次元

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空間次元を模式的に表した図。

次元(じげん、dimension)は、空間の広がりをあらわす一つの指標である。座標が導入された空間ではその自由度を変数の組のサイズとして表現することができることから、要素の数・自由度として捉えることができ、数学計算機において要素の配列の長さを指して次元ということもある。自然科学においては、物理量の自由度として考えられる要素の度合いを言い、物理的単位の種類を記述するのに用いられる。

直感的に言えば、ある空間内で特定の場所や物を唯一指ししめすのに、どれだけの変数があれば十分か、ということである。たとえば、地球は3次元的な物体であるが、表面だけを考えれば、緯度・経度で位置が指定できるので2次元空間であるとも言える。しかし、人との待ち合わせのときには建物の階数や時間を指定する必要があるため、この観点からは我々は4次元空間に生きているとも言える。

超立方体テッセラクトは四次元図形の例である。数学と無縁な人は「テッセラクトは四つの次元を持つ」というような「次元」という言葉の使い方をしてしまうこともあるが、専門用語としての通常の使い方は「テッセラクトは次元(として) 4 を持つ」とか「テッセラクトの次元は 4 である」といった表現になる(図形の次元はひとつの数値であって、いくつもあるようなものではない)。

また、転じて次元は世界の構造を意味することがある。

独立要素数[編集]

空間・時空[編集]

私たちの住む世界は共時的には3つの向きへの広がりをもった実3次元的な空間だととらえられる。また、時間は一方向的な実1次元的物理量だと考えられ、ニュートン力学では空間と時間は相互に独立な物理概念として取り扱われる。一方、相対性理論では光速を通じ時間の尺度と空間の尺度とは結びつけられ、符号(3, 1)の計量が入った実4次元の空間(ミンコフスキー空間)において現象が記述される。ただし、ミンコフスキー空間においても依然として時間軸は他の3つの空間軸とは性質の異なるものとしてとらえられることに注意しなければならない。

配列(プログラム)[編集]

コンピュータ言語において添字で指定できる一連の変数を配列(配列変数)と言うが、ひとつの配列で独立して指定できる添字の個数を配列の次元と言う。 配列参照。

次元論[編集]

数学では、次元は様々な数学的対象について異なる方法で定義されている。例えば、

などが挙げられる。次元の概念は多様であるが、基本はユークリッド空間 Rn の次元が n となることであり、局所的に Rn である空間の次元が n に一致することである。

現代的な次元の概念は、古典的な図形の幾何学がユークリッド空間内の点集合論として一般化される19世紀末から20世紀初頭に掛けて、ポアンカレブラウワーを萌芽としてメンガーウリゾーンらの手によって可分な距離空間に対して定式化された。区別のために被覆次元と呼ばれるこの次元の概念はルベーグによれば「可分距離空間 X の任意の有限開被覆に対して高々次数 n + 1 の細分がとれるとき、X の次元は高々 n である」として述べられ、X が高々 n 次元かつ高々 n − 1 次元でないとき Xn 次元であると定義される。たとえば被覆次元が 0 であるというのは、各点が開かつ閉なる近傍を持つことであると述べることができる。そして古典的な意味で次元 n であるユークリッド空間 Rn は被覆次元の意味でも n 次元になる。

物理量の次元[編集]

自然科学では物理量を長さ・時間・質量といった基本量とそれ以外の組立量(誘導量)とに区別し、組立量を基本量の冪積の定数倍として表すとき、その基本量の指数の集まりとして次元が定義される。ここで言う定数は物理定数ではなく数学的な意味での定数であり無次元量と称される。例えば、

q = \mbox{constant} \cdot
  \mbox{mass}^{m} \cdot \mbox{length}^{l}\cdot \mbox{time}^{t}\cdots

となる量 q に対して、その次元を [q] のように表すと

[q] =
  \left[ \mbox{mass}^{m}\cdot \mbox{length}^{l}\cdot \mbox{time}^{t}\cdots \right] 
  = \left[\mbox{mass}\right]^{m} \left[\mbox{length}\right]^{l} \left[\mbox{time}\right]^{t}\cdots

である。ここで、M = [mass], L = [length], T = [time], ... と置いて、物理量 q次元式MmLlTt… であるという。正式(SI)にはこれらの記号(大文字)はサンセリフかつ立体(BIPM The International System of Units (SI), 8th edition 2006)だがボールド体ではない。

