補聴器

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耳かけ (BTE) 型補聴器(左耳用)。右の透明な部分は耳あなにはめ込む「イヤモールド」と呼ばれる樹脂殻。
CIC型補聴器

補聴器(ほちょうき:英語hearing aid)とは、聴覚障害者の聞き取りを補助する補装具である。マイクロホン、アンプ、レシーバーから構成され、交換用の補聴器専用空気電池が電源である。また単に音を増幅する単純な音処理ではなく、聴力に合わせた調整が必要で、巨大な音を制限する出力制限装置を備えていなければならない。聴覚障害の程度を決めるためには、聴力検査(測定)が必須であり、純音検査語音検査のどちらも重要になる。

日本においては厚生労働省医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準に関する省令、米国においてはFDAの規制をうけ、それ以外のものは、日本においては補聴器、米国においてはhearing aidと称することはできない。補聴器専門店で購入するのが一般的である。

概要[編集]

補聴器は、難聴による聴こえの問題を解決することを目的とした音の増幅器である。形状は多種多様であるが概ね小型である。基本的に入力部、増幅部、出力部、電源の4つの部分から構成される。増幅は電気的あるいは電子的に行われ、単純に音を拡大するだけでなく、音の感度ダイナミックレンジ周波数分解能、時間分解能、方向性といった要素を考慮しながら増幅を行う。また必要に応じて 不要な雑音をカットし、SN比を向上させることにより聴こえやすさを追求している。

近年[いつ?]では、アナログ補聴器からデジタル補聴器への移行が進み、現在[いつ?]はデジタル補聴器が主流となりつつある。デジタル補聴器は、ソフトウェア上でその特性を変更することが可能であり、調整が非常に容易で即時に行うことができる。また、デジタル制御により高度で複雑な処理が可能となり、最近の補聴器の飛躍的な性能向上に貢献している。補聴器は、日本国内では医薬品医療機器等法において管理医療機器(クラスII)に指定されており、法的な規制が行われている。医薬品医療機器等法の規制を受けないものは集音器などに分類され、補聴器とは異なる。使用にあたっては基本的に個人の聴力や使用状況に合わせた調整(フィッティング)が必要であり、取り扱い店舗、専門店または医療機関で調節する必要がある。

日本身体障害者福祉法が制定されたのは昭和24年(1949年12月26日であり、この法律に対応する為に補聴器の開発と発売が始められた。小林理研製作所(現・リオン)により昭和23年(1948年)には国産の最初の補聴器が発売され、昭和25年(1950年)に身体障害者福祉法品目の指定を受けた。また、昭和31年(1956年)には国産初のトランジスター補聴器が発売された。この様にして、多くの聴力障害者に補聴器が支給されるようになった。この聴覚障害度等級表にはオージオメータでの聴力測定結果による聴力損失(後に10db加算され聴力レベルになる)での級別以外に、(両耳全ろう)、(耳介に接しなければ大声を理解し得ないもの)、(両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの)、(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)との検査者の発声が現在でも基準になっている。語音による検査も同様である。

構造[編集]

マイクで音を集めて、アンプで音を増幅し、スピーカーで音を発生させる。これを小型化したのが補聴器である。このアンプがアナログ処理の物をアナログ補聴器と呼び、デジタル処理の物をデジタル補聴器と呼ぶ。また、補聴器の調節がデジタルなアナログ補聴器を、プログラマブル補聴器と呼ぶ。現在市場に出回っているデジタル補聴器は、アンプ・調節ともにデジタルな「フルデジタル補聴器」である。補聴器の電源としては主に空気亜鉛電池が使用されている。非防水の腕時計と同様に、汗や雨などによる水分侵入に弱い(一部には、防水の補聴器もある)。

イヤモールド[編集]

補聴器の中にはイヤモールドと呼ばれる樹脂殻でできた耳栓を使用したタイプのものが存在する。イヤモールドは装着者の外耳の形状に合わせたオーダーメイドの耳栓であり、装着の安定やハウリング(音漏れ)の防止、音響の安定を得る目的で作られる。補聴器専門店で相談するのが望ましい。

補聴器の種類[編集]

