回生ブレーキ
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回生ブレーキ(かいせいブレーキ)は、通常は駆動力として用いている電動機(モーター)を発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することで制動をかける電気ブレーキの一手法。発電時の回転抵抗を制動力として利用するもので、電力回生ブレーキ、回生制動とも呼ばれる。電動機を動力とするエレベーター、電車、自動車他、広く用いられる。
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[編集] 鉄道
鉄道においては、電車・電気機関車で用いられ、それらの主電動機で発電し、発生した電気エネルギーは架線に戻す。車両から架線に電気を戻すものを回生ブレーキと呼んでおり、自車内で抵抗等により熱エネルギーに変換して捨ててしまうものは発電ブレーキと呼ばれる。自車内で蓄電池等に蓄える場合や、架線に戻した後、変電所で熱エネルギーに変換して捨ててしまう場合も一般的に回生ブレーキと呼んでいる。
回生ブレーキを使用することにより、列車の消費電力を削減(力行時と制動時で相殺)出来るほか、地下トンネル内の温度上昇の問題も軽減できる。さらに、空気ブレーキ使用率の低下(純電気ブレーキを参照)により、近年(インバータによるVVVF制御が一般化した1986年頃から)登場している新型の電車のほとんどが、この回生ブレーキを採用している。
ただし、回生ブレーキを使うためには、車両側の電圧が架線側より高くなければ十分な電力回生を行うことができず、ブレーキ性能が低下する現象(回生失効)が発生してしまうため、負荷となる変電所内設備や他の電車(列車)が一定以上必要となる。また変電所・架線等の事故や集電装置破損時には回路が絶たれるために使用できなくなる問題がある。そのため、他の列車が電力を消費する確率が低く、送電設備にかけるコストも限られるローカル線や、特に安定したブレーキ性能の要求される路面電車や急勾配線等では、あえて発電ブレーキを採用したり、回生ブレーキを採用する場合も発電ブレーキと併用することが多い。
発電ブレーキを併設している車両には、ある程度速度が落ちると回生ブレーキから発電ブレーキに切り替えるタイプ(近畿日本鉄道の車両など)と、回生ブレーキを使いながら、架線に回生できない余分な電力を発電ブレーキで消費させるブレーキチョッパタイプ(JR東海313系電車・JR東海383系電車・JR東日本E257系電車など)とがある。また、架線電圧が安定しない場合でも、安定した回生ブレーキを生み出す特徴を持つベクトル制御の車両も出てきている。
交流電化においては比較的変電所の回路が簡単で、架線から変電所を通り電源側への回生も容易である。また、き電区間が長いために発生した電力を他の車両で消費しやすい。交流専用車両では昔から回生ブレーキが用いられることが多かったが(国鉄ED78形、EF71形電気機関車は、サイリスタ位相制御方式を採用している為、主回路に抵抗器を持たない)[要出典]、交直流車両は直流車両に整流回路を追加した方式であり、交流側に電力を戻すには可逆コンバータ(インバータ機能を持つ整流回路)を搭載する必要があるため、最近まで回生ブレーキはあまり用いられていない(1988年のJR東日本651系電車が最初の例である)。
気動車でもハイブリッドカーである東日本旅客鉄道のキハE200形は回生ブレーキを採用し、下記の「自動車」と同様に、回生負荷を自車の蓄電池としているが、余剰分のブレーキ力も一旦電力として回収し、発電機をモーターとして駆動しエンジンを排気ブレーキモードで回すことにより 余剰電力を消費している。
[編集] 自動車
電気自動車やハイブリッドカー(トヨタ・プリウスなど)で使われる。 タイヤの回転を使いモーターで電力を発生させ、車両に搭載した蓄電池を充電し、加速時の電力とする。構造は、インバータによる可変電圧可変周波数制御を搭載した電車と同じで、回生負荷が蓄電池に変わるものである。ただしハイブリッドカーでエンジンも車輪と直結している車両(パラレル式、スプリット式)エンジンブレーキも併用される。
また、近年では電気自動車やハイブリッドカー以外の一般的な自動車においても、オルタネーターを特に減速時に高負荷で稼働するように制御して燃費を向上させるものが存在する。