考えている系の中で適切に基本量を決定すれば、一つの物理量に対して唯一通りの次元が定まる。一つの物理量に複数の単位が与えられているとき、それらは基準とする大きさのみを異にし、したがって適切な無次元量を係数として与えれば互いに取替えが可能である(そこで物理量の代わりに物理量の単位を使って次元式を考えることもある)。例えば長さの次元を持つ物理量の単位にはメートルインチ等があるが、1インチは0.0254メートルに等しい。

一方、見かけ上異なる物理量が同じ次元を持つならば、その物理的本質は同じである可能性が推測できる。例えば仕事エネルギーはどちらも等しく次元式 M L2T−2で表される次元を持つので、仕事とエネルギーとは互いに他の変換されたものであると理解される。しかし、次元が同じでも本質が同じとは言えない量の組合わせも多くある。一例が仕事力のモーメントで、どちらもM L2T−2の次元を持つが同一視は困難である。特に無次元量には、比重アスペクト比レイノルズ数などほとんど無関係の量が多数あるが、次元は全て無で等しい。

また次元の決定には任意性があり、単位系により異なる場合がある。例えば電磁気学において、MKSA単位系のような4元単位系では時間長さ質量電流を加えた4つを基本量として電流には独立な次元を与えている。だが電磁単位系静電単位系ガウス単位系のような3元単位系では電流や電荷は組立量と見なされ、その次元は3つの基本量次元の組み合わせになる。

いくつかの系がことなる基本量によって記述されている場合に、ある法則や方程式などから見かけ上の次元がことなる等式が現れるならば、それは基本量と考えてきた量たちの間に変換則が成り立つことを示唆しており、またそのような変換則を仮説に立てることはそのような等式の存在を予言するものである。このようにして(未知の)物理量の次元を決定することを次元解析と呼ぶ。

ニュートンの運動方程式 F = α m a (力 F, 質量 m, 加速度 a, また α は無次元量)を例にとると、見かけ上右辺は質量と加速度の積の形をしており、次元式 [F] = [m][a] = M · L T−2が成り立つ。質量、長さ、時間をそれぞれ kg, m, s を単位として測るとき、力の単位は kg·m/s2 の定数倍で測ることができることが方程式から分かる。特に方程式における定数 α を1に取れる力の単位として N = kg ·m/s2 が定義される。

転用表現[編集]

観点・尺度[編集]

あまりにもかけはなれた考え方、技量、性質を形容する際に「次元が違う」と表現することがある。特に、量の違いではなく質の違いがあることを指して「まったく別の要素(次元)を取り入れないと理解できない」ということを意味することが多い。かけはなれていることを意味する「次元」は、多くの場合で「世界」に置き換えが可能である。(例: 世界が違う)

世界[編集]

SFファンタジーなどの創作作品においてしばしば用いられる「次元」は、それぞれの世界に働く根源的な要素の集まりのことを指すことが多い。転じて、ある根源的な要素を基調とする世界のことも次元と称されることもある。

根源的な要素という意味の次元には、ある世界に存在しないまったく異なる要素も含まれる。そのような要素を持っている世界と持っていない世界とでは、世界の仕組みや過ごし方がまったく異なる。このため、世界の根源をなす要素が異なる(異次元の)世界同士は、異次元世界(または単に「異次元」)と呼称される。例えば、我々が過ごしている3次元空間の世界では、空間内を動くことによって移動が行われるが、魔法などによって移動が行われる世界では、我々の過ごす世界と根源となる要素が大きく異なっていると考えられる。このような場合において、「双方の世界は、異次元である」「双方は、異次元世界である」などと表現する。

また、異次元世界(異次元)という用語は、「異なった根源的な要素による世界」という意味の転用として、別世界、別天地、異世界、パラレルワールドなどとほぼ同義に用いられる。

架空世界・架空人物[編集]

次元という語は、視覚メディアなどで提示される架空の世界を現実の世界から区別する用語として使用されることがある。具体的には、奥行き情報を込めずに構成される架空世界を「2次元世界」、物理空間における現実世界を「3次元世界」と呼称することがある。

また、漫画やアニメーションのキャラクターなど、伝統的に平面的なメディアの上で視覚化されてきたキャラクターを「2次元キャラクター」などと呼ぶことがある。

文字コード[編集]

