エレベーター

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エレベーターホール(展望エレベーター)
名古屋港ポートビル)
クリスタルエレベーター
(名古屋港ポートビル)
シースルーエレベーター
倉吉パークスクエア

エレベーター(米:Elevator, 英:Lift)は、や荷物を載せた箱を垂直または斜め・水平に移動させる昇降機である。

日本では、人が乗れない小荷物専用のものはリフトと呼ぶことが多い。英語では英米ともリフトを dumbwaiter と呼ぶ。建築基準法でもかつてはそう記載されたが、small freight elevator[小荷物専用昇降機]に変更されている。

歴史[編集]

エレベーターはすでに紀元前から存在し、アルキメデスロープ滑車で操作するものを開発していた。中世ヨーロッパでも、滑車を用いた巻上機があり、一部で利用されていた。17世紀に入ると、釣り合いおもり(カウンターウェイト)を用いたものが発明された。

19世紀初頭には、水圧を利用したエレベーターがヨーロッパに登場し、工場などで実際に使用された。また1835年に蒸気機関動力として利用したものが現れた。動力式エレベータは最初にイングランドで導入され、1840年代にはアメリカの工場やホテルでも導入が広がった[1]。ただし、水力や蒸気機関を用いたエレベーターは、非常に速度が遅く、安全性の問題があった。

これに解決の糸口を与えたのは、アメリカエリシャ・オーチス (Elisha Graves Otis、1811-1861) である。彼は、1853年のニューヨーク万国博覧会にて、逆転止め歯形による落下防止装置(調速機、ガバナマシン)を取り付けた蒸気エレベーターを発表した。オーチスは、来場客の面前で、吊り上げたエレベーターの綱を切ってみせ、その安全性をアピールした。このエレベータはニューヨーク水晶宮 (en) に設置されていた[2]

水力式や蒸気機関式は、冬季に水が凍結すると運行に支障が出た。1889年に電動機式のエレベーターの開発以降、電気の供給安定とともにエレベーターの動力源として電動式が主流となった。

電動式エレベーターは制御機構の高度化と建物内の高速な垂直方向の流通アクセス性の向上により、超高層建築物の建設に追い風をもたらした。

1880年代以降はアメリカ合衆国シカゴニューヨーク高層ビルの建築競争が始まる。特に1920年代にはニューヨーク市マンハッタン地区ではクライスラービルが高層ビルとして初めてエッフェル塔の高さを上回るほどとなり、世界一のビルの高さを競う新築超高層ビルの建設ラッシュが起き、超高層ビル建設の動きはのちに世界的に広がった。

  • 1857年3月23日、オーチスの旅客用エレベータがニューヨーク488 ブロードウェイに初めて採用される。これが世界初の実用エレベーターを設置した事例となる。
  • 1859年、ニューヨークブロードウェイに建てられたホテルに、オーチスのエレベーターが採用される。それまでホテルの上方階は、荷物の上げ下ろしが大変なので、不人気で料金も安かった。しかし実用的なエレベーターの登場以降、環境のよい上方階は宿泊客の人気を呼ぶようになった。
  • 1861年、オーチスは蒸気エレベーターの特許を取り、オーチス・エレベータ・カンパニー (Otis Elevator Company) を設立。
  • 1870年、ニューヨークエクイタブル生命ビルが旅客用エレベータを設置した世界初のオフィスビルとして建設される[3]
  • 1880年、ドイツのヴェルナー・フォン・ジーメンスが世界初の電動式エレベータを開発[4]
  • 1887年、アメリカのアレクサンダー・マイルスが自動ドアの付いたエレベータの特許を取得。
  • 1889年、パリエッフェル塔に水圧式エレベーターが設置される。
  • 1889年、オーチス・エレベータ社は、電動式エレベーターを開発。ニューヨークのビルに世界で初めて採用される。以降、ニューヨークの摩天楼化に拍車がかかっていく。
  • 1890年11月10日東京浅草凌雲閣に、藤岡市助が設計した日本初の直流電動機式のエレベーターが設置された。エレベーターは地階に据え付けた7.5馬力のモーター1基に対し、M字状にロープで連結したかご2機を同時に運転し、1階か8階だけに止る独自の構造をしていた。故障が多く、のちに撤去された。
  • 1961年8月、210m/min (=12.6km/h)のエレベーター(三菱電機製)を有する京都国際ホテルが開業。当時日本最高速。
  • 1968年4月12日、300m/min (=18km/h) のエレベーター(日立製作所製)を有する霞が関ビルディングが開業。当時日本最高速。
  • 1974年3月、540m/min (=32.4km/h) のエレベーター(日立製作所・三菱電機製)を有する新宿住友ビルディングが開業。当時世界最高速タイ。
  • 1978年4月6日、600m/min (=36km/h) のエレベーター(三菱電機製)を有するサンシャイン60が開業。当時世界最高速。
  • 1993年3月、川崎市にある川崎ハローブリッジに日本で初めてとなる立体横断歩道橋に整備されたエレベーターが完成。
  • 1993年7月16日、750m/min (=45km/h) のエレベーター(三菱電機製)を有する横浜ランドマークタワーが開業。当時世界最高速。
  • 2003年、長崎市道相生町上田町2号線に日本で初めて公道に整備されたエレベーターが完成。
  • 2004年12月31日、1,010m/min (=60.6km/h)のエレベーター(東芝エレベータ製)を有する台北国際金融センタ(通称TAIPEI101)が開業。これにより、ランドマークタワーの導入機は世界第2位となった。ただし、1010m/minの速度が出るのは昇りのみで、降りではランドマークタワーが最速。かご内の気圧制御などの初の実用例となっている。
  • 2006年1月17日、東芝エレベータが磁石を使って姿勢を安定させるエレベーターを開発した。昇降路に取り付けられたガイドレールとかごが接触しないため振動騒音が抑えられる。
  • 2006年3月1日、日立製作所が2列の昇降路を最上部と底部でつなぎ、複数のかごを循環運転させる循環型エレベーターの実証実験に成功したと発表。
  • 2014年完成予定の上海タワー(上海中心)に1,080m/min(=64.8km/h)のエレベーター(三菱電機製)が設置されることが決定している。
  • 2014年4月21日、日立製作所が従来よりモーター出力を向上しロープ重量の30%軽量化による世界最速となる1,200m/min(=72km/h)のエレベーターの開発に成功したと発表した。2016年に中国広州の高層ビルに設置される予定である[5]

