アロマテラピー

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アロマテラピー: aromathérapie[※ 1])は、など植物に由来する芳香成分(精油)を用いて、心身の健康や美容を増進する技術もしくは行為のこと。 また、お香やフレグランス・キャンドルも含め、生活に自然の香りを取り入れてストレスを解消したり心身をリラックスさせることも含めて呼ぶ場合も多い。 アロマセラピー: aromatherapy[※ 2])とも称される。

精油の瓶とディフューザー

名称[編集]

「アロマテラピー」(: aromathérapie[※ 1])という言葉は、20世紀に入ってからフランスの科学者ルネ・モーリス・ガットフォセによって作られた造語で、「アロマ」は芳香、「テラピー」は療法を意味するフランス語である。これを英語で発音すると「アロマセラピー」(: aromatherapy[※ 2])となる。

「アロマトテラピー」と「ト」が入る表記も、「芳香療法」を意味する単語として文法的語源的には正しい。

歴史[編集]

芳香植物の利用は古代にさかのぼるが、アロマテラピーそのものが提唱されたのは20世紀に入ってからである。また日本への紹介は1980年代以降である。

芳香植物の利用[編集]

人類は洋の東西を問わず、植物の芳香を祭祀・儀礼・治療美容に用いてきた。エジプトでミイラ作りに防腐効果のある乳香(フランキンセンス)や没薬(ミルラ)などの植物由来の香料が用いられていたのは有名な例である。芳香植物の利用は世界の各地域で独自に発展し、近代医学が発達する以前の人間の健康を担ってきた。今でもそれらは、伝統医学民間療法として受け継がれている。

中世ヨーロッパでは、芳香植物の栽培と利用はもっぱら修道院の仕事であり、植物成分を水や植物油・アルコールに浸出して用いた。一方、イスラム圏ではアラビア医学が発達し、イブン・スィーナー(980年頃-1037年頃)は蒸留による精油の製法を確立し医学に応用した。これはアロマテラピーの原型とも考えられている。このアラビア医学は十字軍の遠征などを契機に徐々に西欧にも伝わっていった。その利用については、病者の塗油塗油などの記事を参照のこと。

ルネサンス時代には香水が大流行し、精油の生産量が増大した。19世紀にはいると合成香料が出現し、また植物から有効成分だけを抽出して薬剤として用いるようになった。大きな産地の一つがドイツテューリンゲン地方オーベルヴァイスバッハを中心とする地域にあり、精油を樽に詰めて日本の背負い籠のようなもので、背中に担ぎ、ヨーロッパ中を商いして回る精油販売(de:Olitäten)が、19世紀には一大産業になった。

アロマテラピーの提唱[編集]

20世紀初頭、科学的な分析・検証の上で精油を心身の健康に応用しようという試みが始まった。1920年代初頭、南フランスのプロバンス地方において、香料の研究者であった ルネ・モーリス・ガットフォセ(1881年-1950年)は実験中に手に火傷を負い、とっさに手近にあったラベンダー精油に手を浸したところ[1]傷の治りが目ざましく良かったことから、精油の医療方面での利用を研究し始めた。彼は1928年に研究の成果を学会で発表し、また『芳香療法(原題Aromatherapy)』という本を出版した。

フランスの医学博士 ジャン・バルネ(1920年-1995年)は精油を使った医療を実践して功績をあげ、1964年に『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』を著し(1984年改訂版発行)、アロマテラピーの認知度を上げた。他方、ガットフォセの弟子であるマルグリット・モーリー(オーストリア生まれ、?-1963年)は、アロマテラピーを主に美容方面に活用できる技術として研究し、イギリスに伝えた。

このため、現在のアロマテラピーには大きく分けてフランス系とイギリス系の二つの流れがあり、フランス系のアロマテラピーは医師の指導のもと精油を内服するなど、医療分野で活用されている。イギリス系のアロマテラピーはアロマセラピストと呼ばれる専門家によって施されるなど、医療とは区別され、心身のリラックスやスキンケアに活用されている。

