JR東日本EV-E301系電車

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JR東日本EV-E301系電車
宇都宮駅でのEV-E301系V1編成
宇都宮駅でのEV-E301系V1編成
設計最高速度 100 km/h
起動加速度 2.0 km/h/s
減速度 3.6 km/h/s(常用最大)
編成定員 266名
車両定員 48(席)+80(立)=133名
全長 19,570 mm
全幅 2,800 mm
全高 3,620 mm
車体材質 ステンレス
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V(架空電車線方式
直流630 V(リチウムイオン蓄電池
主電動機 かご形三相誘導電動機
MT78A (95kW)
歯車比 1:6.06
制御装置 VVVFインバータ制御
台車 DT79(電動台車)
TR255D(付随台車)
制動方式 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(応荷重・滑走制御機能付き)
直通予備ブレーキ
耐雪ブレーキ
抑速ブレーキ
保安装置 ATS-P
製造メーカー 総合車両製作所横浜事業所
備考 出典:『鉄道ファン』2014年4月号、p.62
鉄道ジャーナル』2014年6月号、p60〜p63

EV-E301系電車(EV-E301けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の一般型直流蓄電池駆動電車である。愛称は「ACCUM」(アキュム)。

概要[編集]

この電車は、屋根上に集電装置(パンタグラフ)を持つVVVFインバータ制御の電車に走行用のリチウムイオン電池を搭載し、架線のない区間でのモーターによる走行を可能にした営業用蓄電池駆動電車である。

車体は総合車両製作所 (J-TREC) が開発した次世代ステンレス車両「sustina」を採用したステンレス製車両で、同社のブランド名「sustina」[1]を採用した車両としては東急5000系のサハ5576号に続く二例目となる。前頭部は非貫通構造で前面窓上部には前部標識灯と3色LED式の行先表示装置を装備。運転室は事故などの衝突時おける乗務員の保護を図るため、前面部の構造を強化し運転室背面には救出口を設けている。側面は両開き3扉で、一部の扉の横にドア扱い表示器と上部に3色LED式の行先表示装置が装備されている。また、非電化区間と電化区間の両方のホームの高さ対応できるように、車両の床面高さを1130mmに設定して、段差の低減を図っている

形式は宇都宮方の先頭車がEV-E300形、烏山方の先頭車はEV-E301形となっており、2両編成で運転される。両形式とも制御電動車で、いずれも後位側の台車に主電動機を2基装備している。EV-E301形には集電・充電兼用のシングルアーム式のパンタグラフ2基を搭載し、大きな集電電流による急速充電に対応するため、パンタグラフのすり板を強化している。

愛称の「ACCUM」は、蓄電池を表す英語「Accumulator」から採られている。また、形式のEVは「Energy storage Vehicle」の略である。

客室内装[編集]

客室内装では、E233系電車と同じくユニバーサルデザインの採用とバリアフリーの向上が図られ、室内照明はLED化、座席はオールロングシートとなっている。側扉の脇には整理券発行機や側扉開閉ボタンを装備し、連結面側車端部には車椅子の設置スペースを備える。また、乗務員室側には列車の行先を表示する2つのモニタ装置を、連結面側妻部には車両の主回路を流れる電気の流れや蓄電池の充電状況を表示する車内情報装置を取付けている。

トイレ設備はないが、両形式とも後位左側に機器室を設け、その部分には側窓は設置されていない。

電源・制御機器[編集]

主回路の見取り図

架線からの直流1,500 VをDC-DCコンバータ装置で630 Vに降圧した上で、その後VVVFインバータで三相交流に変換して交流誘導電動機を制御する。DC-DCコンバータ装置とVVVFインバータ装置は、一体形の電力変換装置とし、DC-DCコンバータ装置とVVVFインバータ装置の間には、5台を1群として各車の床下に搭載する主回路用リチウムイオン蓄電池 (630V-95kWh[2]) と容量100KVAの補助電源装置の静止形インバータ (SIV) が接続され、編成当たりの蓄電池台数10台、蓄電池容量を190.1kWhとし、非電化区間ではこの蓄電池を電源として走行するシステムを採用する。

