自動列車停止装置

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自動列車停止装置(じどうれっしゃていしそうち、ATSAutomatic Train Stop)は、鉄道での衝突防止や過速度防止の安全装置(=自動列車保安装置と呼ぶ)の日本での分類の1つ。列車や軌道車両が停止信号を越えて進行しようとした場合、または信号機の指示速度を超過した場合に乗務員に警報を与えたり、列車のブレーキを自動的に動作させて停止させる装置である。

目次

[編集] 定義

日本工業規格のJIS E 3013(鉄道信号保安用語)では、以下のように定義されている。

自動列車停止装置 
列車が停止信号に接近すると、列車を自動的に停止させる装置。ATSともいう。
自動列車制御装置 
列車の速度を自動的に制限速度以下に制御する装置。ATCともいう。

ATSには停止信号による自動停止機能のほかに、停止信号また信号現示に関わりなく制限速度設定を超えた場合に警報・減速または停止させる機能がついたものもある。

日本の鉄道軌道法において一般的な自動列車保安装置であるが、鉄道事業者や軌道経営者によってその内容は大きく異なり、機能自体はATCと遜色のないものを使っている事業者もある。しかしながら、ATSにおいて安全走行を確保する主体は運転士であり、ATS装置は運転士のヒューマンエラーに対するバックアップが目的であるのに対し、ATCにおいてはATC装置が安全走行を確保する主体となっている点が異なる。

日本以外の国においては、安全装置の考え方が違い区分法が違うので、ATCを含め直の対応語はない。そのため同様の機能の装置に様々な命名があり、AWSと称しているところもある。

[編集] 歴史

ATSの歴史は過去に発生した鉄道事故と、その教訓による改良の繰り返しの歴史とも言える[1]

[編集] ATS動作・構造概要と分類

ATSの機能としては大別して信号現示に対して働く衝突防止のATSと、信号現示とは独立に進行信号で働く過速度に対するATSがある。また、運転上の取扱い方法は大きく2タイプに分けることができる。

  • 停止信号に近づいたときに警報を発し、乗務員が警報に応じた所定の確認の取扱をしない場合に列車のブレーキを動作させる装置。(国鉄B型・S型)
  • 乗務員が信号に従った運転取扱いを行っている場合はその運転に介入せず、乗務員の(体調不良、錯誤、故意など理由を問わず)異常な取扱いが行われた場合にだけ介入して列車のブレーキを動作させる安全装置。(上以外のタイプ)

ATS装置には、様々な構造があり、メーカから各事業者に納入されていて、同一路線で併用・機能分担されているものもあるので事業者毎の説明にはなじまない部分があり、構造・分類を概説する。

[編集] 制御方式

ATSの制御情報を地上から車上に伝える方式とその装置にはいくつかの種類がある。

[編集] 連続制御・点制御

ATSの制御情報を連続的に車上に伝えるものを「連続制御」、地上子など1点で情報を伝えるものを「点制御」としている。 なお、この区別は、情報の伝達に関するものであり、受けた情報に基づく速度照査の方法とは異なる。 「点制御」の場合にも、速度照査に関して、地上子から受けた情報を即時に照査する「点照査」の方式と、地上子からの情報を記憶して連続して照査する「連続照査」の方式がある。

[編集] 地上装置・車上装置

ATSは、基本的には以下の装置によって構成される(詳細は後述「ATS動作・構造」参照)。

地上装置 
地上に設置されている、信号機の現示や速度制限などの情報を列車に送る装置。
車上装置 
車両に搭載されている、地上装置が送った情報を受け取り、条件によって自動的にブレーキを動作させる装置。特に、列車の速度がある値を超えた時に自動的にブレーキを動作させる機能を速度照査機能(速照)という。

地上装置と車上装置で情報を送受信する方式には、大まかに分けると以下の方式がある。

打子(うちこ)式 
線路上のトリップアーム(打子)で、機械的に列車のエアコックを操作する方式。日本では現在使用されていない。(点制御)
地上子式 
線路上に置かれた「地上子」を用いて、電気的に点で列車へ情報を送る方式。(点制御)
軌道回路式 
レールに流した信号電流を用いて、電気的に列車へ情報を送る方式。(連続制御)

実際には、送受信の方式が同じ場合でも地上子やレールに流す信号の周波数や電文(コード)地上子の設置場所などが事業者によって異なるため、さらに細かく分けられている。地上、車上ともに信号の周波数などを含めた方式が一致して初めてATSがシステムとして有効になる。 ATSの持つ「地上から列車にブレーキを動作させる」仕組みを利用したものとして、踏切防護装置、曲線速度制限装置、分岐器速度制限装置が存在する。

[編集] 軌道回路

軌道回路とは左右の線路を電送線とし閉塞区間先端から入り口に向け信号電流を送り車軸が左右を短絡することで、閉塞入り口には信号電流が届かなくなって在線を検知して停止信号となり、一方車軸での短絡で1巻きのコイルを構成してこれを車上コイルで拾って地上から車上に情報を流す方式をいう。 連続制御可能であり、信号現示の変化に対しての追従性が良い。ATS-B、1号型ATSC-ATS、阪急ATS、ATCなどで使われている。

軌道回路に流す信号電流の種類により商用周波数軌道回路、分倍周軌道回路、AF軌道回路[2]、と分けられる。 列車在線検出のための信号電流と、信号現示を列車に伝えるための信号電流があり、ATS-Bや新幹線ATCでは両者が兼用されているが、後日ATSを拡張設置した場合などは別の信号電流として重畳するものもある。

[編集] 地上子

情報を受け渡すための地上装置一般。動作原理により変周式、トランスポンダ式、等があり、これを基準に制御する場合が「点制御」となる。但し「点制御」で受信した速度制限値などのデータを記憶して参照する場合には点制御でも「連続照査」「連続参照」となり、「点照査」とは異なる。

[編集] 変周式(単変周・多変周)地上子

変周式とは、車上の結合帰還型発振回路の車上子(送信コイルと受信コイル)に地上の共振コイル(=変周地上子)が電磁結合して発振周波数を引き上げ、この周波数をフィルターで検出して地上情報を得る方式を指す。制御情報は地上子の共振周波数に割り当てて居り、その本質的動作は「共振周波数方式」であるから、「変周式」というのはその検出方法である。最近JR西日本が開発したATS車上装置はATS-P3とATS-SW2を同一筐体に収納したが、このATS-SW2での共振周波数検出方式を「脱変周式」と呼んで、スペクトラム拡散方式(FFT方式:高速フーリエ変換方式)を用いている。