日本のアロマテラピー[編集]

精油の蒸留法は江戸時代に伝わり蘭医学などで用いられていた。明治時代にはニホンハッカなどの精油を輸出していた時期もあったが、合成香料や海外の廉価品におされ、廃れてしまった。

1970年代に、小学生やその親たちの間でポプリが流行し、ドライハーブへの関心が高まった。アロマテラピーが紹介されたのは1980年代で、はじめジャン・バルネロバート・ティスランドらによる英仏の専門書が高山林太郎により邦訳され、やがて海外で技術を学んだ者たちが国内で実践を始めた。1990年代にエステブームなどに乗って広まったこともあり、日本に伝わったアロマテラピーの方法はイギリス系に近いものであるが、近年では国内でも精油への科学的アプローチが進み、代替医療としてアロマテラピーに関心を寄せる医療関係者も増えている。2006年頃からバラの香りをかつてない程に再現した、本物のバラの精油よりも大幅に安価な合成香料が開発され、それを添加したガムやドロップが製品が流行し汗がバラの香りと言われて男女間で話題になり、「香り・アロマ」への関心が大衆の間でさらに高まる。

アロマテラピーのしくみ[編集]

アロマテラピーの主役である精油が心身に働きかける経路は二つある。ひとつは嗅覚刺激、もうひとつは皮膚や粘膜を通して血流に乗り体内に入る経路である。しかし精油は数十から数百の揮発性有機物の混合物であり経口毒性があるなど、ひとつひとつの成分がどのように身体へ影響するのかを追跡するのは容易ではない。

精油の嗅覚刺激[編集]

蒸散した精油の芳香成分は鼻で感知され、嗅覚刺激として大脳辺縁系に到達する(嗅覚の詳しいシステムについては嗅覚の項を参照)。ここで重要なのは、嗅覚をつかさどる部位が、の中でも本能的な部分である旧皮質に存在することである。脳は嗅覚刺激を受け取ると無意識のうちに情動を引き起こし、視床下部に影響を与える。視床下部は身体機能の調整を行う中枢であるため、匂いは本能的に身体諸器官の反応を引き起こす鍵となりうる。

精油の香りによって得られる安心感・快感・緊張感・覚醒感・瞑想感などにともなう情動が、心身のバランスを促すことが期待される。

精油が血流に乗る経路[編集]

芳香成分が血流にいたるまでには様々なルートが考えられる。吸収された成分は、最終的にはほとんどが肝臓や腎臓で代謝され、尿とともに排泄される。

吸収ルートは大別すると次の4つである。

  • ボディトリートメントなどによって、皮膚から真皮毛細血管に至るルート。
  • 呼吸により、鼻から喉・気管支・肺にとどく間に粘膜に吸着し、粘膜下の血管に入るルート。
  • 呼吸により肺胞でのガス交換時に酸素とともに血流に乗るルート。
  • 経口で口から小腸に至る消化管から吸収されるルート(坐剤として肛門や膣の粘膜から吸収させる例もある)。

皮膚は多層構造になっており、皮膚に吸収された芳香物質の血管への到達は極めて緩慢である。呼吸器からの吸収はこれよりも早いが、空気中の芳香物質の濃度を考えれば吸収されるのは微量と思われる。皮膚や呼吸を通して吸収されるルートに比べ、消化管での吸収は非常に急激で多量である。消化管の粘膜に対する強い刺激が予想され、また異物である精油成分の血中濃度が急速に高まるため、代謝系に大きな負担がかかる恐れがある。強酸である胃酸による成分の変性の可能性も捨てきれない。このため、精油の経口もしくは坐剤による使用は、十分に知識のある医師の判断のもとで行われるべきである。

精油の体内での作用[編集]

ここでは、伝統的な植物療法から推測される精油の働きについて述べるにとどめる。

生体組織への直接的な関与
例:ローマン・カモミールの(筋肉などの)鎮痙作用、ローズマリーの血行促進作用、ラベンダーの止血作用、など
防御システムを助ける働き
例:ティートリーの抗菌作用、フランキンセンスの免疫強化作用、ユーカリの去痰作用、など
代謝を助ける働き
例:ジュニパーの利尿作用、グレープフルーツのリンパ系刺激作用、など
心身のバランスへの関与
クラリセージエストロゲン様作用、ペパーミント三半規管の調整作用、ネロリの抗不安作用、など

