フェーズドアレイレーダー

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アラスカ州にあるフェーズドアレイレーダー(PAVE PAWS英語版

フェーズドアレイレーダー(Phased Array Radar(PAR、パー)、位相配列レーダー)とは平面上に多数の小さなアンテナを備えることで機械的な首振り動作を必要としないアンテナである。パルス・レーダー、パルス・ドップラー・レーダー等のアンテナとして用いられる。更に受信信号をデジタル処理することによって多数の受信ビームを作り、方位・距離を測定するDBF(デジタル・ビーム・フォーミング)にも応用される。

従来のレーダーのようにアンテナを上下左右に動かすのではなく、平面上の多数の小さなアンテナからそれぞれ放射する電波位相電気回路で制御することで、これらのアンテナからの電波を合成して、旋回・俯仰する走査方法を用いて観測するレーダーである。そのためレーダーアンテナに機械的な駆動装置の必要がない[1]。平面上の小さなアンテナのそれぞれに電波送受信機が実装されているものがアクティブ式(Active Phased Array Radar(APAR、アーパー)、能動型位相配列レーダー )で、小さなアンテナの裏側に位相変換器と呼ばれる仕組みが電波を分配する役割の導波管に隣接して備わっていて、これらがただ1つの電波送受信機からの電波を分配しながらそれぞれのアンテナに合わせた分の位相をずらすものがパッシブ式である。パッシブ式の受信は送信の逆方向となるだけである。アクティブ式はパッシブ式に比べて高い技術力が要求されるが、パッシブ型に比べて小型化が可能である。

アメリカ軍では、フェイズド・アレイ・レーダーと言えば、パッシブのことを指し、アクティブのものはAESA(Active Electronically Scanned Array、エーイサ、能動電子走査配列)と呼んでいる。 AESAに対してパッシブのものをPESA(passive electronically scanned array)と呼ぶ。

フェーズドアレイレーダーの一覧[編集]

艦船用[編集]

原子力空母「エンタープライズ」の艦橋(1962年2月10日撮影)
艦橋の4面に設置された2種類のフェーズドアレイレーダーのうち、横長のレーダーがAN/SPS-32、縦長のレーダーがAN/SPS-33。

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

アメリカ海軍初の艦載用フェーズドアレイレーダー(パッシブ式)。特徴的な大型の四角型艦橋の前後左右4面それぞれにAN/SPS-32ロシア語版AN/SPS-33ロシア語版の2種類のフェーズドアレイレーダーが設置されている。
原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」原子力空母「エンタープライズ」に搭載されていたが、整備性や信頼性に問題があったため1980年代には両艦から撤去され、その代替として従来型のAN/SPS-48 3次元レーダーAN/SPS-49 2次元レーダーが搭載された。
イージスシステム用の艦載パルス・レーダー(パッシブ式)。アメリカ海軍タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦海上自衛隊こんごう型あたご型護衛艦スペイン海軍アルバロ・デ・バサン級フリゲートノルウェー海軍フリチョフ・ナンセン級フリゲート韓国海軍世宗大王級駆逐艦に搭載。
アメリカ海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦ジェラルド・R・フォード級航空母艦に搭載されているアクティブフェーズドアレイレーダー。複数の周波数帯(SバンドおよびXバンド)で動作するデュアルバンドレーダー(DBR: Dual Band Radar)である。

イギリスの旗 イギリス/イタリアの旗 イタリア/フランスの旗 フランス

フランス海軍フォルバン級駆逐艦と、イタリア海軍アンドレア・ドーリア級駆逐艦カルロ・ベルガミーニ級フリゲート・軽空母「カヴール」に搭載されているパッシブフェーズドアレイレーダー。

イギリスの旗 イギリス

イギリス海軍45型駆逐艦に搭載されているアクティブフェーズドアレイレーダー。

オランダの旗 オランダ

ドイツ海軍ザクセン級フリゲートオランダ海軍デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートデンマーク海軍アイヴァー・ヒュイトフェルト級フリゲートに搭載されているアクテイブフェーズドアレイレーダー。4面でイージスより多い同時32目標に対応可能で、イルミネーター(送信機)としても1面で8目標を照射可能な「射撃指揮・照射兼用レーダー」である。
ヨーロッパ各国の防空艦や韓国海軍の独島級揚陸艦に搭載されている長距離捜索用アクティブフェーズドアレイレーダー。ヨーロッパ各国が防空艦用に開発した射撃指揮レーダー(上記のEMPAR、SAMPSON、APAR)は捜索距離に問題があるため、それを補完するために搭載されている。

