日本国政府専用機

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日本国政府専用機
訪米した小泉総理を迎える儀典官と儀仗兵 ジョージア州サバンナのハンター陸軍飛行場にて(2004年6月8日)

日本国政府専用機(にほんこくせいふせんようき)とは、日本国政府が所有・運航を行い、政府要人の輸送、在外の自国民保護などのために使用される航空機政府専用機)であり、防衛省航空自衛隊が管理および運用を行なっている。

沿革[編集]

概要[編集]

羽田空港を離陸する政府専用機

日本は1992年より、「日本国政府専用機」としてボーイング747-400 2機を所有、2018年頃まで運用する予定である[4]

要人が政府専用機を使用する際は、通常任務機と副務機が共に飛行し(通常約30分の間隔をとって副務機が任務機の後を追う)、任務機が故障した場合には直ちに副務機が使用できるという体制をとっている。

天皇・皇后の外国訪問と内閣総理大臣の外遊が重なった場合には、政府専用機は事実上日本の「元首」とされている天皇・皇后の搭乗機として優先使用される原則となっている。2012年5月に天皇・皇后のイギリス訪問で政府専用機が使用中のため、アメリカ合衆国での主要国首脳会議キャンプ・デービッドサミット)に出席するために訪米した野田佳彦内閣総理大臣(当時)は、全日本空輸の特別機を使用した。

「皇太子徳仁親王皇太子徳仁親王妃雅子が、オランダウィレム=アレクサンダー国王即位式に出席」(2013年4月28日から出発)するのと、「安倍晋三内閣総理大臣ロシア連邦 - サウジアラビア - アラブ首長国連邦 - トルコ 歴訪」が同じ出発日で日程的に重なった際および、「徳仁親王が日本とスペインの交流400周年記念で同年6月10日-16日までスペインを公式訪問」(2013年6月10日-16日)したのと「安倍首相のポーランド(東欧4カ国との首脳会談) - イギリス(G8サミット) - アイルランド 歴訪」(2013年6月15日-20日)の日程が一部重なった際、両政府専用機はどちらも予備機なしでそれぞれ任務に就いた。

東京国際空港で並ぶ2機の政府専用機

両機は総理府の予算で購入され、航空自衛隊に運用を委託する形で使用を開始した。のちに航空自衛隊機として防衛省へ転籍し、乗組員はパイロット[脚注 1]、航空整備員[脚注 2]航法士[脚注 3]、機上無線員[脚注 4]日本航空で訓練を受けた特別空中輸送員(客室乗務員[脚注 5][5]の他、運航をバックアップする運行管理者[脚注 6]まで、すべて「航空自衛隊特別航空輸送隊第701飛行隊」、通称「特輸隊」と呼ばれる組織に所属する航空自衛官である。

日本国政府専用機は2機体制であるが、本来要人輸送機は最低でも「正(要人搭乗・主務機)」、「副(随行・副務機)」、「予備(正・副が出発した後基地で待機・非常時の代替機)」の、3機以上の体制で運用されるのが望ましいといわれている。もし1機が故障していると使用できるのが1機のみになり予備機がなくなってしまうほか、国外寄港地で正・副の2機とも故障した場合は代替機がなくなり、危機管理上の問題を呈すとみなされているからである。なお1999年2月にヨルダン国王フセイン1世が死去した際には、フセイン1世が行政府の長を兼ねていたことから、国葬には皇太子同妃と内閣総理大臣の小渕恵三夫妻が共に参列することになり、両者が2機に分乗したため、双方が主務機扱いとなった。このため両機は予備機なしで0泊3日の往復飛行をこなすこととなった。