なおこれらの作用はそれぞれの精油の働きの一端に過ぎない。精油はそれぞれに様々な性格をもち、組み合わせることによりさらに多様な作用を見せる場合もある。また、経口毒性があるため、用法を誤ればかえって心身に害をもたらすので注意が必要である。

精油の皮膚への作用[編集]

収れん作用(アストリンゼント作用)
例:イランイランサイプレスサンダルウッド白檀)、ジュニパーフランキンセンス乳香)、ローズオットーローズマリーなど
保湿作用(モイスチャー作用)
例:
エリモント作用(皮膚をやわらかくする働き)
例:ベンゾイン安息香)など


事故例[編集]

アロマテラピーを業務で行っていたエステティックサロン店で衣類やタオルが自然発火を起こす事故が続発し、問題となった[2]。これは精油中に含まれる不飽和脂肪酸などが重合を起こしたり、酸化される際に生じる熱が繊維の断熱性によって蓄積したり、乾燥機にかけて反応が加速し発火点に至ることが原因である。(→乾性油)。


アロマテラピーと法律との関係[編集]

薬事法[編集]

日本では、精油による人体の治療・改善効果をうたう場合には当該精油商品が医薬品の承認を得ている必要があり、承認がないものについては一切治療・改善効果などをうたうことができない。仮にこうした効果を標榜し広告・販売すれば、未承認医薬品の広告・販売として薬事法違反になる。

また、入浴剤としての使用や皮膚への塗布による使用によって肌の保湿などをうたう場合や、基礎化粧品としての使用を意図している場合は、当該製品が化粧品として届出済みとなっている必要がある。

医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具の製造業の許可を受けたものでなければ、それぞれ業として医薬品、医薬部外品、化粧品または医療用具の製造(小分けを含む)をしてはならない。

薬事法第四章第二十二条(製造業の許可)

医師法[編集]

医師以外の者が診断をし、治療をすることはできない。それに伴って上記薬事法にも関連するが精油をその効果をうたい薬のように使ってはならない。

医師でなければ、医業をしてはならない。

医師法第一七条

獣医師法[編集]

飼育動物の診療行為にあたらない限りペットなどの動物へのアロマテラピーを行うことは違反行為にならない。

獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が行う必要があるものとして政令で定めるものに限る)の診療を業務としてはならない。

獣医師法第十七条(昭和24年法律第186号)

その他[編集]

製造物責任法(PL法)
一般に個人が精油を使った石鹸などを業として(反復継続してもしくは亜反復継続する意図をもって)行う場合は、薬事法に抵触する。また、製造物について事故等が起こった場合、票として製造・譲渡等をした者の製造物責任が生じる。
消防法など
精油は揮発性物質で引火性があるため、大量に保管する場合には「危険物の規制に関する政令」にかかることになる。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律
医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為を限局する趣旨」という最高裁大法廷昭和35年1月27日判決の一部分を「人体に危害を与えず、保健衛生上何ら影響もあたえないような医業類似行為(アロママッサージなど)はサービス行為として認められる」と解釈する向きもあるが、同判決には「単に治療に使用する器具の物理的効果のみに着眼し、その有効無害であることを理由として、これを利用する医業類似の行為を業とすることを放置すべしとする見解には組し得ない」という解釈の記載があるので注意が必要である。そして最高裁判決は医業類似行為のみについて判断したものであり、無免許であん摩を業として行えば処罰対象になると厚生労働省は通知している(昭和三五年三月三〇日 医発第二四七号の一各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)。また、厚生労働省ではあん摩マッサージ指圧の定義を「法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。」(昭和三八年一月九日 医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)と回答しているため、今後も、あん摩マッサージ指圧師以外の者のアロママッサージなどの施術には、法的に慎重な判断が求められる。(→手技療法参照)

