ビジネスクラス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビジネスクラス(Business Class)は、旅客機の座席の等級における中間クラスのことである。ファーストクラスとエコノミークラスの間に位置付けられる。
目次 |
[編集] 概要
[編集] 導入
1970年代中頃までの多くの国際線旅客機には、上級クラスであるファーストクラスと、下級クラスであるエコノミークラスの2種類のクラスしかなかった。
しかし、1970年代前半のボーイング747型機などの大型機の導入に伴う海外旅行の大衆化によって、エコノミークラスに『団体割引運賃』などの各種割引運賃が導入されたことにより、当時アメリカを代表する航空会社であったパンアメリカン航空が、通常料金でエコノミークラスに搭乗する顧客(主に出張で利用する社用客)への専用サービスとして、専用コンパートメントの設置や座席サイズの拡大、機内食の充実を行った『クリッパークラス』(Clipper Class)と呼ばれる中間クラスを導入したのが始まりといわれている。
[編集] 拡大
その後、1970年代中半から1980年代にかけて、ブリティッシュ・エアウェイズや日本航空、エールフランス航空やシンガポール航空などの世界各国の競合他社もビジネスクラス、もしくはその原型になる中間クラスを続々導入した。
なお、導入当時はエコノミークラスに比べて座席サイズやシートピッチがわずかに広い他は、機内食の充実や手荷物の制限重量が10キロ程度拡大される程度のサービスが主流であったが、その利用客の多くが団体割引運賃ではなく普通運賃で搭乗することもあり、基本的に大幅な料金割引を殆どしないために高収益が見込めることなどから、その後、各社ともサービスの充実に一番力を入れる存在になった。
その結果各航空会社間のサービス競争がさらに激化した1990年代に入ると、多くの航空会社が3年から5年に1度はシートの改修やサービスの見直しを行う様になっていった。
[編集] 現在
2000年にブリティッシュエアウェイズが長距離路線用に導入したフルフラットシート(180°リクライニングし、完全に床と平行になるシート)が、ビジネスクラスのシートに革新をもたらした。同社のフルフラットシートは隣り合う2席が前後逆向きで配置されることでも革新的であった。その後同様のフラットシートやライフラットシートは日本航空や全日空、シンガポール航空などの競合他社が競って導入することとなり、現在では長距離路線を中心に、フルフラットシート(前述の前後相対配置かベット化時に斜め向きになるシートが主流、真正面を向いたフルフラットシートは南アフリカ航空などごく一部に限られる)もしくはライフラットシート〈180°リクライニングするが、床と平行にはならないシート〉が主流になっている。
また、ビジネスクラスのサービスの充実に伴い、最近ではヴァージン・アトランティック航空やコンチネンタル航空のように、ファーストクラスを廃止する航空会社も多く、シンガポール航空のように特定の機材(シンガポール航空の場合、ボーイング777-300ERとエアバスA340-500がこれに該当する)で運航している路線(シンガポール - ジャカルタ間を除く)に関しては、運賃とは別にサーチャージ(追加料金)を請求しているケースもある。
[編集] 国内線・近距離国際線の場合
なお、国内線や域内の近距離国際線の場合、ビジネスクラスとエコノミークラス、もしくはファーストクラスとエコノミークラスの2クラス制を取る航空会社が多いが、ヨーロッパやアメリカの近距離国際線においては、ビジネスクラス並みのサービスとシートにもかかわらず、2クラス時代の名残からか、「ファーストクラス」と称している場合も多い。
なお、夜間飛行の少ない中近距離国際線の場合、長距離線に多いフラットシートではなく、背もたれの最大リクライニング角度が130度から150度程度のシートを使用するケースも多く、その場合は、地域内での利用であることを強調して「〇〇〇アジア」や「〇〇〇ヨーロッパ」などの名称をつけて差別化しているケースもあるが、6-8時間程度の飛行時間の中距離線にもかかわらず、フラットシートを使用しているケースもある。
日本の国内線においては、日本航空が「クラスJ」、全日空が「プレミアムクラス」、スカイマークが「シグナスクラス」と呼ばれる中・上級クラスを導入しているが、サービス内容から中級クラスの一つに分類できる。
なお、日本航空はより上級なシートと機内、空港内サービスを提供する「ファーストクラス」を2007年12月より導入することで、普通席と中級クラス、上級クラスの3クラスとなっている。