後述する駅の地上充電設備で行われる急速充電では、剛体架線を使用することにより通常の架線よりも大きな電流により充電が行われ、通常の架線とは集電電流の制限値が異なるため、地上から送信される地点情報を受信して、車両自体が在線している場所の架線状態を自動的に認識する架線認識装置を搭載しており、急速充電中でのパンタグラフの上昇下降の制限と起動防止、非電化区間でのパンタグラフ上昇の防止と上昇のままの進入防止、架線の条件に合わせた集電電流値の制御が行われる。また、リチウムイオン蓄電池は、安全を確保するため、専用の畜電池箱に収められ、完全に隔離された状態で床下に搭載され、蓄電池の充放電時の温度上昇や留置時での畜電池箱内の蓄電池間の温度差の低減が図られており、乗務員室の助士側には、主回路用蓄電池の入切スイッチのほか、前述した急速充電に関連するスイッチが配置されている。

電化区間においては、パンタグラフより得た架線からの電気をVVVFインバータ装置に送り、主電動機を駆動させるが、蓄電池の充電率が低い場合には、架線からの電気により蓄電池への充電を行う。また、惰行時や駅での停車時でも充電率が低い場合は充電が続けられる。

一方、非電化区間においては、パンタグラフを降下させて、充電された蓄電池から供給される電気をVVVFインバータ制御装置に送り、主電動機を駆動する。終着駅到着後はパンタグラフを上昇させ、駅に設置された地上充電設備の剛体架線より直流1,500 Vを給電し[3][4]、電力変換装置を介して蓄電池に急速充電する。充電完了後はパンタグラフを降下させ、再び充電された蓄電池を電源として走行する。

なお、回生ブレーキ作動時に主電動機から発生した電力は、VVVFインバータ制御装置により直流630 Vに変換され、非電化区間においては蓄電池の充電に用いられる。また、電化区間においては非電化区間と同様に発生した電力を用いて蓄電池の充電を行うほか、DC-DCコンバータ装置によって直流1,500 Vに昇圧した電力を、パンタグラフを介して架線側へ返還する仕組みとなっている。

補助電源装置の静止形インバータ (SIV) と電動空気圧縮機 (CP) をEV-300形に搭載し、補助電源装置は電化区間おいて架線からの電気で、非電化区間においては、蓄電池からの電気で稼動して、空調や照明などの電源を供給している。

台車[編集]

台車は、軽量ボルスタレス台車を採用し、動力台車がDT79形、付随台車がTR255D形となっている。軸箱支持装置は軸はり式を採用している。

編成構成[編集]

 
← 烏山
宇都宮 →
号車 2 1
形式 EV-E301
(Mc)
EV-E300
(Mc')
搭載機器   SIV,CP
  • SIV:静止形インバータ
  • CP:空気圧縮機

運用[編集]

搭載されている蓄電池の容量が、烏山線の線区の長さに適合しているため、2014年3月15日のダイヤ改正より、小山車両センターに配置された量産先行車1編成が宇都宮線東北本線)宇都宮 - 宝積寺間と烏山線で運用を開始した。将来は同線のキハ40形気動車をすべて置き換える計画となっている[5]。運用は宇都宮 - 烏山間2往復と宝積寺 - 烏山間1往復で行われており、宇都宮 - 烏山間では宇都宮 - 宝積寺間走行中と烏山駅停車中において、宝積寺 - 烏山間では宝積寺駅停車中[6]と烏山駅停車中において停車中に充電する[4]

烏山線での運用最高速度は、気動車と同じく65 km/h(設計最高速度は100 km/h)である。

画像ギャラリー[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ sustina(J-TREC 総合車両製作所)
  2. ^ 1両当たりの容量。
  3. ^ 電力会社より交流6,600 Vで受電し、変電装置により直流1,500 Vに降圧整流したもの。烏山線の終着駅である烏山駅に設置。
  4. ^ a b 烏山線でEV-E301系が営業運転を開始 - 交友社鉄道ファン」railf.jp鉄道ニュース 2014年3月16日
  5. ^ 「スマート電池くん」を実用化し、烏山線に導入します (PDF) - 東日本旅客鉄道プレスリリース、2012年11月6日
  6. ^ 従来の架線からの電気を充電に使用する。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]