フランスの旗 フランス

フランス海軍のアキテーヌ級駆逐艦シンガポール海軍フォーミダブル級フリゲートに搭載されている多用途パッシブフェーズドアレイレーダー。

日本の旗 日本

海上自衛隊の艦載用フェーズドアレイレーダー。3次元対空捜索用レーダーとしてしらね型護衛艦に搭載(パッシブ式)。
世界初の艦載用アクティブ・フェーズドアレイレーダー。あさぎり型護衛艦の「はまぎり」以降に搭載。むらさめ型護衛艦以降には、発展型のOPS-24Bを搭載(アクティブ式)。
海上自衛隊の艦載用パルス・レーダー。捜索・射撃指揮用と後に追加された照射用の二種で構成される。ひゅうが型護衛艦あきづき型護衛艦に搭載されている(アクティブ式・射撃管制装置として制式化)。派生型としてFCS-3から照射用レーダーと射撃管制機能を取り除き、機能を対空捜索と航空管制に限定したOPS-50があり、いずも型護衛艦に搭載されている。

ロシアの旗 ロシア

(NATOコードネーム: スカイ・ウォッチ)
アドミラル・クズネツォフバクーに搭載される艦載用フェーズドアレイレーダー。また、マルスパッサートの簡易型としてフォールム-2Mが存在し、こちらはワリヤーグに搭載された。

航空機用[編集]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

アメリカ空軍F-15用のパルス・ドップラー・レーダー(アクティブ式)。(V)2は一部のMSIP-2改修機に搭載される。(V)3はF-15の近代化改修(ゴールデンイーグル)とシンガポール空軍のF-15EおよびF-15SEに搭載される。
アメリカ空軍のF-22用のパルス・ドップラー・レーダー(アクティブ式)。
アメリカ海軍のF/A-18E/F用のパルス・ドップラー・レーダー(アクティブ式)。Block 2以降の機体に搭載され、搭載機は本レーダーを用いた簡易的な電子妨害を行うことも可能となる。
アラブ首長国連邦に輸出されるF-16E/F用のパルス・ドップラー・レーダー(アクティブ式)。
F-35に搭載されるパルス・ドップラー・レーダー(アクティブ式)。
アメリカ空軍のF-15Eに搭載される予定のパルス・ドップラー・レーダー(アクティブ式)。AN/APG-79をベースに改良し、射程拡大、目標同時追跡能力等の強化などが見込まれている。2014年初期作戦能力獲得予定。
B-1B用のレーダー (アクティブ式) 。
B-2の近代化改修で搭載されるレーダー (アクティブ式) 。
アメリカ空軍のE-3航空自衛隊E-767などの早期警戒管制機用パルス・ドップラー・レーダー(パッシブ式) 。
E-8に搭載されているレーダー (パッシブ式)。
SABRは、ノースロップ・グラマン社がプライベートで開発中のAESA。フル機能を備え、容易に既存のF-16へ搭載改修が可能としている。米空軍のF-16や台湾空軍が保有しているF-16A/B Block 20が当該レーダーでアップデートされる予定である[2]
RACRは、レイセオン社が開発中のAESA。SABRと同じくフル機能を備え、容易にに搭載改修が可能としている。F/A-18A~D、EA-18G用とF-16用の2種類がある[3]韓国空軍が保有しているF-16C/D Block 52 (KF-16)が当該レーダーでアップデートされる予定である。
ノースロップ・グラマンが開発したAESAレーダーポッド。搭載機のレーダーを補完する機能を持つ。

日本の旗 日本

航空自衛隊のF-2用のパルス・ドップラー・レーダー(アクティブ式)。世界で初めて量産戦闘機に装備されたアクティブ式フェーズドアレイレーダーである。発展型としてJ/APG-1を改修し探知距離を延長したJ/APG-2が存在する。
海上自衛隊のSH-60J哨戒ヘリコプター搭載の捜索用レーダー(アクティブ式) 。
海上自衛隊のP-1対潜哨戒機搭載の捜索用レーダー (アクティブ式) 。

イスラエルの旗 イスラエル

気球用捜索レーダー(アクティブ式)。
F-15MiG-29ミラージュ2000テジャスSu-30などの代替レーダー。最大64目標を同時追尾可能とされる( アクティブ式) 。
空中早期警戒管制 (AEW&C) 機用にIAIが開発したレーダーシステム (アクティブ式) 。ボーイング B707に搭載されている。
EL/M-2075の発展型。ガルフストリームG550 CAEWに搭載されている。
EL/W-2085の発展型。インド空軍A-50EIに搭載されている。

