JR東日本E501系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

JR東日本E501系電車
上野 - 土浦間で運用されていた時期のE501系(2003年4月、我孫子駅)
上野 - 土浦間で運用されていた時期のE501系
(2003年4月、我孫子駅)
起動加速度 2.0km/h/s
営業最高速度 120km/h
設計最高速度 120km/h
編成定員 1,540(基本編成)
760(付属編成)
全長 制御車:20,420mm
中間車:20,000mm
全幅 2,800mm
全高 3,690mm
編成質量 274.5t(基本編成:4M6T)
140.1t(付属編成:2M3T)
軌間 1,067mm
電気方式 直流1,500V
交流20,000V (50Hz)
モーター出力 120kW/h
主電動機 MT70形
編成出力 1,920kW(基本編成:4M6T)
960kW(付属編成:2M3T)
歯車比 1:6.06
制御装置 VVVFインバータ制御
GTOサイリスタ素子シーメンス製(基本編成)
IGBT素子・東芝製(付属編成)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
ブレーキ方式 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 ATS-SN, ATS-P
製造メーカー 川崎重工業
東急車輛製造

E501系電車(E501けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の交直流通勤形電車

常磐線の輸送改善用として209系電車を基本に設計した車両で、常磐線の交流電化区間では初の4扉車である。

目次

[編集] 導入の経緯

常磐線では、東京への通勤圏が取手駅からさらに牛久土浦方面に伸び、取手以北の利用者が増え続けてきたが、取手以北は石岡市にある気象庁地磁気観測所への観測障害を避けるために交流電化となっており、4扉ロングシート103系は直流専用車両のため使用できなかった。直流電化区間を北に伸ばすことは前記した理由から不可能であり、既存の403系・415系1982年昭和57年)以降にロングシート車である415系500番台や1500番台(ステンレス車)を導入したものの、ともに3扉車であるため、混雑時の対応には限界があった。

さらに、土浦市牛久市商工会議所や選出国会議員などが中心となった「県南常磐線輸送力増強期成同盟会」が常磐線「快速電車」の延伸という要望を当時の運輸省などに継続的に行っていた。これは沿線のイメージアップのために近郊形電車ではなく4扉の通勤形電車を投入して欲しいという要望であった。これらの問題を総合的に解決するために、日本初の交直流通勤形電車として製造された。

当初は、415系電車のほかに上野 - 取手間で運用されていた103系の置き換えも視野に入れて開発された。ラッシュ時は4扉ロングシート車の収容力を活かして概ね好評であったものの、本系列の本格投入を睨んだ1997年(平成9年)3月22日ダイヤ改正時に日中の土浦以北から上野への直通列車が大幅に削減されたこと[1]、座席数が減少したこと、トイレ設備がないことなどで長距離での運用に不向きであったことから、1997年で製造が打ち切られた。

[編集] 仕様・構造

車体
基本設計は209系と同様であるが、使用線区の性格や直流・交流両用のため、装備する電装品などの違いがある。209系に比し外板厚を 1.2 mm から 1.5 mm に強化したほか、交直流機器搭載のため台車間距離を 13,300 mm から 13,800 mm に延長して床下の艤装空間を確保し、先頭車後位の連結器E217系電車と同様の衝撃吸収タイプを用いる。
客室部の側窓は209系各区分と同様、車端部を除き固定窓を用いた。後年に窓を開閉可能にする改造工事が施工された。
客用扉は片側4か所に両開き式引き戸を設け、片側1か所を残して締め切ることが可能な「3/4扉閉」スイッチを装備する。1995年製の編成は営業開始後に後付け改造したが、1997年製の編成は落成時から装備している。
電装系
直流区間と交流区間を隔てるデッドセクションでの主回路の切り替えはATS-P地上子により自動で行われる。手動切り替えも可能である。
ドイツシーメンス社のGTOサイリスタ素子による主変換装置「SIBAS32」[2]を採用する。JRの電車では唯一の採用例で、発車・停車時の磁励音は音階を奏でるような独特なものである。なお、5両の付属編成は2007年にVVVFインバータ装置を東芝IGBT素子のものに交換した。
主電動機は かご形三相誘導電動機 を用い、出力は209系の 95 kW から 120 kW に向上した。交流関連機器の搭載による自重増と、低速域での加速性能確保・最高 120 km/h 運転に対応するため、歯車比はE217系と同一の 6.06 (16:97) である。
台車
軸梁式の軸箱支持機構をもつボルスタレス台車で、枕バネに空気バネを用いたJR東日本一般形電車の標準的な仕様である。本系列ではE217系と同様、空気ばね取り付け座が台車枠の外側に張り出したタイプを採用した。ヨーダンパは準備工事のみ。
室内設備
車内全景
内装は209系と変わらないが、座席表地の配色が異なり、一般席は常磐線の中距離電車快速電車ラインカラーである青色を座面部分、緑色を背もたれ部分に採用している。また、川崎重工業製の編成では車端部の座席脇にドア部分にある仕切りと同様のくぼみがある。つり革も209系と同一のものであるが、1997年製の編成以降は若干の形状変更が加えられた。優先席付近は、E233系電車の同付近のものに準ずる。
車内照明は直流電源による。デッドセクション通過時には自動的に蓄電池供給に切り替わるため、基本的に消灯しない(交直流切り替えが手動で行われる場合は、この限りではない)。なお、空調装置や車内ドア上部の LED 案内表示器の電源は静止形インバータ (SIV) から供給される三相交流であり、デッドセクション通過時には停止する。
車端のトイレ設置部 側窓を埋めている
全編成ともトイレは設置されていなかったが、2007年3月ダイヤ改正での運用区間変更に伴い、2006年10月 - 2007年2月にかけて基本編成の1・10号車および付属編成の11号車にバリアフリー対応トイレが設置された。
その他設備
2003年(平成15年)10月より車内自動放送が導入された。ただし、E231系やE531系は出口案内、乗り換え案内、次の停車駅(2005年8月頃より、特別快速のみに限定されたため廃止)の順に流れるのに対し、本系列の場合は出口案内放送がなく、乗り換え案内のみの放送となっている。