モータースポーツの世界でも、2009年よりF1において導入された。 運動エネルギー回収システム(KERS)の実装の一つとして、回生ブレーキ型の電気式システムがレースで実装されている。 但しシステムの重量が30Kgもあるため、コースやチームのレース戦略によって取り付け・取り外しされている。
[編集] 電動アシスト自転車
一部の電動アシスト自転車には、制動時に発生した電力を蓄電池に充電し、補助できる距離を伸ばすものがある。
[編集] エレベーター
エレベーターの場合は、ある程度大型のものでは電動機で発生した回生電力を電力系統に逆流させる形で返してしまうが、マンションなどに設置される一般的なものでは、回生電力を抵抗器に流して熱エネルギーとして捨ててしまう発電ブレーキの方が一般的である。これは、発生する回生電力が鉄道車両などに比べ小さく、電力系統に逆流させる可逆コンバータを設置するコストに引き合わないからである。三菱電機の製品には回生電力を蓄電池に貯蔵し、停電時に短時間ながら運転を継続できる非常電源として使用するもの(商品名:エレセーブ)もあるが、これも一般的ではない。
[編集] 回生失効
回生失効とは、主に鉄道車両において、回生ブレーキの使用で発生した電力を架線などに返す場合、集電装置の離線や返却先である架線の電圧が極端に高い場合、また返却した電力を消費する列車がない場合に制動能力が低下または、無効となる現象である。
この現象は特に直流電化されている路線で発生しやすい。 交流電化に比べて直流電化では「き電」区間が短いという要因もあるが、直流変電所において交流から直流への変換にダイオードブリッジ(シリコン整流器)が用いられていることに起因する。ダイオードブリッジはその機器の特性上、交流から直流へ変換することが出来ても、直流から交流へ変換することは出来ない。そのため回生ブレーキによって発電した電力は、変電所を通じて直流→交流となることはなく、特に対策を施さない場合は同じ変電所から電力を供給している他の「負荷」へ行こうとする。その際近くに負荷がなければ回生ブレーキは作動せず「回生失効」の状態になる。
なお交流電化されている路線の場合、回生ブレーキによって発電した電力は変電所内の変圧器を通じて電源系統へ戻っていくため、離線しない限り回生失効は理論上生じない。
この現象が発生した場合、回生ブレーキ性能が大幅に低下、または無効する。また、回生ブレーキを使用しない車両と併結している場合に、車両間で制動力に大きな差が生じ、いわゆる「ドン突き衝動」が起きる。このため、以下のような対策がとられている。
《車両側》
- 発電ブレーキを併設する。
- 抵抗器を装備し失効時には返却先を架線から抵抗器に変更することにより発電ブレーキとして機能させる。
- 回生ブレーキを完全に切って機械ブレーキのみに切り替える。
- 失効してすぐ空気ブレーキを立ち上げたり、増力させる、など。
《周辺設備》
- 変電所に回生電力を吸収する装置を設置する。
具体的な機器としては、古くは変電に用いられる回転変流機に交流・直流間の電力可逆変換が可能な性質があるため、これが用いられていたが、現在主流のシリコン整流器にはこの性質は備わっていないため、発生する電力を抵抗器で熱エネルギーの形で放出させるかインバータなどを使用して給電側に電力を帰す回生電力吸収装置を別途設置している(南海高野線や近鉄大阪線など)。また、京浜急行電鉄のように、回生電力の有効活用を目的にフライホイール式電力貯蔵装置を設置したり、近年では、キャパシタや蓄電池を利用した回生電力貯蔵装置も開発されている。
直流1500Vき電システムの場合上限電圧は1850Vに定められているので変電所ごとに電圧監視をして設定した電圧(1700V前後)に達するとインバータ(直流→交流50/60Hz一定、電圧も一定)→変圧器→自社送電線→駅や信号の電力として使う。抵抗器は設定値をオーバーした場合に抵抗を並列に入れて消費するために用いられる。この抵抗式は小規模な路面電車や通過する列車本数の少ない区間などで使われる。
[編集] 打ち切り
回生ブレーキには主電動機の逆起電力が有効な電圧を得られなくなり、制動を終了する「打ち切り」がある。これも「回生失効」の一部とされる場合がある。「打ち切り」は単純に抵抗器で電力を消費させる発電ブレーキにも存在する。
