ボーイング787
ボーイング 787 ドリームライナー
ボーイング 787 ドリームライナー (Boeing 787 Dreamliner) は、ボーイング社が開発・製造する次世代中型ジェット旅客機。ボーイング757、ボーイング767およびボーイング777の一部の後継となる。
中型機としては航続距離が長く、今までは大型機でないと行けなかった距離もボーイング787シリーズを使うことにより直行が可能になる。このことにより、需要のあまり多くない航空路線の開設が可能になるとされている。
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[編集] 名称
愛称の「ドリームライナー」は、公募後に2003年6月のパリ航空ショー期間中に発表された。研究段階ではY2、開発段階では7E7(EはEfficiency=効率)と呼ばれ、2005年1月28日(シアトル時間)に従来の命名方式を踏襲した787に変更された。また、ボーイング777型機に次いで開発されたという意味でも、「787」となることは予想されていた。
[編集] 開発経緯
1995年に就航開始した777に次ぐ機種の開発を検討していたボーイングは、将来必要な旅客機は音速に近い速度(遷音速)で巡航できる高速機であると考え、2001年の初期からソニック・クルーザーを研究・開発していた。しかし、2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件後の航空業界の冷え込みの影響などから少しでも運航経費を抑えたいという航空会社各社の関心を得ることができず、2003年に計画を中止した。そこでボーイングは、速度よりも効率を重視したボーイング767クラスの双発中型旅客機の開発に計画変更した。
2004年に、ボーイング副社長の来日後、全日本空輸が50機発注したことによって開発がスタート。その後、日本航空も発注したほか、ノースウエスト航空(のちにデルタ航空に統合され、権利も同社に引き継がれている)やコンチネンタル航空など多くの大手航空会社が発注している。開発当初のスケジュールでは、2007年7月のロールアウト(完成披露)、8月から9月ごろに初飛行、その後に試作機6機で試験飛行を行い、連邦航空局(FAA)の型式証明取得は2008年5月を予定して、取得しだい最初の発注者である全日本空輸に引き渡される予定であった。全日本空輸では2008年6月に国内線に投入、同年8月の北京オリンピック開催時には羽田 - 北京間のチャーター便に使用すると発表していた[1]。
[編集] 開発の遅延
2006年6月に廈門航空が3機をキャンセル[2]、初の発注キャンセルとなった。
2007年7月8日(シアトル時間)に1号機のロールアウト式典が行われ、この時点での受注数はボーイング社としては史上最高の47社677機となった[3]。ただし、この式典で公開された1号機は外観を除く内部が未完成で機内は公開されず、コックピットや配線の一部、アビオニクス、ソフトウェアは手が付けられていなかった。さらに主翼部材は工事のため、式典後にもう一度、主脚を含めて部分的に解体された。機体部材の7割近くを外部発注したために、主要パートナーの製品も含めて品質が劣るものがあり、それを自社で修繕しているため予想以上に時間がかかっていると説明した。
当初の予定では初飛行は2007年9月末、引渡しは2008年5月としていたが、2007年10月11日にスケジュールの遅れが発表され、初飛行は2008年第1四半期末、引渡しも当初の予定から6か月ほど遅れるとした[4]。
2007年12月に開発責任者であったマイク・ベア副社長が更迭され、787計画から退いた。ベアは責任者退任の際、ボーイング737の後継機計画(ボーイングY1)が進んでいることを公表したが、787の開発遅延を受け、外部発注体制を見直し、主要部品はボーイングのあるシアトル周辺で生産する予定であるとした。
2008年1月16日、1号機の納入を2009年に延期すると発表した。コスト軽減により開発・生産の委託先でトラブルが起こり、解消しなかったためである。さらに「センター・ウイングボックス」の設計やり直し[5]などの理由で、2008年4月9日に、初飛行を2008年第4四半期、引き渡しを2009年第3四半期とする、延期が発表された[6]。ただし、初飛行から型式証明までを9か月で達成するとした(先代のボーイング777は11か月で達成)。