しかし、当初の2機購入の数年後に防衛庁が上記の理由で3機目の予算も原案に組み込んだところ、大蔵省の査定で却下された。そもそも政府専用機の導入は、当時日米間の最大懸念だったアメリカの巨額の対日貿易赤字を減らすための国策的要素が強いものだっただけに、やがてバブル経済が弾けて日本経済が長期にわたる不況に陥ると、3機目の購入に数百億円もの税金を充てるのは難しい状況となった。なおイラク戦争以後、自衛隊の国外派遣などで政府専用機を活用する機会が増えたことに伴い、政府は3機目の購入を再び模索、防衛庁はこれをうけて空中給油機としての併用が可能なボーイング767を視野に入れた検討を始めたが、同じころ政府が導入を決定したミサイル防衛関連予算が膨大なものとなったことから、このときも結局導入を断念している。

同じボーイング747シリーズを使用していることもあり、アメリカ合衆国大統領専用機のVC-25と比べられることも多い日本の政府専用機だが、両者の大きな違いはその用途にある。VC-25は「政府」専用機ではなく、事実上の「大統領のビジネスジェット」で、大統領個人が「良識の範囲内」で公私にわたって自由に使用することが認められており、国内遊説や選挙戦はもとより、休暇時の保養地への移動にも使われ、国賓公賓を同乗させたりもしている。一方、日本の政府専用機は内閣総理大臣専用車御料車と同様にあくまで国有資産であり、その用途は公用に限られる(内廷や首相の所有物ではない)。しかも通常は外遊時にのみ使用され、国内での移動に利用されることはほとんどない。国内での利用は、2000年の九州・沖縄サミットの際の森喜朗首相の沖縄入り、2004年の日韓首脳会談の際の小泉純一郎首相の鹿児島入り、2008年の北海道洞爺湖サミットの際の福田康夫首相の北海道入り、2009年5月の太平洋・島サミットの際の麻生太郎首相の北海道入りなどこれまで[いつ?]に数回しかなく、しかもそのほとんどが国内遠隔地における外国首脳との会談がらみとなっている。したがって年間の飛行回数や飛行時間は、米国大統領専用機にくらべると格段に少なく、導入当初は「虎の子」「宝の持ち腐れ」などといった批判を浴びることも少なくなかった。

導入への過程[編集]

第二次世界大戦終結後、皇族や首相、閣僚の国外公式訪問や国内移動の際に、半官半民の経営体制である日本航空の特別機が頻繁に使用されることになり、1954年8月には、北海道で開かれた国民体育大会開会式から帰京する昭和天皇香淳皇后のために、初の皇族向け特別機のダグラスDC-4千歳空港-羽田空港間で運航された。なお往路はお召し列車青函連絡船を利用しており、この際に青函連絡船でお召し船となったのが洞爺丸である</ref>。

1989年竹下登首相の訪米時に政府特別機として使用された日本航空のマクドネル・ダグラスDC-10

その後も特に国外公式訪問の際の特別機として、国際線を唯一運航していた日本航空の機材が利用されるケースが多かったものの、1970年代に入りアメリカ合衆国政府から対日貿易赤字の縮小を求められ、その過程で、アメリカ製の航空機を政府専用機として購入することで、アメリカ政府の態度を和らげる一助にすることなどを背景に、アメリカ製のボーイング707747-SPや、マクドネル・ダグラスDC-10などを中心に導入が検討されはじめた。

また、ベトナム戦争イラン・イラク戦争など、国外有事の際し邦人救援特別機として日本航空の機材を使用することを打診した際に、乗務員の安全面などから同社の労働組合が運航に反対するなどの問題があった。さらに自衛隊員の国外派遣に際して、同社の一部の労働組合から様々な反対があるなど、有事の際の国外移動を一民間会社に任せることへの問題が噴出し、この様な問題がない政府専用機の導入への検討が進められた。

その上、1951年の設立から長らく半官半民という経営体系であった同社が、1985年9月に、当時の中曽根康弘首相が進める国営企業や特殊法人の民営化推進政策を受けて完全民営化の方針を打ち出したことなど様々な理由から、1980年代半ばになり急速に政府専用機の導入が推し進められることとなった。