国鉄のATS-Sでは、車上の発振周波数を105kHz、停止信号時のロング地上子共振周波数を130kHzとして、不動作時は地上子コイルをリレー接点で短絡して共振点を無くして停止信号を伝えた。これは1情報1共振周波数方式だったから、これを特に「単変周」と呼んだが、現在では車上からの地上子良否検査を可能にするためコンデンサーを介して短絡して不動作時の共振周波数を103kHzとして、さらにこれを強制振り子制御の位置マーカにしたから電気的に見れば純粋な単変周地上子は無くなった。ATS-Sx、ATS-Ps地上子はそうした有効-無効(取消:103kHz)2値型の単変周地上子である。 多変周は地上子に複数の共振周波数を割り当てるもので、これに信号現示とその制限速度を割り当てたり、設置位置と併せ限界速度パターン発生に使用する。

京王、小田急、東武などの信号ATSがこの多変周方式で、東武ATS(TSP)は周波数の一部をパターン発生地上子に割り当てている(信号ATSとは別に過速度・過走防止ATSがある)。

最近の分類では意味の薄れた「多変周-単変周」を避け「多情報-(単情報)」と整理されている。またATSシステムとしては多数の変周周波数を使用しても、単機能地上子として1周波数ということもある。

[編集] トランスポンダ式地上子

トランスポンダ(地上子)とは、鉄道ではデジタル情報送受地上子のことで、送信機能のみのものも含めて呼んでいる。

ATS-Pで知られる様になったが、それ以前にも新幹線には多数使われている。

元々は送受機能を備える「応答装置」で、問い合わせに対して応答するもの、もしくは中継器を指している。

[編集] 速度照査

列車の速度を計測し、その速度が許容された速度の範囲内であるか否かを照合する。これを速度照査(そくどしょうさ)という。速度照査の方法やその制御もいくつかに分類できる。

[編集] 点照査・連続照査・パターン照査

速度照査には、ある地点でだけ照査する「点照査」と、連続して照査し続ける「連続照査」があり、更に従前一定値だった照査速度を基準位置に対する列車の位置毎にリアルタイムで算出・照合する「パターン照査」がある。連続制御ではない点制御方式であっても速度制限コマンドを記憶して照査を続けることも「連続照査」方式という。

[編集] 地上時素式過速度・過走防止装置

京王線高尾山口駅構内に設置されている過走防止用の地上子
車止めに向かって複数設置されている。線路横の数字は非常ブレーキが作動する速度上限である。

列車検出コイルで地上タイマーを起動して一定時間停止地上子を有効にし、この間に列車が停止地上子に到達すると非常停止(ATS-SN)や警報(ATS-S警報)する(点照査型)方式。

時素式という照査の原理上絶対停止(0km/h(=時間差∞))を設定できないため、終点の駅などでは過走防止装置として狭い間隔で多数の地上子を配置することに加え、末尾に絶対停止地上子を置いて過走を抑えていることが多い。地上装置に電源が必要なため原則的に分岐器過速防止・警報装置として駅構内にのみ設置されていたが、2005年の曲線速照義務化通達で曲線にも利用されるようになった。

他の方式と併用して、低速で使用する例に京王電鉄小田急電鉄がある。

京王電鉄の過走防止装置は時素0.5秒の速照地上子対を3~4対設置する方式の他に、1秒時素で15地上子を並べて地上タイマー起動コイルと停止コイルを兼用させて次々切り替える方式のものが行き止まり式の終端駅である、新宿駅・渋谷駅・高尾山口駅に設置されており、ほぼ同等のものが小田急線新宿駅にも設置されている。

[編集] 車上時素式過速度・過走防止装置

[編集] 単変周点制御式(点照査型)

2基一対の地上子を車上子が通過する時間を計って速度を照査する方式。 変周式の場合、地上電源が要らないので地上子を置くだけで動作でき、任意の地点に設置できる。ATS-Sの改良に際しJR東海がATS-STとして独自に開発しJR東海以西のJR各社に採用された。

私鉄ATSでは速度照査が義務付けられているのでATS-Sxとは違いこの過走防止装置で高速突入事故は起こらないが、過走に対する絶対停止機能は義務づけがない。その結果、名鉄新岐阜事故などの低速突入事故が繰り返されている。そのため終端駅などへの進入の際には、車止めへの衝突防止などのために用心深さが特に要求される。

採用例 名古屋鉄道南海電気鉄道京阪電気鉄道筑豊電気鉄道静岡鉄道遠州鉄道豊橋鉄道渥美線

[編集] 黎明期のATS

ATSが導入される前は、「車内警報装置」(車警)という自動列車保安装置が使用されていた。この装置は文字通り「警報」を発生させるのみであり、自動的に列車を停止させる機能はなかった。

[編集] 打子式ATS

国鉄・JRでは実用として使用された事はないが、打子式ATSが1927年東京地下鉄道(現:東京地下鉄銀座線)の開業時に採用された。実用的なATSとしては日本で最初に採用されたATSである。帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄丸ノ内線大阪市交通局大阪市営地下鉄御堂筋線四ツ橋線中央線)・名古屋市交通局名古屋市営地下鉄東山線でも採用されていた。

線路上に設置されたトリップアーム(打子)を地上子、車両床下に設置されたエアコックを車上子として用いる。 重複式が特徴で、2個の信号機が連続して停止現示を示し、その間のアームが立ち上がり、その状態で列車が通過するとアームがエアコックに当たる。エアコックはブレーキ管に接続されており、これが開かれるため非常ブレーキがかかり2個目の停止信号手前で停止する仕組みである。

なお、停止信号現示以外にも警戒信号現示でもトリップアームが立ち上がる路線もあった。その場合、警戒現示が続いていても、列車が手前のある地点を通過してから一定時間後にトリップアームが下がるように設定されていた。つまり、列車が警戒信号に従って徐行していれば、トリップアームはすでに下がっていて、そのまま通過できる。トリップアームが下がる前に進入すれば速度超過と判定されて非常ブレーキがかかる。簡潔な方法ながら確実な速度照査を行なっていた。

原始的な方法であるため列車密度の限界はあるが、単純な構造のため信頼性が高く、大阪市営地下鉄各線では1970年代頃には早々と使われなくなったが、営団地下鉄(当時)銀座線・丸の内線では1990年代まで、名古屋市営地下鉄東山線では2000年に入ってからも使用が続けられていた。しかし、物理的手法の限界から列車の増発による運行の複雑化に対応することができず、銀座線では1993年、丸ノ内線では1998年に使用を終了している。なお、名古屋市営地下鉄東山線が2004年で使用を終了したことにより、日本国内でこの方式を用いたATSは全てATCに置き換えられ消滅している。