1号機を納入予定の全日本空輸は、北京オリンピック開催時の就航も不可能となり、就航計画の変更を余儀なくされて、「ボーイング767で間に合わせる」とした。 全日本空輸は、遅延に関する損害賠償を請求する[7]他、日本航空も同様の請求を検討すると発表した。 2008年8月8日、アゼルバイジャン航空が1機キャンセルし、代替機としてボーイング767を発注した[8]。
現地時間2008年9月6日にボーイングで最大の労働組合がストライキを決行した[9]。この57日に及んだストライキと、さらに組み立て中の機体のファスナーに新たな不適合が見つかったなどの理由で、2008年12月11日には、初飛行を2009年第2四半期、納入開始を2010年第1四半期に延期すると発表した[10]。
2009年1月にロシアのS7航空が発注していた15機全部をキャンセルした[11]。
2009年6月の報道によると、シアトル北部のエバレット工場で1号機の各種テストが進行中であり、近い時期の初飛行が予定されているとされたが、「主翼と胴体の結合部分に補強の必要性が現れた」として、テスト飛行は延期された[12]。 「Section 12」と呼ばれ、日本の三菱重工業が担当の部分である。この箇所の改造に伴い主翼のストレステストのやり直しが必要で、さらに数か月の遅延となった。
2009年12月12日、2009年12月15日の午前10時(PST)(GMT18時、JST16日午前3時)に初飛行を行うと発表した。2009年12月15日午前10時28分(JST16日午前3時28分)、約20分遅れで2機のT-33を従え、ペインフィールド空港から離陸、同日午後1時30分(同16日午前6時30分)ごろ、キング郡国際空港(ボーイング・フィールド)に着陸し、悪天候ながら無事3時間ほどの初飛行に成功した(5時間のテストフライトの予定が3時間半に短縮された)[13]。 ボーイングが旅客機の初飛行にこれほど手間取ったことはかつてない。
2010年2月3日に、3号試験機 (ZA003) の客室が一般公開された。この後飛行試験を行い、全日本空輸に2010年第4四半期に納入し、その後日本航空やコンチネンタル航空などの初期発注者に納入することを予定していた[14]。
2010年8月2日に、全日本空輸の機材などに装着されるロールス・ロイス社のTrent1000型エンジンがテスト中に爆発し、エンジンハウジングを貫通して部品が飛散し同社のテスト施設が破損する事態が発生した[15]。
開発の遅延が懸念され[16]、2010年8月27日に、ボーイング社は「最終段階となる今秋の飛行テスト用のエンジン供給状況を精査した結果」を理由に、第1号機の納入時期が、2011年1 - 3月期に遅れると発表した[17][18]。
2010年8月28日に、ロールス・ロイス社は「テスト中の破損と供給状況の問題には関係がない」と発表した[19]。
2010年11月9日に、2号機(ZA002、全日本空輸塗装[20])の試験飛行中に電気室内の配電盤で火災が発生し、機内に煙が充満し主電源がダウンした。この影響でコックピットの表示の一部とオートスロットルが作動しなくなった。ラムエア・タービンによって操縦に必要な電源が確保され、消防隊が待ち受ける中ラレド空港に緊急着陸に成功したが、緊急脱出の際に1人が軽傷を負った[21][22]。さらなる開発の遅れとなった[23][24]。
2011年2月1日、飛行実験が再開となった。電気系統の事故を起こしたZA002号機もテスト復帰を果たし、合計飛行時間は2,000時間を突破した。
ボーイングは、第1号機の納入は2011年第三四半期を予定していると発表した[25]。
2011年9月26日(シアトル現地時間)、ローンチカスタマーである全日本空輸に、第1号機が初めて引き渡された。同時に10月引き渡し予定の第2号機も公開された。同年9月28日、歴史的初号機となった全日本空輸向けの第1号機(登録記号:JA801A)が東京国際空港に到着した。ロールアウトから実に4年越しの出来事であった。この後、同年11月1日より、羽田 - 岡山・広島を結ぶ路線で世界初の定期便による営業運航が開始され、さらに、2012年1月からは同社の国際線として羽田 - フランクフルト線にも投入されることとなっていた。しかし、全日本空輸向けの第3号機(登録記号:JA805A)以降が生産遅延となったため、2011年12月から週1回の運航を予定していた羽田 - 北京線は2012年1月14日・17日・18日に運航する計画に変更された。また、前述の羽田 - フランクフルト線については当初計画通り2012年1月に運航を開始するが、同年2月以降はボーイング777-200ERを併用することとなった[26]。
