和声

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和声(わせい、戦前には「かせい」とも。英:harmony)とは、西洋音楽音楽理論用語のひとつであり、和音(英:chord)の進行、声部の導き方および配置の組み合わせのことである。メロディ(旋律)、リズム(律動)と共に音楽の三要素のひとつとされる。

また和声とは狭義には16世紀ヨーロッパに端を発した機能和声のことである。これは、個々の和音にはその根音調主音との関係に従って役割があると考えるものである。歴史的には機能和声に至る以前の和声が存在するが、現在の西洋音楽はほとんどがこの機能和声によって成り立っている。

また、一般的に和声とは和声学のことである。和声学とは、機能和声の理論ならびにその実習のことであり、作曲編曲の理論・実習のひとつである。

目次

[編集] 歴史

13世紀ごろから、ある旋律に対して1つから複数の別の旋律を同時に奏でて音楽を創っていくということが行われるようになった。これを対位法(英 counterpoint)という。ある旋律が他の旋律に従属するのではなく、それぞれが独立した旋律と感じられるように工夫された。

ルネサンス期(15世紀 - 16世紀)になると、和音が意識されるようになった。対位法で複数の旋律が奏でられるとき、ある部分を縦に切り取ってみると、音の積み重ねとしての和音が存在する。対位法でたまたま生じた現象として和音を捉えるのではなく、和音と和音との連結によって音楽を創るという発想が支配的となった。

その後、和音同士をいかに連結すべきかという法則が模索され、ラモーによりカデンツの法則が提唱された。バッハとその一族はラモーの原則に意識的にはなんら従っていないことが文献上から確認できるが、結果的には概ねカデンツの法則に従っている。こうして、フランスとドイツの和声法は、ラモー以後二分されてゆく。

古典派18世紀後半から19世紀初頭)の時代になると、カデンツの法則にのっとった和音の連結が至上のものとされるようになった。

[編集] 和声学の種類

  • 古典的和声
  • 近代和声
  • ポピュラー和声

[編集] 古典的和声

和声学の基礎は、16世紀ヨーロッパに端を発した機能和声であり、クラシック音楽における古典派の音楽はこれに基づいている。和音の連結のみならず、対位法の影響を大きく受けている。和音を混声四部合唱による構成と見なし、その各声部の旋律的な独立性も重要視されているのが、この時代の和声の特徴である。また、この時代の和声では、声部の導き方も非常に重要視されているのも大きな特徴である。たとえば、導音は主音に解決し、和音の第7音、第9音、第11音、第13音は予備されたり特定の和声音に解決したりする。このような、各声部の独立性や動きに重点をおいて作曲する方法を声部の書法(英 part writing)という。

[編集] 和音の機能

譜例:和音記号(和音の下) 和音の上はコードネーム(参考)である。

和音記号でIの機能をトニカ(またはトニック)、Vの機能をドミナント、IVの機能をサブドミナントという。

トニカ 
Tと略記する。和声の中心となる機能である。この和音が鳴らされるとき、「落ち着き」「解放」「解決」「弛緩」といった印象を与える。「自宅」のイメージである。楽曲の最後はTで終わる。Iのほか、VIもIの代理の時、Tの機能を持つ(偽終止という)。IIIもTの機能を持つことがある。
代理和音とは、ある和音の代わりに使われる和音で、似た響きを持ち、ほぼ同じ機能を持つ和音のことである。代理和音は、元の和音の3度上、または3度下の和音がよく使われる。なぜなら、3度関係にある和音は三和音の構成音3音の内2音が同じだからである(3度関係にある2和音の、下の和音の第3音は上の和音の根音に、第5音は第3音に一致するのである)。
譜例:各機能の和音と代理和音
ドミナント
Dと略記する。Tの5度上の和音であり、Tとは対照的に、「緊張」した印象を与える。「外出先」のイメージである。Tに移行しようとする力が強い(トニカに移行するように緊張が解ける方向で移行することを解決と呼ぶ)。Vに第7音を加えてV7の和音で現れることが多い。また、IIIやVIIもVの代理の時、Dの機能を持つ。
サブドミナント
Sと略記する。Tの4度上、すなわち5度下の和音である。Dほど強くないが、Tに比べれば「緊張」した印象を与える。「発展」「外向的」な印象が強い。Dに移行するか、Tに解決する。IIは、IVとともに非常によく使われるSである(ただし、IIはTには移行しない)。また、VIがIVの代理和音としてSの機能を持つことがある。Tの5度下であるので、Dとは逆方向の和音であると考えられる。いいかえると、SのDはTであるという考えが成り立つ。また、教会音楽などではいったんTに解決した後、再びIVに移行しIに戻るという技法が良く使われる(変終止、アーメン終止などと呼ばれる)。
各機能の関係
ドッペルドミナント
ドッペルとはドイツ語でダブルのことであるから、ドミナントのドミナントである。VのVであって(ドレミファソ、ソラシドレ)IIに相当する。このことから、Dに移行するIIの和音をDへのドミナントと考えることもできる(この場合、IIの第三音(ハ長調ならファの音)が半音あがることが多い。つまりVをIとして考え、それに対するVという考え方なのでIIの第三音が半音あがるのである)。同様に、Dに移行するIVをIIの代理和音とする理論書もある。一般にはドッペルドミナントの機能とSとは同一視される。

