ドクターイエロー

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東京駅に停車中の923形「ドクターイエロー」

ドクターイエローとは、新幹線区間において、線路のゆがみ具合や架線の状態、信号電流の状況などを検測しながら走行し、新幹線の軌道・電気設備・信号設備を検査するための事業用車両の愛称である。

概要[編集]

ドクターイエローの正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車(しんかんせんでんききどうそうごうしけんしゃ)」である[1]。「ドクターイエロー」と呼ばれるのは、車体色の黄色に由来している。

東北新幹線区間等では、白ベースに赤の塗装の編成である東日本旅客鉄道(JR東日本)E926形が使用され、「East i(イースト アイ)」(正式名称は「電気軌道総合試験車(でんききどうそうごうしけんしゃ)」)と呼ばれる。用途が同じ車両なので本項にてまとめて記述する。

これらの試験車による検測結果は、東海道山陽新幹線においては新幹線情報管理システム (SMIS) 、東北上越長野新幹線においては新幹線総合システム (COSMOS) に送られ、それぞれ乗り心地の向上や安定した集電、信号トラブルの未然防止などを目的とした保線作業のデータとして使用される。

これらの非営業用車両の車両形式は、「系」や「型」ではなく「(900系)○○○=がた(○○○○番台)」と表記する(例:900系923形3000番台=T5編成)。

運行は10日に1回程度の頻度であり、走行時刻は非公開である。運が良くなければ見られないため、鉄道ファンを中心に、縁起物のような扱いをされる[2]

車両[編集]

東海道・山陽新幹線[編集]

921形[編集]

0番台[編集]

単独の軌道試験車であり、921-1(登場時は4000形4001号)、921-2の2両が存在した。

検測走行時の最高速度は160km/h。丸みを帯びた箱形車体で、前面は非貫通3枚窓、在来線の軌道試験車と同じく3台車を装着する。測定機器の電源用として、ディーゼル発電機を搭載していた。

車体塗装は淡黄色で、窓下に青色の帯を巻いていた。帯の部分に車両番号を書き文字で記載していた。921-1は鴨宮モデル線区投入時からこの塗り分けだったので、ドクターイエローカラーの元祖はこの921形である。検測時は、開業前では試験編成に、開業後は911形ディーゼル機関車などに牽引されていた。後述する1000形B編成を改造した922形0番台(T1編成)には軌道検測機能がないため、922形10番台(T2編成)が登場するまで、単独で運用された。

なお、後述の922形10番台・20番台に組み込まれている921形とは、形式および用途は同じながら外観はまったくの別物である。

921-1
在来線の軌道試験車をベースに設計され、1962年に4000形4001号として東急車輛製造で製造され鴨宮モデル線区に投入された(東海道新幹線開業直前に921-1と改番)。正面中央上部に、車両編成番号表示窓が設置されている。
自動車用ディーゼル発電機を使用して、低速で自走することができた(車庫内での入れ換えなどに使用)。全長は18mで、正面窓が側面まで回っている。
被牽引では200km/hでの計測も可能であり、このため1978年5月より東北新幹線先行試験区間の小山試験線に投入され、翌1979年に同じく東海道・山陽新幹線から移転した961形とともに、各種試験・測定に使用された。
東北新幹線の試験終了後の1980年廃車解体された。
921-2
1964年の東海道新幹線開業に合わせ、増備車として旧形客車(マロネフ29 11)の改造により製造された。921-1との違いは細かい部分のみで、正面中央上部の車両編成表示窓の省略、正面窓が車体側面まで回っていない、窓の配置が若干異なる、全長が17.5mと短くなっている程度である。性能上は単体では自走できず、測定項目も921-1より少なかった。
921-1より早く、1975年末に廃車となり、翌1976年浜松工場の車体解体設備で解体された。
10・20番台[編集]

10番台は11号、20番台は21号の2両が存在した。

T2編成(後述)からは、電気・軌道の検測を一元的に行うため、新製された922形の5号車に組み込まれることになった。車体断面は922形と同一であるが、車体長は17.5mと短く、車体は測定条件を満たすために強固な鋼製で、自重は60tを超えていた。

921-11は922形10番台(T2編成)、921-21は922形20番台(T3編成)に組み込まれていた。

941形(電気試験車→救援車)[編集]

