サーブ 39 グリペン

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サーブ 39 グリペン

JAS Gripen a (cropped).jpg

サーブ 39(JAS39 JASは「ヤース」と発音)は、スウェーデンサーブ社を中心として開発された戦闘機。愛称はグリペンスウェーデン語Gripen (有翼獅子)。

概要[編集]

機体のサイズからの分類は軽戦闘機、用途からの分類はマルチロール機(多目的戦闘機)であり、スウェーデン語のJakt(戦闘)、Attack(攻撃)、Spaning(偵察)の略称に始まるJAS39の機種番号通り、戦闘攻撃偵察などをすべてこなす。多目的機にありがちな機体の大型化と相反する運用上の要件の兼ね合いから航続距離などの一部性能を抑えることで運用体系における高いコストパフォーマンスを実現している。

開発[編集]

スウェーデン独特の要求[編集]

冷戦期のスウェーデンは軍事的中立政策遂行のために独力で自衛せざるを得ず、先制攻撃への抗堪性を高めることを必要としていた。このため、戦闘機は空軍基地だけでなく、国内各地の山を刳り貫いて作ったシェルター等へ分散配備し、作戦時は高速道路を使用して運用するものとした。 これに対して離着陸のため2,3kmに及ぶ直線区間を多く用意することは困難であるため、短距離で離着陸(STOL)できる能力を必要とした。また、シェルター等の充分な設備のない場所での整備や短時間での再出撃を実現する高い整備性も必要とした。

経緯[編集]

サーブ 37 ビゲンの後継として1980年から開発を開始し1981年に機体初期提案がまとまった。政府は翌1982年に提案を承認し、試作機5機と量産型30機の開発契約を締結した。

試作初号機は1988年12月9日に初飛行を行った。試作初号機は1989年2月3日の試験飛行中にフライ・バイ・ワイヤを制御するプログラムの欠陥によりPIO (Pilot Induced Oscillation,パイロットに起因する振動) を起こして着陸に失敗し大破した。その穴埋めとして1992年に初飛行したJAS39A量産初号機を試験に使用することとなったため、1993年に初飛行した量産2号機が実質量産初号機となったが、この機体も試作初号機と同一原因により8月8日に墜落した。制御プログラムの修正のために生産計画は大幅に遅れ、1995年予定の最初の飛行隊の発足は1年遅れの1996年となった。なお複座型のJAS39Bは1996年に初飛行を行った。

特徴[編集]

機体[編集]

グリペンはビゲン同様のカナード(先尾翼)とデルタ翼の組み合わせであるクロースカップルドデルタ形式としているが、揚力カナードであるビゲンと異なり、ビゲン以降のクロースカップルドデルタ形式の機体と同様の揚力を発生しない制御カナードで、カナード全体が昇降舵のように可動するオールフライング方式となっている。着陸時には最大前傾によりエアブレーキとして働く。

機体の構成素材はアルミ 59%、CFRP 20%、チタン 8%、材 8%、その他 5%となっている。CFRPは主にカナード、主翼、尾翼に使用している。その他素材の主なものとしては、レーダーカバーのGFRP、尾翼先端のAFRPキャノピーアクリル樹脂がある。キャノピーは厚さ9mm、前方のウィンドシールドは厚さ26.5mmで、重さ1kgの鳥が時速1,000kmで衝突する衝撃に耐えられる。

操縦系統は3重デジタル・フライ・バイ・ワイヤとマニュアル1系統の計4系統。操縦データは32bitMPU 68040が処理し、テキサス・インスツルメンツDSP TMS320C30が入出力とバックアップを行う。

運動性を高める為にピッチ方向の静安定性を弱めた空力設計の機体を飛行制御装置 (FCS) により制御して安定飛行を可能とするCCVとなっている。FCSの操縦への介入度合いは荷重制限(G)と運動制限(迎え角と横転率)から6段階のパフォーマンスグループ(PG)に分かれている。A(荷重制限無し、運動制限無し。軽戦闘)。B(荷重制限無し、運動制限緩和。重戦闘)。C(荷重制限無し、運動制限有り。軽攻撃)。D(荷重制限有り、運動制限有り。通常)。E(荷重制限やや強い、運動制限有り。重攻撃)。F(荷重制限最大、運動制限最大。戦闘損傷など)。飛行中に任務と荷重の変化に応じてパフォーマンスグループを自動的に切り替えて常に安全で最高の性能を発揮出来るようにしている。一方でFCSによる制御を前提とした機体であるため、試作機においてソフトウエアのバグによる複数回の事故を起こしている。

