AN/APG-63

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AN/APG-63
APG-63 radar of F-15 1985.JPEG
F-15C戦闘機に搭載されたAN/APG-63。1985年撮影
種別 火器管制レーダー
開発・運用史
開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
就役年 1983年
送信機
周波数 Xバンド(8-12.5GHz)
送信尖頭電力 5kW[1]
アンテナ
形式 平面スロットアンテナ(直径91.4cm)
ビーム幅 3.3×3.3度
方位角 ±60°
仰俯角 ±°
探知性能
探知距離 148km(最大)
その他諸元
重量 221kg[2]
体積 0.25m3

AN/APG-63は、アメリカ合衆国のヒューズ社(現 レイセオン)が開発したレーダー

概要[編集]

本機は元来、マクドネル・ダグラス社が開発したF-15に搭載するために開発された。

ベトナム戦争時のアメリカ空軍の主力機は、アメリカ海軍が艦隊防衛用に開発したF-4であったが、格別にドッグファイトに優れた戦闘機ではなかった。そのため 朝鮮戦争時と比較するとアメリカ空軍の空戦成績が大幅に悪化した。

この空戦成績の不振は、空対空ミサイルが主兵装になって以来それを過信するあまり、戦闘機とのドッグファイトを能力を置き去りにしてきたことがその原因である。また、ベトナムで使用された空対空ミサイルは、同士討ちを避けるため目視確認の交戦規定が定められたため 本来レーダーロックオンで使用できるAIM-7 スパローが使えずに敵機の排気口から出る赤外線を追尾するAIM-9 サイドワインダーしか使用できなかった。

また、空軍は、ベトナム戦争激化の1964年に「戦術航空戦力の選択的研究」を開始して、新しい制空戦闘機の開発を模索した。その結果1968年に空軍からメーカーに対して「単座、ターボファン双発、高度な機動性と良好なパイロット全周視界、ルックダウン/シュートダウン能力を持つレーダー装備、長距離ミサイルによる視程外射程(BVR)戦闘と近接戦闘能力の双方に優れること、整備所用マンパワーの低減など」のREPが出された。これを受けて、搭載レーダーに関しては、ヒューズとウエスティングハウスの2社が名乗りを上げ競争試作を行なった。その結果1970年10月にヒューズのAN/APG-63の採用が決定した。

レーダー本体は、多モードのパルス・ドップラー・レーダーでパイロット一人での操作が可能な下記の機能を持つと同時に列線交換ユニット(LRU)の採用などにより信頼性は極めて高く、AN/APG-63(v)1の平均故障間隔(MTBF)は120時間以上とされている。しかし、配備当初はユニット自体の寿命が短く、平均故障間隔は15時間であった。

1979年にはF/A-18に搭載されているAN/APG-65から技術のフィードバックを受け、以下の改良が施された。この改修は既存機に対しても行われている。

これにより機器などのハードウェアを一々再構築する事無くソフトウェアのプログラム変更のみで迅速かつ低コストにシステムをカスタマイズすることが可能となった。しかし、PSPのメモリー不足により新たな脅威に対応する発展の余地がなくなってしまったため、後のAPG-63(v)1、APG-70ではメモリー容量が拡大されている。
  • レーダービームの指向性の向上。
  • ECCM能力の強化。
  • 目標編隊における個別目標探知能力の追加。
  • NCTRの向上。
  • 捜索中追尾(TWS)のサポート。
最大24目標を探知し、うち8目標を追尾可能。

以下のレーダーモードを備える。

  • 空対空モード
    • 長距離サーチ:AIM-7用のモードで、戦闘機程度の小型目標でも約80nm(148km)の距離で左右各120度の範囲で目標を発見する
    • 短距離サーチ:AIM-9用のモードで探知距離約20nm(37km)の距離で左右各120度の範囲で目標を発見する
    • スーパー・サーチモード:距離10nm(19km)から300ft(103m)までレーダーの使用が可能、ボアサイト機能を使用すると最大で12,000ft(3.7km)の距離でロックオン可能
    • レイドアセスメントモード:PSP(プログラム可能デジタルシグナルプロセッサ)により密集編隊内の個別目標探知を可能とする。
    • TWS(トラック・ワイル・スキャン):捕捉した全目標のうち8-10個を指定して追跡し、その間に他の目標を捜索することが可能。
    • NCTR(非協調目標認識):レーダー反射特性を分析して目標種別や機種の判別を可能とする。
  • 空対地モード
    • 目視攻撃時に爆弾を自動投下するための目視測距、航法のためのマッピングモード、慣性航法用の最新ベロシティ参照

