76式対砲レーダ装置 JMPQ-P7

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76式対砲レーダ装置 JMPQ-P7[1]
標定準備状態(アンテナ展開途中)(霞ヶ浦駐屯地の展示品)
種別 3次元レーダー
目的 目標捕捉
開発・運用史
開発国 日本の旗 日本
就役年 1976年
送信機
形式 進行波管(TWT) +交差電力増幅管 (CFA)[2]
周波数 Xバンド
パルス 2マイクロ
パルス繰返数 3,600 pps
送信尖頭電力 250 kW
アンテナ
形式 パッシブ・フェーズドアレイ (PESA) [2]
素子 導波管スロットアンテナ
アンテナ利得 46.5デシベル
方位角 セクター走査 (6,400ミル)
仰俯角 -100~200ミル
探知性能
探知距離 30 km以上
精度 距離100m (標定距離30km)[3]
方位3ミル[3]
その他諸元
重量 レーダ部 7,000 kg
標定部 14,240 kg
対砲レーダ用装軌車 13,500 kg
電源車 2,500 kg
電源 115V, 60Hz, 30kVA
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76式対砲レーダ装置 JMPQ-P7(ななろくしきたいほうレーダそうち ジェイエムピーキューピーなな)は、陸上自衛隊の装備する対砲兵レーダー

概要[編集]

主に野戦特科部隊に配備され、野砲などの発射位置や弾着位置特定を行う東芝製の3次元レーダーで、対砲レーダ用装軌車は小松製作所が設計・生産したものである。後継として対砲レーダ装置 JTPS-P16の配備が進められている。

来歴[編集]

昭和44年度、東京芝浦電気社に対して技術調査が委託され、続いて昭和45・46年度には部分試作が行われた。昭和46年度末には技術試験に移行し、1972年2月から3月にかけて富士学校および富士演習場周辺で第1次試験が行われた。この試験では、電気的・機械的基本性能や探知性能など、基本性能の確認が行われた。その後、5月からは探知性能試験・電子防護性能の基本試験および操用性等を対象とする第2次試験に移行した。また7月から8月にかけて行われた第3次試験では、矢臼別演習場において、長射程弾の探知・標定、多弾性の試験等を実施した[3]

その後、部分試作の成果をもとに、昭和47・48年度に試作が行われ、昭和48年度末より技術試験に移行した。まず1974年3月に富士学校および富士演習場において第1次試験が行われ、標定性能(短射程)、レーダー基本性能、操用性、走行性を対象とする試験が実施された。続いて6月から7月にかけて行われた第2次試験では、矢臼別演習場において、標定性能(短射程および長射程)、レーダー基本性能、および操用性を対象とする試験が実施された。また11月には、第1次試験で実施できなかった長射程弾に対する捕捉・標定試験が行われた。1975年1月から2月にかけて、矢臼別演習場において第3次試験が行われ、寒冷時における標定性能、レーダー基本性能、および操用性を対象とする試験が実施された[3]

構成[編集]

本システムは下記のような構成となっている。

  • レーダ部
  • 標定部
  • 電源車JK-1-B

レーダ部は走査空中線装置・回転基台、送信装置、受信処理装置から構成されており、レーダトレーラに搭載されている。長距離火砲対処・複数目標の自動標定機能が求められたことから、走査空中線装置はパッシブ・フェーズドアレイ(PESA)式を採用している。導波管スロットアンテナとフェライト移相器を用いており、方位方向の走査は位相制御により、また俯仰角方向の走査は周波数制御によって行っている。標定方式は3重ビーム方式となっている。これは、ペンシルビームを順次に走査することで、空間上に3枚のビーム幕を形成しておくものである。飛翔する弾丸がこれらの幕を通過する際に得られる弾道上の3点の空間的座標などから、どの弾丸の発射位置ないし弾着位置を標定することができる[2]

レーダトレーラは2軸6輪(後方はダブルタイヤとなっている)のトレーラーであり、アンテナ部は牽引移動時にはアレイ面を真上に向ける形で約90度倒して固定することができる。また、トレーラ中央部にはレーダー展開時の安定用にアウトリガーを備えている[1]

一方、標定部は対砲レーダ用装軌車に搭載されている。これは74式自走105mmりゅう弾砲の車体部(73式装甲車の派生型)を基本として、指示計算装置や69式車両無線機JVRC-F5を搭載したものである。走行時乗員は、操縦手1名、車長1名及び操作手2名の計4名である。指示計算装置は、レーダ部が捉えた目標の分析を行ない、装置全体の運用を行うものである。表示画面はBスコープとされている[2]。本システムでは、1弾の捕捉によってその発射位置の標定ができるほか、その標定計算中であっても、同時に4弾までの捕捉が可能となっている。なお、対砲レーダ用装軌車には、移動時にレーダトレーラーを牽引する牽引車としての役割もある[1]

装置は、8名で30分以内に開設・撤収を実施できる。開設後は、装軌車内からの遠隔操作によって装置の始動・停止及び標定諸元の設定などを行えるため、2名の操作が可能である。また対砲レーダ用装軌車とレーダトレーラ、電源車は、相互に50メートル離した状態で運用できる[1]

装備部隊・機関[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d 防衛庁 (1976年11月25日). “制式要綱 76式対砲レーダ装置 F 4003”. 2003年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月1日閲覧。
  2. ^ a b c d 西本真吉、山岸文夫、篠原英男「フェーズドアレイ・レーダの研究開発経緯と装備品への応用<その3>」『月刊JADI』第600号、日本防衛装備工業会、1997年5月、10-26頁、NAID 40005001672 
  3. ^ a b c d 防衛庁技術研究本部創立25周年記念行事企画委員会 編『防衛庁技術研究本部二十五年史』防衛庁技術研究本部、1978年、67-69頁。 NCID BN01573744