ちなみに、かつての日本エアシステムは、ボーイング777にて上級クラスの「スーパーシート」、下級クラス「エコノミーシート」と中間クラスにあたる「レインボーシート」の3クラス制を取っていた。レインボーシートはエコノミー料金に1,000円の追加料金で利用できとても人気が高かったが、日本航空との合併により消滅し、現在は「スーパーシート」、「レインボーシート」どちらのシートも「クラスJ」として運用されている(サービス面では差がない)。
[編集] サービス内容
近年のサービス競争の激化により、一部の航空会社では空港ラウンジの充実や機内でのマッサージ、ハイヤーでの送迎サービスを導入するなど、多くの航空会社がより一層のサービスの強化を図っている。なお、機内食などの機内サービスやシートについては、長距離路線と中短距離路線では格差を付けるケースが多い。
[編集] 地上
- 市内から空港への専用送迎ハイヤーの提供
- 専用チェックインカウンターの使用
- 専用セキュリティゲートの使用
- 手荷物の重量制限緩和
- 到着時に優先で手荷物を受け取れる荷札
- 自宅(あるいはホテル)と空港間の手荷物無料配送サービス
- 出発地・経由地空港の専用ラウンジが使用可能
- 機内への優先搭乗案内
- マイレージサービスの加算マイル数の割増
[編集] 機内
機内でも、エコノミークラスよりも上級なサービスが提供される。
- 航空会社や路線にもよるが、基本的にリクライニング角度が130-180度で、オンデマンド形式の10-15インチ程度の個人用モニターが装備された専用大型シートが用意される。座席によっては、電動/油圧アシストやマッサージ機能が装備されている。平均的な座席の前後間隔(シートピッチ)は110cm程度から190cm程度と、78cm-85cm程度が標準のエコノミークラスよりも広い(日本の鉄道車両のグリーン車の座席の前後間隔は116センチである)。なお、ヨーロッパ域内路線の多くの航空会社のビジネスクラスは、エコノミークラスの座席と大差なく、隣席がテーブルとして利用されるのみである。
長距離線のビジネスクラスシートの概要は、近年では以下のようなものが主流。
[編集] ライフラットシート
座席そのものは頭頂部から足先までフラットな座席とはなるが、座席と床は平行とならず、若干下向きとなる。2000年にヴァージン・アトランティック航空が導入したものが初であり、以降世界中の航空会社で、長距離線のシートを中心に採用されている。
足先まで伸ばして睡眠することが可能である一方、床に対して斜め向きとなっていることで前の座席の下にめり込むように配置されるため、シートピッチをそれほど稼ぐ必要が無く(完全に伸ばした際の座席長が180cm強なのに対し、シートピッチは150cm強で済む)、完全フルフラットなシートに対してより多くの座席を配置出来る。
一方で、床と完全に平行にならない故に、睡眠時にずり落ちる感覚となったり、足先が窮屈に感じることがある。ルフトハンザドイツ航空では、これを防ぐためにシートがS字状に屈折することで、腰部を床面と平行させることで安定感を図っている。
日本航空やエールフランス航空のものをはじめ、殆どの場合座席は前方に向けて沈み込んでいくリクライニング方式だが、コンチネンタル航空、ノースウエスト航空、KLMオランダ航空などでは、以前の座席などと同じく後方にも若干倒れこむスタイルである。
2000年代のビジネスクラスの主要となるシートであり、近年では航空機製造メーカーのモックアップなどでも採用されている。近年では、より快適に過ごせるように、以下の3タイプのシートに移行する航空会社も多いが、依然このタイプのものを採用する会社は多く、新規採用会社も毎年のように存在する。
[編集] フルフラットシート(前後相対式)
ユナイテッド航空やブリティッシュ・エアウェイズで採用される。座席の前後、左右などで機種部と逆向きの座席を配置する方式で、狭い足部と広い頭頂部、あるいは狭い足部同士が隣り合わせになるため、幅スペースをとりやすく、ボーイング747で通常横7列であるところを横8列に増加させることが可能となった。
これにより、座席数に余裕が生まれ、シートピッチ180cm強の座席長を実現、完全なフルフラットシートを実現させている。一方で、座席の半数が逆向きシートとなることや、座席の横幅が窮屈になりやすいという欠点を抱えており、採用会社は少ない。なお、世界で最初にビジネスクラスのフルフラット化が実現したシートである。
[編集] フルフラットシート(ヘリンボーン式)
通路に対し斜め向きに座席を配置する方式。斜め向きとすることでシートピッチをかなり縮められ、また頭頂部のスペースが非常に広く取られる。ただ、全ての座席が斜め向きになり、またデッドスペースが多くなる場合がある。着席時の座席を倒して逆側にある睡眠用の面を出して使用するタイプの座席も多い。