前任機のビゲン同様、有事には高速道路の直線部分を滑走路として使用する前提として設計された。逆噴射装置を持つビゲンに対し、それを持たない本機は、短距離離着陸能力では多少劣っている。しかしながら最大離陸重量20,450kgのビゲンは、滑走路として使用する高速道路に補強が必要で、全国に44ヶ所用意されたが、A/B型で最大離陸重量12,500kgと軽量なグリペンでは強化工事は不要となり、結果として滑走路として利用できる高速道路区間は増加した。

コックピット[編集]

コックピット

コックピット内艤装にはHOTAS概念を採用している。操縦桿は左右に7度ずつ、手前に9度、奥に13度稼働し、一般的な操縦で使う「通常レベル」と精密な火器操作を行う「低レベル」の2種類の感度に切り替えられる。また、内蔵するトルクモーターによりパイロットがシステム上出来ない操作を行うことのないように制限する。スロットルレバーには14の機能操作を集約しており、グリップ部のポインティング・スティックで多機能ディスプレイ(MFD)に表示されるカーソルを操作する。

ヒューズ社とエリクソン社共同開発の250×280mm回析型HUD(D-HUD)、及び、A/B型では127×152mmモノクロ・ブラウン管のEP-17Mk.1/2、C/D型では158×211mmカラー液晶ディスプレイ(LCD)のEP-17Mk.3/4を搭載する。HUD下のメインモード選択・機体状態表示装置のボタンを押すだけで戦闘攻撃偵察の各任務に適した飛行モードを選択できる。

パイロットの加速度耐性を向上させる為に射出座席は27度後ろに傾けて取り付けられ、搭載されたマーチンベイカー社製Mk.10L Sタイプ(S10LS)射出座席はロケットモーターにより射出後0.19秒の間に18~20Gで加速。点火から0.25秒後にはキャノピーを破壊して外に飛び出し2秒後には機体から約70m離れる高度0、速度0からの脱出能力を発揮する。複座のB/D型では前席射出時の燃焼炎や破片への対処のために前後席の間のキャノピー枠からエアバッグを展張する。

エンジン[編集]

エンジンノズル

エンジンF/A-18等が搭載するゼネラル・エレクトリック F404-GE-400ターボファンエンジンボルボ・エアロが改良したRM12を1基搭載している。単発で運用するために、吸気流量を約10%、排気流量を約15%増大することで推力を1万6,000ポンドから1万8,000ポンドに増強し、制御システムは機械油圧式と電子式を併用して冗長性を50%から90%に向上した。整備性の向上のため、全13箇所中12箇所は機体に搭載したまま使用可能な内視鏡の覗き窓を追加し、エンジン本体を個別交換可能な7つのモジュ-ル構成としている。また、内蔵する20個のセンサーで取得したデータを飛行5回ごとに自動でダウンロードして整備や改良などに使用する。

C/D型から米国国防総省が技術提供を許可しなかった為にボルボ社がGEの協力のもとで自主開発した全自動デジタルエンジン制御(FADEC)を搭載した[4]。また、フレームホルダーを空冷式に換装して寿命を約3倍にしたり、エンジン排気温度を下げノズルからの赤外線放射の抑制を図ったりしている。

E/F型からはF/A-18E/Fが搭載するゼネラル・エレクトリック F414をグリペン向けに改良したF414Gを搭載する。ミリタリー推力の20%増大によりマッハ1.1での超音速巡航が可能となった[5]

電子機器[編集]

中央情報処理装置はエリクソン社が汎用コンピューターを航空機用にしたSDS-80 D80Eを搭載する。CPUはパスカルD80(駆動周波数266MHz)3基、HDDは160MB(320MBまで拡張可能)、メモリーは64MB、PROMは32MB、毎秒通信速度1MBのMIL-STD 1553B(en)データバス3基で接続している。C/D型からは中央情報処理装置をMACS D96に換装した。これはPowerPCプロセッサ(駆動周波数266MHz)を使い、データバスを5基に増加することで処理速度を約10倍に向上している。

プログラムは初期は「Ada83」、2002年以降は「Ada95」で記述されており、プログラムサイズはグリペンNGで300万行以上になっている。交信記録や飛行データの記録はA/B型でのHi8アナログビデオレコーダーからC/D型で「DiRECT」デジタル記録方式によるマルチメディアカードに更新された。データは飛行中でもデータリンクによりTCP/IP形式で地上に送信され、万が一墜落したとしても墜落直前まで地上で受信、記録出来る。マルチメディアカードは埃や水に対し耐性があるものの墜落時の衝撃には耐えられない。C/D型からユーロファイター タイフーンで採用しているヘルメット搭載表示器(HMD)「ストライカー」の発展型「コブラ」に対応している。「コブラ」は「ストライカー」より軽量化されており、両眼に視野40度の表示領域を映し、対地、対空兵装の照準や速度、高度など飛行諸元を表示する。2007年より南アフリカ空軍で運用が開始され、同年スウェーデン空軍でも発注された。

