エンブラエル C-390

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プロトタイプ

エンブラエル C-390Embraer C-390)はブラジルエンブラエル社で開発中のターボファンエンジン双発中型軍用輸送機である。

概要[編集]

これまでエンブラエル社で製造した最も重い機体になり、装甲車を含む23トンの貨物を輸送できる。[1][2]機体のサイズは、21.7トン積載のC-130 ハーキュリーズとほぼ同規模である。エンブラエル E-Jetの開発で培った技術が反映されるとしている。

設計と開発[編集]

コックピットモックアップ

2006年にエンブラエルはC-130と同規模の戦術輸送機の調査を始めた。[3]2007年4月、エンブラエルはC-390と社内で分類される中型の輸送機に関する調査を報告している。[4]

機体にはエンブラエル多くのE-ジェットの技術を取り入れている。 本機は、この種の軍用貨物機同様、主翼は高翼配置、尾翼はT字、主脚は胴体下部両側にバルジ(膨らみ)を設け収納、胴体後部にランプ式の貨物搭載口を有する。操縦系統はフライ・バイ・ワイヤ方式で、操縦席にはヘッドアップディスプレイ(HUD)を装備、ナイトビジョンゴーグル(NVG)搭載も考慮されている。

単価は、競合するC-130Jのような同種の機体が最大6,200万USドルするにもかかわらず、およそ5,000万USドルであると推定されている[5][6]。エンブラエルの副社長ルイス・カルロス・アグイラは、彼らの予想によれば、世界の約695機の軍用輸送機が次の10年の間に交換される必要があり、それだけの潜在市場がこの種の飛行機にはあると言っている。[7]

採用予定のエンジンは推力75.6から98 kN (17,000–22,000 lb)とされ、インターナショナル・エアロ・エンジンズV2500CFMインターナショナルCFM56が候補に挙がっている。[8][3]

2008年3月、ブラジル政府は約6,000万レアル(または3,300万USドル)をこの機体の初期の開発に投資する計画を立てた。同時にブラジル空軍は約22から30機の第一次発注を確定した。エンブラエルは潜在的なパートナー達と協議する。[9] 2008年5月、ブラジル議会はこの計画と航空機の開発への8億レアル(4億4,000万USドル)の投資を承認した。報道機関はこの航空機が空軍だけでなく陸軍や海軍でも使用されると報じたが政府機関はまだ承認していない。[10]

2009年4月14日、ブラジル空軍は空中給油機/輸送機仕様のKC-390を発表した。[11][12]

2009年9月7日、フランスがブラジルとのラファール導入交渉の過程で、交換条件として12機のKC-390購入の可能性がある旨が報じられた。[13]2009年10月2日には、ブラジル空軍の次期戦闘機(F-X2)選考でフランスとともにグリペンを提案しているスウェーデンが戦術輸送機として導入を検討していると報じられた。[14][15]

2008年9月、ポルトガル空軍参謀長は航空新聞Take OffのインタビューでC-130輸送機の更新に関心があると述べたがポルトガル空軍はC-390の開発状況を見守っており、近い将来発注する可能性がある事をほのめかした。[16]2010年2月には、エンブラエルはKC-390の導入と引き換えにポルトガル空軍の老朽化したC-130を引き取ることを国防省へ提案したという報告があった。[17]

2010年3月、エンブラエルは開発スケジュールを書き上げた。予定では2014年末に最初の試作機が納入される予定である。[18]2010年7月にファーンボロー国際航空ショー でブラジル空軍は28機のKC-390を発注する予定であると発表した。ショーの期間中エンブラエルは貨物の容量を21トン(23 トン)に増やし初飛行の予定は2014年であると発表した。[1][19]

2010年8月、アルゼンチンの国防相であるNilda GarréはアルゼンチンはC-390の製造に部分的に参加すると発表した。[20] 2010年8月24日チリとブラジルの国防相がチリのENAER社がKC-390の産業チームに加わる協定に調印した。[21][22]

コロンビアも同様にKC-390計画への参加協定に調印した。[23]2010年、9月10日、ポルトガルの国防相は計画への参加に調印した。[24][25]

2010年9月にはチェコAero Vodochody英語版がKC-390の製造に部分的に参加するかもしれないと報告された。[26] 2010年10月にエンブラエルはKC-390の製造にエンブラエルの民間機の部品も同様に生産している[27][28] アルゼンチンのFabrica Argentina de Aviones英語版 (FAdeA)が関与する交渉中である事を発表した。[29]