このように、SのドミナントはTであり、DのドミナントがSであるので、T、D、Sは正三角形を成すことになる。

[編集] カデンツ

機能和声においては、Tに戻ることでひと段落となる。言い換えると、和音の移り変わりは、Tから他の機能に移行して、またTに戻るまでがひとまとまりである。このひとまとまりをカデンツという。

機能和声においてDは、Tへ移行する力が強いので、Sには移行しないのが原則である。TとSはいずれの機能にも移行する。このことを考えると、カデンツは、

  • T→D→T
  • T→S→D→T
  • T→S→T

の3種のいずれかとなる。

もしも、DからSへの進行を考慮に入れるならば、上記に

  • T→D→S→T

のカデンツが加わることとなる。実際の音楽においては、他のカデンツに比べて少ないながら、随所に見いだすことができる。

[編集] 進行

「進行」とは、ある和音からある和音に移行することである。

古典的な和声学において、和音記号ごとに可能な進行を考えると、次のようになる。

  1. I は、すべての三和音とV7に進行することができる。
  2. II は、V(7)にのみ進行することができる。
  3. TのIIIは、IかVI→III→IVという進行の中でのみ使われる。DのIIIはTのIかVIに進行する。
  4. IVは、I、II(7)、V(7)に進行する。
  5. V(7)は、TのIかVIに進行する。
  6. TのVIは、Iを除くすべての三和とV7に進行することができる。SのVIは、Iに進行する。
  7. VIIは、TのIかVIに進行する。

(以上の規則はあくまで原則であり、絶対的なものではない。転調進行を初めとした様々な例外規則が存在するうえ、実曲中では無視されることもある)

V7以外の7の和音は、その和音の第7音を前の和音が構成音として持っていて、次の和音がその7音を構成音として持っているか第7音の2度下の音を構成音として持っていれば、三和音の代わりに使うことができることが多い。

[編集] 声部

古典的な和声学では、和音の進行にあたって各音を構成するパートの動きが重要であると考える。このため、和声学の実習においては、混声四部合唱編成、すなわち、ソプラノアルトテノールバスの4声部を使用する。これを四声体という。これらの4声部の動きと、それら相互の関係がスムーズであることが求められる。

  1. ある2つのパートの動きが、同方向であるとき、平行という。逆方向であるとき、反行という。(定義)
  2. 各パートは、それぞれの声域の中で動く。すなわち、ソプラノは中央ハから、アルトはその下のから、テノールは中央ハオクターブ下から、それぞれ2オクターブ弱(1オクターブと長6度)の音域で動き、バスは、中央ハのすぐ上のホから2オクターブ下のホまでの音域で動くように書かれる。(和声学における一般的な規則)
  3. 各パートは、離れすぎない。隣り合う各パートの音程はオクターブまでである。ただし、テノールとバスは1オクターブと完全5度までである。また、上のパートが下のパートより下がることは、避けられる。(和声学における一般的な規則。実曲中では例外あり)

[編集] 限定進行

各パートの動きの中で、この音はこの音に進行しなければならないとするものが古典的な和声学にはある。主なものは次の通りである。なお、あくまで原則であり、例外規則や補則も存在するし、実曲中では無視されることもある。