レーダーはエリクソン・マイクロウェーブ・システムズ社とGECマルコーニ社の共同開発によるPS-05/ABAe シーハリアーFA.2搭載のブルーヴィクセン・レーダーのレーダー基部、作動機構を使用している。アンテナ直径は約60cm、使用周波数8-12GHz(Xバンド)、発振出力1kw(最大8.2kw)。探知距離はスウェーデン空軍発表でF/A-18C/D搭載のAN/APG-65よりは短いものの、ミラージュ2000RDYより20%、F-16A/BのAN/APG-68より40%長い。空対空で8モード、空対地で7モードあり、空対空では毎秒60度の走査が可能となっている。C/D型からは信号処理装置をASIC社がパスカルで組んだD80からマーキュリーコンピューター社のPowerPCを使ったレース(RACE)に変更したMk.3となりデータの処理速度が向上、Mk.4は探知距離を約30%向上し合成開口(SAR)モードが追加された。

フェーズドアレイレーダー2009年6月にグリペンDemoでタレス社のRBE2ラファール搭載のレーダー)を搭載したが性能に満足できずSELEXガリレオ・アヴィオニカ社のES-05レイブンに換装した。ES-05レイブンはPS-05/Aと同じブルーフォックス・レーダー系列の改良型のフェーズドアレイレーダーレーダーでSELEXガリレオ・アヴィオニカ社のエディンバラ事業所で開発された。約1,000個の窒化ガリウム(GaN)送受信素子で構成され、同社が開発したCAPTOR-E(ユーロファイター タイフーン搭載のレーダー)同様アンテナ部の間にあるスワッシュプレートが機械的に可動することで、上下左右約100度という非常に広い視野を有している[6]

E/F型からは、内装式のSELEXガリレオ・アヴィオニカ社のスカイワード-GIRSTが搭載される。スカイワード-Gはユーロファイター タイフーンが装備するPIRATE(赤外線捜索追跡装置)やSELEX製の陸上および船舶用IRSTを参考に開発されたもので機首のコックピット前方にやや右側にオフセットされる形で装備される。左右に160°上下に 60°の視野をもっており、200目標の追跡が可能である[7]。スカイワード-Gは2014年3月31日、グリペンEデモンストレーターに載され試験が実施された[8][9]

電子戦装備はエリクソン・サーブ社製EWS-39で4基のWing Tip Unit (WTU) と1基の電子戦管制装置(EWC)で構成される[10]。Wing Tip Unitはレーダー警報受信機(RWR)を含む。レーダー警報受信機は初期の広域帯受信型のAR830から、1999年以降より広い帯域に素早く対応出来る狭域帯受信アンテナを追加したBOW-21に変更された。BOW-21は対象周波数帯域2~20GHzのデジタルRWRで、リアルタイムでレーダパルス列分離を行いデータベースから発信源を特定する機能を持つ。RWRコンピューターは民生用パーツを使い、また基本ソフト(OS)も民生にも使用されるVxWorksを使っている。また、WTUはECM機能も持っている。EWCUはECM機能を持たないがデータバスを介してチャフ/フレアの射出を制御する。オプションでデジタル周波数記憶機能、妨害波発振器、反復妨害波発振器、出力ステージモジュールを追加出来る。 EWCUの制御する対抗手段としては、BOL(マルチミサイルランチャー(MML)後端に内蔵しチャフ/フレアを160発搭載)。BOP/B(BOY402。主翼下面の外舷側パイロン後端に内蔵した直径55mmのチューブ6本にチャフ/フレアを12~18発や曳航式デコイBO2Dを搭載)。BOP/C (BOY403。右舷胴体後部の主翼と繋がる張り出し部に3基、下面に1基内蔵しチャフ/フレアを各20~40発収納)がある。 セルシウス・テック社製曳航式デコイBO2Dは重量は2Kg以下で約100m伸縮するワイヤーにより超音速飛行時も曳航可能となっている。EWS39と双方向通信を行い射出後も発振モードを変更できる。BO2Dは1997年3月に開発を完了しており、E/F型からSELEX-ES製の新型デコイ(Brite Cloud expendable active decoy)を装備する。