  なお、1890年11月10日東京浅草の展望台「凌雲閣」に日本初の電動式エレベータが設置されたことにちなみ、日本エレベータ協会は、11月10日を「エレベータの日」としている[6]

用途種別[編集]

一般に、エレベーターとは、建築基準法第34条で規定される「昇降機」の一種別である。なお、この「昇降機」は建築基準法施行令第129条の3の規定により、大きく「エレベーター」、「エスカレーター」、「小荷物専用昇降機」の3種類に分けられている。

建築基準法で規定される「エレベーター」には以下の用途種別が定められている。

乗用エレベーター
もっぱら人の輸送を目的とするもの。マンション公団住宅、オフィスビル、商業施設、一戸建て住居などに設置されている。特に住戸内のみを昇降するエレベーターでかご床面積が1.1m2以下のものは、ホームエレベーターという(別記記載)。また、マンション等では、かご内にトランクが設置されており、寝台やストレッチャー等の利用するときに使用される。
人荷共用エレベーター
人及び荷物を輸送することを目的とするもの。法規上の取扱いは乗用と同じ。
寝台用エレベーター
主として病院養護施設等で用いられ、寝台やストレッチャーに載せた患者を輸送することを主目的としていることから、法規上の取扱は乗用より緩和されている。建築基準法施行令第129条の3により寝台やストレッチャーを日常的に使用する建物以外への設置は禁じられている。
荷物用エレベーター
もっぱら荷物を輸送する目的のためのもの。荷扱者または運転者以外の利用は不可。なお、労働安全衛生法で規定される「簡易リフト」にも、建築基準法で規定される「エレベーター」もしくは「小荷物専用昇降機」の規定が適用される。
自動車運搬用エレベーター
もっぱら駐車場に設置され、自動車を輸送することを目的とするもの。自動車の運転手以外の人だけが乗ることは禁じられている。

特殊な構造または使用形態のエレベーター[編集]

建築基準法に規定されるエレベーターは、前記に規定されるもの以外に以下のものが規定されている。

天井救出口が無いエレベーター
かごの天井部に救出用の開口部を設けないエレベーター。
オープンタイプエレベーター
昇降路の壁または囲いの一部を有しないエレベーター。
昇降行程が短いエレベーター
昇降行程が7m以下の乗用エレベーター及び寝台用エレベーター。地震時管制運転装置など一部の安全装置が緩和されている。
定格速度が速いエレベーター
かごの定格速度が240m/min以上の乗用エレベーター及び寝台用エレベーター
ホームエレベーター
かごが住戸内のみを昇降する昇降行程が10m以下のエレベーターで、かごの床面積が1.1㎡以下のもの。通常の乗用エレベーターと比較して安全装置の一部が緩和されている。また、建築基準法第12条に規定される定期報告が義務付けられていない。
かごの戸、天井などが無い自動車用エレベーター
自動車運搬用エレベーターで、かごの壁または囲い、天井および出入口の戸の全部または一部を有しないもの。
ヘリポート用エレベーター
ヘリコプターの発着の用に供される屋上に突出して停止するエレベーターで、屋上部分の昇降路の囲いの全部または一部を有しないもの。
主に鉄道会社が設置している車いす昇降装置 エスカル
段差解消機
車いすに座ったまま使用するエレベーター。かごの定格速度が15m/min以下かつその床面積が2.25㎡以下で、昇降行程が4m以下または階段および傾斜路に沿って昇降するもの。なお、荷物用のリフトはこの規定によらない。
いす式階段昇降機
階段及び傾斜路に沿って一人の者がいすに座った状態で昇降するエレベーターで、定格速度が9m/min以下のもの

非常用エレベーター[編集]

非常用エレベーターを示すプレートとかご呼び戻しボタン

建築基準法(第34条2項)により、地上からの高さが31m以上あるか、または地上11階以上(一部のマンションでは16階以上)の建築物には、一般用のエレベーターのほかに、非常用エレベーターの設置が義務付けられる。これは災害発生時に高層建築では消防隊が階段を上がって救出に向かうことが困難であるためであり、専用運転に切り替えられる装備をもつ。

非常用エレベーターは、火災等で商用電源が遮断されても運転できるよう非常電源ディーゼル発電機など)から電気が受けられ、電線も普通の火災で焼けないよう耐火電線を用いて配線する。機械室なしタイプは認められていない。またかつては他の一般用エレベーターよりも速度が遅い仕様が多かったので(現在は60m/minが下限)、乗用として使用されることはほとんどなく、通常時は荷物輸送やビルメンテナンス要員・警備員の移動に用いられてきた。そのため用途種別はほとんどの場合「人荷用」となっており、最近の一部を除き一般客の目に触れないように設置されることが多い。

なお、非常用エレベーターは設置されている建物のすべての階に停止でき(できない建物も存在する)、かつ全階のエレベーターホールにはかご位置を知らせるインジケーターを設置しなければならず、エレベーターホールも防火戸等によりを完全に遮断することができる構造が必要である。乗場には非常用エレベーターを示す、赤文字で「非常用エレベータ」、その下に最大定員と積載荷重を記載したプレートを掲示しなければならない。定員は最低で17名(積載荷重1,150kg)と定められている。消防隊専用の装備として、主に1階か避難階に設置され、押すと他のかご内および、乗場の呼びを全て解除し呼び戻しボタンのある階へ直行する「かご呼び戻しボタン」、建物管理者や警備員から鍵を借りて操作すると消防隊専用に切り替わる「一次消防・二次消防切り替えスイッチ」がある。

一次消防運転では乗場呼びが無効になり、一種の専用運転となる。二次消防運転では乗場の戸閉検出装置が無効となり、かごまたは乗場の扉が閉まらない状態でも走行可能になるが、速度は最高でも90m/minに制限される。

構造[編集]

昇降路[編集]

昇降路は別名シャフトと呼ばれ、エレベーターが上下するための何らかの構造物で覆われた縦に長い空間のことである。シャフトを構成する材料は鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造が多い。その他シャフト一体型と呼ばれるシャフト部材と機器本体を一体で工場にて製作し現場に据付するタイプもある。シャフト一体型は小規模集合住宅に適しており、昇降行程が低く、小容量の後付用以外にはほとんど用いられない。

かご[編集]

人が乗るための箱状の構造物を、エレベーターではかご(籠)と呼ぶ。英語ではCARと呼ぶ。これに人または荷物を乗せ上下させる。室内は乗客の安全を確保するため、日本では必ずドアによって閉ざされている。なお、かごドアの端部には挟まれによる事故を防ぐため、「バンパー」と呼ばれる大きな棒状の安全スイッチが取り付けられている。このスイッチが押されると閉まりかけたドアが開く仕組みになっている。エレベーターのドアを閉じさせまいと手足をドアに挟んでも、安全スイッチを押さない限り手足はドアに挟まれる。