文字コードにおける次元とは、符号空間(または符号化空間)の中での符号位置を示す数字をいくつかの組に分けて示すときの組の数をいう。符号空間に含まれる個々の符号点(単に点とも呼ばれる)が符号空間の中にある場所を示す符号位置(Unicodeではコードポイントと呼ばれる。)は、本来は一次元自然数(非負整数)で示されるが、巨大な符号空間を持つ文字符号化方式では、符号位置を示す数字は通常はいくつかの部分に区切って示される。文字コードにおいては、このように符号空間に含まれる個々の符号点が符号空間の中にある場所を示すのに必要な数を複数の組に分けたときの「組の数」を「次元」と呼んでいる。このような「組」及びそれを元にした「次元」の概念は、さまざまな文字コードの規格に現れており、それらの規格書において、2次元の符号空間は物理的な2次元の図[1]で、3次元の符号空間は物理的な3次元の図を使って説明されていることがある。通常一つの組の数字は1バイト(1オクテット)以下で表せるように256以下になっている。それぞれの組の桁数は1オクテット用意されていてもその全部は使わずに下位の7ビットだけ使用するという場合も多くあり、また最上位の組については下位の組より少ない桁数分しか存在しない場合も多い。

ISO/IEC 10646における次元[編集]

このような意味での次元の概念を最も整備された形で規格書に明記しているのはISO/IEC 10646である。ISO/IEC 10646の規格書では、以下のように記述されている[2]

  • ISO/IEC 10646の符号空間全体は4次元の空間であり、それは128個の群から構成される。
  • 群は3次元の符号化空間であり、一つの群は256個の面から構成される。
  • は2次元の符号化空間であり、一つの面は256個の区から構成される。
  • 区は1次元の符号化空間であり、一つの区は256個の点(符号点)から構成される。

その結果ISO/IEC 10646での符号位置は、「群・面・区・点」の4つの要素から構成されるが群が00群であるときは群の記述を、さらに00群において面が00面であるときには群だけでなく面も省略して表記されることがある。ISO/IEC 10646のこのような構造はUnicodeを取り入れて大幅に内容が変わる前のDIS 10646第1版からのものである。ISO/IEC 10646の規格書ではこのような構造を空間的な三次元の図にして説明を加えており[3][4]、各面の詳細なコードマップを二次元の図にして説明を加えている[5][6][7]

ISO/IEC 2022における次元[編集]

ISO/IEC 2022に準拠した図形文字集合には、シングルバイトの文字集合(94文字集合及び96文字集合)と複数バイト文字集合があるが、複数バイト文字集合も、単に一次元で表される巨大な符号空間が存在するのではなくは94文字集合または96文字集合を複数組み合わせる構造をもっており、これを「次元」と呼ぶことがある。なお、ISO/IEC 2022準拠の文字コードのうちCNS 11643JIS X 0213のような複数の「面」を持つものは、規格自体は複数の面を持つ「三次元」であるが、ISO/IEC 2022の国際登録簿には二次元の個々の「面」ごとに異なる登録番号で登録されている。

さまざまな文字コードにおける次元[編集]

  • 以下のような数字の組が群・面・区・点の4つからなる体系は4次元の文字コードと呼ばれる。
  • 以下のような数字の組が区・点の2つからなる体系は2次元の文字コードと呼ばれる。マルチバイト文字コードの多くは2次元の文字コードである。

ASCIIISO/IEC 646のようないわゆるシングルバイト文字コードを特に1次元の文字コードと呼ぶことがある。また、マルチバイト文字コードでも今昔文字鏡のように明確な次元と言える概念を持たない場合もある。

参考文献[編集]

  • 『JIS X 0202:1998』日本規格協会(ISO/IEC 2022の国際一致規格)
  • 『JIS X 0221;2007』日本規格協会(ISO/IEC 10646の国際一致規格)

脚注[編集]

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  1. ^ このようなものは「コードマップ」と呼ばれることがある。
  2. ^ 「図1 国際符号化文字集合の全体構造」『JIS X 0221:2007』p.. 7-10
  3. ^ 「図1 国際符号化文字集合の全符号化空間」『JIS X 0221:2007』p. 9
  4. ^ 「図2 国際符号化文字集合の群99」『JIS X 0221:2007』p. 10
  5. ^ 「基本多言語面の概観」『JIS X 0221:2007』p. 41
  6. ^ 「用字及び記号群に用いる追加多言語面の概観」『JIS X 0221:2007』p. 43
  7. ^ 「追加漢字面の概観」『JIS X 0221:2007』p. 44