[編集] 日本でのテスト飛行から就航まで
ローンチカスタマーである全日本空輸とボーイング社により、就航準備の一環としてアジアで初めて飛行することになり、2011年7月5日より日本国内で実飛行を行うと発表された[27]。この検証飛行は、ローンチカスタマーである全日本空輸のみが実施できるプログラムである。羽田空港から中部・大阪(伊丹)・関西・岡山・広島の各空港を往復し、搭乗橋の接続や給油など実際の就航を想定したテストが行われる。
2011年7月3日、日本の空港設備との適合性検証のためにシアトルから787-8型機(全日本空輸塗装機、登録記号:N787EX)が初来日し羽田空港に到着[28]。
2011年7月5日、国内での適合検証プログラムが始まり、羽田空港と伊丹空港の間を1往復した[29]。
2011年7月13日、9号機がグアム国際空港にテスト飛行で飛来した。この機体はまだテスト中のため、機体記号はNナンバーである。ただし、垂直尾翼はANAの塗装がされている。
2011年8月23日、全日本空輸は2011年11月1日に国内線の羽田 - 岡山・広島線で定期便での運航を開始すると発表した。また国際線では同年12月に羽田 - 北京線に就航した後、2012年1月に新規開設される羽田 - フランクフルト線(ルフトハンザドイツ航空との共同運航)に使用すると発表。定期便の就航に先立って2011年10月26・27日に世界初の営業飛行となる成田 - 香港間のチャーターフライトを、同年10月28日・29日に成田発の遊覧飛行を実施するとも発表している。[30]
2011年8月26日、全日本空輸は2011年9月25日にボーイングのエバレット工場で初号機の引き渡しを受け、翌26日に祝賀式典を行った後、9月28日に東京国際空港に初号機が到着すると発表した[31] 。
2011年10月12日、全日本空輸は受領した初号機(JA801A)で乗員慣熟飛行を同月23日までの予定で開始した[32] 。
2011年11月1日、予定通り羽田 - 岡山・広島線で世界初の国内線定期便運航を開始した。なお全日本空輸では1, 2号機については特別塗装を施し、3号機以降は通常塗装とするが、ボーイング787であることをより判りやすくするため、機体前方に巨大ロゴ「787」をペイントすることになった[33]。通常塗装に型式名を大書する事例(機体後部の登録記号と併記するものは除く)は、同社のボーイング777-200以来となる(ボーイング777-200の導入当初は1 - 3号機の垂直尾翼に「ANA」の代わりに「777」と表記していた)。
2012年1月14日、羽田-北京線で世界初の国際線定期便運航を開始した。使用されたのは、前述の3号機(JA805A)である。なお、同社は2012年夏期より国内線専用機(座席仕様2クラス制:プレミアムクラス12席・普通席323席、計335席)の導入を予定している。国内線専用機の導入が進むと同時に、羽田 - 福岡・鹿児島線、そして羽田 - 熊本線にも順次投入することを予定されており、九州地方にも就航することとなる[34]。また国内線専用機の導入が進むと、暫定国内線仕様の初号機(JA801A)と2号機(JA802A)は短距離国際線への投入が予定されている。
2011年5月27日、日本航空は2012年4月22日に新規開設する成田 - ボストン線に就航させると発表した[35]。就航開始となれば、北米路線に初めて就航することとなる。
[編集] 787の展望
ライバルのエアバス社は787に対抗するため、A330に大幅に手を加えたA350を発表した。発表当初の目標性能では「A350の方が航続距離、旅客数ともに増加している」とされているが、ボーイング社は「787は全く新しい旅客機のため、A330をリファインしても当機を超えることはできない」と主張している。実際、当初のA350は787に比べて新味のない計画であったため各航空会社からの支持が得られず、その後エアバス社は大きく設計変更したA350XWBを立ち上げ、予定されていた就航時期もこれを受けて大幅に遅れることとなった。