自動式エレベータの場合、室内にはドアを開閉する「開閉ボタン」と、目的フロアを指定する「階床ボタン」(行き先階ボタン)とがある。

奥行きの短いエレベーターの場合、担架などを運び入れる際の扉を設置していることもある[7]

天井

天井には換気扇が取り付けられて、通気性が確保されている。エアコンや照明器具、シャンデリアが付いているものもある。高速エレベーターには風を切るためのカバーが付いているものもある。

エレベーターは密室なので、避難用の救出口(ハッチ)や、隣の搬器から逃げられるような仕組みをもったものもある。ただし、この救出口は中から脱出するためではなく、外から引き上げるためのものなので、外からボルトで固定されていたり施錠がされていたりするものもある。むやみにこじ開け、自力で外へ脱出しようとすると停電復旧などで突然、エレベーターが動き出すこともあるので大変危険である。このため、そのような状況になった場合には、エレベーターに備え付けられているインターホンを使用して保守会社との連絡を行った上で、救出を待つのが最善である。

百貨店などの手動式エレベータの場合は、かご内からの目視により停止階を探すので、実用的な意味でかごの扉に窓がある。

バリアフリー構造[編集]

かごの奥側の側面には鏡が設置されていることがある。これはエレベーター利用者が車いすを使用している場合、前を向いたまま室内に入ることになるため、狭い室内では車いすに乗りながら転回することができないことを考え、後ろ向きのままエレベータから降りられるように考慮して設置されているものである。

また、エレベーターには車いす利用者のために低い位置に階床ボタンや上下ボタンが設置されていることもある。これらのボタンが押された場合には一般用のボタンに比べて扉の開放時間が長くなるように、また一部の機種では扉の開閉速度が遅くなるように設定されているため、ごく一部で健常者はなるべく一般用のボタンを使うよう求める文言が管理者によって掲示されている場合がある。

車椅子で乗り込んだ際、降りるときも前進で降りられるように出入り口をかごの前後に配置した形式を「ウォークスルー式」または貫通2方向型という。貫通2方向型の機種は、大規模病院や事業所などでストレッチャーや貨物搬送の都合から採用することがある。

建物の構造上、貫通2方向型が設置できない場合などのために、前面と側面の2方向にドアが配置された直角2方向型の機種もある。駅舎やペデストリアンデッキのエレベーターに多い。乗客には降り口が判別し難い場合があるので、目的階に到着すると「後ろのドアが開きます」や「こちらのドアが開きます」などの音声によって降り口が案内される。

他には手摺を付けて車椅子で移動しやすくしている場合がある。

防犯装置[編集]

防犯のため、エレベーターのかご内の状況が外部から見えるよう、ドア(通称 : 防犯窓)を装着し、あるいはかご内に防犯カメラが設置され、内部の映像を乗り場のところに設置したモニターに映し出しているエレベーターもある。この形式のエレベーターの場合、外部からかご内の様子が見えることで犯罪いたずらを未然に防ぎ、安心してエレベーターを利用できるといった長所がある。

窓付きドアのエレベーターは、主にマンション団地などの集合住宅鉄道駅、一部の商業施設などで見かける。防犯カメラのついたものは、集合住宅や一部のオフィスビルで見受けられる。

また、深夜になると各階へ昇降する際、途中階全てに停止するエレベーターもある。たとえば1階から5階へ向かう際、2階・3階・4階で停止しドアを開ける手順を経過することになるので防犯の効果は高くなる。その反面、昇降に時間がかかり効率を悪化させるという欠点がある。

ガイドレール[編集]

ガイドレールとはエレベーターを導く軌道である。材質は鋼でできており、形状は鉄道のレールとよく似ている。それを垂直方向につなげてエレベーターの軌道を構成していく。ガイドレールは、かごの走行を円滑にし、各階に設置されたドアやカウンターウエイトなどの構造物とのクリアランス(すき間)を確保すると同時に、万一かごが落下した際に非常止め装置をガイドレールに噛ませて緊急停止させる目的もある。ガイドレールとかご、カウンターウエイトが接触する部分にはガイドシューと呼ばれる潤滑具やガイドローラーなどを設けて摩擦や振動を低減させている。

釣り合いおもり[編集]

カウンターウェイトとも呼ばれ、つるべ式エレベーターで用いられるおもりである。全体の形状は扁平で縦に長く、非常に重い鉄の塊である。つるべ式はトラクション式とも呼ばれ、ワイヤーロープの両端にかごとおもりをぶら下げてバランスを取り、ワイヤーロープ折り返し中間地点に設置された電動機(モーター)と、それに連結された滑車(シーブ)に掛かる摩擦力によってかごとウェイトを上昇下降させる方式である。この方式ではロープ両端の重量バランスが良いので、比較的小さい力でロープに吊るされた物体を上昇下降させることができる。かごとカウンターウェイトのバランスが均等にとれている状態では、人の手でエレベーターを動かすこともできるほどにモーターに掛かる負担は小さくなる。カウンターウェイトの総重量は無積載状態のかごの質量にかご積載容量の50%を付加した重量になるように設計されている。

ワイヤーロープ[編集]

ワイヤーロープはトラクション式エレベーターなどで用いられる巻上索である。材質は炭素鋼が用いられ、建築基準法によって安全率を10以上確保することが義務付けられている。ロープの構造は、まずストランドと呼ばれる細い線をより合わせたものがあり、さらにそのストランドを8本ほどより合わせてできている。柔軟性を保つために、ロープの中心部にはマニラアササイザルアサなどの硬質繊維芯が入っている。太さは直径10mm・12mm・16mmなどがあり、かご積載量に応じて使用する本数が増えたり、より太いものが使われる。トラクション式ではロープの両端にかごとカウンターウェイトが吊るされていて、それらの連結部にはソケットと呼ばれる器具にバビットメタルを注入するという末端処理が施されていて、連結強度を確保している。

高層ビルのエレベーターでは使用するワイヤーの質量が多く、そのままの状態では最上下階近辺ではかご側とカウンターウェイト側の重量がワイヤーロープの自重によってアンバランスになり、巻上機のシーブから滑り落ちてしまう恐れがある。そのアンバランスを解消するために、かご底部とカウンターウェイト底部との間には、コンペンセーティングロープあるいはコンペンセーティンチェーンと呼ばれる、重量バランス調整用のワイヤーロープやチェーンが渡されている。

