アサ

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アサ
分類
:植物界 Plantae
:被子植物門 Magnoliophyta
:双子葉植物綱 Magnoliopsida
:イラクサ目 Urticales
:アサ科 Cannabaceae
:アサ属 Cannabis
  • C. sativa L.
  • C. indica Ram.
  • C. ruderalis Janisch.
学名
Cannabis L.
和名
アサ
英名
cannabis, hemp

アサ)は中央アジア原産とされるアサ科で一年生の草本で、大麻(たいま)または大麻草(たいまそう)のこと。この植物から採れる麻薬を特に大麻(マリファナ)と呼ぶ。

広義にはアサは麻繊維を採る植物の総称であり、アマ科の亜麻やイラクサ科の苧麻(カラムシ)、シナノキ科黄麻(ジュート)、バショウ科マニラ麻リュウゼツラン科サイザル麻がアサと呼ばれるが本項目とは全く別の種類の植物である。

目次

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大麻の種類による違い
Cannabis
Cannabis sativa L.
C. sativa subsp. sativa
C. sativa subsp. sativa var. sativa
C. sativa subsp. sativa var. spontanea
C. sativa subsp. indica
C. sativa subsp. indica var. indica
C. sativa subsp. indica var. kafiristanica

[編集] 概要

麻の葉

雌雄異株。高さ2-3m、品種や生育状況によりさらに高く成長する。かつてはクワ科とされていたが、托葉が相互に合着しない、種子胚乳がある等の理由でアサ科にまとめられ、クワ科と区別される。ヒマラヤ山脈の北西部山岳地帯が原産地といわれている。生育速度と環境順応性の高さから、熱帯から寒冷地まで世界中ほとんどの地域に分布している。日本にも古来より自生しており、神道との関係も深い。生育速度が速い事から、忍者が種を蒔いて飛び越える訓練をした逸話などが残っている。

古代から人類の暮らしに密接してきた植物で、世界各地で繊維利用と食用の目的で栽培、採集されてきた。種子果実)は食用として利用され、種子から採取される油は食用、燃料など様々な用途で利用されてきた。20世紀初頭より、米国や日本を始めとしたほとんどの国で栽培、所持、利用について法律による厳しい規制を受けるようになる。近年この植物のから取れる丈夫な植物繊維エコロジーの観点から再認識されつつある。繊維利用の研究が進んだ米国、欧州では、繊維利用を目的とし品種改良した麻をヘンプ(hemp)と呼称し、規制薬物および薬事利用を指し使用される事の多い植物名、カナビス(cannabis)と区別している。

にはテトラヒドロカンナビノール(THC)が含まれ、これをヒトが摂取すると陶酔する。以外の、薬効成分を多く含んだ花穂や葉を乾燥した物(通称マリファナ)や、同部分から抽出した樹脂(通称ハシシ)はTHCを含有しており、ロシア、アフリカ、オーストラリア、ヨーロッパの一部を除く世界中で規制薬物の対象とされる。 医療目的としても価値があり、古くから果実麻子仁(マシニン)という生薬として用いるほか、葉や花から抽出した成分を難病患者に投与する方法も研究されている。

[編集] 栽培の歴史

古くから栽培されていた植物の一つであり、元々は中東で栽培されていた物と考えられている。日本では紀元前から栽培され、『後漢書』の東夷伝や『三国志』のいわゆる魏志倭人伝に記述が見られる。日本ではの題材になっているほか、風土記にも記されている。戦国時代木綿の栽培が全国に広まるまでは、高級品のを除けば、麻が主要な繊維原料であり、糸、縄、網、布、衣服などに一般に広く使われていたし、木綿の普及後も、麻繊維の強度が重宝されて、特定の製品には第二次世界大戦後まで盛んに使用されていた[1]。また、麻の茎は工芸品に使われ、種子は食料になっていた[2]神道では神聖な植物として扱われ、日本の皇室にも麻の糸、麻の布として納められている。

中国では前6000年に食用として使用され、前4000年に布地、前2727年に薬用として使用される。前1500年から食用・繊維のために栽培されていたようである。紀元前5世紀歴史家ヘロドトスは、スキタイ人が大麻を娯楽に使っている様を叙述している。