アロマテラピーに使われる主な精油[編集]

(作用する効能については民間療法ベースに作られているため、科学的根拠がないものがほとんどである。中には毒性の強いものもあるため、直接皮膚などに使用する場合には注意が必要である。)

精油名(五十音順) 英名 学名 抽出部位 一般的な抽出方法 主な作用
イランイラン ylang ylang Cananga odorata バンレイシ科 水蒸気蒸留法 鎮静作用、収れん作用、催淫作用など
オレンジスイート orange Citrus sinensis ミカン科 果皮 圧搾法 食欲増進作用など
カモミール・ローマン roman chamomile Anthemis nobillis キク科 水蒸気蒸留法 鎮静作用、鎮痛作用、通経作用など
クラリセージ clary sage Salvia sclarea シソ科 葉と花 水蒸気蒸留法 抗うつ作用、緩和作用、ホルモン調整作用など
グレープフルーツ grapefruit Citrus paradisi ミカン科 果皮 圧搾法 食欲増進作用など
ビャクダン(白檀・サンダルウッド) sandalwood Santalum album ビャクダン科 心材 水蒸気蒸留法 鎮静作用、収れん作用、強壮作用、消毒作用、抗炎症作用など
セイヨウネズ(ジュニパー) juniper Jumiperus communis ヒノキ科 果実 水蒸気蒸留法 浄化作用、収れん作用、利尿作用など
スイートマージョラム sweet marjoram Origanum majorana シソ科 水蒸気蒸留法 鎮静作用、血圧降下作用など
ゼラニウム geranium Pelargonium graveolens フウロソウ科 水蒸気蒸留法 ホルモン調整作用、抗うつ作用など
ティートリー tea tree Melaleuca aleternifolia フトモモ科 水蒸気蒸留法 免疫賦活作用、殺菌作用、坑真菌作用、消毒作用など
ネロリ neroli Citrus aurantium var.amara ミカン科 水蒸気蒸留法 鎮静作用など
乳香(フランキンセンス・オリバナム) frankincense, olibanum Boswellia carteri カンラン科 樹脂 水蒸気蒸留法 細胞成長促進作用、収れん作用、鎮静作用、抗菌作用など
ペパーミント peppermint Mentha piperita シソ科 水蒸気蒸留法 殺菌・抗菌作用、健胃作用など
ベルガモット bergamot Citrus bergamia ミカン科 果皮 圧搾法 食欲増進作用、抗うつ作用など
ユーカリ eucalyptus Eucalyptus globulus フトモモ科 水蒸気蒸留法 殺菌作用、消炎作用、鎮痛作用、去痰作用、抗ウイルス作用など
ラベンダー lavender Lavandula angustifolia シソ科 花と葉 水蒸気蒸留法 鎮静作用、免疫賦活作用、殺菌作用、消毒作用、鎮痛作用、細胞成長促進作用など
レモン lemon Citrus limon ミカン科 果皮 圧搾法 消毒作用、殺菌作用など
レモングラス lemongrass Cymbopogon citratus
(西インド型)
Cymbopogon flexuosus
(東インド型)
イネ科 水蒸気蒸留法 抗うつ作用、食欲増進作用、消炎作用など
ローズオットー(ダマスク・ローズ) rose otto Rosa damascena バラ科 水蒸気蒸留法 収れん作用、子宮強壮作用など
ローズマリー rosemary Rosmarinus officinalis シソ科 水蒸気蒸留法 収れん作用、利尿作用、刺激作用、頭脳明晰作用、発汗作用など

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b フランス語発音: [aʁɔmateʁapi] アロマテラピ
  2. ^ a b 英語発音: [əˌroʊməˈθerəpi] アロウマラピ

出典[編集]

  1. ^ 佐々木薫 『最新版アロマテラピー図鑑』 主婦の友社、2009年、6頁。
  2. ^ 産経ニュース エステ店でマッサージオイルが発火

参考文献[編集]

関連項目[編集]