耳垢

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耳垢(みみあか・じこう)とはのなかのである。俗に耳糞(耳屎、みみくそ)とも言われている。空気中のほこり、皮膚の残骸などがたまったものと、外耳道の耳垢腺というところから出る分泌物が混ざったもの。除去する必要があるとする意見としなくて良いという意見の双方があるとされるが、その理由は下記の耳垢の性質によるところが多い。

乾性と湿性[編集]

湿性耳垢
乾性耳垢

耳垢は乾性耳垢(乾燥した耳垢、「こな耳」)と湿性耳垢(湿った耳垢、「べた耳」)があることが知られている。 この性質はメンデル遺伝することが知られており、湿った耳垢は優性、乾いた耳垢は劣性である。 しかしながら日本に於いては下記の如く、優性遺伝である湿性耳垢が少数派となっている。

湿った耳垢の人は体質的に体臭が強い傾向がある。 これは耳垢が湿るのが、耳の中にあるアポクリン腺から分泌されるが原因であり、汗の多い人は体臭の原因のひとつとされるアポクリン腺の量が比較的多いからである[1]

ちなみに湿性耳垢の状態は分泌される汗の量により、耳から流れ出るほど低粘度~粘土状のものまで様々な状態が存在する。

アポクリン腺の活動状態は、同一人物でも成長により変化する。 これは腺の活性が第二次性徴のひとつだからである。 ゆえに、成長期を過ぎると共に汗の分泌量も低下し、高齢者では耳垢は粘度が高い粘土状になる傾向がある。

耳垢の乾性/湿性の割合は人種によって大きく差があり、北部の中国人や韓国人で湿性耳垢は4 - 7%、ミクロネシア人やメラネシア人では60 - 70%、白人では90%以上、黒人は99.5%が湿性耳垢であると言われている。日本人全体では湿性耳垢の人は約16%だと言われている。ただ日本内でも北海道沖縄と、本州の間で割合に大きな差があり、北海道のアイヌ民族では約50%が湿性耳垢であるとの報告がある[2]。これは、日本には元々湿性耳垢の縄文人が居住しており、やがて本州には乾性耳垢の弥生人が流入したが、その影響が及ばなかった北海道・沖縄には湿性耳垢が保存されたことによる、と説明されている。同様の研究は長崎県立長崎西高校の生物部も日本人類遺伝学会2007年9月15日に発表しており、演者らによると乾性耳垢の人は西日本に多い傾向が見出されたとのことであり、渡来人人骨が西日本で比較的よく発見される事実を証明するものであるとした[3]

東北地方や北関東や南九州地方にも湿性耳垢が多い事がわかっている。

2006年1月29日、長崎大学の研究グループの論文発表で、耳垢が湿性か乾性かを決定するのはDNA塩基配列の1か所の違いであることが判明[4]。また同論文では、「乾性耳垢」というものは本来存在せず、この場合は先天的に耳垢が生成されない体質であり、彼らが耳垢だと思っているものは耳壁の表皮や外部の埃などであることが述べられている。 耳垢が湿性か乾性かというのは皮膚の性質の一性質を表しており、熊本大学の小野らは癜風の場合の耳垢は、日本人の平均より湿性が多いと発表した。[5].

耳掃除[編集]

外耳道(耳の穴)は、骨部と軟骨部に分かれている。骨部が内側で、軟骨部が外側である。皮膚は鼓膜がある内側から外側へ移動するように出来ており、正常であれば、奥に耳垢はたまることなく、軟骨部と骨部の移行部まで出てくる。すなわち、耳を掃除するのは、見える範囲内でいいということになる。

耳垢の特徴[編集]

(本節は 石井(2009年)を参考文献とする)

耳垢は弱酸性であり、殺菌剤としての役割を果す。[6]の多い季節・地域では、外耳道に虫が入り、耳鼻科医の診察を受ける患者はごく普通に存在する。患者の共通点は耳垢がないことである。耳垢には防虫効果があると言われている。耳垢にはこのような特長が備わっているため、外耳道を清潔にするために行ったはずの耳掃除が菌や虫の生息に適した環境作りとなる可能性がある。生活環境等にもよるが、耳掃除の頻度に留意する必要がある。

動物の耳垢[編集]

基本的に野生動物の耳垢は、自然に出てしまうので溜まらないとされる。ただし、クジラの仲間に限っては耳の構造上耳垢が出ることはなく、死ぬまで溜まり続け耳垢栓となる。この耳垢栓には年輪のような筋があり、クジラの年齢を推測する事が出来る為、調査捕鯨などでは耳垢栓を回収するために、それを破壊しないように捕獲する必要がある。

脚注[編集]

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  1. ^ 賀藤一示、鈴木恵子、福田公子、村井美代『図解入門 よくわかる最新ヒトの遺伝の基本と仕組み』秀和システム、95頁
  2. ^ 九州大学総合研究博物館(2000年)より。
  3. ^ 長崎新聞(2007年)より。
  4. ^ Yoshiura (2006) より。
  5. ^ Ono T, Jono N, Kuriya N: Tinea versicolor and earwax, 1981,Journal of Dermatology, 8, 75
  6. ^ 羽アリカナブンゴキブリダニなど。

参考文献[編集]

関連項目[編集]