鴨宮モデル線区で運用されていた1000形A編成を、モデル線区投入の2か月後(1962年8月)に電気試験車に、さらに1964年に救援車へと改造したもの。最高速度200km/h。

元々は白地に青帯だったが、救援車への改造にあわせて黄地に青帯になった。その後再改造され、元々1灯式だった前照灯は2灯式に、前面窓は0系に合わせ2号車は曲面ガラスから平面ガラスに改造されたが、1号車の曲面ガラスと両車の車両編成番号表示窓は残された。幸いにも救援車としての出動は一度もなく、1975年に0系1・2次車の廃車が本格化する前に、浜松工場に新設された車体解体設備の輪切りのテストのために廃車解体された。

  • 1号車 (941-1) :資材室
  • 2号車 (941-2) :救援要員用座席(40席)・工具棚


922形[編集]

0番台[編集]

1964年6月に、モデル線で運用されていた1000形B編成を、A編成の電気試験車→救援車の改造と同時に、電気・信号系の測定車に改造したもの(軌道系の測定はできなかった)。最高速度200km/h。のちにT1編成とも称される。

元々は白地に窓周りが青色の塗色だったが、改造にあわせ黄地に青帯になった。その後再改造され、元々1灯式だった前照灯は2灯式に、1号車の前面窓は0系に合わせ曲面ガラスから平面ガラスに改造された(4号車は比較試験のためもともと平面ガラスであり1号車のみ改造)。しかし、車両編成番号表示窓と256km/hの記録のプレートは残された。1975年に0系1・2次車の廃車が本格化する前に、941形同様に廃車解体された。

  • 1号車 (922-1) :信号・通信測定車
  • 2号車 (922-2) :電気測定車
  • 3号車 (922-3) :資材車
  • 4号車 (922-4) :電気測定車
10番台[編集]
新幹線922形電車
10番台・20番台
922形20番台T3編成(2004年10月17日)
922形20番台T3編成
(2004年10月17日)
編成 7両(6M1T
最高速度 210 km/h
起動加速度 1.0 km/h/s
編成定員 非営業車両
全長 25,150 mm(先頭車)
25,000 mm(2 - 4, 6号車)
17,500 mm(5号車)[** 1]
全幅 3,380 mm[** 1]
車体高 3,975 mm[** 1]
軌間 1,435 mm
電気方式 交流25,000V 60Hz
歯車比 2.17
駆動装置 WN駆動方式
制御装置 低圧タップ制御 (CS46)
台車 IS式ダイレクトマウント空気ばね台車
DT200A
TR8009(5号車両端台車)[** 1]
TR8010(5号車中央台車)[** 1]
制動方式 発電電磁直通ブレーキ
保安装置 ATC-1型
  1. ^ a b c d e 『東海道 山陽新幹線二十年史』日本国有鉄道新幹線総局、1985年、p.918
922形10番台T2編成

初代T1編成が老朽化、運用面での不都合も多く、博多開業も迫っていたので、1974年に新製された電気軌道総合試験車である。 T2編成とも称する。922形6両 (922-11 - 922-16) に921形軌道検測車 (921-11) を挟み込んだ7両編成で、全車とも日立製作所で製造された。0系16次車と同時発注のため、側窓が大窓になっている。登場当初は昼間に運用されたが、1986年に東海道・山陽新幹線が220km/hに速度向上してからは夜間の運用が主になった。JR化後は東海旅客鉄道(JR東海)に所属。後記するT4編成の登場で2001年1月26日の東京から博多への検測を最後に運用を終了し、同年10月2日から5日にかけて廃車、解体された。

  • 1号車:通信・信号・電気測定車
  • 2号車:データ処理車
  • 3号車:電源車(観測ドームあり)
  • 4号車:倉庫・休憩室(ボックスシートを装備。583系電車の開放式B寝台下段に類似した構造となっており、寝台としても使用できる。)
  • 5号車:軌道検測車(921形、3台車で短車体)
  • 6号車:救援車(観測ドームあり)
  • 7号車:架線磨耗測定車