  1. V(7)の第3音は、Tに進行するとき、2度上行しなければならない。
  2. V7の場合、第7音は2度下行しなければならない。
  3. 7の和音、9の和音の第7音や9の和音の第9音は、次の和音に進行するとき、2度下行する(解決という)か、同じ音に留め置かれる。
  4. V7を除く7の和音、9の和音の第7音、第9音は、前の和音の同じ音から留め置かれる。これを予備という。したがって、そのような音を持たない和音から7の和音、9の和音に進行できない。

[編集] 禁則

古典的な和声学で、避けるべき、また禁止とされる動きは数多くあるが、重要なものは次の2つである。

連続1(8)度
ある2つのパートが、連続する2つの和音の間で、続けて完全1度または完全8度になることを連続1(8)度といい、禁止される(このような進行は実際の音楽ではよく見かけるので不思議に思われるが、和声的に「異なる2つのパート」であるとき禁止されるのであって、和声的にひとつのパートと考えられるときには問題とならない)。したがって、限定進行をする音は、基本的には同時に2パートで鳴らすことはできない(限定進行をすると連続1(8)度になるため)。
平行5度
ある2つのパートが、連続する2つの和音の間で、続けて5度になっていて、しかも平行して完全5度に到達することを、平行5度といい、禁止される(実曲中では一部例外あり)。反行である場合、また、後続音程が完全5度以外の5度である場合には、平行5度と呼ばず、問題とならない。

[編集] 課題実習法

和声の学習にあたっては、多く課題の実習を行う。四声体の内1声部を与えられて、残り3声部を埋めて完成するもので、ソプラノもしくはバスが与えられるのが普通である。ソプラノが与えられるものをソプラノ課題、バスが与えられるものをバス課題という。

[編集] 近代和声

[編集] 前期ロマン派の和声

前期ロマン派19世紀中盤)、つまりフレデリック・ショパンフランツ・リストロベルト・シューマン等が活躍した時代には、遠隔調への頻繁な内部転調が好んで用いられるようになった。減七の和音や、ポピュラー音楽でいうところのテンション・ノートが多く用いられるようになった。

[編集] 後期ロマン派の和声

後期ロマン派19世紀末期)、つまりトリスタン和音を媒介したリヒャルト・ワーグナーやその後継者であるアントン・ブルックナーグスタフ・マーラーリヒャルト・シュトラウス等が活躍した時代には、内部転調が頻繁となって調性感が希薄となり、音の跳躍進行が頻繁になり、リズム感が薄れ、ついには調性を感じられなくなった。16世紀ヨーロッパに端を発した調性はこうして崩壊に向かった。

[編集] 印象派の和声

印象派19世紀末期~20世紀初頭)になると、クロード・ドビュッシー旋法(モード)の手法を導入した。教会旋法をより発展した形で用いたり、全音音階といったある法則性に基づく音階を創作し、旋律や和音をその音階を用いて構成するという手法を用いた。俗に色彩和声と言われる。

[編集] 現代の和声

現代(ここでは20世紀初頭~現在21世紀)においては、20世紀初頭に調性が崩壊し、新ヴィーン楽派による無調の音楽が出現した。これに対しバルトークコルトレーン・チェンジズを先取りする「中心軸システム」、ヒンデミットは独自の理論による「拡大された調性」によって、中心音の調的支配力の中で12音の半音階を駆使した。そのほか手法の面において様々な試みがなされていて、例えば、複調多調多旋法移調の限られた旋法12音技法音列作法雑音微分音非平均律などが挙げられる。これらは必ずしも和声の手法のみを指すものではなく、実際の楽曲では対位法非対位法非機能和声法色彩和声法等が融合している。それぞれの手法・楽曲にはその場その場の和声法が存在しており、その理論を統一して語ることは極めて困難である。またこれらを総合して音響作曲法とも言われる。その直接の始まりは調性崩壊からと言われ、また電子音楽の影響を多分に受けている。

[編集] ポピュラー和声

[編集] 狭義の機能和声によるもの

[編集] 和音

前述のクラシック古典派の和声の規則・法則を捉え直したり、解釈を拡張したりして、ポピュラー音楽でも広く機能和声が用いられている。

クラシックの理論では三和音 triad が単位であったが、ポピュラー音楽の理論では四和音 four notes chord が単位となる。三和音ばかりのポピュラー音楽も存在するが、ここで説明する和音の第7音が省略されたものと捉えることができる。


