F/A-18E/F (航空機)
F/A-18E/F スーパーホーネット
F/A-18E/Fはマクドネル・ダグラス社が開発したF/A-18A-D ホーネットの発展型戦闘攻撃機である。F/A-18E/Fとは本シリーズの総称であり、その内容は単座型のF/A-18Eと複座型のF/A-18Fからなる。
愛称はホーネットを超越しているという意味を込めて「スーパーホーネット」(Super Hornet) に変更された。A型からD型までのレガシーホーネット[1]と識別するために、「ライノ」(Rhino)[2]という愛称を無線でコールする際に用いている。「レガシーホーネット」・「ライノ」ともに非公式な呼称である。
目次 |
概要[編集]
本機は第4.5世代ジェット戦闘機に分類される、戦闘攻撃機(マルチロール機)である。A-12の開発中止を受けて、既存のF/A-18(A型からD型)の基本設計から全面的に再設計することで開発された。航続距離や兵器搭載能力の向上を図り、機体の大型化やステルス性を考慮した設計変更が行われた。
2001年にF/A-18E/Fが初度作戦能力を獲得し、アメリカ海軍のF-14艦隊防空戦闘機(艦上戦闘機)を更新する形で配備が進められた。イラク戦争等の実戦に参加した。
アメリカ海軍の他にオーストラリア空軍でも採用されている。
開発の経緯[編集]
アメリカ海軍は1963年から運用を続けていたA-6艦上攻撃機の退役における後継機選定のための ATA (Advanced Technology Attacker=先進戦術航空機) 計画において、マクドネル・ダグラス社とジェネラル・ダイナミクス社(いずれも当時)の共同計画案を1987年末にA-12として本格的に開発を開始した。
このA-6後継機が選定されたのと同じ1987年にマクドネル・ダグラス社では海外への輸出を主眼にF/A-18C/Dを発展させたホーネット2000開発を計画している。F/A-18の原型機であるYF-17は、ノースロップ社独自の社内開発計画であったP-530コブラを軽量小型化に設計し直すことで空軍の軽量戦闘機計画に応募したものであり、当初の設計からは航続距離や兵器搭載能力といった性能面での妥協を強いられていた。ホーネット2000では、胴体と翼面の大型化や高出力エンジンへの換装によって、言わば「先祖返り」で性能向上を図るものであったが、結局この計画は各国からの関心を集めることはなかった。
1991年初頭になり、国防総省は開発コストの高騰やスケジュールの遅延に機体重量の増大、冷戦終結による国防費削減等を理由からA-12開発計画を中止した。A-12とは別にA-6Eのアップグレード型のA-6Fも開発されていたが、こちらも予算等の問題から開発が中止された。2つのA-6後継機開発計画が中止された結果、アメリカ海軍は別の開発・調達計画を必要とした。1992年5月、米海軍はホーネット2000をベースにしたF/A-18発展型機採用の意向を表明し、結果としてこの機体がF/A-18E/Fとなった。アメリカ海軍は、採用意向表明するのに先立ちEMD(技術・製造・開発)段階移行のためにマクドネル・ダグラス社に対する地上試験用の3機と飛行試験用の単座型5機、複座型2機の製造承認と、ジェネラル・エレクトリック社に対するF/A-18C/D搭載のF404の発展型F414エンジンの開発承認を与えた。
1995年、飛行試験用の単座型1号機が完成し、同年11月29日に初飛行した。1996年4月1日には複座型1号機が初飛行した。その後の各種試験を経て、1998年12月18日に量産型のF/A-18E初号機が海軍に納入され、2001年にF/A-18E/Fが初度作戦能力 (IOC) を獲得した。
機体[編集]
F/A-18E/FはF/A-18C/Dを改良し大型化したものであるが、多くの変更の結果、C/D型とE/F型の共通部品は僅か1割程度となった。E型は単座型、F型は複座型である。
在来型F/A-18からの主要な変更点を以下に示す。
機体の大型化[編集]
全長はF/A-18の17.07mから18.38mへと延長され、レドームも大型化している。
主翼・尾翼・ストレーキ等といった翼の面積も拡大している。主翼面積は、F/A-18の37.2m2から46.45m2となっており、操舵翼の面積も拡大されている。エアブレーキは後部胴体背面から左右のストレーキ上に移設され、主翼下ハードポイントが1箇所ずつ増加している[3]。