ボーイング、エアバスともに、将来的な航空旅客の増加を予想している点においては共通する。しかしその対処の方法に違いが存在し、それが新型機開発コンセプトの違いに影響している。すなわち
- エアバス側は「ハブ空港間で運用する大型機を開発し、ローカルへは持ち駒豊富な自社の単通路機での乗客の振り分け」(ハブ アンド スポーク)を想定している
これに対し、
- ボーイング側は「乗客は面倒な乗り換えを好まず、中型機による直近の空港への乗り入れを求めるようになる」(ポイント トゥ ポイント)とする予測を立てている
ということである。
将来起こりうる原油価格の高騰や、主要国の排気ガス規制に伴い、各航空会社がどのような選択をするのか今後の動向が注目されるが、日本では、国内空港、特に羽田空港の拡張状況や発着枠の推移、2011年3月12日に全線開通した九州新幹線(鹿児島ルート)、2020年開業予定の北海道新幹線に代表されるような、他の交通機関の整備、国内外の航空需要の先行き等の厳しい環境において、さらに小型のボーイング737やエンブラエル 170、MRJのような小型双発機を導入する動きが多くなったために、国外航空会社の動向や自社の財務体質等を慎重に見極めつつ発注の検討がなされるものとみられる。
なお、ボーイングもエアバスも、「ハブ アンド スポーク」にも「ポイント トゥ ポイント」にも対応できるように、大型機(ボーイング747-8とエアバスA380)や中型機(ボーイング787とエアバスA350)、小型機(ボーイング737とエアバスA320)を用意している。
2012年初頭には、LOTポーランド航空がワルシャワ - 成田間の直行便を開設する予定である。同時に787を用いてワルシャワ - 北京、ワルシャワ - 上海の2路線も運航を開始する予定である [36]。
[編集] 機体
中型のワイドボディ機で、ナローボディのボーイング757やセミワイドボディのボーイング767、およびボーイング777の一部の後継機と位置づけられている。特にターゲットとなる767より、航続距離や巡航速度は大幅に上回るとともに、燃費も向上している。炭素繊維強化プラスチック等(カーボン)の複合材料の使用比率が約50%[37]であり、残り半分が複合材料に適さないエンジン等なので、実質、機体は完全に複合材料化されたといえる。
カーボンは同じ重量なら鋼鉄の10倍の強度があり、金属疲労はないが、炭素繊維を固めている樹脂は紫外線で劣化するためUVカットコーティングや塗装などが必要である。
[編集] 概要
胴体は767、あるいはエアバスA300クラスより太く、客室の座席配列はエコノミークラスで2-4-2の8アブレストが基本であるが、3-3-3の9アブレストでも従来の旅客機、737や747のエコノミークラスとほぼ同等の座席幅を確保でき、実際に9アブレスト仕様で発注している航空会社はかなり多い。この太い胴体のため、床下貨物室にLD-3コンテナを2個並列に搭載可能である(床下にLD-3が並列搭載できないことは、A300やA330と比較した時に767の重大な欠点であった)。
客室は従来より天井が20cm高くなっている。従来比1.6倍の大型の窓が採用され、窓側でなくとも外の景色を見ることができるという。また窓にはシェードがなく、代わりにエレクトロクロミズムを使った電子カーテンを使用し、乗客各自が窓の透過光量を調節することになる。客室内はLED光により、様々な電色が調整できる。[38]トイレには、ローンチカスタマーの全日本空輸の意見により、日本で普及が進んでいる温水洗浄便座がオプションとして採用された。
主翼はじめ、機体に複合材料を使用しているが、これによって耐腐食性等の問題が解決され、ボーイング777ではコックピットのみへのオプション装備だった加湿器が、初めてキャビンに標準搭載される。また、「気体フィルター技術」と呼ばれる技術を使用した新型フィルターを搭載する事により、従来のHEPAフィルターでは除去できなかった気体分子も除去できるようになった。これにより、少なくとも乾燥が原因で発生する症状は半減するとしている。