最終的に、日本から無給油でヨーロッパ北アメリカの主要都市に飛ぶことができる当時唯一の機材であることなどから、アメリカのボーイング社が当時開発していたボーイング747-400の導入が1987年閣議決定され、予備機を含め2機が導入されることとなった。

諸元[編集]

苫小牧市上空を飛行中の政府専用機(2005年4月)

名称[編集]

  • 政府による正式呼称: 「日本国政府専用機」
  • 航空自衛隊における正式名称: 「特別輸送機」
  • 英語表記: 「Japanese Air Force One/Two」

コールサイン[編集]

  • Japanese Air Force 001/002: 主務機/予備機。任務飛行中に用いる。
  • Japanese Air Force 701: アルジェリアへの派遣(アルジェリア人質事件の邦人救出)で任務飛行中に用いた(20-1102機、往路復路とも共通、2013年1月)。
  • Japanese Air Force 901: 2013年4月28日-5月3日皇太子徳仁親王夫妻がオランダのウィレム・アレクサンダー国王即位式出席でオランダへの任務飛行中と、2013年6月10日-16日皇太子徳仁親王が日西交流400周年記念による公式訪問でのスペインへの任務飛行中に用いた(両方共、20-1101機、往路復路とも共通)。
  • Japan/Japanese Air Force 1101: 1993年2月11日-14日、渡辺美智雄外相のワシントンDCへの任務飛行中に使用(これが初の任務飛行、20-1101機、往路ではJapan Air Forceで復路ではJapanese Air Force)[6]
  • Cygnus 01/02[7]: 訓練および回送の際に使用される。"CYGNS"とも表記されることがある。
  • PLANETA[脚注 7] : 訓練飛行時に使用されたことがある[8]

機体[編集]

外装[編集]

訪米した小泉総理を迎える儀典官と儀仗兵 ワシントンD.C.郊外アンドルーズ空軍基地にて(2006年6月28日)
  • 胴体: 白地に、金のアンダーライン付き赤の帯。前方の左側には「日本国 日本の旗 JAPAN」、右側には「JAPAN 日本の旗 日本国」の文字(左右対称にするため)、後方の両側には小さく「航空自衛隊」の文字
  • 主翼: 左翼の上に「JAPAN」の文字。両翼の上下計4か所に航空自衛隊の国籍標章 Japan Air Self-Defense Force roundel.svg [脚注 8]
  • 尾翼: 垂直尾翼の左右両側に大きく航空自衛隊の国籍標章 Japan Air Self-Defense Force roundel.svg 、その前方部に小さく機体番号。

内装[編集]

内装は要人や同行する記者、運航要員などの輸送用に設計されており、座席や壁面などは茶色やベージュを基調とした暖色系の色合いでまとめられている。

  • 前方より、貴賓室、夫人室、秘書官室(11席)、会議室(4席)、事務室(2席)、随行員室(12席+21席)、一般客席(89席)がある。随行員室は2-3-2アブレスト、一般客室は2-4-2アブレストである。一般客席の中央部には記者会見席(3席)がある。一般客席の同行記者等は民間航空会社運航便と同程度の運賃を支払った上で搭乗する。[11]秘書官室や随行員室ではライフラットのビジネスクラス用シート[12]が、一般客室ではレッグレスト付きのプレミアムエコノミーに相当する座席[12]が設置されている。いずれの座席もノートパソコン向けの電源コンセントを備えているが、エンターテイメント設備は設置されていない[12]。また、記者会見や清掃に備えて壁面にもコンセントが設置されている[12]
  • 2階部分は通信室や運航要員の座席(25席)、休憩室が設けられている[13]。運航要員用の座席はエコノミークラス用シートの3-3アブレストとなっているが、前方左側の4席のみは1階の一般客室と同様の座席が設置されているため2-3アブレストとなっている。運航要員のスペースを2階に確保することで、1階に搭乗している要人の間を通り抜けることなく業務遂行が可能となっている[12]
  • コックピット: 他のボーイング747型機と同様に2階前方にある。室内は民間仕様とほぼ同じだが、敵味方識別装置などの軍用機器が追加されている。コックピット天井にある天測用ハッチの開口部には、(特別機として使用されるケースを想定した民間機体と同様に)器材を取り付けることにより国旗を立てることができる。

