JR東日本E653系電車

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JR東日本E653系電車
JR東日本E653系(2003年04月07日 / 馬橋)
JR東日本E653系
(2003年04月07日 / 馬橋
編成 基本編成:7両(4M3T
付属編成:4両(2M2T)
営業最高速度 130 km/h
設計最高速度 140 km/h
起動加速度 2.0 km/h/s
減速度  km/h/s(常用最大)
5.2 km/h/s(非常)
編成定員 466人(普通車のみ)※1
268人(普通車のみ)※2
編成長 145.5m(基本編成)
84m(付属編成)
全長 先頭車21,500mm
中間車20,500 mm
全幅 2,950 mm
全高 3,550 mm
車体材質 アルミニウム合金
編成質量 236.5t※1
133.9t※2
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
交流20,000V (50Hz/60Hz)
架空電車線方式
編成出力 145kW×16=2,320kW※1
145kW×8=1,160kW※2
主電動機 MT72形かご形三相誘導電動機
主電動機出力 145 kW
歯車比 5.65(96:17)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動
制御装置 VVVFインバータ制御IGBT素子
台車 ボルスタレス台車
DT64形(電動車)・TR249形(付随車・制御車)
制動方式 電気指令式ブレーキ
回生ブレーキ
抑速ブレーキ
保安装置 ATS-P, ATS-Ps
製造メーカー 日立製作所
近畿車輛
東急車輛製造
備考 ※1は基本編成
※2は付属編成
パンタグラフ
側面行先表示器(2012年10月7日撮影)

E653系電車(E653けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の交直流特急形車両

概要[編集]

常磐線特急ひたち」のうち、停車駅の少ない「スーパーひたち」で使用されている485系電車の老朽置き換えを名目として1988年から651系電車の投入が行われたが、停車駅の多い「ひたち」には485系が依然運用されていた。その485系置換えを目的として、1997年平成9年)から製造された交流直流両用特急形電車がE653系電車である。

今後のJR東日本の特急形電車のスタンダートとして開発が行われ、構造やシステムは従来の特急形車両から一新されている。製造は日立製作所近畿車輛東急車輛製造の3社で行われ、1997年10月1日に1次車基本編成4本(7両編成、計28両)を使用して「フレッシュひたち」として営業運転を開始した。翌年の1998年(平成10年)には、2次車として基本編成4本と付属編成3本(4両編成、計40両)が増備され、同年12月8日ダイヤ改正で485系電車の全面置換えを完了した。2005年(平成17年)2月には付属編成1本(3次車)が増備された。総生産数は72両(基本編成8本、付属編成4本)である。

構造[編集]

  • ここでは落成時の仕様について記述し、後天的な改造による仕様変更等は別項で後述することとする。

車体は、アルミニウム合金の大形中空押出型材を用いたダブルスキン構造を営業用の鉄道車両としては初めて採用し[1]、軽量化と構体構造の簡素化を図っている。さらに車体の裾絞りを上部下部とも最小限に抑えることにより、客室空間の拡張をも図っている。

床下には機器取付用のレールが設置されている。このレールに沿って機器の取付・取り外しが行えるようになっており、製造や整備、また仕様変更にともなう機器換装等を容易なものとしている。また車両状況の自己診断プログラムを搭載するなど、車両整備に際しての利便性向上にも重点が置かれている。

製造時は普通車のみで組成されており、グリーン車は設定されていない[2]。シートピッチ(座席の前後間隔)は定員確保を考慮して485系電車と同一の910mmとされたが、座席については座面スライド機構の採用、背面部やフレームのスリム化、座席下部の空間に足を伸ばせる構造とするなど居住性の向上が図られている。客用扉は上野方の制御車(クハE652形)は2か所だが、それ以外は1か所とされている。

交流電源は50Hzのほか60Hzにも対応しており、北陸本線などへも入線可能。JR発足後に製造された数少ない50Hz・60Hz両用形式車両である。なお中央本線などの狭小トンネル通過には対応していない。

デッドセクションでの主回路切替はE501系電車と同一の仕様で、ATS-P 地上子を用いた自動切替である。車内照明は直流電源方式で、デッドセクション通過時には蓄電池からの供給に切り替わるため、基本的に消灯しない。

JR発足後に登場した交流直流両用電車は、国鉄時代のように広域転配[3]をすることがないため、交流電源は50Hz(651系電車など)か60Hz(681系683系電車など)のどちらかだけに対応させていたが、本系列はJR発足後初の50/60Hzの両用対応とし、車体は耐寒耐雪構造とされた。これは485系電車に代わる汎用特急車として、将来常磐線以外でも運用することをあらかじめ考慮したものである[4]

