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(おと)とは、物の響きやや鳥獣の[1]、物体の振動が空気などの振動(音波)として伝わって起す聴覚の内容[1][2]、またはそのもととなる音波[1][2]を指す。類語に、音響(おんきょう)がある。

心理学的には聴覚的感覚を「音」と呼ぶため周波数が人間の可聴域にあるもののみを指すのに対し、物理学的には音波そのものを音と呼び超音波低周波音も含める[3]#聴覚の内容 : 心理学と音#物理学における音:音波の節をそれぞれ参照)。

音楽的には楽音噪音にわけられる[4]#音楽における音の種類の節を参照)。

概説[編集]

音は会話音楽などいろいろな形態で利用されている。また、他の動物の気配、物の動きなどの周囲の状況、空間構造などを把握するためにも用いられている。 例えば、人間は音の聞こえ方で空間の情報を得ており、コウモリ反響定位で物体の存在を感じている。人間が作り出した機械類でも、たとえば船舶には音を用いて地形や魚の存在をさぐる装置(ソナー魚群探知機)が、潜水艦には敵艦の存在や海底の地形を探る装置(パッシブソナーアクティブソナー)が搭載されている。

ある音の性質は、大きさ(音圧・SPL)・高さ(周波数)・音色(波形)という音の三要素によって特徴付けられる[要出典]

聴覚の内容 : 心理学と音[編集]

音波が神経細胞の発火に変換されるまで (青:音波、 赤:鼓膜、 黄:蝸牛、 緑:有毛細胞、 紫:周波数スペクトル、 オレンジ:神経細胞発火)[5]

音は聴覚の内容、聴覚によって感覚される内容である。人間や多くの動物は音を聴くのにを使い、聴覚器官の聴覚細胞が音によって刺激されることにより音を感じる。ただし、低い周波数の大きな音は体の他の部分を通じて触覚により振動として知覚される。

人間が知覚できる音の周波数(可聴域)は20 Hz から 20 kHz までである。ただしこれは年齢・性別・過去に受けた聴覚障害などによってばらつきがある。大多数の人は10代には既に 20,000 Hz を知覚できず、年齢が上がるにしたがって高い周波数を聴く能力が衰える。人間の会話のほとんどは 200-8,000 Hz の間で行われ、人間の耳は 1000-3,500 Hz で最も感度が高い。聴覚の限界より周波数が高い音は超音波、低い音は低周波音と呼ばれる。したがって、いくら空気が振動していても、各人にとっては、聞こえない周波数帯については音(聴覚の内容)は存在していない。

#音圧および#音圧レベルの節で後述するとおり、音の大きさはその圧力または常用対数を用いたデシベル値で表される。 人間が聴くことのできる最も小さな音はおよそ 20 µPa (音圧レベル 0 dB re 20 µPa)である。音圧レベルが 85 dB を越える音を長期間聴きつづけると、耳鳴り難聴などの聴覚障害を引き起こすことがある。130 dB では人間の聴覚が安全に耐えうる限界を越え、重篤な痛みや永続的障害の原因となりうる。

人間の聴覚の特性は音響心理とよばれ、音響心理学などで研究されている。MP3などの音声データ圧縮技術に利用されている。例えば、たとえ可聴域の空気振動であっても、特定の周波数の音圧が強いと、その直近の周波数帯で音圧が小さな振動は感じられない、つまり人にとってはその音(感覚の内容)は実際上存在していない、などといったことが起きているのであり、それを利用してその帯域のデータの記録を省略するなどということが行われているのである。

物理学における音:音波[編集]

物理学においては、音とは物体を通して縦波として伝わる力学的エネルギーの変動のことであり、波動としての特徴(周波数波長周期振幅速度など)を持つ音波として表せる。

音波を伝える物質は媒質と呼ばれる。音波は圧力変動の波動として伝わり、ある点での密度の変動を引き起こす。媒質中の粒子はこの波によって位置を変え、振動する。音について研究する物理学の分野は音響学と呼ばれる。

媒質が流体(気体または液体)の場合はずれ応力を保持できないため縦波しか伝播できないが、固体中では縦波・横波・曲げ波・ねじり波などとして伝播できる[6]。それら縦波以外の波も広義の音波に含む場合がある。

音速[編集]

音波を伝える速さは物質によって異なり、しばしば物質の基本的な特性として示される。一般的に、音速は媒質の弾性率と密度との比の平方根に比例する。これらの物理特性と音速とは周囲の状況によって変化する。例えば、大気などの気体中の音速は温度に依存する。大気中の音速はおよそ 344 m/s であり、水中では 1500 m/s、鋼鉄の棒では 5000 m/s である。音速は振幅(音の大きさ)にも僅かに依存する。これは倍音の弱い成分や音色の混合など、非線型の伝達効果のためである(en:parametric arrayを参照のこと)。

音圧[編集]

音圧は、音波によって引き起こされる周囲からの圧力のずれである。空気中ではマイクロフォンによって、水中ではハイドロフォン英語版によって測定される。SI単位系において、音圧の単位はパスカル (記号: Pa) である。瞬間音圧は、ある点でのある瞬間の音圧である。有効音圧は、ある時間内で瞬間音圧のRMSをとったものである。音を波として記述したとき、音圧に相当するものは粒子速度英語版である。 振幅が小さいとき、音圧と粒子速度は線形の関係にあり、両者の比が比音響インピーダンスである。音響インピーダンスは波の特徴と媒質の両方に依存する。

瞬間音圧における音の強さは音圧と粒子速度に依るため、ベクトル量である。

音圧レベル[編集]