ヴァージン・アトランティック航空が2006年に初採用。以後、ニュージーランド航空などを中心に採用が進んでいる。2000年代後半以降、ライフラットシートに変わる新型ビジネスクラス座席の主流となりつつある座席。
[編集] フルフラットシート(幅広式)
シンガポール航空と一部機材において採用されているもので、横幅を非常に広く取ることで着席時の快適性を向上させている。一方で座席数をそれなりに維持するため、睡眠時は前席の頭頂部と後席の足部がスペースを半分ずつ取り、ピッチを埋めている。そのため、睡眠時は上記と同じ斜め向きの睡眠となるが、ヘリンボーン式よりは機種に対し縦向きになっている。
[編集] フルフラットシート(通常配置式)
ファーストクラスと同じく、これまでのような通常タイプの座席配置のまま、シートピッチを単純に引き伸ばしてフルフラット方式としたもの。前項3つのタイプと違って座席単位でスペース、配置になんらかの犠牲がない一方、スペースの省略を行わないことで座席数が非常に少なくなってしまうため、今のところ大型機に限定した採用である。
南アフリカ航空が採用する程度で、座席数の減少を懸念した他の会社は前項の何れかの方式を採用していたが、フラットシートを各社が採用しサービス面に大差が無くなってきたこともあり、エールフランス航空や大韓航空が2010年以降の新型座席に採用する予定である。
[編集] フルフラットシート(スタッガード式)
全日本空輸が2010年より採用予定のもの。スタッガードとは互い違いの意味で、座席が半列ごとにずらされて配置されている。座席は従来のものより大幅に減少している。
-
- シートピッチ、モニターの一例として、
-
- 全日本空輸「CLUB ANA Asia」シート(短中長距離路線)が、127cm/モニター9インチ
- チャイナエアライン「ダイナスティクラス」シート(短中長距離路線)が、132cm/モニター10.4インチ
- シンガポール航空「新ビジネス」シート(長距離路線のA380、A340-500、777-300ERに搭載)が140cm/モニター15.4インチ
- ブリティッシュ・エアウェイズ「クラブワールド」シート(長距離路線)が183cm/モニター10.4インチ
- ユナイテッド航空「新ビジネスシート」(長距離路線)が、190cm/モニター15.4インチ
- ヴァージン・アトランティック航空「アッパークラス」シート(長距離路線)が、202cm/モニター10.4インチ
- 機内食に関しても、特別な食事が提供される。
- 長距離路線では機内食サービスの向上が著しく、レストランのように大型の食器で一皿ずつサーブするコース料理が提供される。前菜からデザートまで時間をかけたサービスが行われ、メインディッシュは3~5種類から選択出来、前菜も選択が出来ることもある。
- 中距離路線では、一部の航空会社を除きワントレーサービス(一つのトレーで前菜からメインを全て提供)もしくは、ミニコースサービス(前菜とメインのみを分ける)であるが、メインディッシュは3種類程度から選択できる。また、長距離路線同様にデザートワゴンのサービスを提供されることもある。
- 近距離路線では、ほとんどの機内食がワントレーサービスで、飛行時間によっては提供されないことや、コールドミール(温めない食事)が提供されることもある。
また機内食の特徴として、日本発着便では外国航空会社でも和食が選択出来たり、韓国発着便ではコチュジャンが提供されるなど、発着国の食文化にあわせた料理が提供されることも多い。 中東のイスラム諸国の会社では標準がイスラム料理の場合が多い。 特殊な事情のある利用者向けには、事前に申し込めばビジネスクラス専用のイスラムやヒンズー、コーシャーなど宗教食、ベジタリアン、低カロリーやアレルギー対応などのスペシャルミールも提供される。
- 航空会社や運航路線によっては、カップ麺やおにぎり、サンドイッチ等の軽食や、ケーキ、アイスクリームなどの無料サービスもある。
- 長距離路線などでは、多くの航空会社でバーコーナーなどが提供される。
- ラバトリーの差別化。エコノミークラスとは分離して装備が異なる他、ハンドタオルやアメニティなどをおいている会社もある。
[編集] 利用客層
- 社用による出張客や高所得者の観光利用が多い。なお、エコノミークラスほどではないが、時期や便によっては割引航空券も販売されている。また、マイレージサービスで蓄積したマイル数によりエコノミーからアップグレードすることもできる。また、団体(パッケージ)ツアーによっては、ビジネスクラスを利用するものや、追加料金を払ってビジネスクラスに変更(アップグレード)できるものもある。
