におい

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においとは、

  • 空気中を漂ってきて嗅覚を刺激するもの[1][2]
  • 赤などのあざやかな色彩が美しく映えること[3]視覚で捉えられる美しい色彩のこと。「匂い」
    • 襲の色目のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色。「匂い」。

表記[編集]

漢字では、良いにおいを匂い、悪いにおいを臭いと書く。ただし「匂」は当用漢字ではなく、また国字である。例外として「くさいにおい」を「臭い臭い」ではなく「臭い匂い」と書くこともある。

よいにおい(匂い)はかおりとも言い、漢字は香り薫り芳り(いずれも当用漢字だが「芳」は表外訓)などを当てる。

概説[編集]

「匂い」は、古来、視覚についても嗅覚についても用いられてきた表現である。

近年多く用いられている表現では、嗅覚を刺激され人が感じる感覚、それが《におい》である。

にほひ、香り[編集]

においのなかでも、特に好ましいものは「香り」(かおり)、「芳香」(ほうこう)と呼びわけることがある。

臭い[編集]

いやなにおいは「臭」という漢字をあて、「臭い」と書く。

臭いの中でもとくに強い不快感をもたらすものを悪臭という。

トリメチルアミン尿症は、魚臭症候群ともいい、悪臭の出る疾患である。

色彩[編集]

赤などの色彩が鮮やかに映えているさまを匂いと言う。視覚で捉えられる美しい色彩の感覚も「匂い」と言うのである。→#視覚

花の部位[編集]

伝統的に花の雄蕊雌蕊をまとめて「におい」と言う。日本画友禅などの和柄焼物漆器蒔絵、絞り細工など細工の花の中心部分のこと。奥により強い存在を感じさせる表に一部が表出したものを「匂い」と呼ぶ。

においと技術、科学[編集]

中世にその原型が生まれ20世紀により具体的に提唱されたアロマテラピーは、主として花や木に由来する芳香成分の香りを活用し、ストレスを解消したり心身の健康の維持に役立つ、ともされる技術である。

近年の医学領域における様々な研究成果により、匂いは他の感覚とは異なり、大脳辺縁系に直接届いていることが明らかになった。その大脳辺縁系は「情動系」とも呼ばれており、匂いは人間の本能や、特に感情と結びついた記憶と密接な関係がある、と指摘されている。つまり匂いはもっとも感情を刺激する感覚なのだとされているのである[4]

においは人に生理的な影響を与えることがある。例えば、ジャスミンの匂い(香り)は心拍のパワースペクトルのLF成分を有意に増大させる、との研究もある。これはジャスミンの香りが副交感神経の活動増大させ(=交感神経を抑制し)精神性の負荷を減少させることを示唆している[5]

ただし、視覚的イメージ(視覚)、(聴覚)、味(味覚)などに比べると、匂い(嗅覚)というのは、論じられたり教育されたりする機会は比較的少ない。また、近年の日本では匂いが無いことがよしとされて、消臭グッズなどの売上が伸びている。このような、匂いを避けるという現象の背後には、匂いの抑圧があり、さらにその背後には、本能の抑圧や抑圧が潜んでいる、と鈴木隆は述べた[6][7]

最近では、さまざまな業種の、様々な企業がにおいを活用して、イメージアップや販売促進をはかろうとしている。こうしたことは10時間以上も香りを長続きさせる最新のにおい噴霧器が開発されたり、「禁煙を手助けする効果がある」とされたり「記憶力を高める効果がある」とされる《機能性アロマ》が開発されたことによる。ただし、人工的な香りが氾濫することによって、「日本人がもつ繊細な《香り文化》が失われつつあるのではないか」「自然のかすかなにおいを教える必要があるのではないか」という専門家の指摘もあるという[8]


視覚[編集]

古来、あざやかな視覚的な感覚を「匂い」と呼んでいる。この色の鮮やかさを示すのが「にほひ」本来の意味である。 例えば万葉集には次のような歌がある。

黄葉(もみじは)のにほひは茂し[9] -(万葉集10)

また「いろは歌」の冒頭でも「いろはにほへと(色は匂えど)」とある。

襲の色目のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色も「匂い」という。

比喩[編集]

微妙さを「におい」と言うことがある。人の五感に喩えたとき、味や色よりもさらに微妙なもの。

憶測によって(おもに好ましくない)ある事柄を見通した場合に「臭う」「臭(クサ)い」と表現されたり、その見通した事柄に辿り着いた場合には「嗅ぎつける」と言われ、その能力は「鼻が利く」「嗅覚が鋭い」などと喩えられる。(「」とも呼ばれるが、勘よりも多少の根拠を帯びる)

出典[編集]

  1. ^ デジタル大辞泉
  2. ^ 注. 広辞苑では嗅覚系の説明は2番目以降である。
  3. ^ 広辞苑 第5版、p.2018。※ 広辞苑第5版では、視覚的な匂いのほうをまず一番目に挙げており、嗅覚的な匂いの説明はその後に配置している。
  4. ^ 青木 孝志、足達 義則「ジャスミンの匂いが心拍変動に与える影響」(研究発表,第21回生命情報科学シンポジウム)
  5. ^ 青木 孝志、足達 義則「ジャスミンの匂いが心拍変動に与える影響」(研究発表,第21回生命情報科学シンポジウム)
  6. ^ 鈴木隆『匂いのエロティシズム』集英社, 2002、ISBN 4087201295
  7. ^ 鈴木隆『匂いの身体論:体臭と無臭志向』八坂書房, 1998、4896944151
  8. ^ NHKクローズアップ現代「広がる“においビジネス”
  9. ^ 広辞苑第五版 p.2018 「匂い」

関連項目[編集]

関連文献[編集]

単行本[編集]

論文[編集]

外部リンク[編集]