ローズマリー

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ローズマリー
ChristianBauer flowering rosemary.jpg
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
: マンネンロウ属 Rosmarinus [1][2]
: ローズマリー R. officinalis
学名
Rosmarinus officinalis L.
和名
マンネンロウ
英名
rosemary
Rosmarinus officinalis

ローズマリーは、地中海沿岸地方原産で、シソ科に属する常緑性低木。生葉もしくは乾燥葉を香辛料、薬(ハーブ)として用いる。花も可食。水蒸気蒸留法で抽出した精油も、薬として利用される。

属名Rosmarinusは「海のしずく」を意味する。ヨーロッパでは、教会、死者、生者を悪魔から守る神秘的な力を持つといわれ、また記憶友情を意味する[3]。キリスト教以前のヨーロッパで祝典や結婚式、葬儀に用いられたとされ、「変わらぬ」や「貞節」の象徴とされる[4]。その生育はキリストの生涯を象徴し、多くの伝説で聖母マリアと結びついている[3]

様々な品種があり、立性と匍匐(ほふく)性種に分かれる。花の色は、から色のものがほとんどだが、桃色のものもある。

和名マンネンロウの漢字表記は「迷迭香」であるが、これは中国語表記と同一である。

主な品種[編集]

立性[編集]

  • トスカナブルー
  • マジョルカピンク
  • マリンブルー
  • ミス・ジェサップ
  • レックス

匍匐性[編集]

  • フォタブルー
  • プロストラータス
  • モーツァルトブルー

活性・薬効[編集]

1500年頃のイタリアの本草書より
ケーラーの薬用植物』(1887年)より

古代から薬用に用いられ、記憶力を高める効果があると言われた[4]。西洋で大流行したペスト除けにも利用された。17世紀南フランスのトゥールーズでペストが大流行した際、ペストで死亡した人々から盗みを働いた泥棒たちがいたが、彼らはペストに感染しなかった。セージタイム、ローズマリー、ラベンダーなどを酢に浸して作った薬を塗って感染を防いだといい、このお酢は「4人の泥棒の酢英語版」と呼ばれた[5]。病気の原因はミアスマ(瘴気、悪い空気)であると考えられていたため、空気を清めるために病人のいる所や病院で焚かれた。イギリスでは、監獄熱の感染予防に法廷に持ち込まれた[3]。ローズマリーをアルコールと共に蒸留したローズマリー水(ハンガリーウォーター)は、最初薬用酒として、のちに香水として利用された[6]

消臭効果や抗菌作用、抗酸化作用[7]があり、肉の鮮度を長持ちさせることからヨーロッパでは古くから肉料理にしばしば使われている。カレーポトフアイントプフ等のスパイスとして利用される。

また、乾燥ローズマリーを95%エタノールで抽出したもの(精油は含まれない)には、高い抗ウイルス活性、抗酸化活性が認められ[8]、その消臭効果が商用消臭剤にしばしば応用される。精油の成分は化学種(ケモタイプ)により異なり、各成分の含有量は化学種、産地、生産年などでも異なる。カンファーを含む精油は中毒事例が多いが、ローズマリー油のカンファーの含有率は、多い時で50%を超える。

安全性[編集]

香辛料としての使用量程度であれば問題はないが、人に対し医療目的で大量使用した場合の薬効作用に関しては、信頼のおけるデータは無い。次の事象の可能性が知られている。

  • 月経刺激作用や子宮刺激作用がある。
  • 外用により光過敏症、発赤、皮膚炎を起こす恐れがある。
  • アレルギー性接触皮膚炎を起こす恐れがある。
  • 妊娠中および授乳中の外用使用に関して、安全性は確認されていない。
  • 主要成分のロズマリン酸は抗菌作用を示すが、活性酸素生成能も示す[14]ことから、酸素、金属イオンと共存した場合に細胞毒性を示す可能性が示唆されている。
  • 経口摂取でてんかん痙攣を起こした症例があり、てんかん発作を誘発する可能性がある。カンファーが原因と考えられている[8]

また、市販の精油では、偽和が行われる例がある。カンファー油、ユーカリ油、テレピン油シダーウッド油の成分や、合成物質を添加したり、低グレードの精油を良質に見せるために脱テルペン処理が行われることがあるが[8]、このような精油を使用する場合、エビデンスを適用することはできない。

動物実験[編集]

カルノシン酸を投与することによって、脳梗塞による壊死を予防することができることが確認されており、アルツハイマー病パーキンソン病への効果も期待される[15]

成分[編集]

テルペノイドフラボノイド、カフェタンニン類からなる多様なポリフェノールを含む。

主要成分[編集]

など。


画像ギャラリー[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 大場秀章(編著) 『植物分類表』 アボック社、2010年、第2刷。ISBN 978-4-900358-61-4
  2. ^ 米倉浩司 『高等植物分類表』 北隆館、2010年、重版。ISBN 978-4-8326-0838-2
  3. ^ a b c A.W.ハットフィールド 著 『ハーブのたのしみ』 山中雅也・山形悦子 訳、八坂書房、1993年
  4. ^ a b レスリー・ブレムネス 編 『ハーブ事典』 樋口あやこ 訳、文化出版社、1999年
  5. ^ 永岡治 著 『クレオパトラも愛したハーブの物語 魅惑の香草と人間の5000年』 PHP研究所、1988年
  6. ^ ヨハン・ベックマン 著 『西洋事物起源(二)』 特許庁内技術史研究会 訳、岩波書店、1999年
  7. ^ 食品に含まれる抗酸化物質のハイリノール型サフラワー油に対する酸化防止効果 駒沢女子大学 研究紀要 30 pp.31-38 19970303
  8. ^ a b c d マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年
  9. ^ Carnosic acid, a component of rosemary (Rosmarinus officinalis L.), promotes synthesis of nerve growth factor in T98G human glioblastoma cells. Biol Pharm Bull. 2003 Nov;26(11):1620-2.
  10. ^ アルツハイマー病患者に対するアロマセラピーの有用性 日本痴呆学会誌第19巻第1号
  11. ^ Extract of Perilla frutescens enriched for rosmarinic acid, a polyphenolic phytochemical, inhibits seasonal allergic rhinoconjunctivitis in humans. Exp Biol Med (Maywood). 2004 Mar;229(3):247-54.
  12. ^ Regulation of heme oxygenase-1 expression through the phosphatidylinositol 3-kinase/Akt pathway and the Nrf2 transcription factor in response to the antioxidant phytochemical carnosol. J Biol Chem. 2004 Mar 5;279(10):8919-29. Epub 2003 Dec 19
  13. ^ 香辛料の抗酸化性、斎藤 浩、油化学 油化学 Vol.26 (1977) No.12 P754-764
  14. ^ ロスマリン酸のプロオキシダント作用− 遷移金属イオンの還元を介した活性酸素生成 (PDF) 微量栄養素学会
  15. ^ Carnosic acid, a catechol-type electrophilic compound, protects neurons both in vitro and in vivo through activation of the Keap1/Nrf2 pathway via S-alkylation of targeted cysteines on Keap1. J Neurochem. 2008 Feb;104(4):1116-31

関連項目[編集]

外部リンク[編集]