[編集] 国鉄・JRのATS

日本国有鉄道JRグループで採用されたATSには、下記のような種類がある。また、これらの路線を引き継いだ第三セクター鉄道についても、多くの場合は同様のATSを使用している。
下述の「私鉄のATS」に比べ膨大なローカル線を抱えた旧国鉄・JRに対する政策的配慮から安全面で劣る状況が認められていた。

なお、かつてはA形という形式があったが、これは(車警以来の設備の老朽化により)1970年頃までに廃止されてS形に置き換えられている(使用実績が乏しいため、ここでは説明を省略する)。

[編集] B形(軌道電流形)・S形(地上子形)

ATS車上表示機

いずれの方式も、ATS設置以前に使われていた車内警報装置に、5秒以内に確認操作をしなければ非常ブレーキがかかる機能を追加したものが元となっている。

B形は主に国電区間で用いられた方式で、2本の線路の間に流された軌道電流を用いる。B形は、(通常は流れ続けている)軌道電流が一定時秒停電することにより、「停止信号接近」の情報が地上から車上へ伝達される。

S形は国電区間以外の線区で用いられた方式で、線路の線間に設置された「地上子」と、車両に設置された「車上子」の組み合わせによって構成されている。S形は「変周式」であり、車上の発振周波数が(車上子コイルを通じて)地上子の共振周波数に引き上げられることにより、「停止信号接近」の情報が地上から車上へ伝達される。国鉄が試験を行っていたC形の改良型だが機能の面での違いは無く、真空管を使った回路からトランジスタを使った回路に改良されている。

S形の場合、地上信号の停止現示に対応するロング地上子(130kHz)を通過すると運転台において警告音(ベル)が鳴り、そこで運転士が5秒以内にブレーキをかけて(重なり位置にして)、確認ボタンを押すとチャイム(いわゆる「キンコン音」、一部の車両は電子音のタイプもある)に変わる(実際にはチャイム音はベル音とともに鳴り始める)。

B形の場合は、上記の「ロング地上子を通過」を「軌道電流停電を検知」と読み替えるのみで、あとはS形と同じである。

この確認作業をしない場合、列車は自動的に非常ブレーキがかかる。しかし、私鉄に出した運輸省通達では必須とされた速度照査機能がなく、いったん確認作業をしてしまうと、それ以降は停止信号を通過しても非常ブレーキがかからないという欠点がある。実際、ATS確認作業後の運転扱い誤りが原因の重大事故が幾度も発生し、国鉄は何度かの改良を加えたが、根本的な改良はATS-Pまで持ち越すこととなった。

2009年現在では、B形の区間は全てP形に換装され、S形の区間はP形を追設、あるいは即時停止地上子(123kHz)や時素式速度照査地上子対(108.5kHz)による非常制動を付加したSx形などに改善された。(旧来のS形をそのまま含んでSx形を構成している)

[編集] ATS-S改良形(ATS-Sx形)

警報機能のみのS形に、全JRが即時停止機能を追加し、更にJR東海以西の各社とJR貨物で時素式速度照査の機能を追加した方式。

即時停止機能は、確認ボタンを押して警報を解除しても、停止現示の絶対信号機直下の地上子を通過(信号冒進)すると即座に非常ブレーキをかける機能である。車上時素式速度照査機能は、地上子対通過時間を車上タイマーと比較して速度照査し、速度超過時には非常ブレーキをかける機能である。即時停止地上子と列車検出地上子、地上タイマーを組み合わせた地上時素式速度照査装置もある。

ATS-S改良形はJR各社で呼び名が異なり受信機が異なるものもあるが、動作周波数は共通で互換性がある。東日本旅客鉄道(JR東日本)はSN北海道旅客鉄道(JR北海道)はSN東海旅客鉄道(JR東海)はST西日本旅客鉄道(JR西日本)はSW(車体表記はS)、四国旅客鉄道(JR四国)はSS(一部車体表記はSS)、九州旅客鉄道(JR九州)はSK日本貨物鉄道(JR貨物)はSFと呼ばれている。

SN形・SN形には即時停止機能のみが追加されているが、ST形にはSNの即時停止機能に加え時素式速度照査機能と列車番号送出機能が追加されている。また、SW形ではST形から列車番号送出機能を省略して車上装置を設計し直したもので、このSW形がほぼそのままSK形、SS形となった。SF形は当初はSN型機能だったが後日車上に時素速照ボードを追加してST形に対応した。

JR東日本車のうち、JR東海管内へ直通運転をする運用を持つ車両には、ST形と同等の車上時素式速度照査機能を持つATS(SNと表記)を搭載している。

JR東日本管内に直通運転をしている伊豆急行の車両にはSiの表記があるが、呼び名が異なるだけでSN形と同じものである。ただし、伊豆急線内では地上装置として速度照査機構を設置しており、信号の現示速度を守っていればロング地上子による警報ベルは鳴動しないようになっている。

それと同様に、かつてJR西日本管内からの直通運転があり、現在でもキヤ141系などJR西日本所属の検査車両などが入線する富山地方鉄道の鉄道線では、JR西日本と同じくSW形を採用している。JR東海との関係が深い愛知環状鉄道線東海交通事業城北線名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線(あおなみ線)では、JR東海と同じST形を採用している。また、JR貨物との関係が深い水島臨海鉄道では、ATS-SFとほぼ同形(確認扱い運転がないタイプ)のATS-SMを採用している。JR線からの直通運転を行わない第三セクター鉄道でもS形からSx形に更新する事業者が増えている。

なお現状では、改良機能に対応した地上子(即時停止地上子・時素式速度照査地上子)は原則として、絶対信号(場内・出発信号)・線路終端部・分岐部・急曲線部のみに設置する拠点設置であり、閉塞信号には設置されていない。ただし例外として、JR東海の一部駅・あおなみ線の全駅の場内相当閉塞信号には、即時停止地上子が設置されている。愛知環状鉄道線では全ての閉塞信号にも時素式速度照査地上子が設置され、全ての信号でロング地上子をなくしている。


[編集] ATS-P形(デジタル伝送パターン形)

ATS-Pは、山陽本線西明石でのブルートレイン速度超過による西明石駅列車脱線事故を受けて「H-ATS」として開発された方式。

[編集] システム概要

停止信号・速度制限の位置、勾配、距離等の情報を地上装置・地上子から列車へ伝送し、列車ではその情報に基づき、自車の制動性能と走行距離から刻々の上限速度すなわちパターン(パターン:その列車が制動開始から停止・減速するまでの速度変化を表す曲線)を作成し、その上限速度値を用いて速度照査を行う。

