国鉄207系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国鉄207系電車
現在の207系900番台(2006年5月29日、松戸駅にて撮影)
現在の207系900番台(2006年5月29日、松戸駅にて撮影)
起動加速度 3.3km/h/s
営業最高速度 常磐緩行線90km/h
千代田線80km/h
設計最高速度 110km/h
減速度 3.7km/h/s(常用最大)
5.0km/h/s(非常)
編成定員 座席528・立席896(計)
・先頭車(座席48・立席88)×2
・中間車(座席54・立席90)×8
全長 19,500mm
全幅 2,800mm
全高 4,140mm
編成質量 計299.9t
・クハ207形 - 25.9
・モハ207形 - 32.5×3
・モハ206形 - 34.5×3
・サハ207形 - 23.6×2
・クハ206形 - 25.8
軌間 1,067(狭軌)mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
主電動機 かご形三相誘導電動機(形式:MT63)
編成出力 150kW×4基×6両=3,600kW
歯車比 99:14 (7.07)
制御装置 VVVFインバータ制御
GTOサイリスタ素子、形式:SC20)
駆動装置 TD平行カルダン駆動方式
ブレーキ方式 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ
保安装置 ATS-SN, ATC-10
製造メーカー 川崎重工業
東急車輛製造

207系は、日本国有鉄道(国鉄)が1986年昭和61年)に製造した直流通勤形電車である。

国鉄最初にして最後の営業用VVVFインバータ制御電車として10両編成1本が製造され、1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化では全車が東日本旅客鉄道(JR東日本)に承継された。

目次

[編集] 製造の経緯

国鉄では1984年(昭和59年)から北陸新幹線での本格採用を目標としたVVVFインバータ制御の研究を進め、101系を改造して試験を行いデータを取得した。次の段階として、量産に向けその結果を反映した車両を新規に製造することとなり、投入路線としては常磐緩行線が選定された。

同線は帝都高速度交通営団(営団、現・東京地下鉄千代田線との相互直通運転を行っており、協定を満たす高い加減速性能と、車両使用料の関係から営団車両と同等の省エネルギー性能が要求される路線であり、また同線にはすでに103系1000番台に代わって電機子チョッパ制御を採用した203系が投入されていたことから、性能の比較検討もできるので投入するに適当であるとされ、1986年11月1日国鉄ダイヤ改正での同線の所要車両数の増加に合わせて製造・投入された。製造後は同線および千代田線の営業運転にて運用し、経過を見ることにした。

[編集] 構造

[編集] 車体

203系のアルミ車体に代わり、当時製造が進められていた205系に準じたステンレス製軽量車体としている。地下鉄対策で前面中央部に非常用貫通扉を設け、各部の装備品がA-A基準に対応したものとなっており、側面も電動車の電動機冷却風取り入れ用の通風口がない、帯が窓下のみなど、205系と異なる点がある。203系などと同様、登場当時は先頭車の前面右上と各車の側面幕板部(片面につき2箇所)にJNRマークを掲出していたが、分割民営化時に前面はJRマークに差し替えられ、側面は消去されて別の位置にJRマークが掲出されている。従って当系列は他の国鉄形式よりJNRマークの掲出期間が大幅に短くなっている(実質数ヶ月)。また、前面の運行番号表示器は当初は巻き取り式であったが、2004年ごろにLED式に改造されている。

[編集] 台車・機器

台車は、205系が採用しているものと同等の軽量ボルスタレス台車DT50E(電動車)とTR235F(制御車付随車)が採用されている。

性能比較のため、後述するが別々のメーカーのインバータ装置(SC20形)を搭載したが、日立製作所製のものを基本にしているため、磁励音はほとんど違いがなく、先に登場した東急9000系に類似している。富士電機製の制御装置は、以後の採用例は209系900番台(同社製のパワートランジスタを当初採用していたが、デジタルATC化に伴い2001年に三菱電機製GTOに交換)や山陽電気鉄道5030系(富士電機製IGBT)など一部に限られている。MT63形主電動機の基本性能は出力150kW(端子電圧1,100V、電流100A、定格回転数2,200rpm、すべり率2.5%)で統一されている。1時間定格速度は48.0km/hである。