ポピュラー音楽の理論で主として扱う四和音はセブンス・コード(トライアド+7th)の事であるが、シックスス・コード(トライアド+6th)を四和音として扱う事もある[1]


和音の構成音(和声音)は、セブンス・コードではRoot、3rd、5th、7thである。8th未満の数で書き表される音をコード・ノートchord note(和声音)、8thを超える数で書き表される音はテンション・ノート tension note (準和声音[2])と呼ぶ。

[編集] ケーデンスの法則

クラシックのカデンツの法則と基本的には同じであるが、多少解釈の違いがある。


一般的な機能
マイナー・キーでの機能はメジャー・キーでの同主調変換のときなどに名称を使い分け、普段は特に変えずまとめてトニック、サブドミナント、ドミナントとして分けることも多い。

  • トニック (Tonic)
    そのキー上の基本となるコード。解決感を得る事が出来る。
    ルートから始まるコードを基本として考える。トニックであるIの3rdを含んでおりアヴォイドノート[3]である4thを含んでいない。表記するときはTと略す。
  • トニック・マイナー (Tonic minor)[要出典]
    マイナー・キーでのトニック。トニックであるIの♭3rdを含んでいおり、アヴォイドノートである♭6thを含んでいない。表記するときはTMと略す。
  • サブドミナント (Subdominant)
    不安定な響きではある[要出典]が、ドミナントにもトニックに進行できるコード。
    トニックであるIのアヴォイドノートの4thを含んでいる。表記するときはSDと略す。
  • サブドミナント・マイナー (Subdominant minor)
    マイナー・キーでのサブドミナント。[要出典]トニックであるIのアヴォイドノートである♭6thを含んでいる。表記するときはSDMと略す。
  • ドミナント (Dominant)
    不安定な響きなであり、トニックであるIのリーディングノート[4]であるMaj7thを含むためトニックへ向かおうとするコード。また、Iのアヴォイドノートである4thを含むとトライトーンと呼ばれる増四度音程を形成するためよりいっそう強くトニックへと解決しようとする。表記するときはDと略す。
  • ドミナント・マイナー (Tonic dominant)[要出典]
    マイナー・キーでのドミナント。[要出典]トニックであるImiのコードトーンである♭7thをルートか[要出典]3rdに含んでいる。リーディングノートを含まないためサブドミナントやサブドミナント・マイナーと機能的には若干近い。[要出典]トニックであるImiのアヴォイドノートである♭6thを含むとサブドミナント・マイナーとしても機能する。[要出典]表記するときはDMと略す。


[編集] 進行
  • T は D、SDに進行する事が出来る
  • D は必ず T に進行する。
  • SD は T、Dに進行する事が出来る。

同じ機能のコードへの進行は基本的には常に可能。 基本的にはマイナー系も上記の法則は変わらない。


以上をまとめると次のようになる。

  • T - D - T
  • T - S - T
  • T - S - D - T

[編集] ダイアトニック・コード

ダイアトニック・コード(英:Diatonic chords)とは、ダイアトニックスケール(全音階)によって構成された7つのコード[要出典]。一般的には、メジャースケールが1種、マイナースケールが3種存在するため、ダイアトニックコードは全部で4種類ある。各コードは、スケール内のそれぞれをルート(根音)とし、スケールを三度ずつ堆積させることによって構成される。すなわち、ルートに対して3度、5度、7度を加えて構成する。 日本語では「全音階和音」と訳されることもある。