主変換装置素子IGBTを用いるCI8形で、装置1基につき4個の主電動機を一括制御する。主変換装置はコンバータ部とインバータ部からなり、交流電化区間ではコンバータによりいったん直流に変換した後、インバータにより三相交流に変換する。直流電化区間ではインバータのみを駆動させる。

主電動機は1時間定格出力145kWのMT72形かご形三相誘導電動機を搭載している。営業運転時の最高速度は651系電車と同一の130km/hであるが、全速度域で651系電車を上回る加速力を有する。集電装置は、交流直流両用のPS32形シングルアームパンタグラフである。

ブレーキ装置は、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、発電ブレーキを準備工事としている。ブレーキの系統は、常用ブレーキ、非常ブレーキ、直通予備ブレーキ、抑速ブレーキ耐雪ブレーキの5系統とし、付随車のブレーキ力を電動車で負担する遅れ込め制御を行っている。

車体側面の行先表示器は3色LEDに変更され、行き先・愛称のほか号車番号も行先表示器で案内する形となった。

沿革[編集]

「ひたち」時代[編集]

14両編成の「フレッシュひたち」
(2008年6月18日)

1998年度の財団法人日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞を受賞した。車両のデザイン開発は、GKインダストリアルデザインが担当。

2007年(平成19年)3月18日から全車両が禁煙とされた。

2008年(平成20年)3月31日をもって飲料自動販売機の営業が中止された。それに伴い、座席裏案内シールが貼り変えられた。

2012年(平成24年)春から、上野 - いわき間にE657系電車が導入され、「スーパーひたち」「フレッシュひたち」の全列車が同車両に置き換えられるのにともない、当時は本系列にて定期運行が行われていなかったいわき - 仙台間に新設される特急列車に転用される予定[5]であった。しかし2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災により、いわき - 仙台間の一部区間で壊滅的な被害を受けたほか、広野町から南相馬市にかけて(広野 - 原ノ町間)が東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う警戒区域に含まれることから不通となっており、この特急列車の運転開始の見通しは立っていない。その後、2012年3月のダイヤ改正時点では、一部の「フレッシュひたち」がE657系に置き換わったものの、ほとんどの「フレッシュひたち」はそのままE653系で運用された。

また同年3月31日をもって列車公衆電話のサービスが終了した。それに伴って、座席裏の案内シールにその旨が追加された。

2013年(平成25年)3月16日のダイヤ改正で「スーパーひたち」「フレッシュひたち」の全定期列車がE657系に置き換わることとなったため、前日3月15日が「フレッシュひたち」での最終運行となった(定期最終列車は上野発高萩着の「フレッシュひたち67号」)。ダイヤ改正後は、多客期の臨時「フレッシュひたち」や「ぶらり鎌倉号」「ぶらり高尾散策号」などの常磐線臨時列車として用いられる(事実上、2013年1月まで臨時列車として使用されていた485系K60・K40編成の置き換え)[6]

「いなほ」転用へ[編集]

E653系羽越線デビュー号(2013年9月14日撮影)

E657系置き換え後のE653系の処遇については2012年9月、2013年(平成25年)より羽越本線の特急「いなほ」で使用される485系(新潟車両センター所属)の置き換え用に転用される予定であると報道され [7]、JR東日本新潟支社は2013年6月26日付のプレスリリースで、同年秋から順次投入及び置換えを開始する旨を発表した。基本編成8本すべてが7両編成のまま順次転籍し、2014年7月12日までの置換え完了を予定している。

「らくらくトレイン村上」転用へ[編集]

らくらくトレイン2014年7月12日から置き換えられる。

転籍にあたり郡山総合車両センターで改造が行われ、新潟・秋田支社管内の走行環境に適応するため耐寒耐雪構造を強化(強化スカートへの換装、スノープラウや着雪防止装置の設置など)したほか、日本海に沈む夕日と稲穂を表したカラーリングに変更し、各編成の先頭車両(1号車)をラウンジ付きのグリーン車へ改造するなどした上で、車番も1000番台に改番された[8][9]

同年6月29日、転籍1編成目のU-101編成が新潟車両センターへ回送され[10]、同年9月28日のダイヤ改正から「いなほ7号・8号」1往復を皮切りに定期運行を開始した[11]。また、第2編成であるU-102編成も同年9月14日の団体臨時列車に使用された[12]。車両には運行される沿線区間のご当地キャラクター8種類のラッピングシールが貼付されている[13]