映画等に登場する、エレベーターのワイヤーが切れて高速で落下するシーンには誤りが多い。エレベーターのかごを吊り下げるワイヤーの強度は定員の約10倍の重さに耐えられる強度を有することが義務づけられており、ワイヤーの使用本数も3本以上いるため、その全てが切断すること自体が極めてまれである。万一、切断してかごが落下に転じても、調速機ロープが同時に切断されない限りは、定格速度の1.4倍で非常止め装置が作動して急停止する。つまり、映画『マトリックス』のワンシーンのように爆破されたり、主ロープと調速機ロープが同時に破断されない限り、落下事故は起き得ない。

なお、2011年7月26日には東京メトロ有楽町線副都心線平和台駅でエレベーターのワイヤー3本が全て切れて数m落下する事故があり、乗っていた50歳代の女性が尻や肘に2週間の打撲傷を負うという事故が発生している[8]。1945年7月28日、エンパイア・ステート・ビルディングに航空機が激突したことによってエレベーターのかごが300メートル以上落下する事故が起こったことがあるが、乗っていた従業員は生存していた。

以前は「非常止め装置が調速機ロープを切断されるなどして作動しなくても、エレベーターはエレベーターシャフト周壁との間隙が小さいことにより、かごにかかる空気抵抗が大きいため、ある程度の減速効果を有する」と言われていた[要出典]が、東芝エレベーターテスト塔での落下事故で、減速効果はほとんどないと証明された。このような効果を得るには、シャフト内の空気量が不変でなければならない。

調速機[編集]

調速機はガバナーまたは非常止め装置とも呼ばれ、万一、主ロープが切断された場合でもかごを緊急停止させる機能をもつ。通常、調速機は機械室やピットに設置されることが多い。

調速機の仕組み
調速機は、かごとロープ(主ロープとは別)を伝って連動しており、かごが動くと調速機のプーリーが従動して回転する。調速機ロープの終端部はかご側に位置し、その終端部に鋭いクサビ型の金属片が装着してある。万一、主ロープの切断などによってある速度(建築基準法の規定では定格速度の1.4倍)でかごが落下すると、調速機が遠心力によって機能し調速機ロープをロックさせる。ロープがロックされるとクサビ型の金属片はかごとレールの隙間に挟まり込み、かごを停止させる仕組みになっている。

緩衝器[編集]

サスペンションとも。最下階のさらに下部および最上階の上部(ピットと呼ぶ)には緩衝器バネ油圧ダンパー等)が付いており、非常止め装置を使用しても減速しきれない場合の衝撃をやわらげる仕組みになっている。エレベーターの速度が分速60m以下か油圧式エレベーターのものはバネ緩衝器、分速60m以上のものは油圧ダンパーを使用している。

ドア[編集]

注意書き
(写真は三菱電機ビルテクノサービス(菱電サービス時代)のデザインで、主に古い三菱電機製のエレベーターに貼られている。)

日本ではドアはかご側と乗場側とにあり、乗場側はインターロックと呼ばれる装置で施錠され、外部からの解錠は専用の器具を使用しない限りできない。その上、かご側及び全階の乗場側に戸閉めを検出するスイッチがあり、すべての扉が閉じていなければ起動できないように回路が構成されている。縦開き式など特殊なエレベーターを除き、かご側のドアだけに駆動装置がある。停止階に到着したエレベーターは、かごドア側の解錠装置と乗場ドアのインターロックがかみ合い、乗場のドアはかごドアの力によりインターロックによる施錠が解放され、開閉する。

なお、古いものでは手動式もあり、また外国ではかごにドアのないものも少なくない。

外観としては横方向に動くサイドスライドドアが主流となっている。サイドスライドドアにはサイドオープン式(片開き)とセンターオープン式(真中開き)がある。なお、ドアを開かせるには昇降路面積が余分に必要になるので、マンションなどの小型機種や病院などの寝台用では奥行が取れるサイドオープン式が好まれており、デパートや大規模施設などでは見た目の良さや、乗り降りのしやすさなどからセンターオープン式が好まれているようである。特大貨物用にはドアが上下方向に動くアップスライド式ドアが採用されている場合があるが、このドアは乗降中に戸が頭部に衝突したり戸が下方から出てきて危険であるので、荷物用・自動車用以外には使用できない[9]。その他のドアとしては、円形のかごに対応する円弧状ドアや、格子状の折りたたみ式ドアなどがある。

地震感知器[編集]

エレベーターの地震感知器には、検出する地震波の種類によって大別して3種類がある。

  1. 初期微動(P波 : 高速で伝わる縦波)を検知し、あるいは主要動(S波 : P波に続いて到達する横波)のレベルが低いうちに検知して最寄階に停止後、震度4以上(以降震度は目安)の大きな揺れがなければ一定時間後に自動復旧するもの。
  2. 震度4以上の揺れを検知して、最寄階に停止し運転を休止するもの。この場合保守会社の作業員が機器の安全を確認後地震感知器を復旧する。
  3. 更に大きな揺れ(震度5クラス)を検知した場合でなおかつ最寄りの階まで数階離れている場合(急行ゾーン)は、途中で急停止させる。保守会社またはビルの技術者の指示により釣り合いおもりと反対方向の最寄階まで極低速で運転する。

ただし、いずれも地震の揺れにより機器が損傷し地震感知器とは別の安全装置が働いた場合は、閉じ込められることもある。原因は、乗場側の戸閉検出装置がかごの接触により誤動作する場合が大半である。この場合には途中で急停止するので、かご内に閉じ込められることになる。一度この状態になると、エレベーターの保守会社が現地に出向かないと復旧することができないので、主に保守会社か消防レスキュー隊による救出に数時間から丸一日以上を要することもあり、地震が発生する度に大きな問題になっている。

駆動方式[編集]

主な駆動方式として、ロープ式と油圧式がある。

ロープ式
昇降路の直上や昇降路内に設置された巻上機の駆動力を用い、ロープで接続されたかごと釣り合いおもりをガイドレールに沿って上下させるトラクション式が主流だが、ホームエレベーターなど小型のエレベータではロープをドラムに巻き取る巻胴式もある。
油圧式
荷物用や構造上建物の上部に電動機やその制御装置などを設置するための機械室を設けることができないところに置かれるエレベーターには、油圧ジャッキで持ち上げるものもある。油圧式は、電動ポンプを駆動させ、油圧ジャッキに作動油を送り込んでかごを持ち上げる方式である。直接油圧ジャッキで持ち上げる直接油圧式は荷物用に多く、油圧ジャッキでカウンターウェイトを上下させてかごを上下させる間接油圧式は乗用に多い。なお、ジャッキでかごを持ち上げる油圧式や水圧式エレベーターには間接タイプを除きカウンターウェイトは存在しない。油圧式は機械室なしエレベーターの登場により、乗用の需要は減っている。