外観からわかるように0系をベースとした車両であるが、初期の0系電車の外観における特徴の一つである車体側面の脱出口を本車両は装備していない。

なお、後述のT3編成と自動分割併合試験を行うため、1986年に7号車先頭部の連結器に改造が施され、前頭部の外観が多少変化した。これは結局現在のところ東海道・山陽区間においては実用化されていないが、後に東北方面での新在直通運転における自動分割併合の実現に貢献することとなった[3]

20番台[編集]

T2編成の増備として、1979年に新製された。T3編成とも称する。T2編成1本では検測を行いつつ車両検査を受けることが困難であったため、T2編成が検査入場中は予備車である921形0番台で軌道検測を行わなければならなかった。921形0番台は最高速度が低く、運用上の問題が発生した[4]。それを防ぐために製造されたのがT3編成である。製造メーカーは3 - 5号車が東急車輛製造、それ以外は日立製作所である。

0系27次車(1000番台)と同時発注のため、側窓が小窓になっている。その他の仕様はT2編成に近いが、架線磨耗測定車が2号車、レーザー光線式架線摩耗測定装置の採用[5]、4号車が全車両倉庫になり、休憩室兼添乗員座席(0系普通車オリジナルの2+3列転換クロスシートを装備)が7号車に移る等微妙な違いがある(軌道検測車は921-21)。T2編成同様、車体側面の脱出口は装備しない。

JR発足以後は西日本旅客鉄道(JR西日本)に所属。T4編成の登場で予備車になった。2001年にT2編成が運用を離脱し、2005年に当編成が後述の700系ベース車であるT5編成によって置き換えられるまでの4年間、東海道新幹線の全区間で運行されていた唯一かつ最後の0系タイプ車両であった。(JR西日本所属の0系が新大阪駅から鳥飼車両基地の間を回送線として利用したケースを除く)T2編成との外見上の相違は側窓の大きさのほか、最前部の連結器カバーがT2は白色、T3は黄色となっていた。

  • 1号車:通信・信号・電気測定車
  • 2号車:データ処理・架線摩耗測定車
  • 3号車:電源車(観測ドームあり)
  • 4号車:倉庫
  • 5号車:軌道検測車(921形、3台車で短車体)
  • 6号車:救援車(観測ドームあり)
  • 7号車:休憩室

なお、前述のT2編成同様、1号車前頭部に自動分割併合装置が改造により装備されていた。

2005年9月30日に廃車となった[6]後も922-26が博多総合車両所で保管されていた。現在は2011年3月に開館したリニア・鉄道館で展示されている[7]

923形[編集]

新幹線923形電車
923形0番台T4編成(2006年07月22日)
923形0番台T4編成
(2006年07月22日)
編成 7両(6M1T
最高速度 270 km/h
起動加速度 2.0km/h/s[8][*** 1]
編成定員 非営業車両
全長 27,350 mm(先頭車)
25,000 mm(中間車)
全幅 3,380 mm
車体高 3,650 mm
軌間 1,435 mm
電気方式 交流25,000 V 60Hz
編成出力 6,050kW 
主電動機 かご形三相誘導電動機
TMT6A,TMT7A,TMT8(T4編成)
主電動機出力 275kW/基
歯車比 2.96
駆動装置 WN駆動方式
制御装置 VVVFインバータ制御 (IGBT
台車 コイルばね+円錐積層ゴム式ボルスタレス台車
TDT204(電動車), TTR8001(付随車)(T4編成)
WDT206(電動車), WTR8001(付随車)(T5編成)
制動方式 回生併用電気指令式ブレーキ(応荷重装置付き)、渦電流ブレーキ
保安装置 ATC-1型ATC-NS
  1. ^ 700系の加速度向上について(ニュースリリース・JR東海)
0番台[編集]

T2編成の老朽化と、東海道区間の300系以降の車両への統一に伴い、270km/hでの走行が可能な車両として、2000年700系をベースに開発された。JR東海に所属し、T4編成と呼ばれる。1 - 3号車は日立製作所笠戸事業所、4 - 7号車は日本車輌製造豊川製作所で製造された(後述のT5編成も同様)。

T3編成までの軌道検測車(付随車)は、3台車の相対変位を測定する方式であり車体長も短かったが、T4編成以後はレーザー光を使用した方式に改良され、他の車輌と同じ2台車で車体長も同じになっている(T4編成からは、形式も923形に含まれている)。