「麻」という漢字は、草(林)が乾燥小屋(广)に収められている様子を示している。伝説では前2700年の古代中国の蒼頡(そうけつ)という神が創ったといわれている。

[編集] 植物としての特徴

栽培植物としては非常に急速に成長する。果実には薬効がある。特に、葉や花に含まれるテトラヒドロカンナビノール(THC)は人体に作用し、摂取すると陶酔する。

アサは生育が速い一年草であり、生育の際に多量の二酸化炭素を消費し、繊維質から様々な物が作れるため、地球規模での環境保護になるという意見もあり、実際にバイオマス原料植物として各国で研究・実用化が始まっている。

産業用のアサと嗜好用のアサは品種が異なる。前者については、陶酔成分が生成されないよう改良された品種が用いられる。また、品種が同じでも用途に応じて栽培方式が違う。前者は縦に伸ばすために密集して露地に植えられる方式が主であるが、後者は枝を横に伸ばすために室内栽培が多い。そのため嗜好目的のためのアサを産業的栽培だと偽って栽培するのは困難である。

嗜好目的のアサは、露地栽培または水耕栽培で育てられる。露地栽培のものは「バイオ」と呼ばれ、水耕栽培のものは「ハイドロ」と呼ばれる。この両者は陶酔の質に差があるとされ、愛好者はそれぞれ好みのものを選んでいる。

日本に自生するアサには陶酔成分である1%以下のテトラヒドロカンナビノール(THC)が含まれている。他の品種は1.8から20%含有とされているため、確かに少ないが軽視できる量ではない。日本においてはアサの陶酔作用は麻酔いとして農家から嫌われたようであり、それを解消するために生み出されたのが改良品種トチギシロで、1982年から栽培が開始されている。

アサはその繁殖プロセスから、花粉が周囲2km程度に飛散する。このときに陶酔成分を多く含むアサの花粉を受粉した場合、これに関する遺伝子は優性遺伝するため、トチギシロも陶酔成分を含むことになる(つまり代返りする)。 このため、現在栽培されているトチギシロは、不法に持ち込まれたアサとの交配によって陶酔成分を含んでしまっているという説もある[要出典][3]。このように交配されたアサはインドアサの水準までTHC含有量が上がるとは考えにくいが、実際北海道では自生するアサを採取してマリファナを生成する個人愛好家もいる[4]

[編集] 用途

一般的に麻は覚醒剤コカインなどと同種の「麻薬」としての悪評のみが一人歩きしてしまった。しかし実際には食用、薬用、繊維、製紙などの素材として用いられる有用な植物である。

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アサの茎から植物繊維が採れる
麻袋(南京袋)

衣類・履き物・カバン・装身具・類・縄・容器・調度品など、様々な身の回り品が大麻から得た植物繊維で製造されている。 麻織物で作られた衣類は通気性に優れているので、日本を含め、暑い気候の地域で多く使用されている。綿レーヨンなどの布と比較して、大麻の布には独特のざらざらした触感や起伏があるため、その風合いを活かした夏服が販売されている。大麻の繊維で作った縄は、木綿の縄と比べて伸びにくいため、荷重をかけた状態でしっかり固定する時に優先的に用いられる。伸びにくい特性を生かして弓の弦に用いられる。また神聖な繊維とされ神社の鈴縄、注連縄や神事に使われる。横綱の注連縄にも使われている。繊維を取った後の余った茎(苧殻、おがら)は、かつては懐炉用の灰の原料として日本国内で広く用いられ、お盆の際に迎え火送り火を焚くのに用いられる。

現在も産業用(麻布等)栽培はあるが、減少傾向である[5]

アサの種(果実)は麻の実の名で七味唐辛子にも含まれる

[編集] 衣服として

エコロジー素材として注目を浴びている。実用的には、大麻の生地は強く、放熱性が高く、汗を蒸発させる効果があり[6]、夏の衣服に向いている。また大麻繊維には抗菌作用や消臭力が認められている[7]。生地の風合いは独特の光沢とシャリ感がある。

ただし、日本国内では家庭用品品質表示法で「麻」と表示することが認められているのは、亜麻と苧麻のみであるため、「麻製品」と名乗っていたり、「麻マーク」が表示されていても大麻繊維製品ではない。(大麻繊維は「指定外繊維(大麻)」や「指定外繊維(ヘンプ)」などと表記される。)