停止信号を基準位置として車上で刻々算出した制限速度値(パターンと呼ぶ)と比較して、そこまでに徐々に減速できるため冒進は起こらず、安全のための余裕距離もほとんど不要な優れた方式である。停止信号に対する制限と、4種の速度制限を設定でき、それらのうちの最低値で速度照査を行う。ATS-S・ATS-Bと異なり、警報ベル音がなったあとに行なう確認扱い動作は必要としない。

速度照査はATS-S改良型のような点照査ではなく、安全のための無駄がほとんど要らず列車の制動性能が正常ならば停止信号冒進は発生しないため、車間を詰めながら非常に安全性の高い方式である。

ATS-Pが優れている理由は、上述の通り車上演算パターン型照査方式採用により冒進がなく輸送容量が増えることで、これは巷間広まっている様なトランスポンダ使用のデジタル方式採用に拠るものではない。変周型ATS-Sx上位互換でパターン照査を導入したATS-Ps型はデジタル方式ではないが同じ点で優れている。

反面、降雪時など想定制動性能を保証できない環境下では、安全のための余裕距離がない分、適切な位置までに停止・減速できない恐れがあり、現に特急「はるか」において琵琶湖線で降雪下に280mの冒進事故が発生しており、増圧改造や減速運転、早期制動など適切な対処が特に求められる。

地上子から情報を受信した列車は、停止現示の信号機やカーブなどの速度制限までの距離に応じて、パターンを作成・記憶する。実際の速度がパターン速度を超える恐れがある場合は、運転台のATS-P動作表示灯にて「パターン接近警告」を表示する。

パターン速度を超えると、直通ブレーキ系車両では常用最大制動にて信号機やカーブの手前で列車を減速または停止させる(常用制動は緩解時間が短いので、動作しても遅延が発生しにくい)。自動ブレーキ車では非常制動にて停止する。

信号関係の「保安コード(電文)」はJR各社共通で協議決定すると定められているため、JR各社間で互換性がある。

JR東日本とJR西日本で異なるコードとなっているのは「列番情報(JR東日本)」「列車選別情報(JR西日本)」「速度制限を許容不足カント量(110mm=振り子式、70mm=高速、60mm=普通、50mm=機関車列車)毎に加算するコード領域(JR西日本)」「架線電圧切替、交直切替(JR東日本)」などである。

ちなみに、「速度制限を許容不足カント量ごとに加算するコード領域」については一部の曲線に導入されていたが、1990年頃の導入以来2005年までにわたり、設定値の約2/3に誤設定があり、多くは間違って共通(=JR東日本)方式で設定していたことが尼崎事故調査委員会の指摘により判明した。共通方式設定なら制限速度がJR東日本同様に最低車種になるだけで危険はなかったが、設定作業部局がJR西日本方式として機能拡張されていたことを知らなかったことは重大で、発表時には誤設定の多数が「共通方式設定」だったとは解明されなかったし、適用ミスで35km/h超過といった危ないミスもあって、全国の鉄道事業者に設定値の点検を求めるなど大問題になった。

蒸気機関車D51形のATS-P形・Ps形車上表示機 (2007年3月15日撮影)

なお、このコード領域については、2005年のJR福知山線脱線事故を受けての曲線速度照査義務化に伴い、JR東日本にも採用されることとなった。

以上の位置基準型の車上演算型速度照査方式、いわゆるパターン型速度照査が(停止信号)冒進のない安全なATSとしてJR東日本を中心にATS-Pとして普及し、これが安全度を落とさずに列車間隔を詰め線路容量を増やすことに成功した優れた実績で、その照査方式が自動列車制御装置(ATC)にも取り入れられDS-ATC/D-ATC/KS-ATC=ATC-NS等で採用されて線路容量を増やし、総武快速線-横須賀線東京トンネルや埼京線池袋-新宿間など、在来線のATC区間をATS-Pに換装した例も現れている。

なお、JR東日本が保有する「D51 498」には、蒸気機関車としては唯一ATS-P型が追設されている。

[編集] 開発当初の経歴

H-ATSは1986年末に、西明石・大阪京都草津の4駅に地上設備が設置され、寝台特急牽引用のEF66形電気機関車16両に車上設備が搭載されて拠点PとしてATS-Sと併用する形で運用が始まった。

「ATS-P」という名称は当初、関西本線で試験が行われていたパターン機能付きATS(変周式)に対して用いられており、これに対しH-ATSは「ATS-P'」とも呼ばれていた。変周式ATS-Pは実用化されずに廃止され、H-ATSが「ATS-P」と名称変更された。

名称変更後に初めて設置されたのは、1988年末に新規開業した京葉線の1型ATS-Pであり、「全面P」として、全ての信号機に対して設置された。

[編集] エンコーダ方式 ATS-P 地上装置

情報伝達は従来方式のように地上→車上の一方向ではなく、デジタル信号で地上←→車上の双方向に伝達・応答をするトランスポンダ式で開発された。2型~4N型と統合型地上装置ではそれを利用して現示アップ機能を設けたので減速性能の良い列車は、その情報を車上→地上へ伝達する事により信号現示を上げる事ができ、その結果運転間隔をさらに短縮する事ができた(H-ATS、1型、PN型地上装置では現示アップ機能は不使用)。

285系「サンライズエクスプレス」はJR東日本の区間とJR東海の区間とJR西日本の区間にまたがって運転されているが、車上子の設置位置がJR東海車は運転室直下であるのに対して、JR西日本車は中央だったため、入線試験時に停止定位の出発信号でパターンに当たることがあった。営業運転に際しては車上子を運転室直下に移設して東西双方の ATS-P 区間でトラブルが起こらないように対策した。営業運転にともない以下のように運転することとなった。

  • JR東日本管内(東京駅 - 熱海駅)- ATS-Pを使用(手動の切替スイッチを「P」位置に設定=P/S自動切替)
  • JR東海・西日本・四国管内(熱海以西)- ATS-ST/SWを使用して運転(切替スイッチを「S」位置=P/S併用:拠点Pモード)

取り扱いに関しては下り列車はJR東海の乗り継ぎ乗務員が、上り列車についてはJR東日本の乗り継ぎ乗務員がATS切り替えスイッチにて手動で切り替えることになっている。これは拠点P(=Sw扱い)の福知山線と全面Pの東西線直通列車が尼崎駅で行うP/S切替操作と同じである。

後述しているが、JR東海が2010年度より ATS-PT を導入するため今後はこの方式がどう変化するかについては現在のところ未定である。近年は団体輸送などでも同様の事象があるため米原以西を直通運転する列車についてはサンライズ同様の取り扱いをすることとなっている。

