トリスタン和音
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トリスタン和音(―わおん)は、
- ヘ(F)、ロ(B)、嬰ニ(D♯)、嬰ト(G♯)
からなる和音で和声学で言う減五七の和音の一種である。また一般に同じ音程(下から順に増4度、長3度、完全4度)からなる和音をもいう。この和音がリヒャルト・ワーグナーのトリスタンとイゾルデの冒頭に現れることから名づけられた。
この和音の和声上の機能についてはいろいろな解釈が可能であり、調性的には曖昧である。
この和音はエンハーモニック(異名同音)により
- へ(F) - 変イ(A♭) - 変ハ(C♭) - 変ホ(E♭)
とも、またイ短調サブドミナントII の変化した
- ロ(B) - 嬰ニ(D♯) - ヘ(F) - 嬰ト(G♯)
(嬰ト(G♯)は掛留音である)とも解釈できる。ワーグナーはこれによって和音の機能よりも音、響きを強調したといえる。
当時は”和声の危機”と騒がれたが、のちに同種の和音はアントン・ブルックナーの交響曲やグスタフ・マーラー、ドビュッシーなどにより利用され、たとえば『牧神の午後への前奏曲』や『子供の領分』(ゴリヴォーグのケークウォーク)に頻繁にみられる。またこれを発展させた形として、アレクサンドル・スクリャービンの「神秘和音」がある。