補聴器の種々のタイプ

装用部位による分類[編集]

補聴器はその装用部位に対応した形状によって、いくつかのタイプに分類される。現在市販されているものについて大まかな分類と特徴を下記に示す。

ポケット型(箱型)補聴器[編集]

箱形のタイプ。20世紀初頭にベル研究所ハーヴェイ・フレッチャーによって発明された。この補聴器はアンプが含まれるケースと、耳あなにはめ込むイヤモールドと呼ばれる樹脂殻で成り立つ。現在ではおよそタバコ箱程度の大きさになっており、ポケットかベルトに装着する。メーカーによって異なるが、重度難聴に向いているとされる。

耳かけ型補聴器 (BTE)[編集]

BTE (Behind The Ear) 。耳介の後ろに引っ掛ける形の補聴器。小型のアンプケースと短いチューブ、カスタムメイドのイヤモールドで成り立つ。オープンイヤーフィットタイプのBTEも存在する(詳しくはオープンイヤーフィット参照)。補聴器専門店で相談するのが望ましい。

耳あな型補聴器 (ITE)[編集]

このタイプの補聴器は耳垢が乾性耳垢の場合はいいが、湿性耳垢の場合は使われない。

  • ITE (In The Ear) 。耳甲介 (Concha) を覆うタイプ。サイズによってバリエーションがある(耳甲介を完全に覆うフルサイズ、それよりも小さいハーフサイズなど)。やや大きい。耳介型とも呼ばれる。補聴器専門店で相談するのが望ましい。

カナル型補聴器 (ITC)[編集]

ITC (In The Canal) 。外耳道挿入型。補聴器の大部分が耳の中(外耳道)に入り込む形で装用される。補聴器専門店で相談するのが望ましい。

CIC型補聴器 (CIC)[編集]

CIC (Completely In the Canal) 。完全外耳道挿入型。サイズが最も小さく外耳道内にすっぽりと収まる。外部から見て補聴器装用を気づかれにくい利点がある。逆に搭載される機能が制限されるなど、サイズが小さくなることによるデメリットも生じる。レシーバースピーカー)が小さくなるため、高度難聴には向かない。補聴器専門店で相談するのが望ましい。

IIC型補聴器 (IIC)[編集]

IIC (Internal In the Canal) 。別名nano。従来からあったCIC型補聴器よりもさらに、小型に収まり補聴器本体が全く見えない形状。外耳道が細く製造が困難な場合があるので補聴器専門店で相談するのが望ましい。軽度から中等度難聴に向いている。

その他の分類[編集]

オープンイヤー型補聴器[編集]

ITCタイプ、BTEタイプが有る。イヤモールドが密閉されていないため、自分の声の響き・こもりが少ない。ただし、ハウリングが発生し易くなる為、補聴器にハウリングキャンセラーなどのハウリングを抑える機能が備わっていなければいけない。軽〜中等度の難聴までの適応。

RIC型補聴器 (RIC)[編集]

RIC (Receiver in the Canal) 。を出すレシーバースピーカー)がの中(外耳道)に配置された、オープンにもできる補聴器。レシーバーを付け替えることによって、軽度から高度難聴まで対応。先端を専用のイヤモールドにすることで、power RIC補聴器となる。

骨伝導型補聴器[編集]

骨伝導を利用した補聴器で、特に伝音性難聴に効果がある。形状の制限が少なく、眼鏡と一体化した補聴器も存在する。

埋め込み型補聴器[編集]

BAHA (Bone Anchored Hearing Aids) 。側頭骨埋め込み補聴器。頭蓋骨に直接埋め込むタイプのもので、直接頭蓋骨を振動させる骨伝導を利用し音を伝達する。

補聴器の進歩[編集]

補聴器はパワーを上げ、なおかつ小さくなるように進歩している。それは電子工学の進歩と歩調を揃えている。ただし、近年はファッション性を重視し、「見せる補聴器」とする動向もある。

初期(1960年代)の補聴器は、弁当箱ほどの大きさだった。1970年代頃になると小型化され、タバコ箱ぐらいの大きさになった(「ポケット型補聴器」という)。いずれも、受信部・バッテリーが収まった箱をポケットに入れていた。そして「イヤモールド」と呼ばれる、耳あなにはめ込む樹脂殻と細いケーブルでつながっていた。