なおJR東日本と東海を跨ぐその他の定期列車については丹那トンネルの東京寄りにATSの切り替え地上子があり、そこで自動的に切り替わるようになっており、下り列車の場合はS型のチャイムが鳴動し、運転士が手動にてチャイムを止める。逆に上り列車の場合はP型のチン・ベルが鳴動するが特段することは無くそのまま走行する(ATS-P/Sx自動切替は総武線成東駅先や外房線上総一ノ宮先、内房線君津先、伊豆急行線伊東駅構内などで常時見られる。)JR東日本では「拠点P」方式を導入していないため、P/S手動切替は無用だが、切替を間違えてもそれぞれが動作し危険な状態にはならない。

[編集] エンコーダ方式地上装置設置区間(1型~4N型、統合型)

SN形などの変周式とは互換性がないため、P形が搭載されていない列車が入線する可能性がある線区では、ATS-S改良形(=Sx)を併用している。関西空港線(りんくうタウン駅-関西空港駅間)は南海電気鉄道との共用区間であるため、南海ATSを併用している。また、相模鉄道においても ATS-P の設置が計画されており、一部の区間で地上機器の設置が始められている。

[編集] ATS-PN(無電源地上子方式ATS-P)地上装置

比較的列車密度の低い線区に導入されているATS-P形の地上装置。地上設備費用を低減するためエンコーダを使わずに無電源地上子の現示によるリレー切替としたもので、それにより車上→地上への情報伝達機能が省略されたものである。

当初無電源地上子は1コマンドだったが、これを最大5現示対応に拡張して「電文」=コードを複数持たせている。Sx地上子と同様に現示条件だけで制御できるので非常に安価に設置でき、2001年初頭に首都圏周辺部の現示アップ機能の必要ない線区約600kmに導入されている。

省略されて存在しない機能は、エンコーダ(EC)間通信、車上列番受信、光電送、現示アップ、踏切定時間機能。車上装置はすべて共通である。

[編集] 設置区間

川越線武蔵野線中央東線成田線外房線内房線八高線五日市線相模線鶴見線上越線等。

[編集] ATS-PT形(JR東海ATS-P)

JR東海がATS-STの取り替えにより、2010年度から導入する予定の方式。過去、JR東海ではS型の危険性について議論されてきたが、折からの不景気による利益の低下や新幹線の耐震補強などがありまた、ST型でも40km/h以上減速個所の曲線8個所に過速度防止装置速度照査を追加して投入して、注意現示速度は運転士が必ず守ることを前提にそれ以下の速度のみ有効な過走防止装置を設置してATS-Pは設置しなかった。

ただ、JR東海はこのような状況の反面、P型への切り替え工事が数百億円ともいわれ(車両用の設置だけでも1,000万円するともいわれる)投入に見合うだけの輸送量でもないとの「判断」からS型の改良のみになったとも言われている[要出典]

基本的構造はJR他社で導入されているATS-Pと同様のシステムを踏襲しているが、最大の違いは現在のP型がパターン制御により自動空気ブレーキ方式以外(電磁直通、電気指令)の車両では応答の早い常用ブレーキを使い曲線など速度制限では自動減速だけでなく自動緩解できるのに対して、PT型の車上装置では自動空気ブレーキ式ではない車両でも常用ブレーキ制御は省略して即座に非常停止としたのが違いであるが、これは自動空気ブレーキ方式である従前の機関車、ディーゼルカー用ATS-Pと同機能である。

基本構造は先述のとおり他のP型と同様のため既に東京地区乗り入れのためATS-Pを搭載している373系はその常用制動制御機能をそのまま使用する。一方、従来からST区間のみを走行していた車両は順次P設置工事を受けているが、車両によって若干異なるので概略のみを説明する。

  • 211系および311系
運転台右側に設置される。一部の編成は既に設置工事を終了しPT使用停止状態で運行中。
変更点は次のようになる
  1. 速度計上部にP電源のランプおよびEB表示灯が搭載される。
  2. 助士側(運転台進行方向右側)にPT装置が搭載される。
  • 313系(第1次・2次製造車両)および383系
313系は、いわゆる0・300・1000・1500・3000・8000番台である。
設計上既にATS-Pの準備工事はされているので、残りは機器の取り付けのみである。
また、現在各種機器表示灯は事故・ATS-ST・EBの1段であるが、順次2段式となる。
  • 313系(第3次製造車両)
いわゆる1100・1600・1700・2000・3100・5000番台である。
こちらは既にPT投入を前提に作られているため、車上装置の取り付け工事のみで運転台における変更点は無い。
  • 373系
既に東京地区乗り入れのため全編成がATS-Pを搭載しているためこれに伴う工事は行われない。なお、本稿とは関係の無いことではあるが、東京地区のデジタル無線化に伴い一部の編成(F5 - 14)が今後順次デジタル無線対応工事を受けることになる。
抵抗器とともに設置されているが[要出典]、今のところ小田急より御殿場線乗り入れは発表されていない。
  • キハ85系
  • キハ75形
  • その他の気動車

[編集] 設置予定区間

[編集] ATS-PF形(貨物用ATS-P車上装置)

JR貨物の機関車にはATS-PF形車上装置が搭載されているものがありPFと表記されている。ATS-Pコードが貨物の速度制限に対応しておらず、更に貨物のブレーキは強める一方のブレーキ操作しか出来ないものも多くあって減速特性が異なるので車上装置を旅客と共用出来ないことが分かったため貨物用のATS-P車上装置を開発したものである。同じ制動特性なら本来は電車、気動車、列車の様に空走時間や制動定数、車上子取り付け位置を車上装置に設定して使う。

[編集] D-ATS-P(デジタルATS-P)形

小田急電鉄の各路線で導入が進められているATS。

[編集] 拠点P

ATS-P地上装置を、絶対信号機付近や、一部の踏切、分岐器の箇所に拠点設置する方法。JR西日本で採用されている。

絶対信号(場内・出発信号)や、ホームに近い踏切(停車列車が行き過ぎる恐れがある時の踏切防護)、分岐器付近にATS-P地上子を設置し、閉塞信号には設置しない(現示アップ動作が欲しい駅入口(場内信号)手前等、一部の閉塞信号には設置する)方式。

この方式を採用した区間では、全ての信号に対してATS-SW地上子が設置してあるため、Sx形のみを搭載した列車も拠点P区間へ入線可能(ATS-SWが機能)である。また、ATS-Pを設置した列車も、ATS-SxとATS-Pを同時に作動させて運転する(扱いは「ATS-S」となる)。

この方式を採用した区間では、(ATS-P地上子の設置されていない)閉塞信号は最高速度のまま冒進可能という危険性は変わらないが、列車間隔の詰まる駅周辺では、ATS-P自体の位置基準速度照査方式(パターン方式)と現示アップ動作により列車間隔を詰められるので線区全体としての線路容量を増やすことができる。