先頭部には、前照灯の下方、車体中央に前方監視カメラが設置されている。また、尾灯がこのカメラの左右に配置されており、営業用の700系では尾灯となっている左右の2灯も前照灯(この灯火のみ、キセノンHIDライトと呼ばれることもある、白色のディスチャージヘッドランプ)となっている。このため、前照灯は700系の4灯に対し6灯となり、視認性の向上が図られている。

車体色の黄色が、T3までの編成(黄色5号)に比べて明るく鮮やかなもの(マリーゴールドイエロー)となっている。また、2号車と6号車にはそれぞれ集電用1基、検測用1基のパンタグラフが搭載され、1両に2基のパンタグラフが並んでおり、営業車には例のない長大なパンタグラフカバーと相まって、ユニークな外観となっている。

なお測定走行時には、測定用パンタグラフは進行前方の車両、集電用パンタグラフは進行後方の車両のものを使用し、同一車両の2基のパンタグラフを同時に上げて走行することはない(試運転等、測定以外の特殊な運転の場合は除く)。

走行機器もベースとなった700系に準じているが、編成が短くなったことから、1ユニットを構成する車両数が4両から3両(M1c+M'+M2)に減らされている。それに伴い、新たに制御電動車 (M1c) が設定されたほか、従来は付随車に搭載されていた空気圧縮機や補助電源装置といった補機類が電動車に集約して搭載された。また、計測機器などの電源用および停電対策用として、M'車車内に210kVA電源装置および鉛蓄電池を搭載する。

落成当時、4号車の屋根はマリーゴールドイエローであったが、2006年に700系と同じパールホワイトに塗り替えられた。これは、太陽光による外板温度上昇が車体を弓形に反らせる現象が観察されたためで、温度上昇を減らすことを目的として塗装が変更されている。

  • 1号車:変電/電車線/信号/通信測定台・電気/施設測定機器
  • 2号車:高圧室・電気関係測定機器
  • 3号車:観測ドーム・電気倉庫・電力データ整理室
  • 4号車:(軌道検測車)軌道検測室・施設データ整理室・施設倉庫
  • 5号車:多目的試験・電源供給・観測ドーム・休憩室
  • 6号車:ミーティングルーム・高圧室・電気関係測定機器
  • 7号車:電気/施設測定機器(添乗室があり700系普通車と同様の車内。カラーの大型プラズマディスプレイも備える)

なお、923という形式称号は2代目にあたる。先代はレール探傷車が名乗っており、2代目923形が登場した時点ではJR西日本に923-2が在籍していた。

3000番台[編集]
4号車の軌道検測用台車

2003年ダイヤ改正で高速化された東海道新幹線において、922形T3編成の210km/hでの検測運転では営業車両との性能差からダイヤに支障し、またT3編成自体の老朽化も進んでいたことから、これを置き換える目的で2005年に登場した。JR西日本博多総合車両所に所属し、T5編成と呼ばれる。2005年3月上旬にそれぞれのメーカーから陸上および海上輸送により博多総合車両所に運ばれた。

700系をベースとしており、仕様は923形0番台T4編成とほぼ同一である。T4編成との外観上の差異は、車体側面に博多総合車両所でメンテナンスを行う際のジャッキアップ時にリフトを差し込むための穴があること、および7号車屋根上のアンテナの有無(T4編成にはない)のみである。

博多総合車両所所属でありながら普段は東京に常駐しているため、保守を容易にするため台車もT4編成と同一にしてある。また、定期検査はJR東海に委託し、交番検査東京交番検査車両所台車検査全般検査浜松工場の施行となっている[9]

T編成 編成表
 
← 博多
東京 →
号車 1 2 3 4 5 6 7
形式 923
(M1c)
923
(M')
923
(M2)
923
(T)
923
(M2)
923
(M')
923
(M1c)
役割 電気試験車 軌道試験車 電気試験車
T4 1 2 3 4 5 6 7
T5 3001 3002 3003 3004 3005 3006 3007

運用[編集]

主要駅停車の「のぞみ」(「ひかり」)検測と、各駅に止まる「こだま」検測の2種類があり、通常各タイプとも同じダイヤで営業時間帯に運転される。

「のぞみ」タイプと「こだま」タイプのどちらも、基本的に2日かけて検測を行い、1日目に東京 → 博多、2日目に博多 → 東京となることが多い。ただし、新大阪駅到着時にいったん大阪仕業検査車両所に入区することが多い。