これらの変更によりアビオニクス用スペースの増加、機内搭載の燃料タンクの容量増加[4]による航続距離の延長、運動性の向上等を実現している一方で、機体の大型化等による空気抵抗増加やインテイクの変更等の影響により速度性能(特に加速力)は在来型と比べ低下しているともされる[要出典]。
しかし、機体の大型化の一方でD型までにあった垂直尾翼間のエアブレーキを廃止するなど、機体の総部品数はA-D型より減少している。
以上により、機体規模はかって大型戦闘機とされたF-4戦闘機すら上回るものとなっており、もはや軽量戦闘機にカテゴライズされる機体ではなくなっている。
インテークの二次元型への変更[編集]
F-14やF-15の二次元型インテークのような断面積可変式ではなく固定式のままであり、従来型同様に超音速性能を重視しないままでのステルス性考慮のための変更である。
エンジンの変更[編集]
F/A-18A〜DのF404から、その発展型であるF414へ変更されている。このエンジンは完全自動化デジタル式電子制御システム (FADEC) を備えることで推力制御の自動最適化が達成されている。ただし、エンジンサイズを拡大せずに高性能化するために排気速度を高めたため、騒音が大きかったF404よりさらに大きくなり、訴訟にまで至った。
アビオニクスの変更[編集]
レーダーはAN/APG-65からサイズや重量を殆ど増加することなしに性能を向上させたAN/APG-73に変更しており、より高性能なAN/APG-79も搭載可能としている。
APG-79はアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーで同時処理が可能な目標数がAN/APG-73のおよそ倍となっており、限定的な電子妨害にも使用可能とされている。
その他、ATFLIR(AN/ASQ-228) の携行能力や運用可能な兵装の種類が増えている。イラクでのサザン・ウォッチ作戦においてVFA-115 "イーグルス"所属機がF/A-18Eとして初めて実戦に出撃し、イラク軍の地対空ミサイル陣地に統合直接攻撃弾薬 (JDAM) を投下している。
空中給油[編集]
退役するKA-6DやS-3Bの代替として空中給油機の役割もはたせるようになっている。
プローブアンドドローグ方式が採用されており、aerial refueling system (ARS、空中給油システム)と呼ばれる増槽を装着することで内部タンクとあわせて最大29,000ポンド(13トン)の燃料を搭載することが出来る。
| F/A-18A-D | F/A-18E/F | |
|---|---|---|
| 全長 | 17.07 m | 18.38 m |
| 全幅 | 11.43 m | 13.62 m |
| 全高 | 4.66 m | 4.88 m |
| 主翼面積 | 37.2kg/m² | 46.45kg/m² |
| 空虚重量 | A/B:12,973 kg C/D:10,810 kg |
14,007 kg |
| 最大離陸重量 | A/B:21,888 kg C/D:23,542 kg |
29,938 kg |
| エンジン | F404-GE-400 ターボファンエンジン ×2 | F414-GE-400 ターボファンエンジン ×2 |
| 推力 | A/B:7,258 kgf × 2 C/D:8,145 kgf × 2 |
5,669 kgf (クリーン) × 2 9,979 kgf (アフターバーナー) × 2 |
| 最大速度 | A/B:M 1.7+ C/D:M 1.8 |
M 1.6 |
| 航続距離 | 3,700 km | 3,705 km |
| 戦闘行動半径 | C/D:290海里(約537km) | |
| 実用上昇限度 | 15,240 m | 15,250 m |
採用状況[編集]
アメリカ海軍では、A-6退役後の空母航空団ストライクパッケージの要となっていたF-14艦隊防空戦闘機(対地攻撃能力付加型)の老朽化による維持コストの高騰を受け、当初は2010年としていた引退時期を2006年の第1四半期に早めた。このためF-14やEA-6B電子戦機、S-3B艦上哨戒機が退役すると、次世代の戦闘機であるF-35C統合打撃戦闘機の就役までは、F/A-18シリーズが空母航空団の主戦力となる [5]。