メジャー・ダイアトニック・コード[要出典]
コード I△7 II-7 III-7 IV△7 V7 VI-7 VII-7(♭5)
機能 T SD T,D[要出典] SD D T D
テンション 9,13 9,11 11 9,11,13 9,13 9,11 11,13
ナチュラル・マイナー・ダイアトニック・コード[要出典]
コード I-7 II-7(♭5) III△7 IV-7 V-7 VI△7 VII7
機能 TM[要出典] SDM TM[要出典] SDM DM SDM,TM[要出典] DM
テンション 9,11 11,13 9,13 9,11 11 9,11,13 9,13
ハーモニック・マイナー・ダイアトニック・コード[要出典]
コード I-△7 II-7(♭5) III△7+5 IV-7 V7 VI△7 VIIO7
機能 TM[要出典] SDM TM[要出典] SDM D SDM D
テンション 9,11 11 9 9 11,13 11
メロディック・マイナー・ダイアトニック・コード[要出典]
コード I-△7 II-7 III△7+5 IV7 V7 VI-7(♭5) VII-7(♭5)
機能 TM[要出典] SDM TM[要出典] SDM D SDM,TM[要出典] D
テンション 9,11 11 9,11 9,11 9 9,11,13 11,13

※一般的な機能
T: トニック tonic
TM: トニック・マイナー tonic minor[要出典]
S: サブドミナント subdominant
SM: サブドミナント・マイナー subdominant minor
D: ドミナント dominant
DM: ドミナント・マイナー dominant minor[要出典]

[編集] ノン・ダイアトニック・コード

ダイアトニック・コード以外のコード。ダイアトニック・コードのみでのコード進行では自由度が低いため、多くの音楽でノン・ダイアトニック・コードが用いられる。以下に主な種類を挙げる。

[編集] 同主調変換

(英: modal interchange)
同じルートを持つダイアトニック・コードから借用してきたコード。例えば、メジャー・スケールの中でbVIMaj7(ナチュラルマイナーダイアトニックコード[要出典])や、bVII7(ナチュラルマイナーダイアトニックコード[要出典])などが用いられる例が多い。また、モードから借用してくることも可能である。メジャー系は全てのダイアトニック・コードを使う事ができるが、マイナー系における同主調変換では特殊な場合を除いてメジャー系は使われない。[要出典]


[編集] トライトーン・サブスティテューション

(英: tritone substitution)
代理和音 sub chord / substitute chord のひとつであるサブスティテュート・ドミナント・コード substitute dominant chord の特別な場合で、ドミナントであるV7と同様のトライトーンを持つため代理として使う事が出来る和音。 つまり、V7のトライトーンである3rdとb7thを構成音として持つbII7がトライトーン・サブスティテューションとなる。 アナリシスなどではbII7 for V7またはbII/V7と表記する。


日本では、裏コードとも呼ばれる。この呼び名は、bII7 と V7 の根音である bII と V とが、十二音音階を円形に配列したときに対面に位置することに由来する。

[編集] セカンダリー・ドミナント

(英: secondary dominant)
各ダイアトニック・コードを仮のトニックとし、そのキー上のルートを持ち完全5度に解決するドミナント7thコード。


例えば、メジャー・キーにおける次のような進行の前者のコードを指す。


  • V7 → IImi7 (アナリシスでの表記:V7 of II、V7/II)
  • VII7 → IIImi7 (アナリシスでの表記:V7 of III、V7/III)
  • I7 → IVMaj7 (アナリシスでの表記:V7 of IV、V7/IV)
  • II7 → V7 (アナリシスでの表記:V7 of V、V7/V)
  • III7 → VImi7 (アナリシスでの表記:V7 of VI、V7/VI)


Cメジャーキーの場合、Dmi7に解決するA7、Emi7に解決するB7、FMaj7に解決するC7、G7に解決するD7、Ami7に解決するE7がセカンダリー・ドミナントに該当する。

このうち、II7 → V7 におけるII7はクラシックでいうドッペル・ドミナントである。


トライトーン・サブスティテューションによるセカンダリー・ドミナント

各ダイアトニック・コードを仮のトニックとしてとして半音で解決するドミナント7thコード。アナリシスにおいては S.D. と表記することがある。 トライトーン・サブスティテューションはV7と同様のトライトーンを持つためセカンダリー・ドミナントにおいてもV7の代理として使う事が出来る。

例えば、メジャー・キーにおける次のような進行の前者のコードを指す。


  • bIII7 → IImi7 (アナリシスでの表記:bII7 of II、bII7/II)
  • IV7 → IIImi7 (アナリシスでの表記:bII7 of III、bII7/III)
  • bV7 → IVMaj7 (アナリシスでの表記:bII7 of IV、bII7/IV)
  • bVI7 → V7 (アナリシスでの表記:bII7 of V、bII7/V)
  • bVII7 → VImi7 (アナリシスでの表記:bII7 of VI、bII7/VI)


