磁気誘導ループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
磁気誘導ループ(ヒヤリングループ)が設置されていることを示すサイン

磁気誘導ループ(じきゆうどうるーぷ)とは、聴覚障害者用の補聴器を補助する放送設備のこと。磁界を発生させるワイヤーを輪のように這わせることから、通称「磁気ループ」と呼ばれる。国際的には「ヒヤリングループ」という名称になっている。

概要[編集]

磁気誘導ループは、補聴器に直接音声を送り込むための機材である。磁気を発生させるだけなので、対応する受信機材がなければ、なにも活用できない。通常、補聴器音を全体的に大きくする機材なので、周囲の雑音により音声の聞き取りが難しい場合がある。磁気誘導ループによりもたらされる磁気を受信し、音声信号に変えることで雑音の少ないクリアな音声を聴くことができる。日本では「磁気ループ」と呼ばれているが、2009年9月にスイスで行われた関連の国際会議で「ヒヤリングループ」という呼称と設置マークが定められた。十数年前から公共施設や映画館などに磁気ループが設置されている例が出てきているが、活用されていない一因として、日本には磁気ループ設置の統一マークが定められていないことがあげられる[要出典]

設備の分類[編集]

常設型
建物施工時にあらかじめループ用配線を床下へ埋設する方法。最近では市役所や文化センター、会議室等の床下には埋設されるケースも多い。メリットとしては、配線を碁盤の目のように設置することから、どの位置にいても安定した磁界が得られ、埋設されているエリアのなかでは平均的な音量(磁力)を得る事ができる。また、漏洩磁界対策は非常に難しく、他の部屋のループへ混信には注意する必要がある。デメリットとしては、移動する事ができないため、部分的に施行工事をした場合は使用する場所が限られる。東京都の福祉のまちづくり条例では、客席を有する1000m2以上の都市施設の大改修・新築にあたっては集団補聴システム(磁気ループ、FM方式、赤外線方式)の設置が遵守義務となっている。交通機関の車内案内、駅等の構内放送、観光バスなどへの磁気ループ設置が期待される。
移動型
コードリールなどから引き出して 必要部分に配線ループを作る方法。主に屋外でのイベント、建物に施行がなされていない場合につかう。メリットとして、アンプに余力がある限り延長用配線をつぎ足して使用することができ、使用可能エリアを自由に設定できる。このことから、多少複雑な配席にも対応できる。デメリットとしては、ループワイヤから発生される磁界と補聴器までの距離に相関があり、ループの配線から遠ざかると聞こえが悪くなる。また、磁界方向に合わせて補聴器の向き(角度)を調整する必要がある。このため、ループを受信するのには箱型補聴器が適切である。
ヘッドホン型
通常のヘッドホンと似たような形をしているが、音響盤の代わりにコイルが入っているもので、補聴器の上から直接掛けて使用する。
首掛け型
首もとのコード内にコイルが埋め込まれているので、ネックレスのように首に掛けて使用する。iPodや携帯電話と接続して音楽を聞くことも可能。距離によっては音が聞き取りにくい事がある。タイループとも呼ばれる。
耳掛け型
コイルがフックのようになっていて、耳掛け補聴器のような形状。磁気誘導ループの中では最も耳に近いところ装着される。シルエットコイル、シルエットインダクターとも呼ばれている。

構成と仕組み[編集]

機材は次のもので構成される。

磁気発生用アンプ
一般的に音声を発生させるアンプとは異なり、磁界を発生させるために必要な電流を発生させる機械。アンプそのものは音声データを磁気にかえるだけのシステムであるため、別途マイクや他の音響設備から音声信号を入力する必要がある。

通常の拡声器アンプのスピーカー端子に磁気ループ線を接続して、磁気ループアンプとして活用できる可能性がある。その場合、インピーダンス(抵抗)の不適合などでアンプに支障が出る場合もあり、若干の注意が必要。

磁気発生ワイヤー
磁気を発生させて、補聴器に信号をおくるためのワイヤー。受信者のまわりにワイヤーを這わせ、ワイヤーの両端を磁気発生用アンプに繋ぐことで磁界を発生させる。磁気発生ワイヤーは特殊なもので、中には何本ものワイヤが束ねられている。工学的には、強力な磁界を発生させるためには磁気発生ワイヤーを何百回も巻く必要があるが、磁気発生ワイヤーでは複数のワイヤーがこのかわりをしており、実際に利用する場合には、磁気を発生させたい領域を1周させるだけで必要な磁界を発生させることができる。安物のイヤホンの振動板を抜いたものでも簡易な磁気ループになる。ポケットラジオやラジカセのスピーカーからも磁気が出ている。
受信用補聴器
磁気を信号に変えるための「コイル」を搭載した補聴器のこと。耳あな式、耳かけ式の補聴器にはTコイルが付いていない例が多い。磁気誘導ループの信号を受信するためには、補聴器にあるスイッチを「T」(テレフォン)へ切り替える作業が必要。また、このスイッチを切り替えると、一般的にはマイクから音声が入力されなくなるという欠点を補うために、マイクを機能させたまま、磁気を受信するMTスイッチが装着されているものもある。

関連項目[編集]