F-14よりも騒音が大きいため一部の航空基地ではF/A-18E/F型の配備は極力後回しとされた。EおよびFどちらかのみを配備している飛行隊は10隊あり、双方を配備しているのは、地上の機種転換部隊の2隊のみである。
F/A-18E/Fはアメリカ海軍の他にいくつかの採用計画がある。2007年には、オーストラリア空軍がF-111Cの更新機種としてF型を24機を発注し2009年から順次配備している[6]。オーストラリア向けのF/A-18Fは、既に採用を決定しているF-35Aが配備されると余剰化するため、12機が電子戦型EA-18G グラウラーへの改造を容易にできるよう予め配線を済ませた状態で生産されていたが、EA-18Gの新規購入に切り替えたため結局改造は行われないことになった。
アメリカ第7艦隊・第5空母打撃群/ジョージ ワシントン打撃群所属の第5空母航空団は、2011年5月11日にVFA-195がF/A-18CからF/A-18Eに機種転換されたことにより[7]、すべての戦闘攻撃飛行隊(VFA-102・VFA-27・VFA-115・VFA-195) がF/A-18E/F スーパーホーネットとなる。2012年3月23日に電子攻撃飛行隊もEA-18Gが配備された第141電子攻撃飛行隊が転属される[8]。第5空母航空団は、戦闘攻撃飛行隊と電子攻撃飛行隊にスーパーホーネット系のみが配備される最初の空母航空団となる。
派生型[編集]
- F/A-18E/F
- A-6の後継機として開発されたF/A-18を改造した戦闘攻撃機。
- F/A-18E
- F/A-18E/Fの単座型。
- F/A-18F
- F/A-18E/Fの複座型。
- F/A-18E/F Block 2
- 2005年の会計年度から調達が開始されたF/A-18E/Fのアップグレード型。搭乗員ステーションの改良、AN/APG-79アクティブ電子走査アレイ (AESA) レーダー、多機能情報伝達システム (MIDS) 、発達型目標指示前方赤外線 (ATFILR)ポッドの装備能力、AIM-9Xの装備能力などを追加される。
- F/A-18E Block 2
- F/A-18E/F Block 2の単座型。
- F/A-18F Block 2
- F/A-18E/F Block 2の複座型。
- EA-18G
- EA-6Bの後継機としてF/A-18Fを改修した電子戦機。2007年9月24日に量産初号機 (G-1) がアメリカ海軍へ引き渡された。
詳細は「EA-18G (航空機)」を参照
- 発展型F/A-18 インターナショナル・ロードマップ
- 2010年7月に開催されたファンボロー航空ショーにてCGイラストが発表[9]され、非公式にサイレントホーネットと呼ばれていた構想が具現化された機体。F/A-18Eをベースにした国際共同開発仕様と報じられている。ボーイングはこの計画で追加される装備や能力をユーザーのニーズに合わせて開発していく方針を提案している。この機体は、機首下にIRSTが搭載され、コクピット後方にもミサイル警戒用センサーが増設され、機体全周囲を警戒可能。また、コンフォーマル・タンク(CFT)の搭載により航続距離延長が図られている。これはF-16のCFTと同じように機体背部に取り付けられるもので、片側につき1500lbの燃料を搭載し、2つで3000lbの燃料増加となる。これにより戦闘行動半径は10パーセント程度向上するという。更に、CFT搭載による抵抗は搭載前から全く増加しておらず、逆に重心位置が変わることにより尾翼によるトリムが不要となるため最高速度や加速性能が上昇するとも言われている。また、外装式のウェポンポッドが搭載され兵装を外装した場合に比べステルス性が向上する他、抵抗の減少により航続距離も向上するという。1つのポッドに搭載可能な重量は2000lbまででAIM-120C AMRAAMならば4本搭載することが可能な他、GBU-39 SDBなら4発、Mk-82 500lb爆弾サイズなら2発、Mk-83(1000lb)やMk-84(2000lb)サイズの爆弾なら1発搭載することが可能。