[編集] 運用の変遷

[編集] 2007年3月改正まで

1995年(平成7年)に基本10両編成[3]と付属5両編成各1本が、1997年(平成9年)に基本10両編成と付属5両編成各3本の計60両[4]がそれぞれ川崎重工業東急車輛製造で製造され、勝田電車区(現・勝田車両センター)に配置された。同年12月1日から、常磐線上野 - 土浦間で営業運転を開始し、普通列車(取手 - 上野間は快速)のみに使用された。

上野 - 土浦間の行先表示器には2006年(平成18年)3月17日まで運転されていた通勤快速の表示は用意されていたが、2005年(平成17年)7月9日から運転を開始した特別快速はE531系限定運用とされたこともあり、用意されなかった。また、快速の表示も用意していたが、定期列車としては取手以南の快速運転区間でも通常は終着駅名を表示していた。また、土浦以遠の駅名は神立友部水戸勝田の表示が用意されていた。

停車駅案内図は、都市部の車両で採用されている形式のもので、上野~土浦間の普通列車の停車駅と、取手 - 北千住間の各駅停車の駅を掲示していた。この当時のものは、「普通」と「各駅停車」が並んで掲載されるという変わったものだった。2004年(平成16年)10月16日以降は、取手以南で「快速」と案内されることになったため、「土浦 - 取手間 普通 取手 - 上野間 快速」としたものに取り替えられた。

朝ラッシュの最混雑時間帯である土浦駅発上り6 - 7時台の列車には、2005年7月9日のダイヤ改正から運用を開始した同じ4扉車であるE531系とともにほぼ集中的に投入され、取手駅から運用されているE231系とともに乗車位置の統一や収容力向上、および列車遅延の防止が図られた。

着席サービスの向上を図るため、10両+5両の分割編成であるにも拘らず、本系列の運用列車は検査時の415系・E531系による代走も含め終日15両編成で運転されていた。ただし、検査などで勝田車両センターに回送される際は、土浦 - 勝田間の構内有効長の関係から、10両編成と5両編成に分割して回送されていた。

この当時は予備編成がないため、取手駅以北で 120 km/h 運転可能な本系列の限定運用と403系・415系で代走可能な運用とに分けられていた。実際に検査や整備などで403系・415系が代走する際は、交流区間の各駅では代走期間と該当する時刻の4扉車が3扉車に変更される旨が表示されていた。同じ4扉車で 130 km/h 運転が可能なE531系の増備進捗や転用対応の改造工事開始に伴いE531系による代走の機会が増加し、本系列は2007年2月21日を最後に常磐線土浦以南での運用を終了した。

[編集] 2007年3月改正以降

2007年(平成19年)3月18日のダイヤ改正後、上野駅発着の常磐線中距離電車は全列車がグリーン車を連結したE531系で統一された。本系列は運用範囲を変更し、以下の区間で使用する。

水戸線で使用されているE501系(笠間 - 宍戸間にて)

基本編成と付属編成は別個に運用され、水戸線には付属編成のみ入線する。車内の停車駅案内図はE531系と同じものに交換された。実際には、改正に先立つ同年2月27日から、K-752 編成が水戸線および常磐線友部 - 勝田間で営業運転を開始した。 行先表示器は、従来前面が黒地白文字・側面が白地黒文字の幕式のものであったが、運用区間の変更に伴い、小山・いわき原ノ町などの他、異常時の折り返し対応用に通常は使用しない内原などの表示が追加され、いずれも青地白文字の幕に交換された。

基本編成(10両)・付属編成(5両)の各4本とも、全てが営業運用に充当され代替編成がないため、検査時等の代走は基本的にE531系の付属編成が使用されるが、415系1500番台(4両編成)が使用される場合もある。基本編成の代走にはE531系の付属編成2本連結または、415系1500番台を2本連結した形で運用される。

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ 直通列車削減の方針は短期間にとどまり、翌1998年のダイヤ改正で直通運用の改善がなされた。
  2. ^ シーメンス社の主変換装置は京浜急行電鉄2100形新1000形の一部にも採用されている。
  3. ^ 1995年に川崎重工業で製造された基本10両編成は阪神・淡路大震災の影響で納車が遅れた。
  4. ^ 1997年に増備された車両の一部は老朽化した403系一部編成の置き換え用である。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ
他の言語