東海道新幹線開通間もないころは、営業列車のない深夜に検測を行っていたが、営業列車と同じ速度で検測可能なT2編成(922形10番台)が1974年に登場してからは昼間に検測をおこなうようになった[10]。当時は「ひかり」検測は3日かけて[11]、「こだま」検測は4日かけて[12]行った[10]

いつどこで運用するかは全く公表されないため、「ドクターイエローを目撃すると幸せになれる」という都市伝説がある。このため、プラレール鉄道模型関水金属トミーテックが発売)といった関連商品が多く売れている[13]

東北・上越・長野・山形・秋田新幹線[編集]

JR東日本では系列に関係なく非営業用車両(営業運転前の量産先行車を含む)の編成記号に「S」を使用している。

921形[編集]

921-31・41[編集]

東北・上越新幹線用の軌道検測車。 921-11・21とほぼ同仕様で、車体断面は925形と同一である。雪切装置が追加されたが、3台車のためボディーマウントではない。921-31は925形0番台(S1編成)に、921-41は925形10番台(S2編成)に組み込まれていた。製造メーカーはいずれも東急車輛製造。

921-32[編集]

1997年200系の中間車226-63を軌道検測車921-32に改造、レーザーによる測定を日本で初めて導入した。検測台車は測定装置が装備された以外は変わっていない。外観は改造で不要となった方向幕・指定席/自由席表示・雪切り室を塞いだ跡が残っていた。

長野新幹線の開業に伴い、従来の3台車の軌道検測車では軸重の関係で入線が困難なことから開発されたもので、1両しかないことからS1編成かS2編成のどちらかに組み込み、通常の定期検測では一定期間同一編成が連続して使われた。種車が200系量産車なため、先行して制作された925形と雨樋の高さが微妙に異なっている。

後述の通り、925形の運用離脱直前に検査期限切れとなったため、2002年12月8日付で廃車された。

925形[編集]

0番台[編集]
925形S1編成

1979年に製造された。黄地に緑帯である。S1編成とも称する。200系の原型の一つである。S2編成と異なり、あらかじめ各車の窓割りが検測車仕様で製造されていた。軌道検測車は921-31。製造メーカーは1・2号車が日本車輛製造、3・4号車が近畿車輛、6・7号車が川崎重工業。長野新幹線開業に伴い、周波数50/60Hz両用対応、勾配対策がなされ、軌道検測車は921-32を連結するよう改めた。後記するE926形S51編成「East i」の登場で2001年に廃車された。

10番台[編集]
925形S2編成(高崎駅、2002年9月25日)

1978年に製造された200系の原型にあたる962形新幹線試作電車を、1983年に改造したものである。元々試作電車だったため、総合試験車化に際しいくつかの窓を埋めている。S2編成とも称する。軌道検測車は921-41。

東北・上越新幹線開業後も、軌道検測車を抜いた6両編成で「高速試験車」に使われ、これを基に200系による時速240km - 275km運転が実施された。1997年にS1編成同様50/60Hz両用対応。後記するE926形S51編成「East i」の登場で、2003年1月25日付で廃車された。定期運用を終える直前、前述の921-32が法定検査切れとなり、921-41を組み込んで東北・上越のみの検測を行った状態で2002年9月で定期運用を終えた。

E926形[編集]

新幹線E926形電車
E926形S51編成(2008年5月21日)
E926形S51編成
(2008年5月21日)
編成 6両[14]5M1T[14]
最高速度 275 km/h[14]
130 km/h(在来線区間)[14]
起動加速度 1.6 km/h/s[14]
編成定員 非営業車両
編成長 128 m[14]
全長 22,725 mm(先頭車)[14]
20,500 mm(中間車)[14]
全幅 2,945 mm[14]
全高 4,290 mm(パンタグラフ含む)[14]
編成質量 275 t[14]
軌間 1,435 mm[14]
電気方式 交流25,000V 50/60Hz[14]
交流20,000V 50Hz[14]
主電動機出力 300kW[14]
歯車比 3.04[14]
駆動装置 WN駆動方式
制御装置 VVVFインバータ制御[14]
台車 SUミンデン式ボルスタレス台車
DT207A
TR8012(3号車)
制動方式 電力回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ[14]
保安装置 ATC-2型DS-ATC[14]
ATS-P(在来線区間)[14]