コックピットは、777のようなLCDを多用したグラスコックピットをさらに進化させたものになり、ヘッドアップディスプレイ(HUD)も機長・副操縦士の両席に標準装備で付く予定である。エレクトロニック・フライトバッグ(EFB)も標準装備される。なお開発当初、パイロット用酸素マスクは欧米人向けの形になっていたが、全日本空輸の要請により、東洋人の顔つきに合わせたマスクも作られることになった。[39]
[編集] 性能
巡航速度はマッハ0.85となり、マッハ0.80の767、マッハ0.83程度のA330、A340より長距離路線での所要時間が短縮されるとされる。
航続距離は基本型の787-8での航続距離は8,500海里(15,700km)、ロサンゼルスからロンドン、あるいはニューヨークから東京路線をカバーするのに十分であり、東京からヨハネスブルグへノンストップで飛ぶことも可能である。
767と比較すると燃費は20%向上するとされている。これは空力改善・複合材(炭素繊維素材)の多用による軽量化・エンジンの燃費の改善・これらの相乗効果によるものだという。軽量化によって最大旅客数も若干増加している。
[編集] エンジン
エンジンはロールス・ロイス plc製トレント1000とゼネラル・エレクトリックのGEnxが用意されている。これらのエンジンも国際共同開発である。電気接続のインターフェースを標準化したため、これら2種類のエンジンの交換が可能とされており、将来の技術進歩により高性能エンジンが開発された際には異なるメーカーのエンジンと取り替えることが可能になった。
エンジン始動と発電の両方を行うスタータジェネレータを採用し、従来ブリードエアとスタータタービンにより行っていたエンジン始動の電動化、エアコンや翼縁解氷装置などもブリードエアを使わず電気化するなどにより、エンジンコンプレッサからの抽気(ブリード)を廃止することで燃費向上を図ることができたとされる[40]。
なお、ローンチカスタマーの全日本空輸はロールスロイス製エンジンを選択した[41]が、ボーイングの旅客機でアメリカ製以外のエンジンを搭載した仕様によるローンチは、過去にはボーイング757の事例があるのみである[42]。
[編集] 国際共同事業の推進と日本企業の協力
ボーイング787は機体の70%近くを海外メーカーを含めた約70社に開発させる国際共同事業である。これによって開発費を分散して負担できるとともに、世界中の最高技術を結集した機体になるとしている。参加企業は下請けを含めると世界で900社に及ぶ。イタリア、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、韓国、中国といった国々が分担生産に参加しており、日本からも三菱重工業を始めとして数十社が参加、日本企業の担当比率は合計で35%と過去最大である(767は15%、777は20%を担当)。この35%という数字はボーイング社自身の担当割合と等しい。ボーイング社外で製造された大型機体部品やエンジン等を最終組立工場に搬送するため、専用の輸送機[43]が用いられており、日本では生産工場が名古屋近郊にある関係で中部国際空港に定期的に飛来している[44]。
三菱重工業は747X計画時の2000年5月にボーイングとの包括提携を実現しており、機体製造における優位性を持っている。すでに1994年には重要部分の日本担当が決定しており、三菱は海外企業として初めて主翼を担当(三菱が開発した炭素繊維複合材料は、F-2戦闘機の共同開発に際して航空機に初めて使用された。この時、アメリカ側も炭素系複合材の研究を行っていたものの、三菱側が開発した複合材の方が優秀であると評価を受けた為、三菱は主翼の製造の権利を勝ち取っている)、川崎重工業が主翼と中胴の結合部と中央翼、富士重工業がセンターボックスと主翼フェアリングに内定していた。計画は747Xからソニック・クルーザーを経て787となり、三菱が主翼、川崎が前方胴体・主翼固定後縁・主脚格納庫、富士が中央翼・主脚格納庫の組立てと中央翼との結合を担当している。エンジンでも、トレント1000に三菱(名誘)、GEnxにIHIが参加している。
機体重量比の半分以上に日本が得意分野とする炭素繊維複合材料(1機あたり炭素繊維複合材料で35t以上、炭素繊維で23t以上)が採用されており、世界最大のPAN系炭素繊維メーカーである東レは、ボーイングと一次構造材料向けに2006年から2021年迄の16年間の長期供給契約に調印し、使用される炭素繊維材料の全量を供給する[45]。
