プロトタイプ

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プロトタイプ: prototype)は、デモンストレーション目的や新技術・新機構の検証、試験、量産前での問題点の洗い出しのために設計・仮組み・製造された原型機・原型回路・コンピュータプログラムのことを指す。

「プロトタイプ」(原型)という言葉の原義的には、量産モデルに発展させることが前提、ないし少なくともそのつもりはあるという点が、実験機や試験機や試作機(車)などと異なるが、たとえば制式採用を決定するコンペで敗れるなどして結局量産されないこともままあり、厳密な区別は無い(難しい)。

概要[編集]

新製品を量産に移す前などに試験用途として作られ、製品の設計に起因する問題やその他の不具合を発見することができ、具体的な修正の検討に入ることができる。こうすることによって、量産して市場に出た後で不具合が発覚することを防ぐことができる。

量産用プロトタイプが十分に洗練されていて、その機能性・強靱性・量産性および他の目標を十分に達すると判断された場合、その製品を量産に移すことができる。しばしば、そのような用途のプロトタイプは大量生産技術とは違った技術を用いて製造される。このための技術や手法はプロトタイピングと呼ばれる。

電気工学[編集]

電子回路においては、プロトタイプ品と量産品で性能に違いが出てくることがある。これは部品の数や違い・プリント基板のパターン引き回しの違い・空中配線部品を使ったかどうかなど、様々な要因がある。

情報工学[編集]

C言語には関数プロトタイプ宣言というものがあるが、これは関数サブルーチンの引数と返り値の値を宣言するものである。外部とのやりとりを示す「宣言」に対し、中身を示すものを「定義」と言う。

プロトタイプベースオブジェクト指向プログラミングでは、プロトタイプは「クローンとしての新しいオブジェクト」を作ることができるオブジェクト、のことである。逆にそのクローンの側から見ると、自分がクローンとして作り出される元となったオブジェクトがプロトタイプである。

試作プログラムや画面デモ用プログラムなども「プロトタイプ」と呼ぶ。日本においては「デモ版」ないし「ベータ版」、まれに「アルファ版」(ベータ版の更に手前)などと呼ばれることも多い。

自動車[編集]

自動車では各種性能の確認や、新たな装備・機能の試験目的で製造される。

スタイリング決定後に公道で試験を行う場合は覆面偽装が施されることもあるが、サスペンションエンジンの試験の場合、現行型を改造して行われる場合もあり、その場合は外観での判断は難しい。一般に披露されることは少ないが、プリンス・R380トヨタ・2000GTの速度記録試験車のように宣伝目的で露出され、広く知られるようなる場合もある。

一般消費者へ向けて主にモーターショーなどで展示されるものはコンセプトカーショーカーともいわれる。中でも第二次世界大戦後のアメリカビッグスリーが製作し、各地のモーターショーやメーカー自身の巡業(GMモトラマなど)に使われた、いわゆるフューチャーカーやドリームカーの数々は自動車史上でも特筆に値する。

1960年の日本ではトヨペット・スポーツ、日野・コンテッサ900スプリントいすゞ・117クーペなどのように市販車のシャーシヤナセイタリアカロッツェリアなどのコーチビルダーが製作した車体を架装したワンオフのモデルの出品が行われるようになる。その後、FRPを多用した、形だけのいわゆる「ハリボテ」が横行したが、バブル期以降はプロモーションビデオの撮影のため走行可能なものが製作されるようになった。

アウディ・R10(2007年モデル)

モータースポーツには、プロトタイプレーシングカーと呼ばれるカテゴリがある。ル・マン24時間レースのようにスポーツカークラスが中心に開催されているレースでは「スポーツプロトタイプ」と呼ばれることもある。具体的にはポルシェ 917アウディ・R10 TDIが該当する。


鉄道車両[編集]

日本国有鉄道207系電車。900番台1編成のみ試作された。

鉄道車両においては新型車両を量産する際、実際に試験・運用することを目的として製造される。製造された車両は「先行量産車」、「量産先行車」、「量産試作車」などと呼ばれることもある。