用途[編集]

とされている。なお、この「要人」として法令で定められているのは下記の通りである。

  1. 天皇を始めとする皇族
  2. 国賓およびこれに準ずる賓客
  3. 最高裁判所長官
  4. 衆議院議長および参議院議長
  5. 内閣総理大臣
  6. 国務大臣

ただし、実際には内閣総理大臣や天皇を始めとする皇族による使用がほとんどとなっており、その他の閣僚(国務大臣)や三権の長は一般の定期便を利用している。皇族では、オランダ公式訪問のため2009年8月21日に出発した秋篠宮夫妻も、成田国際空港から民間機を利用した。

運航及び整備の委託[編集]

特別空中輸送員の訓練が行われている日本航空客室乗務員訓練センター

通常は北海道の新千歳空港に格納されている。航空自衛隊千歳基地に所属する自衛隊機である。

日本航空とそのグループ企業が国際線運航とサービスの経験の豊富さから、政府専用機の国内外における運航ハンドリングおよび整備協力を世界各地において行っているほか、機内サービスを行う特別空中輸送員の訓練も受託している。

日本航空は、老朽化および燃費効率の悪さを理由として2011年3月1日をもって同型機を全機退役させたことにより同型向けの資材や人員を引き続き保持する見込みがなくなったことから、数年後には整備を受けられなくなる見通しとなった。このため、2010年12月より、ボーイング747型貨物機を運航する日本貨物航空に、本機に携わる航空自衛官の民間免許取得支援業務を委託した[14]

その他の要人輸送機[編集]

政府専用機とほぼ同時期に購入したフランス製のアエロスパシアルAS332Lヘリコプター陸上自衛隊が運用・のちにユーロコプター EC225LPへ更新)があり、近・中距離移動に用いられている。また航空自衛隊の多用途支援機のガルフストリーム・エアロスペースU-4(ガルフストリーム IV)も日本国内の高速移動に使用されている。

なお、このU-4であるが2008年8月には当時の内閣総理大臣:福田康夫が8日に北京オリンピックの開会式に出席のために中華人民共和国北京市に赴き、その翌日の8月9日の長崎原爆の日の平和式典に出席する日程であったことから、深夜の日中両国間を移動する手段として使われたことがある[15]

今後[いつ?]の課題[編集]

各国での政府専用機に相当する航空機の採用状況をみると、ボーイング747-400エアバスA340などの非常に高価なワイドボディ新型機を新規に購入した例は航空機製造国以外では極僅かな国のみであり、日本やブルネイカタールなどに限定される。実際、航空機製造国(アメリカやEUロシアフランスドイツなど)は自国製の新造機を政府専用機としている。しかしそれに対し航空機製造国以外(その他多くの国)はボーイング・ビジネス・ジェットエアバス・コーポレート・ジェットなどの中型機を導入したり、民間からボーイング757ボーイング727などの中古の中・小型機またはボーイング747-SPなどの中古のワイドボディ機を買い上げて改造したりする例が多い。

その一方、2000年頃から[いつ?]は政府専用機にも小型化の傾向が見られている。その理由は、短い滑走路を持つ地方の空港からでも容易に離着陸できるなど、小振りの機種が汎用性においてより優れた選択肢となったためである。その背景には、中・小型機の航続距離、双発機(ボーイング737ボーイング777エアバスA330ボーイング787など)の燃費やETOPSなどが飛躍的に向上した事実がある[16]。実際の大型機の運用においても、運用自体が中途半端なものとなり、警備上の問題や経済性の低さなどが生じることも指摘されるようになっている。この指摘の根拠には、ボーイング747が安全な離着陸を行うためには最短でも2,500から2,750m以上の滑走路が必要であり、そのような条件を満たす滑走路を持つ空港が大都市の国際空港や空軍基地にほぼ限られてしまうことが挙げられている[脚注 11][脚注 12][脚注 13]。その点、ボーイング737-600以降の新型機種などでは2,000mの滑走路もあれば余裕を持って離着陸できるため、運用できる空港が非常に多くなる。