派生型[編集]

APG-70

AN/APG-70[編集]

APG-63の空対地モードを大幅に強化し、合成開口レーダー低被探知 (LPI)英語版、グランドマッピングなどのレーダーモードを追加している。合成開口レーダーモードでは150km先の目標を解像度18m、74kmなら解像度5.2mのデジタル地図をの作成が可能で、空対空目標への探知距離は約300kmまで延長されている[3]。処理装置の速度はAPG-63の3倍となり、PSPのメモリー容量も10倍に拡張された。また、送信機や受信機、自己診断装置英語版なども新型へ更新されている[4]F-15Eに搭載。F-15CもMSIPにより搭載している。派生型として、グランドマッピングモードを削除したダウングレード型のAN/APG-70SがありF-15Sに搭載されている[5]

APG-63(v)1[編集]

2001年3月から装備が開始された改良型でAPG-63にAN/APG-70の技術をフィードバックして再設計したもの[6]。探知距離の延伸・電波妨害への対処能力の向上を実現し、より射程の長い空対空ミサイルの搭載が可能となった。NCTRもより高い精度での識別が可能となったほか、メンテナンス性も改善され平均故障間隔は120時間となった[7]。F-15Kに搭載されたものにはAPG-70と同様のレーダーモードのほか地上移動目標捜索(GMTS)、地上移動目標追跡(GMTT)モードが新たに追加されている。

APG-63(v)2[編集]

APG-63(v)1のフロントエンド部の機械式平面アンテナを電子走査式に変更したAESAレーダーアンテナには、約1,500個の送受信モジュールを備える。1999年アラスカ州エルメンドルフ空軍基地に所属するアメリカ空軍第3航空団配備のF-15C/Dに導入され、2000年には実働体制に就いている。しかし、本機は高価であり重量も多く信頼性も低かったためほとんど試験的に運用が行われているのみとなっている。そのため、本機の生産は停止され、信頼性の向上・軽量化などの改良を施したAPG-63(v)3の生産へ移行した。

APG-63(v)3[編集]

APG-63(v)3

前述のAPG-63(v)2の改良型。軽量化のためフロントエンドの電子走査式アンテナF/A-18E/Fが装備するAN/APG-79のアンテナの改良型に変更し、電源部を大型化、出力の向上を図ったものをAPG-63(v)1のバックエンドと組み合わせている。制御ソフトはAPG-63(v)2のものをベースに改良したものを使用している。APG-79の技術がフィードバックされており、ECCM能力の向上、信頼性・安定性の向上などの改良が行われている。稼動部がなくなったことにより、平均故障時間は500時間となった。F-15SGにも搭載されているが走査能力が落とされている。

AN/APG-82(v)1[編集]

AN/APG-82は、F-15Eのレーダー近代化プログラム(Radar Modernization Program:RMP)で使用されるレーダーである。APG-63(v)3のバックエンド部をAPG-79と同様のものに変更して処理能力を向上させている[8]。既存のコンポーネントを流用することで短期間で開発ができた上、新規開発コストを大幅に低減することができた。APG-82(v)1は新型の冷却システムと電子妨害下でも正常にレーダーを動作させるための装置である無線周波数可変フィルタ(RFTF)を備えており、これにより射程拡大、目標同時追跡能力、処理時間の短縮、解像度の強化などが図られている。また、空対空と空対地モードの同時使用も可能である。当初の名前はAPG-63(v)4であったが、2009年にAPG-82(v)1と改名された。2014年07月17日、最初の搭載機が受領された[9]

搭載機[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Peter E. Davies and Tony Thornborough, "McDonnell Douglas F-15 Eagle", 2001
  2. ^ 軍事研究2007年4月号
  3. ^ F-15E Strike Eagle
  4. ^ 軍事研究2007年6月号、2010年6月号
  5. ^ JWings 2010年11月号
  6. ^ JWings2001年5月号
  7. ^ 軍事研究2004年12月号、2007年4月号、2008年5月号、2010年11月号
  8. ^ 実質電源部を大型化したAPG-79といえる
  9. ^ F-15E takes first flight with new radar system

参考文献[編集]

外部リンク[編集]