エクステンディド・ドミナント (英: extended dominant)
セカンダリー・ドミナントを仮のトニックとし、そのキー上のルートを持ち完全5度に解決するセカンダリー・ドミナント。アナリシスにおいては E.D. と表記することがある。
例えば次のように:


キーがCメジャーの場合、

C → A7(エクステンディド・ドミナント) → D7(セカンダリー・ドミナント) → G7 → C


エクステンディド・ドミナントを I とする V7 の和音もエクステンディド・ドミナントという。


キーがCメジャーの場合、

C → E7(エクステンディド・ドミナント) → A7(エクステンディド・ドミナント) → D7(セカンダリー・ドミナント) → G7 → C

また、エクステンディド・ドミナントにおいてもセカンダリー・ドミナントと同様に代理コードを使い応用することが可能。


[編集] ディミニッシュト7th・コード

ディミニッシュト・コードを使ったものには以下の2通りがある。


[編集] ドミナント・サブスティテュート

(英)dominant substitute

V7と同様のトライトーンを持っているため代理として使うことができるVIIdim7。
例えばキーがCメジャーの場合、

Dmi7 → G7(V7) → C を Dmi7 → Bdim7(VIIdim7) → C

として置き換えることができる。また、ディミニッシュコードは構成音が同じコードが4つ存在するため上記の例のBdim7以外にDdim7、Fdim7、Abdim7を代わりに使うこともが可能である。

その他に

CMaj7 → C#dim7(VIIdim7 of II) → Dmi7(IImi7)

のようなセカンダリードミナントと同様の使い方も可能である。


[編集] パッシング・ディミニッシュト

(英)passing diminished

経過和音 passing chord としてデミニッシュト・セブンス・コードが用いられることがある。特に機能を意識せずに使用されることが多い。アナリシスにおいては P.D. と表記されることがある。 例えば、キーがCメジャーの場合、


Dmi7 → D#dim7(パッシング・ディミニッシュト) → C/E


また分析する際にはそのままコードの音度で書く。上記の例では#IIdim7となる。

[編集] パッシング・デミニッシュトの機能的解釈

パッシング・ディミニッシュトの一部は、機能的に解釈することができる。

上行形
上行形のパッシング・デミニッシュトは、後続和音を I または Im とする V7 のドミナント・サブスティテュートと解釈することができ、セカンダリー・ドミナントと同じ機能を持つと解釈できる。
次のような和音進行において、#I7 は、IIm7 のセカンダリー・ドミナント VI7(♭9) の第一転回形で、根音が省略された形(根音省略形)と捉えることができる。
I6 - #I7 - IIm7
上記は、
I6 - VI7(♭9) omit root - IIm7
と解釈できる。
下行形
下行形のパッシング・デミニッシュトは、トゥー-ファイブ(IIm7 - V7)が後続する場合、V7 へのセカンダリー・ドミナントとして解釈できる。
次のような和音進行において、III7 は V7 へのセカンダリー・ドミナント II7(♭9) の第一転回形で、根音が省略された形と捉えることができる。
IIIm7 - III7 - IIm7 - V7 - IM7
上記は、
IIIm7 - II7(♭9) omit root - IIm7 - V7 - IM7
と解釈できる。

[編集] ボイシング

クラシック音楽におけるボイシング voicing(声部の配置と導き方)は、各旋律の独立性を重視した声部の書法 part writing が主であるが、ポピュラー音楽では、ある声部に和声的な厚みを持たせるためにその声部に従属した声部を配置するというセクションの書法セクショナル・ハーモニー・英 sectional writing)も頻繁に用いられる。セクションの書法では必然的に平行が多くなり上述の禁則の可能性が高くなる。また単独で聴いてみるといささか違和感を覚える進行(増1度を除く増音程進行など。古典的和声では原則これも禁忌である)もしばしば表れる。しかし余程奇異でない限りそのまま用いられることが多い。なぜなら、古典的和声(声部の書法)では、それぞれの声部の旋律としての独立性を重視するためそれを損なうような進行は禁則とされるが、セクションの書法では、主となる声部に和声的な厚みを感じさせるためにそれに従属する声部を配置するのであって、従属している方の声部に旋律的な独立性を感じさせることが目的ではないからである。クラシック音楽でセクションの書法がまったく用いられないわけではないが、主ではない。

