音楽配信
音楽配信(おんがくはいしん)とは、インターネットを通じて楽曲を配信することである。「デジタル音楽販売」「オンライン(音楽)配信」なども同じ意味に使われる。
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[編集] 歴史
[編集] 黎明期
1998年頃までにパーソナルコンピュータの世界でMP3フォーマットが広く普及し、インターネットを通じて音声ファイルを手軽に配布することが可能になった。レコード契約を持たない独立系ミュージシャンやアマチュアミュージシャンなどが、作品をMP3ファイルで配布するケースも現れた。また、MP3再生に対応したデジタルオーディオプレーヤー(DAP)をクリエイティブメディアやRioなどの海外メーカーが市販化したことで、日本では手持ちの音楽CDをPCのRealJukeboxなどでリッピングし、DAPのメモリーにコピーして楽しむ形態が流入し始める。
しかしながら、MP3フォーマットは著作権保護の仕組みを持たないため無限にコピーを作成することが可能で、コンパクトディスクからエンコードしたMP3ファイルが海賊版としてネット上で流通することが問題になった。
1999年に入り、欧米では著名アーティストの楽曲を有料配信するウェブサイトも登場し始めたものの、海賊版への懸念は残る形であった。
同年にソニーがOpenMG、マイクロソフトがWindows Media AudioDRMといった音楽ファイルのデジタル著作権管理(DRM)技術が実用化され、記憶媒体側にコピープロテクト機能を付与したID付きスマートメディア・SDメモリーカード・マジックゲートメモリースティックが登場したことで、配信楽曲の違法コピーの懸念がある程度払拭されるようになると、日本では後述の通りレコード会社直営による音楽配信サイトが開始され、インフラが構築したことになる。
[編集] 普及期
2000年代以降、Napsterなどのファイル共有ソフトやブロードバンドの普及で世界規模で海賊版問題が急速に拡大し、日本においても類似ソフトの開発者らが逮捕された事で脚光を浴びることになる。米国で海賊版全盛の状況に歯止めをかけるのは、全米レコード協会によるP2Pソフトウェアメーカー及び利用者への訴訟攻勢や、2003年に登場したアップルコンピュータが米国で開始したiTunes Music Store(現iTunes Store)であった。アップル社はiPodの人気を追い風にし、ほとんど普及していなかった有料音楽配信を大きな収益を挙げるまでに引き上げた。MSN・Yahoo!・RealNetworksといった米国の大手インターネット企業も本国では追随し、大手レコード会社も独自の音楽配信事業を立ち上げた。
2005年上半期には、世界のレコード業界全体の売り上げのうち6%をデジタル販売が占め、前年の3倍超に急増した。[1] 2007年2月、アップルのスティーブ・ジョブズCEOがレコード会社に対してデジタル著作権管理(DRM)を撤廃するよう呼びかけた。その背景にはコピーコントロールCDを含む音楽複製防止に消費者の嫌悪が広がったこと、アップルが採用するFairPlayが他社の機器・ソフトで利用できず消費者を囲い込んでいることへの批判がある。これを受けてEMIはiTunes Store上でDRMなしの楽曲を配信することを決定し、2007年5月30日よりDRMフリーの楽曲を販売を開始した
[編集] 日本での動向
1996年に小室哲哉が自身のウェブサイト「Planet TK」で、NTTの音楽配信技術「Twin VQ」を使用した音楽配信の実験を開始した。MP3と比べて高い圧縮比率を持ち著作権保護の仕組みも備わった技術であったが、普及には至っていない。Twin VQの技術の一部はMPEG-4に取り入れられている。
日本での音楽配信は、ベンチャービジネスが原盤権を保有するレコード会社(主にインディーズ・中堅)や音楽出版社の許諾を得た楽曲を配信する動きが目立ち、ネットバブル前夜でもあったため注目を浴びていた。その代表格はリキッド・オーディオ・ジャパンである。
しかしながら、デジタル著作権保護(レーベルゲート方式)の新技術が盛り込まれたDAPとして同年12月にソニーがNW-MS7を発売し、ソニー・ミュージックエンタテインメント (日本)が国内大手レコード会社としては初の直営による音楽配信サイト「bitmusic」の運営を開始。これに複数の国内大手レコード会社が運営モデルや配信フォーマット(レーベルゲート方式)を追従したことで、2001年には前者のような形態の有料音楽配信サイトは一端姿を消すことになった。
なお、国内大手レコード会社の配信サイトが参入したデジタル著作権管理対応フォーマットは、レーベルゲート方式の他、MP3(Info Bind、東芝が採用)・AAC(SD-Audio)・Windows Media AudioDRMがある。MP3での配信は2001年までに消滅したが、2011年現在はレーベルゲート方式(mora)がウォークマンおよびau(KDDI・沖縄セルラー電話連合)のLISMO対応機種、AAC(iTunes Storeと着うたサイト)がiPod・パナソニックのDAP・着うたと、機器を換えることで同一ファイルの転送・再生が不可となる規格争い状態が続いている。ソニー・ミュージックエンタテインメント所属アーティストはiTunes Storeではコンテンツを供給せず、Appleユーザーにとっては不利益な様相を呈している。なお、著作権保護を付けないファイルについては複数のフォーマットで再生に対応している機種もある。また、WMA-DRMについては日本メーカー製のDAP機種は少数派となっている(東芝のGigabeatやICレコーダー オリンパス・ボイストレックシリーズなど)。2006年以降に発売されたNTTドコモのFOMA端末の多くは2代目Napster(うた・ホーダイ)の関係もあり対応としていたが、2010年3月にサービスが廃止されたことでWMA-DRMを非対応とした機種が増加している。