- エコノミークラスのオーバーブッキング(予約の受け過ぎによる席不足)の結果、ビジネスクラスに回される事がある。これはインボランタリー・アップグレード(Involuntary Upgrade)と呼ばれ、主に得意客(当該社におけるマイレージ上級会員等)の旅客が対象になる。この場合座席はビジネスクラスになるが、サービス(主に食事)はエコノミークラスと同等となる場合もある。
- 上記と同じく特殊なケースであるが、エコノミークラスがツアー客などで満杯状態であるがビジネスクラスに空きを多数抱えている場合には、普通運賃を支払ったエコノミークラス客(あるいは割引率の低いチケットを持つエコノミークラス客)をビジネスクラスに回すことがある。航空会社の任意のサービスとして行われるものであるが、近年では経費効率化のための航空スケジュール最適化が進み、あまり見られないようになっている。
[編集] 呼称
下記のように、航空会社によって中間クラスの呼び名は違っているが、一般的には、これらの中間クラスを総称してビジネスクラスとの呼称で呼ぶことが多い。
- 『エグゼクティブクラスSEASONS』(日本航空)
- 『CLUB ANA 』(全日空)
- 『ダイナスティークラス』(チャイナエアライン)
- 『プレステージクラス』(大韓航空)
- 『ロイヤルシルククラス』(タイ国際航空)
- 『ゴールデンクラブクラス』(マレーシア航空)
- 『ラッフルズクラス』(シンガポール航空)
- 『エスパス・アフェール』(エールフランス航空)
- 『クラブワールド』(ブリティッシュ・エアウェイズ)
- 『アッパークラス・スイート』(ヴァージン・アトランティック航空)
- 『ユナイテッド・ビジネスクラス』(ユナイテッド航空)
- 『ビジネスファースト』(コンチネンタル航空)
- 『ワールド・ビジネスクラス』(ノースウエスト航空、KLMオランダ航空)
[編集] 「Cクラス」
なお、航空券上の記載でビジネスクラスが『C』と表記されるのは、パンアメリカン航空の『クリッパークラス』(Clipper Class)の頭文字がそのまま使われたという説や、『クラブクラス』(Club Class)の頭文字であるという説などがある(但し、運賃上ではCクラスの他、JやI、Z、Dといったアルファベットもビジネスクラスの表記となる)。
[編集] 第4のクラス
[編集] プレミアムエコノミークラス
近年では、ビジネスクラスとエコノミークラスのサービス内容(及びビジネスクラス運賃やエコノミークラス正規運賃とエコノミークラスの割引料金)に差がつきすぎてしまったため、日本航空や全日空、ブリティッシュ・エアウェイズやエバー航空などのように、その間を埋める『第4のクラス』(『プレミアムエコノミークラス』、や『エコノミーエクストラ』などの呼称で呼ばれる)を中長距離路線に設ける航空会社も出てきている。
運賃に関しては、エコノミー正規運賃かそれに準ずる運賃でないと利用できないものから、割引運賃でも多少の差額を支払うことによって利用可能なものまで、さまざまな取扱がある。
座席に関しては、日本航空やブリティッシュ・エアウェイズなどのように専用のシートを開発し、専用のコンパートメント内で提供するものや、旧式のビジネスクラス座席を流用するものから、ユナイテッド航空やスカンジナビア航空などのように、エコノミークラスと同等の座席で前後間隔を多少広げただけの方法でエコノミークラスと差別化されたものなど、航空会社によってさまざまなサービスが存在している。多くの場合座席前後幅は90-100cm程度となっている。
機内食についてはエコノミークラスと同等の場合が多いが、シャンパンや軽食などの提供で差をつけている会社も多い。また、空港ラウンジの使用や特設カウンターの提供、機内アメニティの提供を行なうケースもある。
[編集] プレミアムエコノミー設置便運航会社
- 『JALプレミアムエコノミー』(日本航空)
- 『プレミアムエコノミー / エコノミーBJ / プレミアムエコノミーアジア』(全日空)
- 『エリートクラス』(エバー航空/旧名は『エバーグリーン・デラックスクラス』)
- 『プレミアムエコノミー』(タイ国際航空/一部路線)
- 『エグゼクティブエコノミー』(シンガポール航空/シンガポール~ロサンゼルスノンストップ便、シンガポール~ニューアーク間)
- 『エコノミープラス』(パキスタン国際航空)
- 『ワールドトラベラープラス』(ブリティッシュ・エアウェイズ)
- 『プレミアムエコノミー』(ヴァージン・アトランティック航空)
- 『エコノミーエクストラ』(スカンジナビア航空/一部長距離便)
- 『エコノミープラス』(ユナイテッド航空)