営業列車の最高速度275km/h(当時)と同じ速度での検測データが必要とされたこと、最高速度が上昇したダイヤの都合や検測時間の短縮が必要とされたこと、新在直通可能な検測車両が求められたことなどを受け、2001年にE3系をベースに開発された[15]。メーカーは東急車輛製造

正式名称は「新幹線電気・軌道総合試験車」であり、「East i(イースト・アイ)」の愛称がついている[15]S51編成とも呼ばれる。前述の開発ニーズから、ミニ新幹線規格の山形新幹線区間および秋田新幹線区間でも運用できるように車体はE3系に準じ、北陸新幹線(長野新幹線)でも使用できるように、周波数50/60Hz切替装置や抑速ブレーキ切替装置も装備している。最高速度は275km/hである。フル新幹線規格の東北新幹線・上越新幹線・北陸新幹線(長野新幹線)の各区間とミニ新幹線規格の山形新幹線・秋田新幹線の各区間の検測を一手に引き受けている。

車体

E3系をベースとしたアルミニウム合金製であるが、引側戸がないこと(1・3号車)や機器搬入口を設けたことなどが特徴である[16]

走行・制御機器

主変圧器(TM205)、主変換装置(CI5D)、主電動機(MT205/連続定格出力300kW)はE3系と同等品である[17]

補機類の補助電源装置として、SC206A(容量77kVA)を3号車に2基搭載する[17]。また、架線の50Hzと60Hzの両区間の周波数に対応できるIGBT - PWMコンバータ・インバータで構成されたSC213(容量100kVA)を2・3・4号車に、検測機器用電源としてSC214を2号車に搭載する[18][17]。SC214は主変圧器3次巻線(AC400V、50/60Hz)を電源としてAC100V、50Hzを出力するほか、停電用バックアップ機構を備えており、セクションを想定した3秒バックアップと停電を想定した10秒バックアップの2回路においてそれぞれ40kVAの容量を有する[16]。さらにバックアップ用蓄電池も2号車に搭載している[16]

長野新幹線区間における35‰勾配において2M車カット状態で走行可能とするため、MT比は5M1Tと高めに設定されている[* 1]

信号関係の検測を両先頭車で行い、それに関係する車上子を先頭部床下に設置している。そのため、信号関係の検測を行う際には、検測データの精度向上のために前位(運転台寄り)台車の主電動機をカットし、4M2T相当での走行に切り替える[17]。この時、主変換装置の特性が切り替わり、健全時と同等の加速度およびブレーキ負担割合の変更を行う機能を搭載している[17]

台車

M車の台車は、E3系のDT207A(一部に検測用の機器を搭載できるものを使用)を搭載している[17]。軌道検測車(3号車)用の台車TR8012は、E3系のTR7005Aをベースにしている。具体的には、検測枠が取り付けられ、検測経度向上の観点から検測枠のオーバーハングを小さくするために車輪径は860mmから820mmに縮小、ヨーダンパも片側2本取り付け(E3系は1本)となっている[17]

編成

6両編成のうち、軌道検測車であるE926-3には、同一仕様のE926-13が存在し、一方が検査などで走行できない時でも軌道の検測が行えるようになっている。S51編成の全体が全般検査等入場中で計測走行できない時は、E2系(N21編成)にE926-3または13を組み込み、軌道検測を行う。

  • 1号車 (E926-1) :通信(LCX・在来線列車無線)・電力(架線間隔測定)・信号(ATC用)
  • 2号車 (E926-2) :通信・測定用電源
  • 3号車 (E926-3, 13) :軌道
  • 4号車 (E926-4) :電力(集電・検測兼用パンタグラフ)
  • 5号車 (E926-5) :電力・信号
  • 6号車 (E926-6) :電力(架線間隔測定)・信号(ATC用)
 
← 東京・秋田
金沢・新潟・新庄・大曲・新青森 →
号車 1 2 3 4 5 6
形式 E926-1
(M1c)
E926-2
(M2)
E926-3(13)
(T)
E926-4
(M2)
E926-5
(M1)
E926-6
(M2c)
役割 通信・電力・信号 通信・測定 軌道 電力 電力・信号