スーパーホーネットにはこのポッドを最大3基搭載することが可能。コクピットも換装され、F-35のような、19×11インチのタッチパネル式大型液晶ディスプレイを搭載した次世代型コクピットとなっている。このディスプレイには各種センサーの情報を分割表示できる他、3Dマップにより周囲の状況を表示することが出来、AWACSやイージス艦が捕捉した最新情報などもネットワークを介して表示することができる。ディスプレイはマルチタッチ対応で、2本の指を当ててズームすることが可能。ちなみにこのディスプレイの大きさはは一般的なPC用22インチワイドモニターとほぼ同じ大きさで、戦闘機用ディスプレイとしては最大級のものとなっている。エンジンに関してもファンや燃焼室を一新したF414 Enhanced Performance Engine(EPE)に変更され、従来よりも推力が 20%増加する。ボーイング社によれば2011年内にコンフォーマル・タンクの風洞実験を行い、提供開始時期は2015年以降になる予定。
スペック[編集]
- 乗員
- E:1名
- F:2名
- 全長:18.38 m
- 全幅:13.62 m
- 全高:4.88 m
- 主翼面積: 46.45m2 (E/F)
- 最大離陸重量時翼面荷重: 644.52kg/m²
- 空虚重量:14,552 kg
- 兵装最大搭載量:8,029 kg(離陸時)/4,491 kg(着陸時)
- 最大離陸重量:29,937 kg
- 燃料容量:8,063L(機内タンク)
- エンジン:GE製 F414-GE-400 ターボファン × 2
- 推力:5,669 kgf (クリーン)× 2 / 9,979 kgf (アフターバーナー)× 2
- 最大速度:M 1.6
- 航続距離:約 3,705 km
- 実用上昇限度:15,250+ m[10]
兵装[編集]
- 固定武装
- M61A1 20mmバルカン砲 ×1(装弾数:400発)
-
- その他
など
出典・脚注[編集]
- ^ レガシーホーネット - E/F型を「スーパーホーネット」と呼ぶのに対して、A型からD型の従来機種を「レガシーホーネット」(Legacy Hornet:旧式のスズメバチ)と区別する。
- ^ 「ライノ」(Rhino) - スーパーホーネットのコクピット前のIFFアンテナのカバーをサイの角に見立ててつけられた愛称。航空母艦への着艦時にアレスティング・ワイヤーの張力確認時に機種を無線のコールには「ライノ」を用いている。
- ^ ただし主翼下パイロンは取り付け角が進行方向から外側に1°斜めになっている。
- ^ 機内搭載の燃料は、C型が6,061リットルだったのに対し、E型では8,063リットルになっている。
- ^ 少数ながらその他にE-2C/D早期警戒機、MH-60R統合多用途/S多用途・補給支援ヘリコプターなどが存在する。
- ^ 2005年8月には、日本の航空自衛隊のF-4EJ改の更新計画「第4次F-X」の候補機種の1つと報道されたこともあるが、F-35Aが選定された。
- ^ 2011年5月11日、VFA-195はF/A-18Eへの機種転換訓練を終え厚木基地に戻る[1]
- ^ [2]
- ^ 試作機がボーイング本社にて報道陣に発表されたのは2011年6月29日、2011年2月8日インド航空祭にてモックアップが公開された正式にインターナショナルロードマップとして発表された
- ^ F/A-18E/F Super Hornet, Aerospaceweb.org(英語) - Aerospaceweb.org
登場作品[編集]
詳細は「F/A-18に関連する作品の一覧」を参照
関連項目[編集]
- F/A-18 ホーネット
- 戦闘爆撃機
- スーパーホーネット (競走馬) - 愛称が馬名の由来となっている。
外部リンク[編集]
- ボーイング社カタログ(日本語)
- F/A-18E/F Super Hornet, Global Aircraft(英語)
- F/A-18 Hornet, Federation of American Scientists(英語)
- F/A-18E/F SuperHornet(日本語)
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