整備性[編集]

維持・運用経費の削減にも注力された結果、先代のビゲンと比較によると、空軍の整備拠点に搬送しての整備を1段階減らしている。平均故障間隔(MTBF)約7.6時間、平均復旧時間(MTTR)約2.5時間となり、48時間の作戦行動における稼働時間が約38時間と約54.5%運用効率が向上している。従来の第4世代戦闘機と比べると、平均故障間隔(MTBF)で30-50%優れ、飛行時間あたりの必要整備人員が半分から三分の一、作戦運用効率は25-30%高くなっている。

整備機材はコンパクトに纏められ、整備機材、兵装、整備要員を近距離では大型トラック3台、遠距離ではC-130輸送機に搭載可能となっている。整備要員は正規士官または正規整備兵1名と召集兵5名で構成する。空対空装備は10分以内、空対地装備は20分以内でエンジン稼動状態のままでの再装備と給油が可能となっている。エンジン交換も召集兵3名とミニホイスト、ドリーがあれば1時間以内にできる。

各型[編集]

JAS39A
単座型。スウェーデン空軍名称はAdam。
バウロス1、バウロス2/バッチ1。バウロス2/バッチ2の3種類ある。サーブ社内名称ではバウロス1はMk.1グリペン、バウロス2/バッチ1とバウロス2/バッチ2はMk.2グリペンと呼称されている。
JAS39B
複座型。機銃なし。スウェーデン空軍名称はBertil。
胴体が65.5cm延長されている。後部座席の設置のために胴体の2番燃料タンクを外し燃料容量が3,000Lから2,850Lと約5%減っている。前脚と主脚ホイールベースも70cm延長され、5.9mになった。
JAS39C
単座型。
スウェーデン空軍名称はCaesar。バウロス2/バッチ3、バウロス3の2種類ある。サーブ社内名称ではバウロス2/バッチ3がMk.3グリペン、バウロス3がMk.4グリペンと呼称されている。
GPS端末の装備などA型の電子装置を改良したもの。
2002年2月にスウェーデンは中立政策を放棄し、軍もテロ対策及びヨーロッパでの戦争に対して積極的な役割を果たすという新ドクトリンを打ち出している。これに伴い、国外運用およびNATO軍との連携を考慮、プローブアンドドローグ方式空中給油装置を追加装備している。
空中給油装置は左舷空気取り入れ口のカナード翼取り付け基部にあり、英国フライトリフュエリング社製の望遠鏡式に伸びるブームによる引き込み式となっている。
バウロス2/バッチ3では機体構造が変更されている。APUはハミルトン・サンドストランド社製のT-62T-46LC-1に変更している。
データバスを5本に拡張し、コックピット表示装置がアクティブマトリクス式カラー液晶EP-17 Mk.3に変更され、計器表示が英語に変更され、暗視スコープに対応し、機上酸素発生装置を搭載し、パイロンチャフ/フレア射出器を装備し、コミュニケーション&データリンク39(CDL39)を装備し、ローデ&シュヴァルツ シリーズ600 UHF/VHF無線機を搭載し、NATO互換の敵味方識別装置(IFF)に変更し、多気候に対応した。
バウロス3ではコックピット表示装置をEP-17Mk.4、飛行記録装置をMMCMPEG-2で動画記録するDiRECTに変更した。新機上航法装置(NINS)と新計器着陸装置(NILS)を搭載し、電子戦装置をEWS39に変更され、NATO互換パイロンに変更され、対応兵装が増加し、機内環境電子制御装置(GECU)が搭載され、降着装置が強化され、最大離陸重量が1万4,000Kgに増加された。
降着装置は英国プレシジョン・ハイドロリックス社(APPH)製で前脚、主脚の両方にブレーキが付いている。今回は素材と部品分割が変えられブレーキが強化されている。
JAS39D
複座型。C型同等の改良を施したもの。
スウェーデン空軍名称はDavid。C型と比べて全長が65.5cm長く、空虚重量が約300Kg増加している。
グリペンDemo
グリペンNGの先行試験機。複座型をベースに2008年4月23日にロールアウト[11]、同5月27日に初飛行した[12]エンジンRM12からF414Gになり、空対空形態でM1.2の超音速巡航が可能になった。レーダーをPS-05/AからSELEXガリレオ・アヴィオニカのES-05レイブンAESAにレーダー換装。エリクソン社製機上多機能自衛アビオニクス(MIDAS)がレーダーと組み合わされている。さらに主脚を再設計し、格納位置を胴体部分から主翼付け根部分に移動させる事でエアフレームを流用したまま燃料搭載量が40%(2,400lbs (1,000kg))増加し空対空形態での戦闘行動半径が1,300km(30分間の戦闘を含む)になった。ノーズギアも2輪から大型単輪に変わり、滑走路に設置する非常用停止ケーブルが使えるようになった。また、主脚の格納方式の変更に伴い、胴体下のハードポイント数が2個増加し兵装搭載量が13%増加。最大離陸重量が18%増加して16,500Kgになった。主翼–胴体フレームは主翼途中の内側パイロンまで延長され、そこで外翼と繋がるようになった。胴体の膨らみも僅かに変更され燃料タンク容量を少し増やしている。これらの機体再設計で搭載荷重が増えたにも拘らず空虚重量を減らすことに成功した。
JAS39E/F(グリペンNG)
グリペンDemoの改修を基にさらなる改修を施した発展型。C/D型からの変更点はエンジンのF414GF/A-18E/Fに採用されている、推力約10t)への換装で超音速巡航能力を獲得、SELEXガリレオ・アヴィオニカAESAレーダーES-05レイブンの搭載、スカイワード-GIRSTの装備、HMDコブラの採用、F-35のような大型液晶ディスプレイの採用によるセンサーフュージョン機能、コンピュータアビオニクスの改良、衛星通信能力・改良型データリンク、デュアルデータリンク、ビデオリンク、改良型電子戦機器、次世代型データ処理、高度なデータ通信、ネットワークセントリック戦術機能などの導入があげられる。改修によりC/D型に比べE/F型はレーダー反射断面積(RCS)を大きく低減している。スイスが採用を承認したほか、スウェーデンでも既存機のE型への改修と新造機の導入を決定した[13]。スウェーデン政府は2013年1月にE型60機の購入を決定、2018年から軍に引き渡される予定。E型初号機の初飛行は2015年に予定されている。スウェーデン軍はF型を採用を見送った為、現時点でF型の採用はブラジル軍のみとなっている。
シーグリペン
艦載型として計画中のグリペンNG。インド向けに計画されたもので、選定された場合開発が行われる予定であった。選定より漏れたことにより廃案になるかと思われたが、ブラジルミラージュ2000の後継機として選定されたことにより、同国が運用する空母サン・パウロ」に搭載しているAF-1の後継として開発される可能性が浮上している。計画はスウェーデンと英国が共同で行い英国で設立され、艦載機などの専門家や経験のあるGKNエアロスペース社と契約されている。着陸装置の強化、アレスティング・フックの取り付け、カタパルト射出用アタッチメントの取り付け、海水に対する腐食対策などが行われる予定である。