1980年代には、外耳の上部に引っ掛けるような形の補聴器(「耳かけ型補聴器」という)が現れた(外耳の上部に引っ掛ける機具の中に、受信部・バッテリーが入った。これらとイヤモールドは短いチューブでつながっていた)。

1990年代に入ると、耳の内部に入れるタイプの補聴器(「耳穴型補聴器」という)が現れた(イヤモールドの中に受信部・バッテリーなどが全て入った)。

2000年代になると、今までのアナログ補聴器とは異なるデジタル補聴器が現れた(アナログ補聴器は基本的に入った音を全て拡大する。そのため、雑音も拡大されてしまう欠点を持つ。デジタル補聴器は人の声を拡大し、雑音をなるべく抑えるように細かく調節できるタイプの補聴器である。しかし最先端の補聴器のため、価格がアナログ補聴器と比べて高い)。

現在使われている補聴器の比率は、耳かけ型補聴器が約30%、耳あな型補聴器が約60%、ポケット型補聴器が約10%となっている。デジタル補聴器の使用状況は60%程度といわれる。

1999年には毎年6月6日が「補聴器の日」に制定された。

補聴器の扱い方と注意事項[編集]

・補聴器は洗わない。 ・補聴器を着けたまま、シャワーやお風呂、プールに入らない。 ・誤って水につけた場合でもオーブンやレンジで乾かさず、補聴器専門店で点検をしてもらうこと。 ・補聴器にヘアスプレーをかけない。万が一補聴器に噴射した場合は補聴器専門店でメンテナンスを行うこと。 ・日の当たる車内に補聴器を放置しないこと。

通信販売によるトラブル[編集]

近年、新聞広告やインターネットによる通信販売により消費者トラブルが急増しています。(下記の表を参照) 特に代金前払後に「商品が届かない」「別の商品が届いた」「トラブル後に連絡がつかない」「サイトそのものが架空であった」などの 相談が2012年から急激な増加傾向を示しています。

2009 2010 2011 2012 2013
相談件数 542 687 876 1841 4165

機能[編集]

テレコイル[編集]

補聴器には、電話の声が聞き取りやすくなるよう、受話器のスピーカーが発する磁気を受信し、その信号を増幅する機能がついているものがある(この機能がついている補聴器には「T」(テレコイル)という切り換えスイッチがついている。「T」に切り換えると、内蔵マイクからの音声を拾わなくなるため雑音が低下し、声を聞き取りやすくなる。また、最近では磁気誘導ループという磁界を発生させる装置もあり、そのサービスを提供してもらえる場所では、同じく「T」に切り換えることでクリアな音声を得られる。

無線周波送信[編集]

補聴器の中には、無線による信号の送受信を可能とする機能を持っているものがある。別途、レシーバーが必要となるものが多いが、内蔵されているものもある。

FMシステム[編集]

無線により送話者の音声を直接、補聴器に伝達する機能。周波数変調 (FM) 方式を採用している。教室での講義など、比較的広い場所でノイズ、反響音の影響を受けやすい状況下での聴こえやすさを向上することができる。電波法令で補聴援助用として次の周波数が割り当てられている。

周波数 送信機出力 特徴
169.4125 - 169.7875MHz 25kHz間隔 16波

75.2125 - 75.5875MHz 12.5kHz間隔 31波
75.2250 - 75.5750MHz 25kHz間隔 15波
75.2625 - 75.5125MHz 62.5kHz間隔 5波

10mW 補聴援助用ラジオマイク用特定小電力無線局として免許を必要とせず使用できる。

169MHz帯は欧州で補聴援助用に割り当てられた周波数を含む。

Bluetooth[編集]

無線の伝達手段として、Bluetoothを採用しているものも存在する。携帯電話や携帯オーディオ機器などから補聴器へと、デジタル信号の直接送信が可能となる為、ノイズ、雑音の影響をほとんど抑制した状態で外部入力を受信することが可能となっている。デジタル機器との親和性が高い。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]