珍しいものでは、かごに取り付けられたナットを高速回転させて昇降路に取り付けられたボルトを利用し昇降するスクリュー式、リニアモーター式や、かごに取付けたタイヤを電動機で駆動させる自走式などがある。工事用の仮設エレベーターには、ピニオンラック方式と呼ばれる歯車式もある。

制御方式[編集]

停止階制御[編集]

1つの建物で複数のエレベーターが並んでいる場合、それらを同じように各階に止めていくのは効率が悪い。特に、デパートなど、特定のフロアなどに客が集中する場合には、その階へ優先的に輸送することが望ましい。そのため、エレベーターの制御の単独化や、特定階の不停止制御(フロアカット)を行い、一部の階だけに停止させる急行運転(あるいは直通運転)を行なうこともしばしば見受けられる。また、事務所ビルでは、最終退館者が防犯機器を操作した時点でその階を通過し、最初の出勤者が入館手続きを取ると停止するというシステムを採用するケースもある。最近では当たり前になった屋上階には停止しないというシステムも、防犯上の事情から実行されている。

乗り心地[編集]

エレベーターに乗ると、身体に押し付けられたり上に引っ張られたりするような感覚がある。これはエレベーターの速度の変化によって生ずる加速度が搭乗者に働くからである。速さが激しく変わるようなエレベーターは搭乗者にとって不快である。また、かごをガイドするガイドレールの取り付け方によっては横方向の揺れが発生し、乗り心地は大きく変化する。超高層ビルで運用されるエレベーター(最下階から最上階まで直通するような速度の速いエレベーター)ではレールの歪みやレール取り付け方法、加速度のコントロールに細心の注意が払われている。横浜ランドマークタワーのエレベーターは床面に立てた硬貨が倒れないほどに乗り心地がよいといわれる[1]。これは、加速制御の巧みさだけでなく、ガイドレールの配置や歪みにまで丹念に作りこまれているからである。

制御方式の歴史[編集]

昭和40年代頃までは半導体技術が現在のように発展していなかったために、エレベーターの制御回路にはリレーシーケンス制御が採用されていた。今では到底考えられないが、速度制御、ドア開閉制御、呼び出し制御、混雑回避制御などありとあらゆる制御回路が数百個から数千個にも及ぶ大量のリレー群とタイマーリレー、その他機械式接点によって構成されていた。リレー式回路は主に手作業で制御回路を構築するので、回路設計、回路変更に多大な費用と労力が掛かるものが多かった。さらに接点の接触不良や焼き付きなどの動作不良も多く、メンテナンスマンを大いに悩ませた。

昭和50年代に入ると半導体産業やコンピューターテクノロジーが隆盛し、エレベーターの制御回路にもマイコン方式が取り入れられた。これによって機器設置、回路設計の負担が減り、高品質で多彩な運転制御が可能になった。特にモーター制御では加減速制御の品質が一段と飛躍した。巻上げ電動機には1980年代前半まで、高速のものには直流電動機が、低速のものには誘導電動機が用いられ、速度制御方式はそれぞれワードレオナード方式極数切替法、次いでパワーエレクトロニクスの発展によりサイリスタなどによる電動機入力電圧制御に移り変わった。1983年交流電力のVVVFインバータ制御がエレベータ向けにも実用化された。それ以降、高速低速ともにインバータによる誘導電動機駆動を経て、現在では永久磁石同期電動機駆動の巻上機が主流となった。

一方、油圧式エレベーターでは流量制御バルブによる制御が用いられ、油温や積載荷重により走行性能の変動を受けやすかったが、1980年代後半以降はマイコン制御化やバルブの改良により解消された。また、1990年代に入ると規格型エレベーターを中心にVVVFインバータ制御方式が広く普及し、乗り心地向上や省エネ、走行時間短縮を実現している。

これらの技術革新によって、現在では各階への停止位置をミリ単位で微調整することが可能とされている。

なお、半導体制御化が進んでいるが、重要な箇所にはリレーが残っている。リレーは信号側と動作側が電気的に絶縁されているので大電流に強いこと、電磁波ノイズに強いこと、昔に比べ動作の信頼性が高くなっていることもあいまって、現在でも主回路、ドア制御回路などの重要な箇所にリレーを部分的に使用しているメーカーは多い。

定員[編集]

定員と積載量の記載例
銀座奥野ビル)
大阪の梅田阪急ビルのシャトルエレベータ室内(ホールから)定員は80名、5基が稼働している

日本では建築基準法の規定により、人間1人を65kgと見積もって定員を計算する。現在標準的にラインナップされる定員容量は以下のとおりであり、かごの大きさは、小型で(縦・横ともに)1m弱、大型では荷物用として2m以上のタイプもある。太字がレディーメイドで対応できる定員であり、それ以外はオーダーメイドとなる。