閉塞信号区間内での曲線に対する速度照査はATS-SW車上時素速照で可能だが、JR福知山線脱線事故現場の様な車間を詰めたい路線ではATS-P速度照査地上子も設置されている。

なお、ATS-P2、ATS-P3はJR西日本の設計した車上装置の形式であり、拠点Pを示すものではない。

[編集] 設置区間

[編集] ATS-Ps形(変周地上子組合せパターン型)

ATS-Ps表示機
上から順に、パターン未生成時(走行中)、パターン生成時(走行中)、パターン生成時(停車中)
ATS-Ps地上子 機能によっては複数個を1組として設置する。

SN形・Sx形(ST・SW・SF形等)にパターン発生機能を追加し、P形に近い機能を持たせたものでSx型の上位互換であり相互乗り入れ可能である。構造・機能で分類すれば車上演算照査機能(パターン照査)が加わったSx型である。

列車がパターン速度を超過すると、非常制動をかけて信号機の手前で列車を停止させる。カーブなどの速度制限でも速度照査を行うことが可能であるが、P形では所定の速度まで落ちるとブレーキが自動緩解するのに対し、Ps形は非常制動がかかり、停車した後に手動でブレーキを開放させるようになっている。また、Sx形の速度照査機能もそのまま使用できる。第1パターンにより最高速度での進入から防御していることが特徴で、Y現示速度以下しか対応しないATS-ST/-Sx系過走防止装置とは際だった違いになっている。

Ps形はSN形・Sx形と同じく変周式のため、Ps形のパターン生成は、地上子の共振周波数・設置間隔の組み合わせにより行う。 Ps形はSN形・Sx形と上位互換性が確保されているため、SN形・Sx形を搭載した車両はPs設置区間へ入線可能であり、Ps形を搭載した車両はSN・Sx設置区間に入線可能となっている。

運転席に設置の動作モニタはP形のものとは異なり、現在の速度とパターン速度が表示できるよう改良されている(これらの速度は、2色のカラーバーLEDにより表示。P型でもモニタが信号を得てATS-Pコマンドを表示するものがある)

地上子を規定通り設置すると、SN形・Sx形を搭載した車両は即時停止地上子に反応し、停止信号時に通過すると非常制動がかかる。更にSx形を搭載した車両は、信号機390m(平坦地)手前の第2パターン発生地上子(=時素式速度照査地上子)にも反応し、Y現示速度超過時には非常制動がかかる。

[編集] 設置区間

仙台地区で設置が始まり、新潟・秋田地区においても導入が進んでいる。運用されている区間は以下の通り。

※このほか、楯山駅 - 陸前白沢駅間では曲線に対する速度制限のみが設置されている。
蒸気機関車C57形のATS-Ps表示機 2007年4月28日

なお、仙台・新潟地区において、設置当初は絶対信号(場内・出発信号)に対してのみPs形地上子が設置されており、閉そく信号に対しては設置されていない。曲線に対する速度照査は、仙山線において先行して速度照査が行われていたが、他の路線においても速度照査が行われている。

今後の予定として、東北・信越地区の主要駅(23駅)への導入が発表されているが、一定距離の区間へ連続的に設置するのではなく、中心駅の出入口へのピンポイント的な設置にとどまる。

当該地区における車両はもちろんのこと、この他にも関東の一部の車両(ジョイフルトレインなど)にもPs形が設置されている。また、2006年12月より、JR東日本高崎車両センターに在籍し、P形を装備している蒸気機関車D51 498にも追加装備がなされた。さらに2007年4月に大宮総合車両センターを全検出場した蒸気機関車C57 180も、新潟県内在籍のため追加装備がされた。同機は早速、「SLばんえつ物語」営業運転開始の同月28日から新潟駅 - 新津駅間でPs型の使用を開始している。

[編集] 私鉄のATS

大手私鉄各社で採用されているATSには、1967年1月運輸省(現・国土交通省通達[3]により「速度照査機能」の付加と「常時自動投入」が義務づけられたが、詳細な仕様は各社の裁量に任されたため多くの種類が存在する。

設置が義務付けられた速度照査機能は、最終的な冒進速度照査を20km/h以下としているため、確認扱いさえすれば最高速度(ATS-Sx区間の運転最高速度は130km/h)で冒進可能な国鉄・JRのATS-B、ATS-S、後の改良型ATS-Sxと比較して、衝突事故に対する安全性が高い。運輸省通達ATS設置後の区間においては、運転士の停止信号見落としを原因とする重大事故が発生していない。

地方私鉄においては、JRや大手私鉄と同一・類似方式のATSが採用されている事が多い。また、独自のパターン照査を導入した例もある。しかしながら、通達の基準に該当しない中小事業者ではATS整備が遅れた所も多く、ATS未整備の路線において停止信号冒進による衝突事故が何度か発生している。2001年の京福電気鉄道(現:えちぜん鉄道)の正面衝突事故を契機に国土交通省から中小事業者に対しATSの整備を指示、補助金が支給されたことにより、未設置路線へのATS設置が促進された。

1967年運輸省通達は当時の国鉄には適用されず、JR発足の前日である1987年3月31日付けで廃止されたため、JR各社に適用されることはなかった。一方、鉄道に関する技術上の基準を定める省令[4]2002年3月31日から施行され、ATS設置の判断が従来の認可制から届出制に変わった。また、2006年3月の技術基準改定で曲線、分岐器、線路終端等の線路の条件に応じた速度照査機能が必須となったため、安全性の向上と現行ダイヤの維持を目的としたATSの改良やATC化を発表した私鉄もある。

[編集] 変周式(単変周・多変周)地上子

国鉄のATS-S型に近いが、地上子を2つ並べて、その2つの地上子を通過する時間によって速照する方式である。国鉄のATS-Sの改良型に似ている。地上子の間隔により照査速度を任意に設定可能。

[編集] 名古屋鉄道式自動列車停止装置

名古屋鉄道で使用されている変周式の車上タイマー方式の自動列車停止装置である。名鉄式ATS・M式ATSと略す場合が多い。

1965年須ヶ口駅-鳴海駅間に設置されたのを皮切りに1968年までに鉄道線全線(軌道法適用区間である豊川線を含む)で設置を完了した。

地上子は共振周波数130kHzでATS-Sロング地上子と同じだが、2基1対の速度照査を構成して冒進速度を20km/h以下~5km/hに押さえており、Sxなど他の多くの変周式地上子とは異なり進行方向に向かって右側に設置されているため豊橋駅-平井信号場のJRと共用区間にもSxと共に設置されている。