このほかにも、D型をUCAV化する計画が現在スウェーデン空軍で行なわれている。また、2008年6月26日に発表された発展型案もありエンジンを双発、垂直尾翼を双翼にし、胴体下面中央と両主翼付け根にウェポンベイを設置し、ステルス性超音速巡航能力を向上し、翼幅約12m、全長17-18mと大型化したP306と単発のP305があり、韓国FXに提案された。

輸出[編集]

運用国。青が現在の運用国、緑が発注中の国を表している。

前任のビゲンの他国への輸出がゼロだった結果を反省し、グリペンは輸出にも積極的である。同世代の戦闘機に比べ能力的には劣るものの、安価(特に機体の維持整備に関わるコストが安い)で小型軽量な多目的戦闘機という特徴を生かし、イギリスBAEシステムズと提携して、各国の次期主力戦闘機候補として売り込みを行っている。主な取引先は、以下の通り。

南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国

南アフリカ空軍が運用しているチーターC/Dの代替の先進軽量戦闘機(ALFA)として、28機の購入を1998年11月18日に決定した。他の候補機はダッソー社 ミラージュ2000デネル社とドイツ、ダイムラー・クライスラー・エアロスペース(DASA) 社(現エアバス・グループ)共同開発のAT-2000。C型19機、D型9機で109億ランド(19.2億ドル相当)で契約したが後に見直されC型が2機減った[14]2006年9月よりD型の引渡しが開始され、2010年2月よりC型の引渡しが開始された。最初は高等練習機としての候補機だった。現地企業であるデネル社がNATO互換パイロンと主脚収納部を含む中央胴体、グリンテック社が通信装置をサーブに納入している。