  • 2人 150kgホームエレベーターのみ。)
  • 3人 200kg(ホームエレベーター・小規模建物用小型エレベーター。)
  • 3人 250kg(一部の小規模共同住宅のエレベーターに採用。)
  • 4人 280kg(ごくまれなタイプ/一部の古いエレベーター。)
  • 4人 300kg(一部の中低層一般ビルのエレベーターに採用。)
  • 4人 320kg(一部の中低層共同住宅のエレベーターに採用。)
  • 5人 350kg
  • 6人 400kg(古いエレベーターのみ。)
  • 6人 450kg(一部のマンションや中小規模ビルなどのエレベーターで採用。)
  • 7人 500kg(基本的に古いエレベーターのみ。)
  • 8人 550kg(基本的に古いエレベーターのみ。)
  • 9人 600kg(マンションのエレベーターのほとんどがこの定員。)
  • 10人 650kg(ごくまれなタイプ。)
  • 10人 700kg(ごくまれなタイプ。)
  • 11人 750kg(公共施設や駅のエレベーターのほとんどがこの定員。最も一般的な定員。最も釣り合いおもりとバランスがとれる定員である。)
  • 12人 800kg(ごくまれなタイプ。)
  • 13人 850kg(一部のマンションで大きい荷物が運べるエレベーターはこの定員。)
  • 13人 900kg
  • 14人 950kg(基本的に古いエレベーターのみ。)
  • 15人 1,000kg(一部の百貨店、公共施設や大型スーパーなどのエレベーターで採用。)
  • 16人 1,050kg(例として愛宕グリーンヒルズMORIタワーのオフィス用など。)
  • 16人 1,100kg
  • 17人 1,150kg(非常用エレベーターの最低基準で、ほとんどがこの定員。)
  • 18人 1,200kg(ストレッチャー対応として一部の駅の乗用エレベーターなどに採用。)
  • 19人 1,250kg(ごくまれなタイプ。例として西宮市役所横浜ロイヤルパークホテルのエレベーターなど。)
  • 20人 1,300kg(人荷用として高層マンションや公営住宅のエレベーターやストレッチャー対応として一部の駅の乗用エレベーターなどに採用。)
  • 20人 1,350kg
  • 21人 1,400kg(ごくまれなタイプ。例として神戸市立須磨海浜水族園本館エレベーターなど。)
  • 22人 1,450kg(例としてJRセントラルタワーズのパノラマサロン直通エレベーター、新宿センタービル六本木ヒルズ森タワーのエレベーターなど。)
  • 23人 1,500kg(ごくまれなタイプ。例としてサンシャイン60のオフィス用、ステーションビルMIDORIのエレベーターなど。)
  • 23人 1,550kg(ごくまれなタイプ。例として岐阜高島屋のエレベーター。)
  • 24人 1,600kg(大型スーパーやショッピングモールのエレベーターのほとんどがこの定員。一部の百貨店やホテルのエレベーターで採用、2,000kgには東京都庁舎の非常用。)
  • 25人 1,650kg(一部の百貨店のエレベーターや横浜・八景島シーパラダイスアクアミュージアムのエレベーターで採用。)
  • 26人 1,700kg(一部のオフィスビルやホテルの非常用エレベーターなどで採用。)
  • 26人 1,750kg(一部の病院・福祉施設の乗用・人荷用エレベーターなどで採用。)
  • 27人 1,800kg(サンシャインシティの一部のエレベーター、東京スカイツリーの日本最長を誇る業務用エレベーターなど。)
  • 28人 1,850kg
  • 29人 1,900kg(ほとんどが荷物用や人荷用。)
  • 30人 1,950kg
  • 30人 2,000kg(百貨店のエレベーターのほとんどがこの定員。)
  • 31人 2,050kg(泉ガーデンタワーの非常用、あべのハルカスの展望台直通用。)
  • 32人 2,100kg
  • 33人 2,150kg(ミッドランドスクエアのダブルデッキエレベーターで採用。)
  • 33人 2,200kg(一部の病院の非常用エレベーターで採用。)
  • 35人 2,300kg(TOCビルの人荷用エレベーター。)
  • 36人 2,350kg(東京ソラマチの30・31階レストラン直通エレベーターなど。)
  • 36人 2,400kg
  • 38人 2,500kg
  • 40人 2,600kg(東京スカイツリーの天望シャトル、シャトルエレベーターなど。)
  • 40人 2,650kg
  • 42人 2,750kg
  • 43人 2,800kg(東京ミッドタウン・タワーのオフィスシャトルエレベーター。)
  • 44人 2,900kg(ごくまれなタイプ。例として渋谷ヒカリエのシャトルエレベーターなど。)
  • 46人 3,000kg(一部のショッピングモールのエレベーターで採用。)
  • 49人 3,200kg(ごくまれなタイプ。例としてイケア神戸の駐車場行など。)
  • 50人 3,250kg(ほとんどが荷物用や人荷用。)
  • 50人 3,300kg
  • 60人 3,950kg(あべのハルカスのシャトルエレベーター用。)
  • 63人 4,100kg(横浜赤レンガ倉庫1号館の人荷用エレベーター用。)
  • 67人 4,400kg(新宿オークタワーのシャトルエレベーター用。)
  • 73人 4,750kg(例として大塚国際美術館の人荷用エレベーター。)
  • 75人 4,900kg(住友不動産新宿グランドタワー泉ガーデンタワーのシャトルエレベーター用。)
  • 77人 5,000kg(例として、川崎人工島・風の塔の人荷用エレベーター用。)
  • 80人 5,250kg(例として、梅田阪急ビルのシャトルエレベーターやゴンドラエレベーターなどで採用。)

設置[編集]

コモアしおつへ伸びる斜行エレベーター
成田国際空港に設置されているオーチス製水平エレベーター
空母「ジョン・C・ステニス」のエレベーター

オフィスビル等の高層の建築物には、エレベーターが必須である。日本などでは高齢化などのためバリアフリーの重要性も高い。また、近年経済発展のめざましい中国はビルなどの建設ラッシュであるため、エレベーターを製造するメーカーの競争は激しい。各メーカーでは差別化を図る意味で、さまざまな機能などが付けられたエレベーターが製造され存在する。

構造と機能[編集]