形式[編集]

新製形式[編集]

モハE653形
集電装置と主変換装置を搭載する中間電動車(M1)で、モハE652形とユニットを組む。前位車端部には、電話室と飲料の自動販売機が設置されている。定員は72人。基本編成の2・5号車と付属編成の9号車に組成される。
モハE652形
主変換装置と補助電源装置(静止型インバータ)を搭載する中間電動車(M2)で、モハE653形とユニットを組む。前位車端部には、トイレと洗面所が設置されている。定員は72人。基本編成の3・6号車と付属編成の10号車に組成される。
クハE653形
いわき・新潟向きの制御車(Tc)で、0番台・1000番台が基本編成の7号車、100番台が付属編成の11号車に組成される。定員は68人。空気圧縮機と蓄電池箱を搭載する。100番台は、いわき方への併結を行わないため、電気連結器(分併装置)を省略している。
クハE652形
上野向きの制御車(Tc')で、0番台が基本編成の1号車、100番台が付属編成の8号車に組成される。定員は56人で、トイレと洗面所を後位に設置する。側面の客用扉は片側2箇所に設置されている。0番台は空気圧縮機と蓄電池箱を搭載するが、100番台は、空気圧縮機と蓄電池箱を準備工事としている。
サハE653形
基本編成の4号車に組成される中間付随車で、乗務員室、車販準備室、車椅子スペース、トイレ、洗面所を設備する。定員は54人。設備の関係で、客用扉の幅を拡げている。

改造形式[編集]

クロE652形
秋田向きの制御車(Tsc')で、1000番台の1号車に組成される。クハE652形からの改造で、全室グリーン車である。定員は18人で、後位側にはラウンジスペースが付く。1000番台のみの形式で、0番台は存在しない。前後の座席は仕切りによって独立しており、リクライニングによる干渉が発生しない。シートピッチは1820ミリとなっている。
  • クハE652-1・2 → クロE652-1001・1002

編成表[編集]

勝田車両センター編成表(2005年4月1日現在)
 
← いわき・高萩・勝田
上野 →
製造所 竣工日
基本編成 号車 7
(14)
6
(13)
5
(12)
4
(11)
3
(10)
2
(9)
1
(8)
形式 クハE653
(Tc)
(0番台)
モハE652
(M2)
(0番台)
モハE653
(M1)
(0番台)
サハE653
(T)
(0番台)
モハE652
(M2)
(0番台)
モハE653
(M1)
(0番台)
クハE652
(T'c)
(0番台)
K301 1 1 1 1 2 2 1 日立 1997/7/12
K302 2 3 3 2 4 4 2 日立 1997/8/4
K303 3 5 5 3 6 6 3 近車 1997/8/7
K304 4 7 7 4 8 8 4 東急 1997/8/26
K305 5 9 9 5 10 10 5 日立 1998/11/4
K306 6 11 11 6 12 12 6 近車 1998/11/18
K307 7 13 13 7 14 14 7 東急 1998/11/24
K308 8 15 15 8 16 16 8 日立 1998/11/25
付属編成 号車 11 10 9 8    
形式 クハE653
(Tc)
(100番台)
モハE652
(M2)
(0番台)
モハE653
(M1)
(0番台)
クハE652
(T'c)
(100番台)
K351 101 17 17 101 近車 1998/11/18
K352 102 18 18 102 東急 1998/11/24
K353 103 19 19 103 日立 1998/11/25
K354 104 20 20 104 日立 2005/2/27


新潟車両センター編成表(2014年6月1日現在)
 
← 新潟
酒田・秋田 →
改造施工所
基本編成 号車 7 6 5 4 3 2 1
形式 クハE653
(Tc)
(1000番台)
モハE652
(M2)
(1000番台)
モハE653
(M1)
(1000番台)
サハE653
(T)
(1000番台)
モハE652
(M2)
(1000番台)
モハE653
(M1)
(1000番台)
クロE652
(Tsc')
(1000番台)
U-101[10] 1001 1001 1001 1001 1002 1002 1001 郡山総合車両センター
U-102[12] 1002 1003 1003 1002 1004 1004 1002
U-103 1003 1005 1005 1003 1006 1006 1003
U-104 1004 1007 1007 1004 1008 1008 1004
U-105 1005 1009 1009 1005 1010 1010 1005

配色とシンボル[編集]

BYR color wheel.svg この項目ではを扱っています。
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車体はアルミ製であるが塗装されており、その配色はJR東日本水戸支社管内、特に常磐線沿線の名所に由来しており、編成によって異なる。