なお、2008年(平成20年)10月17日付の産経新聞は、三菱重工業が開発中の日本製小型旅客機MRJ」を10機発注する予想を報じた。MRJはボーイング737よりさらに小型で燃料効率がよいとされ、また開発に関して国が補助金を出していることから販売を促進する目的も兼ねている。ただし、MRJは太平洋無着陸横断飛行などの長距離洋上飛行ができない。したがって、仮にMRJが政府専用機として使用されるとしても、日本国内及び近距離の外国渡航用といった補助的な役割にとどまるものと考えられている。

2010年、日本航空の経営再建のため、同社のボーイング747が全機退役するのに伴い、整備面での問題が浮上した。2019年以降は同社で整備を受けられなくなるため、後継機の選択を実施しなければならなくなった。

2013年8月には、前述の通り2018年度末をもって現用の2機を退役させる方針が明らかにされている。新たな政府専用機の候補としては複数の報道によりボーイング777787エアバスA350が挙がっており、2019年の導入に向け機種を選定するとしている[4][17][18]。2014年4月になって飛行性能に加えて日米同盟の関係強化に向けた姿勢などを重視し、導入後のメンテナンス委託先も確保しやすいことからボーイング777を導入する方向で最終調整していることが報道された。なお、選定候補に挙がっていたボーイング787は機内空間の狭さ、エアバスA350は現行機がボーイング製という継続性と日米同盟関係という外交的政治判断によって選定から外れている[19]。2014年6月、整備委託先を日本航空から全日本空輸に変更すると報道されたが[20]、全日本空輸は何も決まっておらず遺憾に感じるとコメントした[21]。同年6月25日に各報道機関は新たな政府専用機が「ボーイング777-300ER」となることが判明と報道。報道の根拠は6月24日の締め切りに新たな政府専用機の納入と機体整備業務の受注を希望する企業からの提案を提出できたのがボーイング側だけで、機体整備業務については日本航空と全日本空輸の二社が同型機の整備を提案してきたため、他の機種は選定から外れる事が確定的となった[22]

逸話[編集]

ヒッチハイク外交[編集]

ドイツ政府要人専用機 “A310-304 VIP”

カナダの保養地であるカルガリー郊外のカナナスキスで行われた第28回主要国首脳会議を終えた2002年(平成14年)6月28日に、ドイツゲアハルト・シュレーダー首相と秘書官・警護員ら5人が小泉純一郎総理帰途の日本国政府専用機に同乗して来日した。翌々30日に横浜国際総合競技場で行われる2002 FIFAワールドカップの決勝ブラジルドイツ戦を控え、「この観戦に間に合うよう、ぜひ相乗りで行かせて欲しい」というドイツ側からの異例の要請を日本側が快諾したものである。約10時間の飛行中、機内ではくつろいだ雰囲気のなかで日独首脳会談(「ヒッチハイク外交」、外務省)が行われたほか、両首脳は食事を共にしながら四方山話に花が咲いたという。小泉総理は総理執務室をシュレーダーに譲って、自らは官房副長官用の個室で休息した。

一国の首脳が他国の政府専用機に同乗して長時間に亘り移動する行為は、外交プロトコル上の変則であることは言うに及ばず、危機管理の面から見ても異例なこと[脚注 14]であり、日本政府専用機ではこのシュレーダーの便乗が唯一の例、しかも例外中の例外となっている。


ドイツ政府も元東ドイツインターフルク所有機であったエアバスA310-300を政府要人専用機として保有しており、シュレーダーは同機でカルガリー入りしている。A310-300にはカナダ太平洋岸やアラスカなどで1回の給油を行えば羽田まで難なく飛ぶだけの航続距離があるはずだが、この相乗りの背景にある詳細な事情が説明されることは一切なかった。