  • クリスタルエレベーター - 1975年封切のアメリカ映画『タワーリング・インフェルノ』以降、日本ではホテルやショッピング施設などに採用されることが多くなった。
  • 時速60.6km(分速1,010メートル)まで加速する、世界で第1位の最高速エレベーター台北101・東芝製)。
  • 水平エレベーター - 縦向きにではなく、横向きに動く。
  • 階間調整機能付ダブルデッキエレベーター - かごが2階建てになっているダブルデッキ・タイプのエレベーターもある。多くの場合、かご自体は、建物の2階分に相当する単位で昇降し、1階部分は常に奇数階に、2階部分は常に偶数階に、それぞれ停止する仕組になっている。昇降路(シャフト)あたりの輸送力が、1.5倍から1.8倍程度に向上するというメリットがあり、建物のフロア面積を効率的に利用できる。一方で、奇数階・偶数階間の移動ができない、一方の階の利用者が他方の階の利用者の乗降を待つ必要がある、といったデメリットもある。昇降人口が多い大規模高層ビルで導入されることが多い。近年の導入事例では、六本木ヒルズ森タワーミッドランドスクエアのエレベーターがこれに該当する。なお、森タワーのエレベーターは、建物の階高の違いを吸収するため、かごの上下階の間隔が可変であるという特徴をもつ。
  • 近畿日本鉄道橿原神宮西口駅福神駅名古屋鉄道鳴海駅東日本旅客鉄道(JR東日本)の八日市場駅には「構内外共用型」というエレベーターが存在する。これは、1台のエレベーターで「駅外と改札外コンコース」「改札内とプラットホーム」の移動のみを可能とするものである。乗った場所により降りられる場所が決められており、「駅外とホームや改札内」や「改札外とホーム」などの直接移動はできない。通常、「改札内」と「改札外」は同一平面となるため、かごの扉は2つある場合が多い。本来2台以上が必要なものが1台ですむため、設置やメンテナンスのコストが大幅に節減できる反面、利用者はかご呼び出しから乗れるまでの時間がかかる場合がある。そのため、エレベーターの利用が少ない、小規模な駅に設置される場合が多い。
  • 暗証番号を入力しないと呼出しボタンが機能しないエレベーター。認知症の入居者が不用意に外出してしまうのを防ぐため、特別養護階のある老人ホームに設置されているほか、建物所有者の自宅階や店舗・病院の従業員などといった、特定の人物以外の利用を制限したい場合にも用いられる。逆のパターンとして、かご内の操作盤で特定のコマンドを入力することによって着床を行う階が設定できるエレベーターもあり、やはり特定階への部外者の立入を制限したい場合に設定される。企業の本社ビルで特定階が丸ごと役員室になっている場合など、外来者も使用するエレベーターでこの機能が持たされる。
  • 自宅のトイレをエレベーターに設置する[要検証 ](例えば1階にトイレがある複数階の家に住んでいて、2階で過ごすことが多い場合、用を足すのに毎回1階に降りるのは面倒であるため、エレベーター内にトイレを設置すれば、その手間が省ける)。
  • 常に人の動きを感知し、激しい動きがあると注意を促すアナウンスが流れるもの。揺れがひどい場合は、ブザーがなり一番近い階に緊急停止するもの。エレベーター内で争い等が起きたときや、防犯に有効。
  • 航空母艦には、格納庫甲板と飛行甲板の間で艦載機を昇降させる、大きくて重いエレベーターがある。
英空母イラストリアスのエレベーター

日本での法規制[編集]

日本で昇降機(エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機等)を設置する場合は、建築基準法の規定に基づく確認・完了検査を受けなければならない。しかし、建築基準法で定める昇降機であるにもかかわらず、建築基準法の規定に基づく確認・完了検査を受けずに設置されている昇降機を違法設置エレベーターという。

特に工場や作業場等に多数設置されている、労働安全衛生法で規定される荷物用エレベーターや簡易リフトは、労働安全衛生法と共に一般のエレベーターと同様に建築基準法の規定も適用される。特に労働安全衛生法で規定されている簡易リフトは、かごの床面積により建築基準法で小荷物専用昇降機に規定されるものを除き、その多くは建築基準法に規定されるエレベーターの基準が適用されるが、その基準を満たしていないものが数多く設置されている。

さらに、昇降路の壁が設定されていないなど建築基準法はもちろん、労働安全衛生法の簡易リフトの規定すら満たしていない非常に危険な違法設置エレベーターも数多く設置されており、毎年全国の工場等で多数の死傷事故が発生している。こうしたことから、全国の特定行政庁及び労働基準監督署は、違法設置エレベーターに関する周知活動等を行っている。

寿命[編集]

エレベーターの寿命は機器全体として考えた場合は長く、25年前後使用されることが多い。法定償却耐用年数は17年と定められている。ただし、電子部品やワイヤー、軸受などはほぼ10年など、個々の部品の寿命は一般的な物理的寿命と大差ない。寿命を迎えた場合には、一式取り替える撤去新設工事だけでなく、リニューアル・延命工事も広く施工され、巻上機やかご・レールはそのまま使用するが、電動機や制御機器を最新型のものに取り替えて最新型と同等の性能を発揮できるようにする。特に1980年代以前に製造されたエレベーターは遅くとも2012年までに部品供給の停止が予告されている[10][11][12]ので、リニューアルは必須となる。

2008年現在、稼働中のものとして日本最古のエレベータは、京都市に店を構える東華菜館(オーチス社製)(ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計)に設置されているもので、1926年大正15年)から稼動している。

運用[編集]

乗務員[編集]

主として1990年代終盤まで、百貨店等のエレベーターに女性のオペレーターがかご内に乗り込んで行き先階を尋ね操作する。乗務員はエレベーターガールと呼ばれる。男性エレベーターボーイもいる。

2000年以降は一般のビルと同じ無人式(自動式)が多くなった。ただし、一部の百貨店や東京タワー等では、自動式でも乗務員がいる場合がある。

避難時[編集]

基本的に火災時の避難には使用しないことと表示されているものが多い。しかし、マンションの高層化に伴い東京消防庁は停電対策の予備電源や防災センターとの通信設備などの厳格な要件を課した上で条件を満たす場合には火災時の避難にエレベーターを使うよう指導することとなった[13]

メンテナンス[編集]

エレベーターは可動や経年変化によって消耗する部品があり、定期的なメンテナンスを必要とする。メンテナンスを行わないエレベーターは重大な事故を招きかねない。メンテナンスはメーカー自身、もしくは系列のメンテナンス会社が行うケースがほとんどである。一方、メーカー系列に属さない独立系メンテナンス会社もある。1980年代に独立系メンテナンス会社に対するメーカーの部品売り渋りが問題となり、独立系メンテナンス会社がメーカーを相手取って裁判を起こし、10年がかりで勝訴した。しかし、メーカーと独立系メンテナンス会社との関係が険悪なのは現在も変わらず、2009年に国土交通省が行った実態調査でこれが浮き彫りになった[14]。独立系メンテナンス会社は業界団体の日本エレベーター協会からも事実上排除されていおり、加盟している会社はほとんどない。

日本での保守契約形態[編集]

  • POG(パーツ・オイル・グリース)
その名の通り、電球類などの消耗部品(パーツ)・潤滑油(オイル・グリース)の取り替え及び補給のみを保証範囲とする保守契約。主要部品の取り替えは、個別に有償にて取り替えを発注することになる。
  • FM(フルメンテナンス)
前述のPOG契約に加えて、意匠部品以外の主要部品も保証範囲としている保守契約。POG契約では個別の有償対応となる主要部品の取り替えを、保守会社側の立案する保全計画に基づいて定期的に実施することにより、各機器の状態の悪化を抑えられるというメリットがある。

日本でのメンテナンス形態[編集]

名称[編集]

この機器の名称は、「エレベーター」と表記されたり「エレベータ」と表記されたり、表記が一貫していない。しかし、JIS(日本工業規格)では「エレベータ」と表記している。