[編集] 果実

果実は生薬麻子仁(ましにん)として調剤される。麻子仁には陶酔成分は無く穏やかな作用の便秘薬として使われる。栄養学的にはたんぱく質が豊富であり、脂肪酸などの含有バランスも良いため食用可能であり、香辛料七味唐辛子に含まれる麻の実)やのエサになる。果実を搾ることによりを得ることができる。この油を含んだ線香アロマテラピー用として市販されている。

[編集] 葉および花

花が咲く雌株の麻。緑色の塊が麻の花。開花しても緑色のまま色づかない
雄株の花。雌株のような塊で咲かない

[編集] 嗜好品として

詳細は「大麻」を参照

葉及び花冠(かかん)には陶酔作用があり、嗜好品として用いられる。陶酔を引き起こす主成分は、テトラヒドロカンナビノール(THC)といわれる物質であるが、これ以外に含まれる成分のバランスによって効果に違いが生じる。

特に、ラマルクにより命名された亜種のインド麻(C.indica Lam)は2000年以上前から中央アジアで品種改良され、一般的な大麻より多くの陶酔成分を含むので一般に嗜好品としての大麻と言えばこのインド麻を指す。また、インドジャマイカなどではガンジャ(神の草の意)と称される。

[編集] 医薬品として

詳細は「医療大麻」を参照

テトラヒドロカンナビノールをはじめとしたカンナビノイドには医薬品としての効能がある。

日本では1948年に大麻取締法が執行される前で「本剤はぜんそくを発したる時軽症は1本、重症は2本を常の巻煙草の如く吸う時は即時に全治し毫も身体に害なく抑も喘息を医するの療法に就いて此煙剤の特効且つ適切は既に欧亜医学士諸大家の確論なり。」を謳い文句に「ぜんそくたばこ印度大麻煙草」[8]として販売されていた。また、「印度大麻草」および「印度大麻草エキス」は、1886年に公布された日本薬局方に「鎮痛鎮静もしくは催眠剤」として収載され、さらに、1906年の第3改正で「印度大麻草チンキ」が追加収載された。これらは、1951年の第5改正日本薬局方まで収載されていたが、第6改正日本薬局方において削除された。

エビデンスはないが、多発性硬化症などの神経性難病や緑内障に対し、アメリカの一部の州やイギリスカナダ[9]オランダといった国で処方箋薬として認可され、治療薬として試みられている。

[編集] 注と文献

  1. ^ 糸、縄、下駄の鼻緒、漁網、畳糸、蚊帳など。近年、麻の畳糸や蚊帳は価値が見直され復刻されている。
  2. ^ 「麻の実」(おのみ)と呼ばれる。がんもどき、麻の実味噌など。また、麻の葉をおひたしにして食べる土地もあったという。
  3. ^ 「とちぎしろ」は1982年に種苗登録されている。一般に登録された種苗は、品種の純性を保つために専門機関によって隔離栽培され、種子が栽培者に提供される。「とちぎしろ」についても農家が自家採取した種を栽培していない限り、野生種等と交雑しているとは考えにくい。栃木県農業試験場の「とちぎしろ」作出時の研究報告書には、「在来種との交雑を避けるための隔離採種は今後とも必要」と述べられている。『栃木県農業試験場研究報告第28号』(PDF) しかし「とちぎしろ」の育成者権は1997年に消滅しており、栽培の実情がどうなっているかは情報不足である。ともあれ、農作物一般に普及している種苗登録制度と、種子提供の仕組みを遵守することで、産業用に栽培される大麻が精神活性成分を含まないように規制することは十分に可能であり、事実フランスなどでは問題は起こっていない。
  4. ^ 北海道警察本部編 『平成17年版 北斗の安全』(PDF) 北海道警察、30頁、2006年7月
  5. ^ 国際連合食糧農業機関の統計サイトFAOSTAT Classicによれば、世界における麻の生産量は1960年代は毎年30万トン前後あったものの、1990年代からは6万トン前後となり、20年間で5分の1程度には減少している。ただし、この数値にはインド麻の他にサンヘンプなども含まれている。
  6. ^ ボーケンのサイトリネン(亜麻)・ラミー(苧麻)・ヘンプ(大麻)の麻繊維についてによると、強度は綿に比較して引張り強度で8倍、耐久性で4倍。中空の繊維構造を持ち、吸湿、吸汗性があり、通気性に優れる。
  7. ^ ヘンプの機能性テストデータ
  8. ^ 明治28年 毎日新聞
  9. ^ SATIVEX Fact Sheet, カナダ保健省, 2006年8月16日閲覧.

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