[編集] 派生型
現在ボーイング787型機は3つの派生型を売り込んでいる。
- 787-3
- 航続距離3,500海里(6,500km)、交通量が多い路線を的にした296座席(2クラス制)の短距離型。発注していたのは日本の航空会社である全日本空輸と日本航空のみで、事実上日本専用モデルと化していたが、開発スケジュールの遅れのためにこれらの発注は787-8に振り替えられ、2012年1月現在での787-3の発注数は0機である。そのため、現在は製造が中断されているが発注する航空会社が現れれば、製造を再開する見通しである。
- 787-8
- 座席数223座席(3クラス制)であり航続距離8,500海里(15,700km)の787型機の基本型であり、最初に開発されるモデルでもある。2007年7月8日にロールアウト[46]し、同年9月末に初飛行する予定であったが、二度目の延期では初飛行は2008年6月になる見込みと発表された[47]。しかし、リベットなどの部品強度の問題に加え、飛行に必要な基礎的なプログラムを持つコンピュータのデータミスなどが相次いで発覚し、2009年12月15日の初飛行成功まで5度にわたり初飛行の日程が延期された。2008年9月27日での静止試験にて高圧テストが完了[48]。11月15日にウィングボックスの破壊試験が行われた[49]。
- 787-9
- 胴体延長の座席数259座席(3クラス制)。初飛行は2011年以降の予定[50]。
また、機体をさらに大型化した787-10型機の生産を計画しているが、仮に開発が決定されれば、787-10型機は同じボーイングの777-200ERと競合することとなる。
[編集] 仕様
出典:Boeing web page[51].
787-10の仕様は一部推定値を含み、また787全体も開発が完了していないので、仕様は変更される可能性がある。
| 項目\機種 | 787-3(製造中断) | 787-8 | 787-9 | 787-10 (推定) |
767-300ER (参考) |
767-400ER (参考) |
777-200ER (参考) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 全長 | 56,7m | 62.8m | 69m | 54.9m | 61.4m | 63.7m | |
| 全幅 | 52,0m | 60.1m | 62.0m | 47.6m | 51.9m | 60.9m | |
| 全高 | 16.9m | 17,0m | 16.9m | 16.9m | 15.8m | 16.8m | 18.5m |
| 胴体最大幅 | 5.74m | 5.74m | 5.03m | 5.03m | 6.19m | ||
| 客室最大幅 | 5.46m | 5.49m | 5.49m | 4.70m | 4.70m | 5.86m | |
| 最大離陸重量 | 170,000 kg | 219,540 kg | 244,940 kg | 不明 | 186,880 kg | 204,120 kg | 297,560 kg |
| 座席数 | 290 - 330(2クラス) | 210 - 250(3クラス) | 250 - 290(3クラス) | 約300(3クラス) | 218(3クラス) | 245(3クラス) | 301(3クラス) |
| 貨物量 | 16トン | 不明 | 10トン | ||||
| エンジン | GE GEnx RR Trent 1000 |
GE GEnx RR Trent 1000 |
GE CF6-80C2 P&W PW4062 または RR RB211-524H |
GE CF6-80C2 P&W PW4062 |
GE GE90-94B P&W PW4090 または RR Trent 895 |
||
| 巡航マッハ数 | マッハ0.85 | マッハ0.85 | マッハ0.80 | マッハ0.80 | マッハ0.84 | ||
| 航続距離*1 | 5,650km | 14,200 - 15,200km | 14,800 - 15,750km | 不明 | 11,306km | 10,454km | 14,316km |