  • JISの中には、用語や記述記号についての定めもある。
    • JIS Z 8301 「規格票の様式及び作成方法」附属書G(規定)文章の書き方、用字、用語、記述符号及び数字 6.2 c および表G.3。
  • 一般には、外来語で英語の語尾が「-er」「-or」「-ar」の場合、長音符号で表記するので、「エレベーター」となる。しかし、JISでは、学術用語や別の規格がある場合以外は、その言葉が3音節以上であれば、長音符号を省くのが原則となっている。したがって、JISでは、エレベーターを「エレベー」と表記する。これらは、どちらが正しくてどちらが誤りというわけではない。ただし、製造メーカーは、JISに従い「エレベータ」と表記することが多い。放送や新聞などの報道では「エレベーター」と表記される。

JISでの一般的な表記方法はJIS独自のものではなく、国語審議会が審議して内閣が定めた内閣告示に基づいている。外来語の表記は『内閣告示第二号』(平成3年6月28日)によって定められており、その「用例集」には、「エレベーター/エレベータ」の両方が記載されている。JIS C 3408「エレベータ用ケーブル」などのJIS規格では、「エレベータ」を採用している。

なお、業界団体名は「社団法人日本エレベー協会」から、2012年に一般社団法人に移行したのを機に「一般社団法人 日本エレベーター協会」と改称、公式サイト内では社名などの固有名詞を除き「エレベーター」「エスカレーター」と表記している。東芝エレベー、日本オーチス・エレベーも同様である。

著名なエレベーター[編集]

日本[編集]

ドイツ[編集]

製造メーカー[編集]

主要な会社ではエスカレーターも製造している。

日本でのシェア[編集]

2007年現在、日本国内での総据付台数ベースでのシェアは以下のとおり。

小荷物専用昇降機は上記の5社も生産している。 メーカーの選定に際しては、建物所有者の資本系列や融資金融機関の系列が絡むことが多い。例えば、丸の内ビルディング横浜ランドマークタワーなど三菱地所が所有する建物では、必然的に三菱製が採用されることになる。ただし横浜ランドマークタワーのプラザ棟のように、メーカー名が伏せられているがパネル形状から明らかに日立製とわかるなど例外がある。また、ラゾーナ川崎のように、東芝の土地に出来た建物も東芝エレベーターが使われている。逆に大手スーパーマーケットチェーンなどでは、店舗によってさまざまである。

開発環境[編集]

エレベーターを開発する際には、テストする際に実際のビルと同じ高さの建設物が必要となる。そのため、各社ではテスト塔とよばれる高い建設物を作り、製品の安全性、機能性などをテストしている。

主な事故[編集]

  • 2003年10月17日福島県安達郡本宮町(現 : 本宮市)の万世地下歩道で、利用者が幼児2人の乗ったベビーカーと共にエレベーターへ乗り込もうとしたところ、ベビーカーが扉にはさまり、そのままの状態で上昇した。これによりベビーカーは損壊、幼児1名がかごの下からシャフトへ転落、負傷した。事故原因は制御回路の設計ミスと安全装置の不備である[15]
  • 2004年新潟県中越地震長周期地震動によって、震度3だった東京都港区にある六本木ヒルズでエレベーター6機が損傷した。
  • 2005年5月28日福岡県福岡市博多区の那珂第一市営住宅1棟(13階建て)で、シャフト上部の機器交換作業中に、かごを一時的に吊り下げる鎖が切れ、作業員2人を乗せたかごが12階から1階まで落下した。これにより作業員のうち1人は死亡、もう1人は足の骨を折る重傷を負った。本来であれば非常停止装置などが作動し途中で停止するはずだったが、動作は確認されなかった。
  • 2006年6月、東京都港区にある23階建ての住宅「シティハイツ竹芝」で高校2年生の利用者が篭と建物に挟まれる死亡事故が発生し、当該エレベータを製造したシンドラーエレベータ捜査当局が強制捜査を始めた。これをきっかけに国内外各地で、ドアが開いたまま上昇、閉じ込め、天井への衝突など同社製エレベータの動作トラブルが相次いで報じられた。また、2012年10月31日には石川県金沢市アパホテル金沢駅前の同社製エレベーターで同様の死亡事故が発生している[16]

派生的表現[編集]

  • スポーツ界で、大相撲番付幕内十両を行ったり来たりする力士や、プロ野球で1軍と2軍を行ったり来たりする選手、JリーグでJ1とJ2を行ったり来たりするチーム等が、エレベーターにたとえられる場合がある。

脚注[編集]

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  1. ^ Landau & Condit 1996, p. 35; Abramson 2001, p. 84
  2. ^ "Skyscrapers," Magical Hystory Tour: The Origins of the Commonplace & Curious in America (September 1, 2010).
  3. ^ Equitable Life Assurance Society of the United States (November 1901). “The Elevator Did It”. The Equitable News: An Agents' Journal (23): 11. http://books.google.com/books?id=jmwPAAAAYAAJ&pg=RA1-PA43 2012年1月10日閲覧。. 
  4. ^ The History of the Elevator — Elisha Otis
  5. ^ “「世界最速エレベーター」 時速72キロ”. NHK WEB NEWS. (2014年4月21日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140421/k10013905481000.html 2014年4月24日閲覧。 
  6. ^ 社団法人 日本エレベータ協会|昇降機百科|エレベーターの歴史・変遷
  7. ^ @nifty:デイリーポータルZ:エレベーターの裏側に興奮する
  8. ^ メトロ平和台駅エレベーター 全ロープ破断 落下、停止[リンク切れ] - 東京新聞 2011年7月29日)
  9. ^ 建築基準法施行令第129条の6の解説設計上の留意事項
  10. ^ エレベーター部品供給停止のお知らせ 三菱電機ウェブサイト
  11. ^ 部品供給停止のお知らせ 日立製作所ウェブサイト
  12. ^ 部品供給停止のご案内東芝エレベータウェブサイト
  13. ^ “火災、高齢者はエレベーター避難 東京消防庁が方針転換”. 朝日新聞. (2013年9月24日). http://www.asahi.com/national/update/0923/TKY201309230322.html 2013年9月24日閲覧。 
  14. ^ 「エレベーターの保守管理等に関する実態調査」の結果について 国土交通省2009年7月7日報道発表資料
  15. ^ 一般国道4号本宮町万世地内「万世地下歩道エレベ-タ-」事故原因の調査結果及び安全装置の改善について-国土交通省東北地方整備局
  16. ^ ホテルの業務用エレベーターに挟まれ女性死亡 読売新聞 2012年10月31日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]