人間は非常に幅広い強度の音を感知できるため、音圧は常用対数を用いたデシベルで表されることが多い。

音圧レベル (sound pressure level, SPL) は Lp と記され、以下のように定義される。


L_\mathrm{p}=10\, \log_{10}\left(\frac{{p}^2}{{p_0}^2}\right) =20\, \log_{10}\left(\frac{p}{p_0}\right)\mbox{ dB}
ここで p は音圧のRMSp0 は基準となる音圧である(音圧レベルを示す際には、用いた基準音圧 (re) も表記することが重要である)。

一般的な基準音圧としては、ANSI S1.1-1994 では、 大気中で 20 µPa、水中で 1 µPa と定められている。

人間のは全ての周波数に対して感度が一定ではないので、音圧レベルは人間の感覚に合うように周波数で重み付けされる事が多い。国際電気標準会議 (IEC) はいくつかの重み付けの方法を定義している。「A特性周波数重み付け」は雑音に対する感度に一致し、それによって重み付けされた音圧レベルは dBA と表記される。「C特性周波数重み付け」はピークレベルを測定するのに用いられる。

音圧および音圧レベルの例[編集]

音源 音圧 音圧レベル
  pascal dB re 20 µPa
痛覚の閾値 100 134 [要出典]
短期間で聴覚障害を起こす強度 20 およそ 120[要出典]
ジェット機(距離100m) 6 - 200 110 - 140
空気動力ドリル(距離1m) / ディスコ 2 およそ 100
長期的には聴覚障害を起こす強度 0.6 およそ 90
主要な道路(距離10m) 0.2 - 0.6 80 - 90
旅客鉄道(距離10m) 0.02 - 0.2 60 - 80
一般家庭でのテレビ(距離1m) 0.02 平均 60
通常の会話(距離1m) 0.002 - 0.02 40 - 60
非常に静かな部屋 0.0002 - 0.0006 20 - 30
穏やかな風に揺れる木の葉 0.00006 10
2 kHz における聴覚の限界 0.00002 0

歴史上で最も大きな音とされているのは1883年クラカタウの大噴火によるものであり[7]、 160km離れた地点での音圧レベルは 180 dBだった。

音楽における音の種類[編集]

音楽においては、ここちよい美しい音とそうでない音を区別することばとして、楽音(がくおん、: musical tone)と噪音(そうおん、: unpitched sound)がある。

楽音
狭義には音高がはっきり認識できる音を指し、広義には音楽に用いられる音全般を指す[3]
噪音
狭義には楽音ではない音を指し、広義には(後述の)騒音を指す[3]

したがって、例えば人の歌声やピアノ・バイオリンなどの楽器の音は楽音であり、シンバルなど明瞭な音高を持たない打楽器の音は狭義の噪音であり広義の楽音である。

また、英語で一括りに noise と表される音は、日本語では騒音(そうおん)と雑音(ざつおん)の2つに区別される[3]

騒音
望ましくない音。楽音であっても聞き手が不快あるいは邪魔だと感じる音は騒音と呼ばれる[3]
雑音
振幅や周波数が不規則に変動する音[3]。ただし、自然科学や工学では音以外についても有意な情報を含まず必要な信号を取り出す邪魔になる成分を雑音と呼ぶ。

例えば、風の音・波の音は雑音である。電車の走行音・物の壊れる音などは雑音でもあり騒音でもある。

音紋[編集]

音紋とはもの(特に船舶潜水艦の)特有の音のパターンである。音紋を分析することで、音の発信源が一体何なのか特定することができる。音紋の計算にはウェーブレット変換短時間フーリエ変換が用いられている。

類似の事象に声紋がある。

音を扱う装置[編集]

音を発生させたり扱ったりする装置として、楽器補聴器ソナー音響機器などが挙げられる。その多くはマイクロフォンスピーカーを用いて音と電気信号とを変換している。

音を発生させる方法としては、物体をさまざまな方法で振動させてその振動を空気に伝える方法や、特定の方向のみに強い空気の流れを作り出す事で空気の振動を発生させる方法などがある。

  • 物体を振動させる方法としては、物体をこすったり(バイオリンなど)、空気の流れで振動させたり(ヒト声帯ハーモニカなど)、はじいたり(ギターなど)、物体同士をぶつけたり(打楽器ピアノなど)、電気的に物体を振動させたり(スピーカーなど)などがある。
  • 強い空気の流れから空気の振動を発生させる現象は、洞窟における風鳴りや、などにみられる。

生物について[編集]

生物にとっても音は重要である。動物が環境を把握するための物理的情報として音を受け取る場合、これを聴覚という。また、これを受け止めるための受容器(感覚器官)は聴覚器と呼ばれる。陸上脊椎動物では、これがである。

出典[編集]

  1. ^ a b c 『広辞苑』 岩波書店、1991年、第四版。ISBN 978-4000801010
  2. ^ a b 大辞林』 三省堂、1999年、第二版。ISBN 978-4385139029
  3. ^ a b c d e f 『新編 音楽中辞典』 音楽之友社、2002年2月。ISBN 978-4276000179
  4. ^ 「音楽ー音」『学習百科大事典』3、学研。
  5. ^ Gollisch T, Herz AVM (1月 2005年). “Computation Provides a Virtual Recording of Auditory Signaling” (PDF). Biology Journal (Public Library of Science) 3 (1). doi:10.1371/journal.pbio.0030026. http://biology.plosjournals.org/archive/1545-7885/3/1/pdf/10.1371_journal.pbio.0030026-S.pdf 2011年12月12日閲覧。. 
  6. ^ 吉川茂・藤田肇 『基礎音響学』 講談社サイエンティフィク、2002年2月、141頁。ISBN 978-4061539723
  7. ^ サイモン・ウィンチェスター 『クラカトアの大噴火』 柴田裕之訳、早川書房、2004年1月。ISBN 978-4152085436

関連項目[編集]