通常、複巻電動機の方がこの「打ち切り」速度が高い。その為、一般に直巻電動機を使用する電機子チョッパ制御に比べて、複巻電動機を使用する界磁チョッパ制御の方が、理論上は回生効率が低い。
しかし、複巻電動機の場合、界磁調整器によって逆起電力を積極的に上げていくことができるため、架線電圧が比較的高い状況でも有効電圧を架線に返していることが多い。それに対し、電機子チョッパ制御では、主電動機の状態によっては単に逆電圧をぶつけているだけの状態になってしまうことがあり、制動力は確保できても、有効な電力を架線に返していないことが多く、実際の運用では界磁チョッパ制御の方が回生効率が高いと言われている。
「打ち切り」が発生すると、それまで効いていた電気ブレーキが切れ、他のブレーキに切り替わる(またはその分他のブレーキを強める)ため、その瞬間衝動が発生する。近年では回生ブレーキ打ち切り後にモーターに逆に電流を流して停止させる純電気ブレーキに切り替え、なめらかに停止できるようにした車両が増えている。
[編集] 回生ブレーキと制御回路
回生ブレーキを利用するには、架線や蓄電池などの電源電圧より高い電圧を発生させる必要があるため、単に電動機を電源に接続しただけでは安定した制動力を得ることはできない。そのため、鉄道車両では安定した制動力と大きな回生電力を得るために様々な改良が加えられてきた。
抵抗制御では「余分な電力を熱として捨てる」という制御方式で、回生ブレーキは使われず電力ブレーキが必要な車両では発電ブレーキとして、やはり「熱として捨てる」場合が多かった。直並列制御として電動機を回生時に直列接続すれば架線電圧より高い電圧を確保することができるが、これだけでは制動能力が不安定である。界磁調整器を搭載することで、理論上打ち切り速度は高いが安定した回生ブレーキを搭載することは可能である。界磁調整器には主に磁気増幅器が使用され、同時に界磁接触器の代わりに界磁率を調整することが出来、制御器の接点数を減少させることが出来る。
主回路を高速にOn-Offすることで制御する電気回路であるが、回生時は主電動機に逆電圧をかける。高速時から回生ブレーキを立ち上げると逆に架線電圧を大幅に上回ってしまうため、抵抗を挿入して規定の架線電圧を大幅に上回ることのないような工夫がされている場合がある。打ち切り速度は数km/h程度。
複巻電動機を利用して界磁回路のみをチョッパ制御としたものであるが、主回路は抵抗制御のままであるため打ち切り速度は20-40km/h程度と高い。
直巻電動機を利用しつつ、補助電源を利用して界磁調整を可能とした。主回路は抵抗制御のままであるため打ち切り速度は15-30km/h程度と高いが、回生失効は起きにくい。
交流から直流に変換する素子をサイリスタとし、位相制御を行うことで制御を行う。回生時は電動機から発生した電力を逆に交流電源にあわせてOn-Offする。電源が交流である必要があるため、交流専用車両でしか使われない。電気機関車では主回路に抵抗器をもたなくて済む関係から多く用いられてきたが、電車においては交流電化区間は回生ブレーキを積極的に利用する必要があるほどの過密区間ではないことが多いため、発電ブレーキを搭載する車両が多く、回生ブレーキを搭載するのは713系、783系など非常に少ない。打ち切り速度は低くはないが、モーター音から713系では電動機が同じでギヤ比が高い界磁添加励磁制御である205系よりも低速まで効いていることが確認できる。
マイクロコントローラとスイッチング素子の組み合わせを3つ(6素子)以上構成して直流電源から速度にあわせて三相交流を作り出し、誘導電動機を利用できるようにしたもの。回生時は速度にあわせて各相に逆電圧をかけるよう制御し、打ち切り速度は理論上数km/hまで保持出来るが、鉄道車両の中にはあえて他の制御方式の車両とタイミングをあわせるため高い速度で打ち切りを行う場合もある。交流から交流への直接変換回路は開発中であるため、電源が交流の場合は回生時に一度インバータ部で直流を作りだし、コンバータ部で再び交流にして架線に返す(加速時と役割が逆転する)。中のソフトウェアにより純電気ブレーキが利用出来る。
[編集] 関連項目
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