このうち、基本編成(K301 - K308)のシンボルマークについては、上野駅の特急発着ホームである16・17番線の床にも同じものが描かれている。

車体色 編成名 車両メーカー 車体色のモチーフ 備考
  スカーレットブロッサム(Scarlet Blossm) K301,K305 日立製作所 偕楽園と好文亭 7両編成
  ブルーオーシャン(Blue Ocean) K302,K308 日立製作所 塩屋埼灯台太平洋
  イエロージョンキル(Yellow Jonquil) K303,K306 近畿車輛 国営ひたち海浜公園水仙
  グリーンレイク(Green Lake) K304,K307 東急車輛製造 霞ヶ浦と帆曳舟
  オレンジパーシモン(Orange Persimmon) K351 - K354 各社 袋田の滝紅葉 4両編成

運用[編集]

通常運用では以下の運用に用いられている。

かつては以下の運用もあったが、2013年3月16日のダイヤ改正で定期運用をすべて失った。

運用パターン[編集]

ひたち系統
  • 基本編成のみ(7両)
  • 基本編成+付属編成(11両)
  • 基本編成+基本編成(14両) 
    付属編成のみ(4両)と付属編成+付属編成(8両)での運転は定期列車では行われていなかった。
いなほ
  • 基本編成のみ(7両)

臨時運用[編集]

青森駅に到着した青森ねぶた号(2000年8月4日)

臨時列車団体臨時列車修学旅行列車も含む)でもE653系が度々使用される。臨時列車は以下を参照。 団体臨時列車としては、磐越西線会津若松駅上越線水上駅東海道本線熱海駅中央本線高尾駅成田線成田駅まで入線した実績がある。

2013年1月以降は、これまで常磐線の臨時列車で使用されていた485系K60・K40編成(2013年1月廃車)の代替としても使用されているが、基本編成は2013年秋以降いなほへの転用が進行中であり、暫定的なものである。

臨時列車運用の実績[編集]

その他[編集]

「フレッシュひたち」の運転開始10周年を記念して、2007年10月からしばらくの間側面に特製ステッカーを貼付していた。

脚注[編集]

  1. ^ 日本機械学会交通・物流部門ニュースレターNo.16 (PDF) 日本機械学会 1998年9月18日
  2. ^ グリーン車連結の「フレッシュひたち」は651系・E657系による運用。また2013年より「いなほ」へ一部が転用されており、該当編成にはグリーン車が設定された。
  3. ^ 485系電車や583系電車は東北から九州までの配転があった。
  4. ^ 現在のJR東日本の在来線には交流60Hzによる電化区間は存在しないが、特急「北越」が乗り入れる西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線のうち梶屋敷駅 - 糸魚川駅間以西が交流60Hz電化である。
  5. ^ “常磐線特急に新型車両を導入!” (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2010年12月7日), http://www.jreast.co.jp/press/2010/20101206.pdf 2010年12月7日閲覧。 
  6. ^ 春の臨時列車のお知らせ (PDF) 東日本旅客鉄道株式会社水戸支社 2013年1月24日
  7. ^ “JR、特急の省エネ化加速 国鉄時代の車両置き換え”. MSN産経ニュース (産業経済新聞社). (2012年9月8日). http://sankei.jp.msn.com/life/news/120908/trd12090819120011-n1.htm 2012年9月8日閲覧。 
  8. ^ “特急「いなほ」の車両を一新します!”. 東日本旅客鉄道新潟支社. (2013年6月26日). http://www.jrniigata.co.jp/press/20130626e653.pdf 2013年6月26日閲覧。 
  9. ^ 特急「いなほ」一新へ…常磐線のE653系投入 - 読売新聞(2013年6月28日付)
  10. ^ a b E653系1000番台U-101編成が新潟車両センターへ - 鉄道ファン(2013年6月29日付)
  11. ^ “2013年9月ダイヤ改正について”. 東日本旅客鉄道新潟支社. (2013年7月9日). http://www.jrniigata.co.jp/press/20130705daiyakaisei0928.pdf 2013年7月9日閲覧。 
  12. ^ a b 「E653系羽越線デビュー号」運転 - 鉄道ファン(2013年9月14日付)
  13. ^ 「RAILWAY TOPICS」、『鉄道ジャーナル』第565号、鉄道ジャーナル社、2013年11月、 92頁。

参考文献[編集]

  • 交友社鉄道ファン」1997年11月号 新車ガイド「JR東日本E653系特急形交直流電車」(東日本旅客鉄道(株) 運輸車両部企画課車両開発グループ 著)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]