副務機の活用[編集]

前述の通り政府専用機は、通常は任務機と副務機の2機体制で運航している。基本的に副務機は任務機に何らかの問題が発生した場合に任務機に替わり乗客を輸送するためのものであり、通常乗客が搭乗した状態では運航されないが、ときには特殊な事情で副務機に乗客を搭乗させるケースがある。

2004年5月には、北朝鮮による日本人拉致問題に関連して、2002年に日本に帰国していた蓮池薫夫妻・地村保志夫妻の子供5人を日本に帰国させる際に、副務機を使用した例がある[23]

2009年4月には、タイ中部のパタヤで開かれる予定だった東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議に出席するため、麻生太郎首相が政府専用機でパタヤ入りしたが、反政府派による暴動のため会議が中止されたのみならず、タイ政府による非常事態宣言が出され安全確保に問題が生じる事態となったため、当初民間機で帰国する予定だった日本政府の関係職員らを急遽帰国させるために副務機が活用された。

注釈[編集]

  1. ^ 自衛隊機は日本の航空法の適用を受けない上にパイロットの養成も自衛隊独自で行うため、航空法による航空従事者技能証明である操縦士免許を取得しなくても操縦ができるが、ここでの本機パイロットは1年に及ぶ部外委託教育により航空法による航空従事者技能証明である事業用操縦士免許(ボーイング747-400型限定)を取得している。
  2. ^ 自衛隊機は、検査(点検・整備)の場合も航空法の適用を受けず自衛隊独自の検査の体制があるため、航空法による航空従事者技能証明である航空整備士免許を取得しなくても検査できるが、ここでの航空機整備幹部は2年半に及ぶ部外委託教育により航空法による航空従事者技能証明である一等航空整備士を取得しており、航空整備員は部隊に配属後に部外委託による教育を受ける。政府専用機には1機につき7人の航空機体整備員が同乗し、国外でも自力で機体整備ができるようにしている。また、各機には予備のパーツから照明灯や窓磨きにいたるまで、あらゆる状況を想定した備品が搭載されている。
  3. ^ 部外委託も含む10ヶ月の訓練により、国家資格である運航管理者を取得している
  4. ^ 部外委託も含む10ヶ月の訓練により、国家資格である航空無線通信士を取得している。
  5. ^ 空軍同等である航空自衛隊に客室乗務員業務のノウハウはなかったので、担当の自衛官は運航ハンドリングを委託している日本航空に約3か月間出向してサービス技能の研修を受ける。
  6. ^ 部外委託も含む10ヶ月の訓練により、国家資格である運航管理者を取得している。
  7. ^ "planeta" スペイン語ポルトガル語で「惑星」を意味する
  8. ^ 国籍標章は左右主翼の上下と垂直尾翼の両側の計6か所につけられており、どこから見ても日本国政府専用機だということが一目で分るよう配慮されているが、これを見た細川総理は「どこかの七つ紋みたいだね」と漏らしたという。
  9. ^ なお、総理の外遊の際には報道各社の同行記者が同乗し、機内で記者会見が行われることもある。
  10. ^ 特に、軽武装の陸上自衛隊北部方面隊普通科隊員の緊急輸送。
  11. ^ 実際にアメリカ大統領が同国内の地方都市を訪れる際に、VC-25では乗り入れができないためVC-137BやC-9を使用することも多い。なお、日本政府がボーイング747-400の導入を閣議決定した選定理由の一つには、1987年当時、日本外交の中心だったアメリカ東海岸や欧州へノンストップで飛行できる機種が他にはなかったためでもあった。なお、日本航空がかつてボーイング747を世界一多く保有していた理由の一つもこれと同じである。
  12. ^ 2002年4月の小泉純一郎内閣総理大臣の東ティモール訪問の際、首都ディリプレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港の滑走路が短かったため、政府専用機での直接訪問が出来ず、ジャカルタまでの運航となった。
  13. ^ 2009年2月、麻生太郎内閣総理大臣ドミートリー・メドヴェージェフロシア連邦大統領との日露首脳会談が、ロシア連邦サハリン州ユジノサハリンスクで開催された。麻生総理は、当初政府専用機で現地入りする予定であった。しかしホムトヴォ空港の滑走路幅が狭く、着陸が不可能であるとして、政府専用機での現地入りを取りやめた。[1]
  14. ^ もし本国で緊急事態が発生した場合、迅速な情報収集に支障が出るばかりか、本国政府機関と首脳との交信が他国に筒抜けになってしまうため。