| 最大巡航高度 | 13,000m | 13,000m | 13,000m | 13,000m | |||
| 最大燃料容量 | 48,600 L | 127,000 L | 127,000 L | 不明 | 90,770 L | 90,770 L | 171,160 L |
| 離陸滑走距離 | 1,650m | 1,650m | 1.650m | 1.650m | 1.650m | 1.650m | 1.650m |
| 着陸滑走距離 | 1,730m | 1,730m | 1,730m | 1,730m | 1,730m | 1,730m | 1,730m |
| 初飛行 | 2012年以降 | 2009年 | 2011年以降 | 未定 | 1986年 | 2000年 | 1997年 |
- *1:最大積載(旅客及び貨物)時
[編集] 受注状況
最新の情報はボーイング787の受注一覧表(英語版Wikipedia)も参照のこと。
- 2010年11月時点
- 787-3は0機
- 787-8は629機
- 787-9は218機
- 787全機種合計847機
[編集] 競合機種
[編集] 脚注
- ^ 米ボーイング新中型旅客機「B787」 ANA、来年6月路線投入へ[リンク切れ]
- ^ Chinese Xiamen Airlines has become first to cancel 787s
- ^ 秋元, 俊二 (2011-02-09), ボーイング787“ドリームライナー”は空の旅をどう変える?, ITmedia 2011年2月10日閲覧。
- ^ Boeing Reschedules Initial 787 Deliveries and First Flight
- ^ ボーイング、787「センター・ウイングボックス」設計やり直し[リンク切れ]
- ^ ボーイング、787型機のファーストフライトおよびデリバリー・スケジュールを変更
- ^ “全日空:米ボーイング787納入遅れ、賠償請求へ”. 毎日新聞. (2008年3月26日)[リンク切れ]
- ^ “米ボーイング、製造遅延の787型に初めての解約”. ロイター. (2008年8月8日) 2011年7月5日閲覧。
- ^ “米ボーイング技術者労組がスト、「787」納入さらに遅れ”. ロイター. (2008年9月8日) 2011年7月5日閲覧。
- ^ “787納入、10年に再延期”. 共同通信. (2008年12月12日) 2011年7月5日閲覧。
- ^ [1]、世界金融危機によるロシアの金融機関による貸し渋りから調達不能の判断が下されたためのキャンセルであるといわれる[リンク切れ]
- ^ “787のテスト飛行延期 米ボーイング、納期影響も”. 共同通信. (2009年6月24日) 2011年7月5日閲覧。
- ^ Boeing 787 Dreamliner completes its maiden flight, BBC News, 15 December 2009.
- ^ Boeing Unveils First 787 Dreamliner Interior on 3rd Flight-Test Airplane
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- ^ ボーイングの次世代旅客機は、レゴのように組み立てられる : Gizmodo Japan(ギズモード・ジャパン)
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[編集] 外部リンク
- Boeing's New Airplane, newairplane.com(英語)
- Boeing Gives the 7E7 Dreamliner a Model Designation, www.boeing.com(英語)
- B787-3/-8/-9の概要(pdf),財団法人日本航空機開発協会(日本語)
- ANA ボーイング787 We Fly 1st.787ANA SKY WEB(日本語),(英語)
- JAL ボーイング787, www.jal.co.jp(日本語)
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