製造[編集]

2011年3月23日、DRS ディフェンス・ソリューションズは空中給油機/輸送機の貨物取り扱いと空中輸送システムの納入企業に選択された。[30] 4月7日にブラジルのELEB(エンブラエルの子会社)は降着装置の設計と製造に選ばれた。[31] 4月13日にエンブラエルとFAdeAの間でスポイラー、前部降着装置扉、後部ランプドア、フラップフェアリング、テールコーン、電気キャビネットをコルドバで生産する協定が調印された。[32] 同日、Aero Vodochodyが後部胴体、乗員扉とパラシュート扉、非常扉とハッチ、貨物庫扉と固定着陸エッジの製造に選ばれた。[33]

運用実績[編集]

2007年の報告によるとブラジル郵政当局英語版(Correios)は、郵便輸送のために商業的貨物輸送サービスを利用する代わりに、本機をとりあえず5機、最終的に20あるいは25機購入するという案に関心を示していると報告された。[34][35]

2010年8月チリ空軍が6機のKC-390を計画していると発表され[22][36]、同年9月にはコロンビアが12機のKC-390の導入を計画していると報じられた。[23][37]同月にチェコ空軍が2機のKC-390を購入する可能性も報じられた。[26] 2010年10月、エンブラエルはアルゼンチン空軍によって6機のKC-390が購入される予定であると発表した。[29]

運用国[編集]

運用予定国[編集]

諸元(KC-390)[編集]

KC-390の三面図

[38] [39]

  • 乗員: 2 名
  • 全長: 33.91 m
  • 全幅: 35.05 m
  • 全高: 10.26 m
  • 貨物室寸法: 長さ12.68 m(ランプ含め18.54 m) 、幅 3.35 m 、高さ 2.94 m(主翼下 3.20 m)
  • 最大離陸重量: 81.0トン
  • 最大積載量: 最大23.0 トン
  • 発動機:ターボファン 2 基
  • 推力: 75–100 kN
  • 速力: マッハ0.8
  • 最大高度: 10,973 m(36,000ft)
  • 航続距離: 6,000 km
主な軍用輸送機の比較
XC-2
日本の旗
C-1
日本の旗
A400M
欧州連合の旗
C-130J
アメリカ合衆国の旗
C-17
アメリカ合衆国の旗
Y-20
中華人民共和国の旗
C-390
ブラジルの旗
Il-214
ロシアの旗
画像 Xc-2 20110520.jpg JASDF Kawasaki C-1 Aoki-1.jpg Airbus A400M EC-404 (8135661129).jpg C-130J 135th AS Maryland ANG in flight.jpg C-17 test sortie.jpg Y-20-2 in Zhuhai 2014.jpg Embraer-KC-390.jpg MTS Il214 maks2009.jpg
乗員 3名 5名 3-4名 3-6名 2-4名 3名 2名
全長 43.9 m 29.0 m 45.1 m 29.79 m 53.0 m 47.0 m 33.91 m 33.2 m
全幅 44.4 m 30.6 m 42.4 m 40.41 m 51.8 m 45.0 m 35.05 m 30.1 m
全高 14.2 m 9.99 m 14.7 m 11.84 m 16.8 m 15.0 m 10.26 m 10.0 m
空虚重量 60.8 t 24 t 60.8 t 34.25 t 128.1 t ? t  ? t  ? t
基本離陸重量 120 t 39 t 70.305 t 263 t  ? t  ? t  ? t
最大離陸重量 141 t 45 t 136.5 t 79.38 t 265.35 t 220 t 81.0 t 68.0 t
最大積載量 約30 t 8 t 37 t 19.050 t 77.519 t 66 t 23.0 t 20.0 t
発動機 CF6-80C2K1F ×2 JT8D ×2 TP400-D6 ×4 AE2100-D3 ×4 F117-PW-100 ×4 D-30KU ×4 V2500-E5 ×2 PD-14 ×2
ターボファン ターボプロップ ターボファン
巡航速度 マッハ 0.8
890km/h
(高度12,200m)
マッハ 0.65
650 km/h
マッハ 0.68-0.72
780 km/h
マッハ 0.65
643 km/h
マッハ 0.77
830km/h
(高度7,620m)
マッハ 0.70
630km/h
(高度8,000m)
マッハ0.8 マッハ0.75
航続距離 12 t/6,500 km 0 t/2,400 km
6.5 t/2,185 km
8 t/1,500 km
0 t/8,710 km
20 t/6,390 km
30 t/4,540 km
0 t/6,445 km
16.3 t/3,150 km
0 t/9,815 km
72 t/4,630 km
0 t/7,800 km 0 t/6,019 km
13.3 t/4,815 km
23.6 t/2,593 km
4.5 t/6,000 km
20 t/2,500 km
最短離陸滑走距離 500 m 460 m 770 m 600 m 910 m  ?  ? 1,200 m
運用状況 実用試験中 現役
2011年より退役中
実用試験中 増備中 実用試験中 開発中