出典[編集]

  1. ^ 「政府専用機維持経費」防衛省 (PDF)
  2. ^ a b 納入時は民間機として機体記号 JA8091 と JA8092 で登録されていたが、自衛隊への移管時に軍用機扱いとなり、20-1101と20-1102の機体記号識別番号が与えられた。
  3. ^ 北海道新聞 次期政府専用機にB777 JAL、ANA受注競争 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/547546.html
  4. ^ a b 2012年3月16日、藤村修内閣官房長官が2018年頃まで維持できると発言。bloomberg.co.jp 同日付 2012年3月28日閲覧
  5. ^ 「政府専用機維持経費」防衛省 (PDF)
  6. ^ 粟野純一 「VHF帯エアーバンド 政府専用機フライトを追う!!」『ラジオライフ』1993年5月号、184-185頁。
  7. ^ “Cygnus”(シグナス、意味は「はくちょう座」)は特別航空輸送隊所属機のコールサイン
  8. ^ 政府専用機が羽田空港に来た(CYGNS01、CYGNS02、JF001、JF1)
  9. ^ ボーイングのコードは 747-47Cで、末尾の「-7C」が「日本国政府」を表すカスタマーコード。自衛隊では B-747-400で、「B-」が「ボーイング」を表す(軍用の輸送機は通常「C-」、要人輸送にも使う多用途支援機は通常「U-」ではじまる)。
  10. ^ 日本航空・全日空と同じ仕様
  11. ^ フジテレビ 超潜入!リアルスコープハイパー 2013年8月17日19時放送分
  12. ^ a b c d e 月刊エアライン2014年5月号 P.36-49
  13. ^ 鈴木真二 『プロが教える飛行機のすべてがわかる本』 ナツメ社、2009年、118-125頁。ISBN 978-4-8163-4639-2
  14. ^ 日本経済新聞 2010年12月8日
  15. ^ 朝日新聞2008年8月10日付けの「首相の1日」より
  16. ^ 2007年5月8日、麻生外相が閣僚懇談会で、緊急時の機動性などを理由に小型の政府専用機導入を提案したことが報じられた。ロシアのエリツィン前大統領の葬儀に日本の首脳特使が派遣できなかった事態を踏まえたもの。小型の政府専用機候補としてボーイング C-40 (737-700)エアバスA320ガルフストリーム IVなどが候補としてあげられている
  17. ^ 政府専用機「777」軸に後継検討 燃費の良さ重視 - 日本経済新聞(電子版、2013年7月19日付、同年8月27日閲覧)
  18. ^ 政府専用機:年内にも2代目機種選定 - 毎日jp. (毎日新聞、2013年8月11日付、同月29日閲覧)
  19. ^ 次期政府専用機、ボーイング777が濃厚に!?
  20. ^ 政府専用機整備の委託先を 日本航空から全日空へ テレ朝NEWS 2014年6月10日
  21. ^ 全日空、政府専用機の入札に向け準備中=現時点で決定ない 時事通信 2014年6月10日
  22. ^ 次期政府専用機、ボーイング提案の777-300ERに決定!?
  23. ^ 拉致被害者の家族5人帰国、曽我さんは第三国で再会案 - asahi.com

関連項目[編集]

外部リンク[編集]