グループの豊橋鉄道渥美線も1500V昇圧後の1997年に同型のATSを採用した。

[編集] 京阪型速度照査ATS

京阪電気鉄道で使用されている自動列車停止装置の一種である。前述の名古屋鉄道方式とは速度照査等の基本的な構造はほぼ同一であるものの、速度制限等の取り扱い方法は異なる。

京阪電車の信号による速度制限は、絶対停止0km/h・警戒25km/h・注意45km/h・減速65km/h、進行の5種類である。警戒・注意・減速の現示による速度制限を5km/h上回ると直ちにATSによる非常ブレーキがかかり、完全停止するまで復旧できない。 同社は、JR福知山線事故後、枚方公園・淀~中書島・深草・鳥羽街道~東福寺に存在する急カーブに速度照査ATSを直ちに設置した。 これらの急カーブの曲線通過速度は直前の走行速度に比べ25~40km/hの差がある。 カーブにおける速度照査の方法はパターン照査の原理に似ている。例えば、制限速度60km/hカーブに対し、制限開始地点200m手前で100km/h以上であれば直ちに非常ブレーキ、150m手前で90km/h以上であれば非常ブレーキ、100mで…、50mで…というように順を追って速度照査と非常ブレーキ管理をしており、制限開始地点までに「絶対減速」を試みている。オレンジのカバーがかけられているATS地上子がこれに該当する。

[編集] 多変周式信号ATS(多変周式(点制御、連続照査型))

地上子で車両側が信号を受信・記憶し、その信号に合わせた一定の速度で連続的に照査する。信号機の現示アップ等で照査速度が上がっても、次の地上子を通過して信号を受信するまでは照査を続けるか、確認ボタンを押して照査を解除する。確認ボタンが不可な会社・路線では、例えば、警戒信号の速度制限を受けた場合、現示アップしているのにもかかわらず、長時間の低速を余儀なくされることから、タイミングによっては列車の遅延につながるという欠点がある。

採用例 近畿日本鉄道(順次パターン式へ切り替え中)・京王電鉄(ATC切り換えで将来的には廃止予定)・小田急電鉄(OM-ATS。デジタルATS-Pに切り替え予定。試験中)・三岐鉄道北勢線)・西日本鉄道

近鉄には終点用や速度超過防止用のATSもあり、これらも多変周式である。 西鉄の地上子は永久磁石とコイルを設置したもので、コイルが無信号の状態でも照査が行われる。点制御では地上子に異常があれば何もおきないフェイルアウトになっているものがほとんどであり、無信号状態でフェイルセーフになっているのは珍しい。

[編集] 東武鉄道TSP式(多変周式・パターン照査型)

多変周・点制御式ATSだが、速度照査を他の方式のように信号現示に応じて階段的に行うのではなく、車上装置で発生する2段階のパターンを用いて連続的に行う、東武鉄道独自のATS。JRのATS-Pと異なる点は、トランズポンダのように停止信号までの距離を伝送して1段階の減速パターンを発生するのではなく、信号機の現示に応じて2段階のパターン(電車の場合60km/hまで減速、15km/hまで減速の2パターン)を用いて速度照査を行う点。東武鉄道や後述の西武鉄道においてパターン式を必要としていたのは、導入当時電車列車に比べて制動性能の劣る貨物列車が多数設定されていたことに対応するため。

採用例 東武鉄道。かつての都営地下鉄三田線(いずれもT型ATSと称す)。JRのATS-Psは多変周ではなく、単機能変周式地上子を組み合わせたもの。

[編集] AF軌道回路方式(連続照査型)

後に国鉄ATCでも採用されたAF軌道回路を使って連続的に信号を流し、列車側がこの信号を受信して連続的にある一定の速度で(西武及び阪急神戸線はパターンで)照査する。信号の現示がアップした際はすぐにアップした照査速度の信号を受信することができる。ただし、地上子を併用している場合は多変周式と同様次の地上子まで照査を続ける。

採用例 阪神電気鉄道阪急電鉄山陽電気鉄道相模鉄道西武鉄道

このうち西武と阪急(神戸本線のみ)はパターン式ATSとなっている。また西鉄と相鉄は磁石式の地上子と併用している。
また、阪神は運行時に「危険域」・「有コード」でランプ表示している。

[編集] 軌道電流式(半連続照査型・点照査型)

国鉄ATSのB型と同様にレールに常に電流を流し、電流を切ることによって信号を送っている。この電流を切る時間で照査速度を車両側に伝えている。

採用例 東京急行電鉄および1号型ATS(下記)

[編集] 東急型ATS

東京急行電鉄がS42通達にあわせて導入した。信号機直下に軌道に並行したキャンセルループ(添線)を備え、このキャンセルループに軌道電流と逆位相の電流を流すことで擬似的に軌道電流を停止した状態をつくる。車上装置はそのキャンセルループを通過した際に、通過にかかった時間を計測し、規定時間以下であれば速度超過と判断してブレーキを動作させる。速度照査は閉塞区間進入時毎に行われる点照査となる。

軌道線を除く東急のほぼ全線で使用されていたが、後に運転速度が95km/h以上になる路線(東横線田園都市線目黒線)と、大井町線CS-ATCに変更され、現在は多摩川線池上線のみで使用されている。

[編集] 1号型自動列車停止装置(1号型ATS)

京成電鉄北総鉄道芝山鉄道および新京成電鉄で使用されている。また、かつては京浜急行電鉄および東京都交通局都営地下鉄浅草線でも使用されていた。

1960年12月、都営地下鉄1号線(現・浅草線)が京成電鉄押上線との相互乗り入れで開業するに際して採用され、1967年1月の私鉄ATS通達(S42鉄運第11号)で速度照査段を増やす改良をされた方式。打子式ATS以外では日本で最初のATSでもある。ATSに関しては、上記のうち新京成以外の6者の中では、どの事業者の車両がどの事業者の線路を走っても問題なく作動する(新京成の車上装置は「絶対停止」機能があるため、京成線乗り入れ対応車には切替装置が付加されている)。古い規格ながら、保安度としてはATS-Pに準ずる優れたものである。無閉塞運転中も信号電流が無ければ15km/hの速度照査が行われることが他ATSには見られない特徴。ただし、現行のC-ATS兼用の装置と新京成電鉄で採用された車上装置を除き「絶対停止」機能はない。