ハンガリーの旗 ハンガリー

ハンガリー空軍で運用しているMiG-29A/UBの代替として14機のリースを2001年9月10日に決定した。リース料金は10年間で1600億フォリント(5.6億ドル相当)だったがNATOとの共同作戦能力の追加により2400億フォリント(6.2億ドル相当)に増加した[15]。2002年8月の大洪水により導入は一時棚上げされたが年間飛行時間を4000時間減の16800時間とする事で2003年2月3日に合意。スウェーデン空軍のA/B型をC/D型相当のEBSHu仕様に改修したC型12機、D型2機を2006年3月から2007年12月の間に配備した。現地企業であるダニュヴィアン社がテイルコーン140個をサーブに納入した。

チェコの旗 チェコ

チェコ空軍のグリペン
チェコ空軍向けに一度24機の購入を決めたものの(購入料金500億コルナ(13.5億ドル相当)を15年払い、150%のオフセット条項を含む[16])、2002年ヨーロッパで発生した大洪水により被害を受けた首都復興に予算が充てられ一旦取り消しとなった。評価は続けられ、その後の再考の結果、2004年6月14日にリースではあるが再び14機(C型12機、D型2機)の採用を決定(リース料金196.5億コルナ(7.5億ドル相当)[17])。2005年5月から引き渡され2005年度中に同国空軍で運用中の全てのMiG-21MF/MFN/UMを代替、同年8月には全ての機体の納入が完了した。リース期限は2014年末に切れるため、スウェーデン政府はリースから買い取りへのオプションを提案していた。その後スウェーデン政府とチェコ政府がリース契約を再締結し、2027年まで12機のC/D型がチェコ空軍で運用する事になった事が2014年5月16日にプレスリリースされ公式サイトで公表された。

タイ王国の旗 タイ

タイ王国空軍F-5の代替として、12機(C型8機、D型4機)の購入を閣議決定している。第1ロットの6機は2011年2月に配備された[18]。価格は第1ロット6機が整備部品や訓練費用込みで190億バーツ(約610億円)、第2ロット6機が154億バーツ(約495億円)となっている[19]。2011年2月22日、タイ南部スラートターニー空軍基地に第1ロット6機が配備された[20]。なおグリペンと共にS100B アーガス(サーブ 340 AEW&C)英語版を2機購入し、戦闘機だけではなくデータリンクも含めた防空システム一式と空対艦ミサイルRBS15Fも導入している。C型はB.kh.19、D型はB.Kh.20Kと呼称されている。

イギリスの旗 イギリス

機体の輸出ではないが、王立テストパイロット学校(ETPS)が、高速ジェット練習機課程にてスウェーデン空軍とともにシミュレータを用いた訓練を行い、さらにサーブ社において同機の複座型に搭乗しての教育を行っている[21]。2009年までに90名以上の生徒がグリペンに搭乗した。

スイスの旗 スイス

スイス空軍が運用しているF-5E/Fの代替として、E型を22機導入することを発表した[22]。しかし2014年5月18日に行われた国民投票により導入のための国債発行が否決されてしまい[23]、導入するかどうかは現時点では不明。

ブラジルの旗 ブラジル

ブラジル空軍は、現有機の代替としてグリペンE/F型 36機の購入を決定した。契約金額は約45億ドル[24]。納入は2018年の予定で、それまでスウェーデン空軍の余剰機12機をリースする予定[25]。36機の内訳はE型28機、F型8機。サンベルナルド・ド・カンポ市に製造工場を建設し機体部品の約80%を現地で生産する[26]。なおブラジル空軍はエリクソン製の固定空中監視レーダーPS890エリアイ(制式名称FRS-890)をエンブラエル ERJ 145に搭載したAEW&C機EMB 145 AEW&C英語版(R-99A)を導入している。

スペック[編集]