1オクターブ内で構成音が収まっているものをクローズ・ボイシング close voicing またはクローズド・ボイシング closed voicing、1オクターブ以上のものをオープン・ボイシング open voicing と言う。それぞれクラシックにおける密集配分、開離配分に相当する。

よく使われる例として次のコードへ進行するときは、ルートや一番高い音をなるべく近くの音程へと進行するように組み替えることにより、急激な変化を与えずに聴感上スムーズな流れを作る手法がある。その他にもコードの構成音同士の音程をなるべく広くし、3度になることを避け2度や4度にする手法もあり、そうすることにより純粋なコードの響きを避ける事が出来るため浮遊感、もしくは壮大な響きを得る事が出来る。

よく使われるボイシングの例

これらは何? どう読み取る?

  • 1-5-1-3
  • 1-5-3-1
  • 3-1-5-1


ドロップ2

オープン・ボイシングの一種。まずクローズ・ボイシングを行い、上から2番目の声部の音を1オクターブ下げるとこの形になる。

これらは何? どう読み取る?

  • 5-1-3-7
  • 1-3-7-5
  • 3-7-5-1
  • 7-5-1-3


ドロップ3

オープン・ボイシングの一種。まずクローズ・ボイシングを行い、上から3番目の声部の音を1オクターブ下げるとこの形になる。

これらは何? どう読み取る?

  • 3-1-5-7
  • 1-5-7-3
  • 5-7-3-1
  • 7-3-1-5


パワーコード

3rdを省略したもの。

これらは何? どう読み取る?

  • 1-5
  • 1-5-1

[編集] 広義の機能和声によるもの

[編集] モーダル・ハーモニー

モーダル・ハーモニー modal harmony とは、モード(旋法)を調として捉えて、和声を構成する技法。これは古楽復興が起こった20世紀前半から創められた。

よく使われるモーダル・ハーモニーの例

ドリアン・モード
コード I-7 II-7 III△7 IV7 V-7 VI-7(♭5) VII△7
機能[要出典] TM[要出典] SDM[要出典] TM[要出典] SDM[要出典] DM[要出典] TM[要出典] DM[要出典]
テンション 9,11 11 9,11,13 9,13 9,11 11,13 9,13
フリジアン・モード
コード I-7 II△7 III7 IV-7 V-7(♭5) VI△7 VII-7
機能[要出典] TM[要出典] SDM[要出典] TM[要出典] SDM[要出典] DM[要出典] SDM[要出典] DM[要出典]
テンション 11 9,11,13 9,13 9,11 11,13 9,13 9,11
ミクソリディアン・モード
コード I7 II-7 III-7(♭5) IV△7 V-7 VI-7 VII△7
[要出典]機能 T[要出典] SD[要出典] T[要出典] SD[要出典] D[要出典] T[要出典] D[要出典]
テンション 9,13 9,11 11,13 9,13 9,11 11 9,11,13

[編集] 脚注

  1. ^ シックスコードは本来、セブンスコードに13thのテンションノートを付加し7thを省略しているものであり、アヴォイドノートや利用できるテンションノートなどの理論もそれに準じて考えられる事が多い。[要出典]
  2. ^ 小山恭弘・ヤマハ音楽振興会 「楽典ポピュラー編」『新総合音楽講座1 楽典』財団法人ヤマハ音楽振興会 2004年 106頁
  3. ^ 不協音の事でコードの構成音と半音で接する音(♭3rdに接する2ndと5thに接する♯4thは除く)。通常は使用を避けられる音ではあるがスケールを根拠して構成されるコードの場合、そのスケールを特徴付ける存在として使われる事がある(ドリアンスケールの6thなど)。[要出典]
  4. ^ 導音とも呼ばれる。ルートの半音であるMaj7thはIMaj7コードの構成音でもあるがトライアードで考えるとルートと半音の関係にあるためアヴォイドノートのように機能し[要出典]ルートへ解決しようとするためリーディングノートと呼ばれている[要出典]リーディングノートを含んでいるコードはドミナントとして機能する事ができる。[要出典]

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