交流50Hzの軌道電流を常時流しておき、それを0.8秒間遮断する事で45km/h速度照査を、3秒間遮断する事で非常制動停止と15km/h速度照査を車上装置に伝達し、車上装置では、速度超過している場合に自動的にブレーキをかけ、0.8秒断では45km/h減速した時点で緩解し、3秒断では非常制動で停止し、以降15km/hで速度照査する。それ以外の速度で照査する場合には、レールに設置した2箇所1対の検知子(その間隔は照査する速度によって調整する)を列車が通過する時間差が基準以下の場合に速度超過と判定して、上記のように軌道電流を遮断する。検知子は任意の場所に設置できるので、点照査であっても連続照査と同等の機能を有する。しかし、車上装置側では、地上での照査速度が45km/h以上の場合には一律45km/h、45km/h未満の場合には一律非常制動と15km/hの速度照査がかかってしまうので、地上装置で照査した速度に比べて必要以上に減速させてしまうことになる。そのため、下記のC-ATSの導入が進められている。

[編集] デジタルATCの技術を応用したもの

[編集] C-ATS

新京成電鉄(予定)・京成電鉄(一部区間)・北総鉄道(予定)・芝山鉄道(予定)・東京都交通局都営地下鉄浅草線)・京浜急行電鉄及び、静岡鉄道[5]で使用されるATSである。基本仕様が相互直通運転の各社局で共通(Common)であること、1号型ATSと同じく連続(Continuous)制御式速度制御(Control)であることから、頭文字をCとしている。[6] 軌道回路からデジタル伝送(MSK変調を使用)を用いて1号型ATSより詳細な情報(5km/h単位の速度照査、社局識別コード、上下線識別情報、勾配など)を伝達でき、パターン信号を軌道に設置した短小添線から送る機能も持つ。従来の1号型ATSと異なり、信号の遮断時間による情報伝送ではないため、無信号の場合は即座に非常ブレーキが動作することで、絶対停止機能を追加した。車上装置については、地上側からの信号で1号型ATSとC-ATSを自動的に切り替え可能なものに更新済みである(新京成車の一部を除く)。

注意・減速等の信号現示に対する制御は、信号機を通過した時点から現示に応じた速度照査を連続で行い(緑色の数字表示)超過時は常用ブレーキで照査速度まで減速させる。(京急では、注意信号手前の車両検知子(YB点)の一部で、68Km/hの速度照査を行う)停止現示に対しては、信号機手前のパターン信号発生点(B点)に設置された車両検知子が車両を検知した時点から絶対停止パターンによる照査を行い(地上からパターン制御信号を送信、橙色の数字表示)パターンを超過した場合は非常ブレーキで停車させる。閉塞信号の停止現示の場合は、停止してから1分経過すると車上で自動的に15km/h照査に切り替わり、無閉塞運転が可能になる。[7]なお、信号現示が変化すると地上から新しい情報が送信され、上位現示の場合は確認スイッチを操作する必要がない。また出発信号の停止現示では、絶対停止パターンの照査範囲内で停止すると自動的に7.5km照査(誤出発防護機能)に切り替わる。このほか、曲線における制御は、カーブ手前にパターン信号発生点(CB点)を新たに設け、パターン制御信号を送信する。発生点通過後は速度制限パターンによる照査が行われ、(都営=緑色(L):京急=橙色(L)表示)速度超過時は非常ブレーキもしくは常用最大ブレーキが作動し停止する。いずれのケースでも、非常ブレーキが動作した場合は新設した非常ブレーキリセットスイッチを操作してブレーキを解除する。また新たに、ノッチカット機能も搭載した。これは、最高速度制限以上の力行(加速)及び、停止信号直下(絶対停止)では、ノッチ操作が自動的に切られる機能である。具体的には、最高速度制限以上に力行した場合、チン・ベル鳴動と共に緑色の「NC」表示点滅と同時に力行が強制的にOFF、また停止信号直下(絶対停止)で停車した場合は、赤色の「NC」表示と共に常用最大制動(ブレーキ)がかかり、信号が上位に切り替わらない限り、ノッチ操作が不能となる。

2007年3月17日より都営浅草線で一部の機能が使用開始されており、全線で常時70km/h照査を行なっている。また、停止信号手前では車上装置に「パターン接近」(都営・京成=P接近:京急=P)表示が出る他、停止した際も「NB」表示と共にマスコン・ブレーキハンドル位置に関わらずにブレーキがかかっている。また、2009年2月14日ダイヤ改正より、京浜急行電鉄全線で使用を開始した。これに伴い、曲線部や信号機(閉塞・場内・出発・入換)の一部に、C-ATSの速度制限標識(白地に赤抜きの数字)が線路脇や信号機及びまくら木に、一部の急曲線部には、パターン信号・列車位置補正を行う為の地上子(白色の長方形)が設置されている。[8]2009年3月21日からは京成電鉄でも京成上野駅構内および京成高砂駅構内下り線において使用開始された。

[編集] 軌道のATS

軌道法による軌道の場合には、新設軌道と併用軌道が混在している軌道と道路の路面以外の併用軌道については、続行運転道路上にある交通信号や、海上河川での運行上、閉塞方式自体が不要か簡略化されており、ATSなどの警報装置自体の設置が完全に義務化されていない。

[編集] 台湾のATS

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[編集] 脚注

  1. ^ 新井英樹 「ATCとATSで列車を安全に走らせる」Railway Research Review 2008年7月号 22-23頁。
  2. ^ 鉄道の場合のAF (Audio frequency) とは慣行的に電話・通信と同様300Hz~3000Hz余の周波数を指しているが、元々は可聴周波数 (16Hz~20,000Hz) を指すもの。分倍周は交流電化区間などノイズの多い区間に採用されて当初は電動発電機などの機械装置で供給されていてAFとは区別された。
  3. ^ 通達:「自動列車停止装置の設置について」 昭和42年鉄運第11号 (1967/01発)「自動列車停止装置の構造基準」
  4. ^ JR各社を含む全鉄道事業者を対象としている。また、この省令の施行により従来の普通鉄道構造規則、鉄道運転規則、新幹線鉄道構造規則、新幹線鉄道運転規則は廃止された。
  5. ^ 静岡新聞の報道(Web魚拓)によると「都営地下鉄の一部でも導入されている」とあり、都営地下鉄でATSが使用されている路線は浅草線のみであるため、「i-ATS」はC-ATSと一部を除き同型と判断できる。
  6. ^ 「多情報パターン制御式ATS『C-ATS』装置 - 相互直通運転に対応した地上データベース方式 - 」『鉄道と電気技術』 2008/10 日本鉄道電気技術協会
  7. ^ 丸山晃司 「多情報パターン制御式ATS『C-ATS』の概要」『鉄道車両と技術』125号、レールアンドテック出版、2007年。
  8. ^ 標識の設置は変更前の数日に行われた。

[編集] 関連項目

[編集] ATS関連の鉄道事故

[編集] 外部リンク 

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