figures 2.2 & 2.3. ISBN 1-56091-655-9.
- ^ White, Graham. Allied Aircraft Piston Engines of World War II. pp. 7–8. ISBN 1-56091-655-9.
- ^ James R. Hansen (1998年). “Engineering Science and the Development of the NACA Low-Drag Engine Cowling”. History.nasa.gov. 2010年7月30日閲覧。
- ^ Full-Scale Testing of N.A.C.A. Cowlings (Theodore Theodorsen, M. J. Brevoort, and George W. Stickle, NACA Report # 592. Langley Memorial Aeronautical Laboratory: 1937)
- ^ John Robinson, "Motorcycle Tuning: Chassis", ISBN 0-7506-1840-X, p.132
- Aeronautic exhibit in Smithsonian Institution, Washington, D.C.
[編集] 外部リンク
- NACA Low-Drag Engine Cowling Essay - details on development of the cowling.
- Abstract of NACA TN 301 report and .pdf file
- Archive of NACA reports 1917-1958