VVVFインバータ制御は203系の電機子チョッパ制御よりも高い加減速性能を発揮することが可能だが、常磐緩行線で電動車比率を下げても問題ないとの結論は出せず、電動車 (M) と付随車 (T) の比率(MT比)は203系と同一の6:4とされた。これは現在まで変更されていない。

[編集] 車内設備

207系900番台車内

座席はロングシートで、205系に準じた構造である。座席モケットも新造時は205系と同様に7人掛けの中央1人分が薄茶色で、他は茶色であったが、203系と同様に後年1人ごとの着座位置を示す印が入った青色ベースのものに取り替えている。

[編集] 編成と車両

松戸車両センター(東マト)71編成

号車
番号
形式 メーカー 解説
10 クハ207-901 (Tc) 川崎重工業 取手方の先頭に連結される制御車。
9 モハ207-901 (M1) パンタグラフ空気圧縮機 (CP) と東芝製のインバータ装置を搭載する中間電動車。モハ206-901とペアを組む。
8 モハ206-901 (M2) 川崎重工業で製造された電動発電機 (MG) と三菱電機製のインバータ装置を搭載する中間電動車。モハ207-901とペアを組む。
7 サハ207-901 (T1) 東急車輛製造 付随車。
6 モハ207-902 (M1) 川崎重工業 パンタグラフ・CPと富士電機製のインバータ装置を搭載する中間電動車。モハ206-902とペアを組む。
5 モハ206-902 (M2) MGと日立製作所製のインバータ装置を搭載する中間電動車。モハ207-902とペアを組む。
4 サハ207-902 (T2) 東急車輛製造 付随車。
3 モハ207-903 (M1) パンタグラフ・CPと東芝製のインバータ装置を搭載する中間電動車。モハ206-903とペアを組む。
2 モハ206-903 (M2) MGと東洋電機製造製のインバータ装置を搭載する中間電動車。モハ207-903とペアを組む。
1 クハ206-901 (Tc') 川崎重工業 代々木上原方の先頭に連結される制御車。

[編集] 運用

1本のみが試験的に製造され、営業運転をしながらの試験が続けられたが、空転が多いなどの欠点がある上に、製造コストが203系より高く、常磐線車両の必要数も既に足りていたことから2本目以降が製造されることはなかった。試験が終了した後は同じ路線を走る203系や209系1000番台と共通運用されている。

1980年代後半の時点ではVVVFインバータ制御の車両は製造費が非常に高価であり、当時山手線で運用されていた205系10両編成 (6M4T) 並みのコストにするには4M6Tまで電動車比率を下げなければならなかったが、こうなると営団との乗り入れ協定において要求される加速性能を満たせなくなる。このコストと性能の問題点の露呈は、国鉄とその後のJR東日本だけでなく、当時インバータ制御の導入を検討していた乗り入れ先の営団が6000系などの新製を電機子チョッパ制御や同社が独自に開発した改良型の高周波分巻チョッパ制御で継続するという影響を与えた。

本系列以降、常磐緩行線と千代田線にインバータ制御車が新規導入されたのは、営団は1993年平成5年)の06系(本系列と同様1編成のみ在籍)、JR東日本では1999年(平成11年)の209系1000番台となる。

[編集] E233系への置き換え

2008年(平成20年)、E233系の千代田線直通仕様車(2000番台)が新製されることが発表され[1]2009年(平成21年)5月に第1編成が落成した。

これにより、203系と本系列が淘汰対象となる。本系列は試作車であるうえ、10両編成1本しか存在しない希少車であることから、機器類が特殊で保守に難があるため、2009年9月上旬に予定されるE233系の就役とともに運用を離脱する予定である[2]

[編集] その他

西日本旅客鉄道(JR西日本)では、1991年(平成3年) - 2003年(平成15年)にかけて同名の「207系」を称する電車を量産したが、地下鉄対応車で軽量ステンレス車体を持つVVVFインバータ制御の通勤型電車という以外の共通点はなく、設計思想も大きく異なっており、本系列とは全くの別物である。

なお、JR西日本の207系は量産先行車を含め車両番号が1から付番されているため、車両番号の重複は発生していない。また、900番台の車両番号について一部の鉄道関連書籍において「製造当初は0番台であったが、JR西日本車の登場に伴い900番台へ改番された」との記述があるが、新製時より900番台の車両番号を有しているので、これは全くの誤りである。

[編集] 出典

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ
他の言語