秋田新幹線大曲駅 - 秋田駅間は進行方向が逆になるため、このようになっている。

E2系N21編成 + E926-3(13) 編成表
 
← 東京
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号車 1 3 2 3 4 5 6 7 8
N21編成 E223-1
(T1c)
E926-3(13)
(T)
E226-101
(M2)
E225-1
(M1)
E226-201
(M2)
E225-401
(M1k)
E226-301
(M2)
E215-1
(M1s)
E224-101
(T2c)


九州新幹線[編集]

九州新幹線ではドクターイエローに相当する検測専用の車両は保有せず、検査の際、営業用として使用している800系のうち対応する編成に機器を搭載して検測を実施している。

当初は800系のU001編成に検測機能が与えられ、車両番号の末尾に「K」の文字が加えられていたが、後述の2009年の増備編成の就役に伴い撤去された。

2009年に製造された3編成のうち、U007, U009編成(1000番台)には軌道の検測を可能とする装置を、U008編成(2000番台)には電力、信号、通信の検測を可能とする装置が搭載可能である[19]

その他[編集]

2008年5月26日、JR東海はN700系に上下方向のみの軌道検測システムを取り入れると発表した[20]

脚注[編集]

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  1. ^ ベースとなったE3系0番台は6両編成で4M2Tである。

出典[編集]

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  1. ^ JR東海-車両のご案内 923形 - 東海旅客鉄道
  2. ^ “安全支える新幹線「ドクターイエロー」 10日に1度の“縁起物””. サンケイビズ. (2014年4月20日). http://www.sankeibiz.jp/business/news/140420/bsd1404201201001-n1.htm 2014年4月20日閲覧。 
  3. ^ RM MODELS2001年6月号89ページより。
  4. ^ 『東海道 山陽新幹線二十年史』日本国有鉄道新幹線総局、1985年、p.918
  5. ^ 『新幹線の運転』 にわあつし、KHベストセラーズ、2010年、p.174。ISBN 9784584132289
  6. ^ 『JR電車編成表 '06冬号』 ジェー・アール・アール、2005年、p.332。ISBN 4-88283-044-2
  7. ^ JR東海博物館(仮称)における展示概要について(ニュースリリース・JR東海)
  8. ^ 改良工事が実施される以前は東海道区間では1.6km/h/sであった。
  9. ^ ネコ・パブリッシングRail Magazine』 2007年12月号。浜松工場への台車検査入場の記事が掲載されている。
  10. ^ a b 『東海道 山陽新幹線二十年史』日本国有鉄道新幹線総局、1985年、p.377
  11. ^ 1日目:東京 → 広島。2日目:広島 → 博多 → 広島。3日目:広島 → 東京
  12. ^ 1日目:東京 → 新大阪。2日目:新大阪 → 博多。3日目:博多 → 新大阪。4日目:新大阪 → 東京
  13. ^ ダイヤ非公開、幻の"幸せの黄色い電車"ドクターイエローが人気 産経新聞 2013年6月27日配信 8月13日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『新幹線テクノロジー』 佐藤芳彦、山海堂、2004年、p.154。ISBN 9784381088277
  15. ^ a b 『鉄道ピクトリアル』2002年1月号、電気車研究会、2001年、p.96
  16. ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』2002年1月号、電気車研究会、2001年、p.100
  17. ^ a b c d e f g 『鉄道ピクトリアル』2002年1月号、電気車研究会、2001年、p.99
  18. ^ 交通システム - E926形新幹線電気・軌道総合試験車補助電源装置 (PDF) 富士時報 第75巻第1号(2002年)、富士電機
  19. ^ 『鉄道ファン2009年10月号』 交友社、2009年、P.76。
  20. ^ JR東海:営業列車での軌道計測技術について(ニュースリリース・JR東海)

参考文献[編集]

  • 萬谷太郎(東日本旅客鉄道株式会社運輸車両部企画課車両開発プロジェクト)「JR東日本E926形新幹線電車(S51編成)」 『鉄道ピクトリアル』2002年1月号、2001年、pp.96 - 101、電気車研究会

関連項目[編集]

外部リンク[編集]