JAS39 Gripen.svg
  • 乗員:1名、(B/D/F型は2名)
  • 全長:14.1m(ピトー管を除く)、(B型:14.76m、C型:14.1m、D型:14.76m、E型:15.2m)
  • 全幅:8.4m、(E/F型:8.6m)
  • 全高:4.5m
  • 翼面積:30.0m²
  • ホイールベース:5.2m、(B型:5.9m)
  • 空虚重量:6,622kg(13,000lbs)、(B型:7,000kg、C型:6,800kg、D型:7,100Kg、E型:7,100Kg(15,800lbs)
  • 最大離陸重量:12,500kg、(C/D型:14,000kg(31,000lbs)、E型:16,500kg(36,700lbs)
  • 内部タンク搭載燃料:3,000L(2,400Kg)、(B型:2,850L(2,280Kg)、E型:(3,780Kg)
  • 戦闘行動半径:800Km、(E型:1,300km(30分間の戦闘を含む)
  • フェリー飛行時航続距離:(C型:約3,000km(増槽有り)、E型:2,500Km(増槽無し)、4,070km(増槽有り)
  • 離陸滑走距離:7×400m
  • 着陸滑走距離:7×500m(制動傘無し)
  • 実用上昇限度:15,240m
  • 最高速度:マッハ2.0(E型:マッハ1.2で超音速巡航可能)
  • Gリミット:+9G、-3G
  • エンジン:ボルボ・フリューグモートル社製 RM12(ゼネラル・エレクトリック F404ベース)×1基、(E/F型:ゼネラル・エレクトリック F414G×1基)
  • ミリタリー出力:5,488kgf(54kN(12,100lbs)、(E/F型:14,400lbs)
  • アフターバーナー出力:8,164.7kgf(80.07kN(18,100lbs)、(E/F型:98kN(22,000lbs以上)
  • ハードポイント:8ヶ所、(E/F型:10ヶ所)
  • ハードポイント/ステーション対応重量:ステーション1(翼端左右各1箇所):110Kg、ステーション2(翼下外側左右各1箇所):600Kg、ステーション3(翼下内側左右各1箇所):1300Kg、ステーション4(右舷インテーク下):250Kg、ステーション5(胴体下中央):1100Kg、
  • 兵装搭載量:5,300Kg、(E/F型:6,450Kg(14,330lbs)

基本形態

武装(グリペン・インターナショナル社が対応を謳っているものも含む)

ドイツ マウザー社(現ラインメタル社)製、携行弾数120発、発射速度毎分1,700発、重量100Kg、
AIM-9L(Rb74):米国レイセオン社、フォード・エアロスペース英語版社、スペースシステムズ/ロラール社製、スウェーデン空軍使用。タイ、チェコ、ハンガリー空軍もグリペン導入時に購入した。
IRIS-T(Rb98):ドイツ BGT社、スウェーデン SAAB社、イタリア アレニア社など6社共同開発。2009年11月からスウェーデン空軍が使用。Rb74の後継。
ASRAAM英国MBDA社製
AIM-9X:米国レイセオン社製
パイソン4/5イスラエル
A・ダーター英語版南アフリカ デネル・エアロスペース・システムズ社製、V3E アジャイル・ダーター。ベクタードスラスト装備の高機動型。誘導は慣性航法と画像赤外線式。オフボアサイト能力を持つ。全長2.98m、直径0.166m、翼スパン0.488m、重量89km、最大射程20km。
AIM-120 AMRAAM(Rb99):米国ヒューズ・エアクラフト社(現レイセオン社)製、スウェーデン空軍使用
ミーティア:共同開発、MBDA社製、スウェーデン空軍使用
ダービー:イスラエル製、パイソン4の拡大型、
R・ダーター英語版:南アフリカデネル・エアロスペース・システムズ社製。V4。誘導はアクティブ・レーダー・ホーミング方式。ECCM性に優れ、ルックダウン・シュートダウン能力を持つ。全長3.62m、直径0.16m、翼スパン0.64m、重量120kg、最大射程63km。
AGM-65 マーベリック(Rb75):米国レイセオン社製、1997年から対応しスウェーデン空軍がG型を使用し後にG2型に変更された。ハンガリー空軍もG型を導入。
ブリムストーン:英国 MBDA
DWS 39スウェーデン語版(BK90):ドイツMBB社(現EADS)製、スウェーデン空軍使用。滑空兵器で最大射程約10Km。全長3.5mの箱型の弾体にフィンを4枚装備。弾体両舷に12個ずつの穴がありそこに最大3個の子爆弾が収納されている。子爆弾は重量4.0Kgで対軟目標用のMJ1と重量18Kgで対装甲用のMJ2があり、散布範囲は低空侵入の場合で幅250m、長さ300~400mに渡る。
タウラス英語版空対地巡航ミサイル:ドイツ トーラス・システムズ社製、P8300-15ターボファン・エンジンを搭載し、マッハ0.8~0.95の速度で地上30~40mを飛行。射程距離は350km以上。誘導方式はGPS、INS及びTRNの複合方式で高解像度の赤外線カメラも搭載し周囲の地形と地図データを照合させ誘導する事も可能。弾頭は500kgのタンデム式で遅延信管装備。ステルス性がある。
AGM-154 JSOW:米国レイセオン社製
RBS-15Fスウェーデン SAAB社製、1997年から対応しスウェーデン空軍が使用。2001年からMk.2、2004年からMk.3も使用。
GBU-10(2000ポンド)/11(1000ポンド)/12(500ポンド) ペイブウェイI:米国レイセオン社、ロッキード・マーティン社製、スウェーデン空軍がGBU-10/12を使用
GBU-22(500ポンド)/24(2000ポンド) ペイブウェイIII:米国レイセオン社、ロッキード・マーティン社製
JDAM GBU-31(2000ポンド)/32(1000ポンド)/38(500ポンド):米国ボーイング
SDB GBU-39:米国ボーイング社製
リザ-ドII/III:イスラエル エルビット・システムズ英語版社製。レーザー誘導爆弾改修キット。
スパイス英語版:イスラエル ラファエル英語版社製。電子光学誘導爆弾改修キット。GPS誘導を併用した赤外線画像誘導式。Mk.83(1000ポンド)、Mk.84(2000ポンド)、Mk.80低抵抗爆弾などに装着する。
  • 偵察用装備
モジュラー偵察ポッドシステム「MRPS」(スウェーデン空軍名称:SPK39):サーブテック社、デンマーク・テルマ社など4社共同開発、2007年5月よりスウェーデン空軍が使用。赤外線ラインスキャンカメラ、フィルム式光学カメラ「オメラSKA24」、デジタルカメラ「CA270中高度光学センサー」、長距離斜め写真(LOROP)カメラ、共用データリンク、大容量記憶装置を搭載。コクピットとデータバスで繋がりMFDに映像表示可能。重量は730Kg。
ビコン18/72C:フランス ビンテン社製、南アフリカ空軍が採用。軽量化の為に機能を限定している。赤外線/光学カメラ、データリンクを介したリアルタイム送信、MFDへの表示など戦術偵察ポッドとしての機能は十分。映像、動画データの記録はS-VHSに記録される。
RECCELITE:イスラエル ラファエル英語版社製、
AN/AAQ-28ライトニング照準ポッド英語版:イスラエル ラファエル英語版社製、スウェーデン空軍使用。ハンガリー、南アフリカ空軍も採用。
  • その他
落下式燃料タンク(1,100L)
AACMIポッド EHUD/FPR:戦闘訓練における飛行データの分析などに使われる記録装置。第二世代型はGPSを搭載している。
ECMポッド BOQ-X300:

登場作品[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Saab Gripen公式HP
  2. ^ サーブ・グリペン、ミーティアBVRAAM運用に近づく
  3. ^ ripen Closes In On Operational Meteor Capability
  4. ^ イカロス出版 『JWings』特別編集 世界の名機シリーズ『JAS39グリペン』
  5. ^ Saab's Demo aircraft to highlight Gripen NG capabilities - flightglobal.com
  6. ^ RAVEN ES-05 ACTIVE ELECTRONICALLY SCANNED ARRAY (AESA) FIRE CONTROL RADAR - Selex ES
  7. ^ SKYWARd INFRAREd SEARCH & TRACK SYSTEM - Selex es
  8. ^ Saab successfully completes flight test with IRST for Gripen E
  9. ^ Gripen NG flight-tests Skyward-G IRST
  10. ^ EWS39-Deagel.com
  11. ^ Gripen - the smart fighter
  12. ^ [http://www.gripen.com/en/MediaRelations/News/2008/Gripen_Demo_makes_its_maiden_flight.htm Gripen - the smart fighter
  13. ^ 月刊『JWings』2012年6月号 イカロス出版
  14. ^ イカロス出版 『JWings』特別編集 世界の名機シリーズ『JAS39グリペン』
  15. ^ イカロス出版 『JWings』特別編集 世界の名機シリーズ『JAS39グリペン』
  16. ^ イカロス出版 『JWings』特別編集 世界の名機シリーズ『JAS39グリペン』
  17. ^ イカロス出版 『JWings』特別編集 世界の名機シリーズ『JAS39グリペン』
  18. ^ 6 Gripen from Sweden Land Today
  19. ^ Air Force to get 12 jets
  20. ^ 「タイ空軍、スウェーデン製戦闘機配備へ」ニュースクリップ紙 2011年2月24日
  21. ^ http://www.saabgroup.com/en/Air/Gripen-Fighter-System/Gripen-for-ETPS/Backgroud/
  22. ^ 月刊『JWings』2012年2月号 イカロス出版
  23. ^ 月刊『JWings』2014年8月号 イカロス出版
  24. ^ 「ブラジルの次期戦闘機、グリペンNGに決定 36機購入」AFPBB 2013年12月19日
  25. ^ 月刊『航空ファン』2014年3月号 文林堂
  26. ^ (株)ジャパン・ミリタリー・レヴュー 軍事研究2014年7月号

関連項目[編集]

外部リンク[編集]