[編集] 携帯電話向け音楽配信
パソコンやデジタルオーディオプレーヤーで聞く音楽配信とは別に広く普及したのが携帯電話を使った音楽配信である。2003年後半以降、携帯電話の「着うた」が展開されると、コンテンツプロバイダが権利者から借り受けた音源を一曲単位でコンテンツ販売する「着うたサイト」のビジネスが急速に規模を拡大することになる。
なお、モバイル機器での音楽配信としてはPHS端末を使用したものが大きく先行しており、2000年11月にDDIポケットがfeel H"のサービス開始と同時に「SoundMarket」を開始、2001年1月にドコモPHSが「M-stagemusic」を開始している。
また、2006年以降、着うたとは別の携帯電話向け音楽配信サービスも開始された。NTTドコモがNapsterジャパンと提携した音楽コンテンツ定額配信サービスの「うた・ホーダイ」と、auブランドを展開するKDDIおよび沖縄セルラー電話が立ち上げたLISMOである。(Napsterについては前出の通り2010年3月に終了済。)
[編集] 近況
2006年に日本では音楽配信による売上がシングルCDの売上を上回った[2]。なお、日本での音楽配信における件数ベースでの【シングルCD:着うた:着うたフル:インターネット配信】の比率は2009年末時点でほぼ【1:3:3:1】と携帯電話での配信がインターネット配信を上回っていたが[3]、スマートフォンが普及した2011年は着うた、着うたフルの売上件数が当年1-6月期はそれぞれ前年同期比71%(着うた)、84%(着うたフル)と大幅に減少し、逆にインターネット配信の上期売上件数は前年同期比124%と大幅に増加した[4]。
2007年10月に宇多田ヒカルの有料音楽配信ダウンロード数が、平成19年1月からの9カ月間で1000万件を突破。1アーティストの年間配信数で1000万件突破は世界初となった。
[編集] 特徴
音楽配信を利用すると、1曲だけ欲しい場合にCDをアルバムごと購入せずに済んだり、CDが廃盤になるなどで入手困難な楽曲を入手できる可能性があるところやCDの品切れが発生しないところがメリットである。
DRMを使用した有料音楽配信の場合、購入する楽曲に「ポータブルプレーヤーへの転送回数制限」「CDへの書き込み回数制限」「バックアップの可否」などの条件が設定される。ただし、デジタルオーディオプレーヤーのヘッドホン端子から録音機器にコピーした場合と、一度CD-DAにコピーすれば、CDからリッピング・エンコードする分には制限が無意味になってしまう。ただし、殆どの音楽配信は非可逆圧縮を伸長しているため、音質は劣化する。
有料音楽配信に使われるフォーマットは、iTunes StoreではAAC、他のサービスではWMAやATRAC3が多い。これらは非可逆圧縮であり音質の劣化が発生するため、可逆圧縮(ロスレス)フォーマットを用いたり、サンプリング周波数を上げたり、一部のサイトは、AIFFやWAVなどを採用したりして、CDよりも高音質を実現した音楽配信も模索されている。
有料音楽配信の価格は、1曲あたり100~300円が一般的である。iTunes Music Storeが2005年に日本でサービスを開始した際、競合サービスに比べて低価格であり、他社が対抗値下げをしたことがあった。CDを購入するより割安だが、レンタルCDに比べれば高価で制限が多い。
人気アーティストがCD発売よりも早く楽曲を配信したり、音楽配信のみでCD発売されない楽曲をリリースするなど商業的戦略にも活用されている反面、デジタルオーディオプレーヤーを販売するメーカーを親会社に持つレコード会社が、戦略的にライバルの音楽配信サービスに楽曲をリリースしないといった問題も多い[5]。
ただ、近年は全体的に音楽配信システムで販売される曲が増加して、CDなどの物理的なメディア (媒体)の生産高が減少しており、各地でCD店の閉店が相次いでいる[6]。
[編集] 脚注
- ^ 国際レコード産業連盟の発表
- ^ [1]
- ^ “pdfファイル「日本のレコード産業2010年度版」” (2010年4月5日). 2010年4月5日閲覧。
- ^ http://www.riaj.or.jp/data/download/2011.html
- ^ 日本での一例として、ソニー・ミュージックエンタテイメント(SME)傘下のレコード会社はアリオラジャパンを除いてmora(ソニー傘下のレーベルゲートが運営)には楽曲配信しているが、iTunes Storeに楽曲配信していない。
- ^ 一例:HMVの日本1号店の渋谷、2号店の横浜ビブレ店。
[編集] 関連項目
- ネット配信 - 動画の配信についてはこちらを参照。
- ダウンロード販売
- インターネットラジオ