ワンオフ試験車とは異なり、量産化の際には営業運転に利用されることが前提となっている場合が多い。プロトタイプ車での運用やテストを経て量産車に仕様が反映されることとなる。

これらの車両は番台区分が異なっていたり(JR東日本E231系900番台(←209系950番台))、外観や編成などが量産車と違う場合(300系新幹線J1編成E3系新幹線R1編成(←S8編成)JR西日本207系F1編成など)がある。量産車にあわせて改造される例も多いが、そのまま使われ続ける場合も珍しくない。

また、量産が見送られた場合には少数勢力や1形式1両のみの車両となってしまうことがある(前者では国鉄207系電車国鉄713系電車、後者ではJR東日本クハ415-1901JR貨物EF500形電気機関車がその例)。さらに一連の試験を終了した車両については、取り回しの悪さなどから車齢が10年を満たないうちに廃車となる場合もある。

模型[編集]

北米・GP38-2機関車の実車、模型を製作する時はプロトタイプと呼ばれる

模型プラモデルの世界(鉄道模型自動車模型・航空機兵器など)ではプロトタイプとは製作の参考にするための実物モデル(試作品)のことを指す。

特に北米の鉄道模型マニアの間では模型を製作する際に参考とする実物の鉄道車両鉄道施設のことをプロトタイプと呼ぶ。

例えば、Athearn社がEMD GP38-2ディーゼル機関車の模型[1]を作る際に実物の機関車のことを「プロトタイプ」と呼ぶ。

技術的には、生き物でないものはどんなものでも構造・設備・付属器具を含む物体、自然の景観など、全てがプロトタイプとして役に立つ。特にジオラマレイアウト、シーナリー(鉄道模型における地形や景観の模型化)を製作するために参考にする場合が該当する。

しかし北米では次のようなものがプロトタイプとして好まれる。

フィクションのアイテム(例えば、スター・ウォーズスタートレックの宇宙船)がプロトタイプを呼べるかについては議論の余地があるものの、フィギュア人形(特にアクションフィギュア)を製作する時のモデルとなる人間や生き物については決して「プロトタイプ」と呼ばれることがない。

日本の模型では、プロトタイプという言葉は個人レベルで作った少数生産・少数頒布前提の試作品や企業の試作品・量産先行品に対して使われることが多い。

ロボットアニメ[編集]

機動戦士ガンダム』に端を発するリアルロボット路線のアニメでは、本来はその「プロトタイプ」である機体のパイロットではなかった主人公が偶然の行きがかりから搭乗して操縦したことをきっかけに物語が繰り広げられるというパターンが、ストーリー定型の1つとして存在する。この様な作品では、主人公が乗り込んだプロトタイプ機を主役メカとしてストーリーが展開されてゆく。また、制式機という設定であっても、実質的にプロトタイプ機も同然の少量生産の機体が主役メカであることも見られる。

プロトタイプ機が主人公の搭乗機である場合、これをひな型とした「量産機」や「後継機」が劇中に登場するストーリー展開がなされることがある。このパターンでは量産機・後継機と位置づけられた機体では、生産性向上・コストダウン・機体の安定動作などを優先させるべく機動性や戦闘能力などでプロトタイプ機と比較してデチューンされているという設定が多い。

ただし実際の兵器においては、ほとんどの量産機はプロトタイプにおいて判明した問題点を改善したものであり、当然のことながら量産機の方が高性能であり、試作機の方が優れていることは極めて稀である。後継機の場合も改良により性能が向上しているのが基本であり、同様のことがいえる。リアルロボット路線のアニメの場合、プロトタイプ機については「採算・安定性を度外視した一品物のスペシャル機」であったり、もしくは「最新技術を投入した実験機」「特殊な能力や要素を持つ人物しか所定の性能を発揮させられない(そのまま量産しても操縦能力を持つ者が数的に確保できない)」などの設定がなされることが多い。

この他にも作品ごとに細かなバリエーションがあるが、多くの作品では何らかの理由で量産機よりもプロトタイプ機の方が高性能という設定付けがされると共に、量産機は大量あるいは徹底的に破壊されるやられ役を担い、これによって主人公の強さや主役機の優秀さを際立たせる演出がなされる。

関連項目[編集]