フランスの旗 フランス

フランス空軍・フランス海軍のラファール用のパルス・ドップラー・レーダー(パッシブ式)。その他、アクティブ式のRBE2-AAも開発している。

イギリスの旗 イギリス/ドイツの旗 ドイツ/イタリアの旗 イタリア/スペインの旗 スペイン

ユーロファイターのトランシェ3Bより搭載予定のレーダー (アクティブ式) 。首振り機構を持つ。

イギリスの旗 イギリス/ドイツの旗 ドイツ/フランスの旗 フランス

ユーロファイターとラファール用の代替レーダー (アクティブ式) 。

イタリアの旗 イタリア/スウェーデンの旗 スウェーデン

グリペンNGに搭載されるレーダー (アクティブ式) 。首振り機構を持つ。

イタリアの旗 イタリア

ヘリコプター用搭載用レーダー (アクティブ式) 。

スウェーデンの旗 スウェーデン

エリクソンが開発したAEW&Cレーダー (アクティブ式) 。エンブラエル EMB-145英語版サーブ 2000サーブ 340に搭載されている。

ロシアの旗 ロシア

NATOコードネーム:フラッシュダンス)
ロシア空軍MiG-31に搭載されるレーダー(パッシブ式)。世界で初めて量産戦闘機に装備されたパッシブ式フェーズドアレイレーダーである。200kmの探知距離と広い走査角を持つ。
(NATOコードネーム:シードラゴン)
Su-34に搭載されるフェーズドアレイレーダー (パッシブ式) 。
Su-30MKI英語版/MKM英語版に搭載されるフェーズドアレイレーダー(パッシブ式)。
Su-35が搭載するパッシブ式のもの。基部に油圧式の首振り機構を持つ。
T-50が搭載するアクティブ式のもの。
MiG-35が搭載するフェーズドアレイレーダー (アクティブ式) 。
Su-27のレーダー換装用に開発されたフェーズドアレイレーダー (パッシブ式) 。
MiG-29のレーダー換装用に開発されたフェーズドアレイレーダー (パッシブ式) 。
Su-30MK3が搭載するフェーズドアレイレーダー (パッシブ式) 。
Su-27のN001 メーチやMiG-29のN019 ルービン英語版レーダーのアップグレード用フェーズドアレイレーダー (パッシブ式) 。
MiG-29UBT及びMiG-21用のアップグレード用フェーズドアレイレーダー (パッシブ式) 。搭載機の関係上この種のレーダーとしてはかなり小型である。

地上用[編集]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

空軍の警戒管制レーダー。
陸軍・海兵隊の前線防空レーダー。
アクティブ式。
アクティブ式。
パッシブ式。
パトリオットミサイルのレーダー(アクティブ式)。

インドの旗 インド

中華人民共和国の旗 中国

KS-1英語版の管制レーダー(アクティブ式)。

日本の旗 日本

防衛庁(現・防衛省)が開発した地上設置型の警戒管制レーダー。旧称「FPS-XX」。将来警戒型で、ミサイル防衛の要となる。直径18mのドームに亀甲模様が刻まれた特異な形状から、通称「ガメラレーダー」とも呼ばれる。(アクティブ式)。

フランスの旗 フランス

アクティブ式。

ミサイルシーカー[編集]

以下のミサイルではスタンドオフレンジや自立誘導距離などの性能向上のためシーカー部にAESA方式のアンテナを搭載している。

日本の旗 日本

ロシアの旗 ロシア

気象用[編集]

2014年度配備予定。Xバンドを使い、10秒で全天を走査する(10秒かかる理由は、レーダー本体では水平方向の走査が構造上できず、アンテナを機械的に回転させて水平方向の走査を行うからである。)[4]。情報量が1カ所100Mbpsとなるので情報処理技術の開発が求められている[5][6]

脚注[編集]

  1. ^ レーダービームで空中を走査するのには機械的な駆動装置を必要としないが、航空機用レーダーの中でもCAPTOR-Eのように新型のものでは、側方や上下の探知角を広げるために機械的な駆動装置によってゆっくりと首振り動作を行うものが現われている。
  2. ^ ノースロップグラマン公式 (英語)
  3. ^ レイセオン公式 (英語)
  4. ^ 128本のスロットアレイアンテナによる「デジタルビームフォーミング(DBF)」である。横倒しにした長さ2mのスロットアンテナを縦方向に128本並べ(サイズは約2m×2m、ビーム幅は約1度)、縦方向(仰角方向)に電子走査を行う1次元FAアンテナであり、解像度は1°である。半径15~60km、高度14kmまで観測できる。
  5. ^ 日本初 「フェーズドアレイ気象レーダ」を開発情報通信研究機構2013年8月31日
  6. ^ 「レーダー、竜巻検知速く」日本経済新聞2013年9月17日

関連項目[編集]