同クラスの航空機[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b "FAB and Embraer Announce Plan for KC 390 Initial Acquisition". Embraer, 21 July 2010.
  2. ^ Inside Embraer's KC-390 Tanker/Transport. Graham Warwick's blog on AviationWeek.com, 25 February 2011.
  3. ^ a b Norris, Guy. "Embraer studies C-130-sized tactical airlifter". Flight International, 2006年11月13日.
  4. ^ Warwick, Graham. "Embraer reveals details of C-390 military airlifter". Flightglobal.com, 19 April 2007.
  5. ^ [1]. Yahoo! Industry News
  6. ^ Govindasamy, Siva. "FARNBOROUGH: Lockheed prepares for KC-390 competition ." Flight Global, 21 July 2010.
  7. ^ Prensa Latina
  8. ^ Flight International 2006-11-13
  9. ^ [2]
  10. ^ [3]
  11. ^ Stephen Trimble (2009年4月14日). “Brazilian Air Force signs order launching Embraer KC-390 tanker-transport”. Flightglobal. 2009年4月14日閲覧。
  12. ^ Warwick, Graham. "Embraer Launches KC-390 Tanker/Transport". Aviation Week, 15 April 2009.
  13. ^ Brasil negocia com França compra de 36 jatos Rafale
  14. ^ Saab has submitted an update on the proposal offering 36 Gripen Next Generation (NG) to the Brazilian Air Force (FAB).
  15. ^ [4]
  16. ^ [5]
  17. ^ [6]
  18. ^ Embraer reveals KC-390 schedule, design changes”. Flight International (2010年). 2010年5月14日閲覧。
  19. ^ Wall, Robert. KC-390 advances, F-X2 doesn't. Aviation Week blog, 21 July 2010.
  20. ^ "la cooperación con países de la región, entre los cuales destacó el caso de Brasil en el que Argentina participará en la construcción del avión de transporte C-390, similar al Hércules"
  21. ^ "Embraer Reveals Discussions With Chilean Aeronautics Industry For The KC-390". Embraer, 24 August 2010.
  22. ^ a b Chuter, Andrew. "Chile May Tie Up With Brazil's KC-390". Defense News, 25 August 2010.
  23. ^ a b Croft, John. "Colombia formalises Embraer KC-390 interest". Flight International, 1 September 2010.
  24. ^ Portugal no programa do KC-390
  25. ^ "Defence Ministers of Portugal and Brazil Sign Memorandum of Understanding on the KC-390". defense-aerospace.com, 10 September 2010.
  26. ^ a b Czech Republic outlines need for two KC-390s”. 2010年9月15日閲覧。
  27. ^ interview FADEA director
  28. ^ FADEA manager interview
  29. ^ a b Argentine government manifests its intention to acquire six military transport jets from Embraer
  30. ^ DRS wins first link in KC-390 supply chain
  31. ^ [KC-390 Cargo Jet Will Have Landing Gear by ELEB Embraer chooses Brazilian company to design and manufacture this system]
  32. ^ Fábrica Argentina de Aviones “Brig. San Martín” S.A. (FAdeA) will supply structural parts for the new airplane
  33. ^ LAAD11: Embraer signs two new suppliers for KC-390
  34. ^ Costa confirma projeto dos Correios com cargueiro C-390. Monitor Mercantil. August 28, 2007. Retrieved on October 15, 2007.
  35. ^ Brazilian postal service may order Embraer C-390 freighters. Flightglobal.com. September 4, 2007. Retrieved on October 15, 2007.
  36. ^ defensenews.com. 25 Aug, 2010. Chile May Tie Up With Brazil's KC-390.
  37. ^ Colombia formalises Embraer KC-390 interest.
  38. ^ embraer defensesystems.com Embraer KC-390 three_view
  39. ^ embraer defensesystems.com Embraer KC-390 performance

外部リンク[編集]